インタビュー
「GODS#5」「ぶるれぼ」の2大イベントをひかえた「BLAZBLUE」。アークシステムワークス森Pに,格ゲーコミュニティのありかたについて聞いてみた
アーク初の公式全国大会「BLAZBLUE REVOLUTION ブレイブルー レボリューション」,略して「ぶるれぼ」
4Gamer:
今回のGODS#5では,優勝者が公式全国大会「ぶるれぼ」に特別枠として招待されることになっていますよね。このぶるれぼについても話を聞かせてほしいのですが,まずは概要からお願いします。
パチ氏:
ぶるれぼでは,2012年1月21日から,基本的には毎週土日,3月4日までの期間に,全国のアーケード60店舗で店舗予選を行います。本戦は3月24日,ディファ有明での開催です。レギュレーションはキャラ被りなしの3on3のトーナメント方式で,GODSGARDENの優勝者にはその1枠が提供される形です。
4Gamer:
アークシステムワークスとしては,初の公式全国大会ということでいいのでしょうか。
パチ氏:
公式大会はこれまでもあったんですが,全国大会としては初ですね。
4Gamer:
3on3とのことですが,この形式を選ばれたのはなぜですか?
パチ氏:
これは自分自身の経験もあるんですが,3on3ってすごく盛り上がるんですよ。それにプレイヤーからの声というのも少なからずあって,やっぱ3on3やりたいでしょ? っていう。まあ空気を読んだみたいな(笑)。
かみちゃん:
3on3は盛り上がりますよ。シングルとは違う緊張感があります。
パチ氏:
3人でいろんなゲーセンを回るのって楽しいんですよ。負けたときの悔しさだったり,遠征して準決勝で何回も同じ相手と当ったりとか,ドラマが生まれやすいんです。
遠征で迎え撃たれる時のアウェー感とか,ヤバイですよね(笑)。
パチ氏:
そう,3on3はそういうところが面白い。あと誰を大将にするかとか。相手のチームを考えて,このキャラは誰の担当とか。あるいは,あいつはプレッシャーに弱いから,先鋒にしておこうとか。
4Gamer:
GODSGARDENでシングル最強を決めて,「ぶるれぼ」で3on3最強を決める,みたいな分け方ではないと。
パチ氏:
「ぶるれぼ」に関しては,もちろん最強を決めるというのも1つのテーマではあるんですが,まずいろんなプレイヤーの人に参加してもらいたい,というのが一番ですね。もちろん記念参加で全然構わないので,まずは体験してほしいです。
森P:
うん。これはBLAZBLUE立ち上げ時から言っているんだけど,僕らはエンターテイメントがやりたいんです。だから,みんなで見て楽しめる大会がやりたいと,前から思っていた。それがようやく今回実ったという感じです。
3on3にしたのも“コミュニティを広げたい”という目的があったからで,チームを組もうと思ったら,人と人の繋がりが重要になるじゃないですか。その繋がりの中で若い人達に,BBだけでなく,格闘ゲーム全体を盛り上げていってほしい。
4Gamer:
選手として参加するだけでなく,観戦する楽しみ方も視野に入っていると考えていいのでしょうか。動画配信を予定されているとか?
パチ氏:
本戦ではそういう環境も用意する予定です。予選に関しては,店舗に行けばもちろん見られますし,今は各店舗で動画配信をしているところも多いので,そのあたりをチェックしていただければと。
森P:
でも決勝大会は,ぜひ会場に見に来てほしいですね。ライブは楽しいですよ。
パチ氏:
動画配信も大事ですけど,会場で“熱”を感じてほしいですね。大会って本当に楽しいんですよ。ゲームセンターの大会は参加しにくい,という人もいると思いますが,できる限りそうならないよう,参加賞とかも用意してますんで。まずは足を運んでほしいですね。
森P:
最終的にシーンを盛り上げるのは,やっぱり僕らではなくプレイヤー達ですから。プロゲーマーの話に戻っちゃいますけど,シーンを盛り上げるには,ただ強いだけじゃダメなんですよ。やっぱカリスマ性だったり,華がある。とくにギルティギアは華のあるプレイヤー達が多かったので,BBでも今後,そういう華のある人達がどんどん出てきてくれれば嬉しいかな。
パチ氏:
でもBBにもそういうプレイヤーがいるってことに,僕らが気づいていないだけかもしれない。それはシャイなプレイヤーが多いからというのもあるし,僕らがアピールできる場を用意できていないからもしれないんです。だからぶるれぼだったり,今回のGODS#5だったりというのは,そういう人達にこそスポットを当てていきたい。地方のプレイヤーにもちゃんとスポットを当てて,次世代のスターを発掘したい。ぶるれぼの店舗予選にしても,できるだけ都市部に集中しないよう,全国にばらけさせたのはそのためです。
森P:
でもその作業って,結構大変なんですよね。僕もBBEXの発売で全国を回ったんですけど,人がいないんですよ,地方に行くと。
4Gamer:
地方のゲームセンターに,ということですか? ゲーセンそのものが少ないのではなく,ゲーセンに人がいないと。
森P:
そうですね。僕が全国を回って一番感じたのがそこなんです。ここに人を呼び戻したい。じゃあどうすればいいかというと,コンシューマ版にネットワーク対戦を載せなきゃいいんですけど,そういうモノでもないじゃないですか。ゲーセンにはゲーセンでなくては楽しめない面白さがある。だからゲーセンに集まるっていう環境を,僕らは用意していなきゃいけない。まあ本音を言うと,内弁慶になっていないで表に出て戦えよ! って話なんだけど(笑)。
アーケードへのこだわりと海外市場
4Gamer:
ゲーセンの話が出たので,アーケードについてもう少しお聞きしたいんですが,やはりアーケードにはこだわりがあるわけですよね。それはなぜでしょうか。
森P:
アーケードが好きだから。それだけです。
4Gamer:
正直なところ,アーケード版よりもコンシューマ版のほうが売り上げは大きいと思うんですが……。
森P:
それはもう,その通りですね。
4Gamer:
それでもですか。
森P:
僕はゲームセンターで育ってきた人間なので,アーケードの楽しさを僕なりに,味わってきたつもりです。格闘ゲームって対戦ゲームだし,相手がいないと始まらないじゃないですか。だからコミュニティは絶対必要なんですね。そのためにゲームセンターは絶対必要だと思っています。
確かにネットで顔の見えない相手と戦うのも楽しいですよ。でもそれ以上に,顔の見える相手というのは緊張感がある。それを味わってほしい。どんなことがあっても,ここにはこだわっていきたいです。
パチ氏:
アーケードってプレイヤーの目がシビアなんですよね。なのでそのゲームの実力を計るには一番良い場だと思います。1コイン100円の中に,プレイヤーも作っている僕らも,全力を詰め込んでいるわけですから。
4Gamer:
海外のプレイヤーも,日本のアーケードを通りぬけてきたゲームなら大丈夫だろう,みたいな印象を持っているみたいですね。高い競技性を保証してくれる環境というか。……ちなみにBBって海外ではどうなんですか?
森P:
それなりには認知はされていますね。BBCTの時点で,全部あわせるとハーフミリオンはクリアしているはずです。
4Gamer:
ゲームを作るうえで,海外の市場を意識することは?
森P:
意識は全然してないです。これは僕の持論なんですが,格闘ゲームって日本人しか作れないんですよ。だから僕は考えても意味がないと思っている。
4Gamer:
ああ,鉄拳の原田さんも同じようなことをおっしゃってましたね。
そこは僕もすごく同感です。だからよく「海外! 海外!」言ってるクリエーター様なんかを見ると……ちょっとどうなんだと。
(一同爆笑)
森P:
今現在,日本人の作れる最高の格闘ゲームを作って,格闘ゲームが好きな人達に届ける。相手が日本人だろうがアメリカ人だろうが,韓国人だろうが台湾人だろうが関係ないです。その中で,ツボに入った人達が買ってくれて,プレイしてくれている。
海外産の格闘ゲームにだって面白ものはありますけど,日本のものに比べたら,正直いってまだまだじゃないですか。ほかの国では作れないクオリティのモノを作ってるんだから,日本人として,一クリエイターとして,胸を張って海外に発信していけばいいんです。
4Gamer:
確かに。でも格闘ゲームが日本人にしか作れないっていうのは,なぜなんですかね?
パチ氏:
日本はアーケードでずっと格闘ゲームを作り続けてきたじゃないですか。あの時代にすごく研ぎ澄まされていったものがあるから,今こうして洗練されたゲームが作れるんです。歴史があまりにも開きすぎている。
4Gamer:
アーケード文化があったからこそ,日本人は格闘ゲームを洗練させることができた,と。
パチ氏:
間違いないと思います。逆に向こうでは,FPSが今そういう状態にあるんじゃないでしょうか。だから日本人がFPSを作るのは,技術があったとしても難しいでしょう。日本人に受けるFPSは,もしかしたら作れるかもしれないけど,世界で受けるFPSは無理ですね。
森P:
だから格闘ゲームは,日本人が誇っていい文化だと,僕は本気で思ってる。国内はゲーセンが大事ですけど,格闘ゲームを好きな人達は,全世界にいるんです。だから今回のGODSGARDENさんもそうですけど,どんどん盛り上げて,日本の誇る格闘ゲームを世界に広めてほしいですね。
格闘ゲームはガチンコだけではない
4Gamer:
ではそろそろ締めのお時間ということで。BBシリーズの今後について,何かお話ししてもらえることはありますか?
森P:
内緒です(笑)。でもこれはずっと言い続けていることなんですけど,「BLAZBLUE CONTINUUM SHIFT EXTEND」って,タイトルが長いじゃないですか。だからそろそろ短くしたいなーと思っています。そんな方向で頑張っていきたいなと。
パチ氏:
がんばります(笑)。
森P:
それも皆さんの盛り上げにかかっているので,ぜひよろしく願いします。売れなきゃ続編は作れないので。
4Gamer:
タイトルを短く。……興味深い情報をありがとうございます(笑)。ちなみにギルティギアに関してはいかがでしょうか。
森P:
本当にねえ。僕が聞きたいくらいですよ。ギルティギア大好き! ギルティギアの続編が見たいって,皆さんも声を上げてくださいよ。そしたら……パズルゲームが出るかもしれない(笑)。
(一同爆笑)
4Gamer:
では最後にBLAZBLUEファン,もしくはGODSGARDENファンに向けてメッセージをお願いします。
稲葉氏:
GODS#5については,会場に遊びに来てくれたら,格闘ゲームの楽しさを発見してもらえるイベントになると思っています。とくにコンシューマ版しかプレイしたことがないのなら,なおさらに。あと,配信を見ようと思っている人の中に,もしBLAZBLUEを積みゲーにしている人がいたら,視聴前に2〜3時間でいいので遊んでみてほしいです。それだけでもかなり観戦が楽しめるようになるので。ぜひお試しください。
4Gamer:
配信のスタートは16:00でしたよね。
稲葉氏:
配信開始が16:00で,予選が17:30から。本戦は21:00からの予定です。あと本戦は8人のトーナメントですので,以前のように朝までかかるようことはないはずです。
パチ氏:
いや,あれは見ているほうも,睡魔との戦いでしたよ(笑)。
4Gamer:
じゃあ遅くとも21:00までにはお風呂に入ってビールも用意して,PCの前にスタンバイしてほしいと。
パチ氏:
BBは若いファンが多いので,ビールではないのかも。その場合はジュースでもコーヒーでも用意してもらって。
かみちゃん:
とりあえず,動画勢の人はぜひ配信を見てほしいですね。GODSGARDENはスパIVの団体だと思われがちなんですけど,それだけじゃないんで。BBはゲーム自体もすごく面白いので,これをきっかけに遊んでみてほしいです。
稲葉氏:
思ったほどやらないんですよね,皆さん。
4Gamer:
動画勢から,プレイヤーになる人があまりいない?
稲葉氏:
ストIVの場合,元ゲーセンプレイヤーが動画などを見て,久しぶりにコンシューマ版を遊んでみるか,って流れだったじゃないですか。でも逆に,コンシューマ版で始めた人がゲーセンデビューすることってあまりない気がして。上達してきたと感じたら,自然に行きたくなると思うんですけどね。
パチ氏:
その辺は,今後コンシューマ版の大会なんかも,できたらいいですね。
森P:
色々考えてたりはするんだけどね。
パチ氏:
とりあえず,まずは目の前のGODSGARDENとぶるれぼに参加してほしい,というところですかね。そうすれば,もしかしたら次のニーズにも応えられるかもしれない。大会文化を根付かせるのが,今回の取り組みの目的の一つなので。盛り上がってくれれば,コンシューマ版の大会なんかもどんどん企画できますから。だから今回は,出なくてもいいかなー,とか思わずに,どんな形でもいいから参加してみてほしいです。ぶるれぼにもGODSGARDENにも。
かみちゃん:
迷うくらいなら参加してください,と。お土産もたくさん用意してますから。
森P:
むしろ,格闘ゲームをもっと盛り上げてください,と。
4Gamer:
では最後に森P,お願いします。
森P:
もう何回も言っていますけど,僕らは格闘ゲームが好きな人達のために作っているので,そんな人達が絶対満足できるものを,これからも作っていくつもりです。ゲームだけじゃなくてね,遊ぶ環境だったり大会そのものだったり動画配信だったり。どんどんやっていきたいと思っているので,ぜひご協力と応援を。周りに興味がありそうな人がいたら,こういうゲームがあるよってアピールしてほしいです。クソゲーとか言わずにさ。
パチ氏:
格闘ゲーマーって,自分の遊んでるゲームをクソゲーって言いたがるんだよね。確かにそういう文化なんだけど,それが初心者のハードルを上げているのも確かなので。
かみちゃん:
めちゃめちゃやる気あるのに,やる気ないアピールとか。そういうの多いですよね。
森P:
つまんねーとかじゃなく,ポジティブな言葉で共有してもらいたいね。「面白いから,1回見てみー」とかでいいので。それでGODSGARDENを見てぶるれぼを見て,面白いと思ったらゲームセンターに足を運んで,それでいいんですよ。見ているだけでも,そのうち出たくなるんだから。僕がそうだったし。
パチ氏:
いやほんと,遊びに来る感覚でぜひ。
かみちゃん:
最初はガチンコじゃなくていいよねっていう。
パチ氏:
格闘ゲームはガチって思われてるのが,ハードルが上がる要因だと思うんですよね。
稲葉氏:
そう,バーチャファイターの全盛期とか,とりあえず人がたくさんいて,ウロウロしてるだけで楽しかった。なんかお祭に来たみたいな感じで。
森P:
気楽にやりましょう。
稲葉氏:
ゲームは楽しく遊ぶのに越したことはないから,わざわざ苦行にしなくてもね(笑)。
パチ氏:
アスリートチックになっちゃいますからね。
かみちゃん:
皆が修羅にならなくても,いいんですよね。
森P:
そう思う。そういう空気って,絶対にプレイヤーを減らしてるよね。楽しみ方って人それぞれなんですよ。楽しみ方の選択肢がすごく増えてきてるんだから,こうやらなきゃダメみたいな押し付けはしたくない。ただ,実際に触ってプレイしたほうが楽しいですよと,いうことだけは言っておきたいかな。
4Gamer:
はい,本日は長時間ありがとうございました。
「GODSGARDEN」公式サイト
「BLAZBLUE CONTINUUM SHIFT EXTEND」公式サイト
公式全国大会「ぶるれぼ」公式サイト
――2012年1月16日収録
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