インタビュー
PS Vita「真・三國無双 NEXT」は,“次世代の無双”としてシリーズ化を目指す。プロデューサー/ディレクターインタビュー
もはや定番となった無双シリーズの“一騎当千の爽快感”を,マルチタッチスクリーンや背面タッチパッド,モーションセンサーといったPS Vitaの多彩な機能を駆使してどのように表現しているのか,あるいは3G回線/Wi-Fiといった通信機能をどのように活かしていくのか。
4Gamerでは,同タイトルのプロデューサーを務める小笠原賢一氏と,ディレクターの庄 知彦氏に話を聞いてみた。
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“一騎当千の爽快感”をタッチ操作で再現。繰り返しの操作を意識した設計に
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。今回はPS Vita向けに真・三國無双 NEXTを開発するにあたって,配慮した点や注力した点について聞かせてください。
まず操作周りに関してですが,E3 2011(6月)の時は,電車の中だとジャイロ操作では遊びづらいといったことも話されていましたよね。それ以降,何か変更は加えられたのでしょうか?
変更というよりは,代替操作を用意しました。例えばジャイロ操作はLRスティック,本体を振るような動作はLRボタンといったように,モーションセンサーを使う部分には代替できる操作があります。
小笠原賢一氏(以下,小笠原氏):
その一方で,タッチ系の操作はそのままにしています。
4Gamer:
体験会などで実際にプレイした人からは,タッチ操作の感想もいろいろ出ていましたね。
小笠原氏:
ええ,とくに背面タッチパッドに関しては,“ピロピロ”と表現していただいているようです(笑)。たしかに熱心にプレイしているのを傍から見られるのは少し気になるかもしれませんね。
ただ我々は,当初から,タッチ操作を使った無双の爽快感をもたらすべく,新しいインタフェースを開発してきました。実際に,何度もあの操作を繰り返していただくことで,より爽快感が生まれるようになっています。ぜひ,やればやるほど爽快感が出る部分を楽しんでいただきたいです。
4Gamer:
ピロピロで思い出しましたが,新必殺技の「神速乱舞」は,武将によってタッチやフリックなど操作が異なるんですよね。
庄氏:
ええ。いくつかの系統に分類できますが,基本的には武将ごとにPS Vitaのいろいろな機能を使った気持ちいい操作を用意しています。
4Gamer:
E3のプレイアブルバージョンでは趙雲のみプレイ可能だったので,基本的に神速乱舞は背面タッチパッドを使うものと思っていました。発動も背面タッチパッドでしたし。ところが東京ゲームショウなどのレポートを見ると,それぞれ違う技になっていまして,少し驚きました。
小笠原氏:
実は趙雲の神速乱舞も,E3のものとは違いますよ。あれは,E3で最初に趙雲を出すことを決めていたので,あの時点における全体の完成度を踏まえて,別の武将の技を割り当てていたんです。
4Gamer:
ああ,そうだったんですね。
あの頃は現実的に完成を考えるよりも,「PS Vitaにはこういう機能があるから,これを試してみよう」という,試作を重ねている段階だったんです。そもそも当初のコンセプトが「PS Vitaの機能をフル活用しよう」というものでしたから。
もちろん発売までの過程において,その中から取捨選択して,最終的に製品版となったわけです。
4Gamer:
では,E3バージョンと製品版で,操作部分で大きく変更された部分はありますか?
庄氏:
基本的には同じです。ただ,神速乱舞の発動が背面タッチから前面タッチに変わっています。
4Gamer:
たしか東京ゲームショウの段階では,背面タッチで発動してたような。それは本体を持つときに,間違えて背面パネルに触れてしまうからですか?
小笠原氏:
そうです。背面タッチパッドの中心寄りをタッチしないと発動しない,といったことも試してみたのですが,それでも誤発動は避けられませんでした。
庄氏:
本体の持ち方は本当に人それぞれなんですよ。手の大きさも人によって違いますから。PS Vita本体裏にはホールドできるようにくぼみも付いているのですが,みんながみんな,必ずそれを使うわけもありません。体験会でもそうでしたが,社内でも実際にプレイしたスタッフからいろいろな意見が出ました。
小笠原氏:
そこで神速乱舞の発動をマルチタッチに変えたのですが,前面はダイレクトブレイクで使用していたので,どうしたものかなと……。
4Gamer:
従来のボタン操作のみであれば,生じ得ない課題ですね。
小笠原氏:
ええ。最終的に神速乱舞はマルチタッチで発動しますが,ダイレクトブレイクはタップで──つまりタッチパネルから一度指を離さないと発動しないことにして,この問題をクリアしました。これで同時入力が多少ずれても,両者を間違えて発動してしまうことは,まずなくなりました。
庄氏:
神速乱舞もダイレクトブレイクも,とっさに出せる分かりやすい操作を意識しています。一方,背面タッチは特定の状況下で効果的に使うという方針に切り替えました。
実機で見たときに最もインパクトのあるグラフィックスの美しさを追求
4Gamer:
体験会や東京ゲームショウ 2011でプレイアブルパージョンを遊んだ人の感想には,グラフィックスに関するものも多いですよね。
みなさん,まず「絵が綺麗」と言っていただいてます。もちろん,そこは我々が重視していた部分なので,非常にありがたいリアクションをいただけたと思っています。
今回は「真・三國無双 NEXT」として,PS Vitaのスペックをギリギリまで駆使しています。また本体を手に持って有機ELディスプレイを見たとき,一番映えるのはどのような効果かということに重点をおいた取捨選択もしてきました。それを実際に遊んだ方から評価していただけたのは,やはり嬉しいですし,大きな手応えを感じています。
4Gamer:
ちなみに,本作のフレームレートはどれくらい出ているんですか? 実際にプレイした人からは,60フレームではないかという感想も挙がっていましたが。
小笠原氏:
実は30フレームです。そこが60フレームであるかのように感じられるのは,有機ELディスプレイの完成度の高さからくる,スペック上には現れない印象なのだと思います。
庄氏:
たしかに,パッと見だと60フレームと勘違いするくらい,有機ELディスプレイでは綺麗ですよね。
4Gamer:
画面を見ていて,もっとフレームレートは出ているのかと思いました。では,なぜ30フレームにしたのでしょうか。
小笠原氏:
今回,30フレームに決めたのは,やはり無双は多くのキャラが表示されてこそ,という部分があるからです。PS Vitaをフルスペックで活用するさまざまな条件と,有機ELディスプレイの美しさを鑑みて,今回は30フレームが良いだろうと考えました。
グラフィックスに関しては,スクリーンショットや動画も公開していますが,ぜひ実機の有機ELディスプレイで見てほしいですね。社内でも,途中からプロジェクトに参加した開発スタッフは,初めて実機を見て「うわ,綺麗!」と驚くくらいだったんです。PS Vitaは,実際に触れてみたときに大きなインパクトのあるハードだと思います。
4Gamer:
たしかに,初めてPS Vitaの画面を見たときは,その美しさにかなり驚かされました。では,実際に「真・三國無双 NEXT」を開発した立場として,PS Vitaにどのような感想を持ったのでしょうか?
小笠原氏:
すごいハードだなあ,ということですね。今後しっかりと普及していくなかで,主軸をPS Vitaに置くシリーズも出てくるのではないでしょうか。そう考えてしまうくらい,いつでもどこでも高いクオリティのゲームが当たり前に遊べるPS Vitaには,据置き機とは別の大きな価値を感じています。
4Gamer:
ただ,そのようにスペックの高いハードで,さらにローンチタイトルを作ろうと思うと,開発上の苦労もあったかと思うのですが。
庄氏:
いえ,これまでにも新しいハードでの開発に取り組んできましたが,その中でもPS Vitaでの開発は,かなり作りやすかったという印象です。もちろん,まだまだ引き出せていないPS Vitaの性能はあると思いますが。むしろ,「真・三國無双 NEXT」を作成するうえで,どのような形で“新しい無双”にするかという部分の試行錯誤が大変でした(笑)。
4Gamer:
PS Vitaの作品は作りやすいとは聞くのですが,そこまでなんですか。
小笠原氏:
制作面ではソニー・コンピュータエンタテインメント(以下,SCE)さんのサポート体制も,これまで以上に厚いものでしたし,ライブラリの充実も非常に早かったですからね。
4Gamer:
なるほど。ちなみにPS Vitaでの開発は,いつ頃から始まったんですか? 最初のデモは,2011年1月27日に開催されたPS Vita(NGP)のプレスカンファレンスでお披露目されていましたよね。あのデモは,約1か月で作ったという話でしたが。
小笠原氏:
たしかにあの開発機用デモを作り始めたのは2010年末ですが,それ以前に技術検証用のプロトタイプ開発機をSCEさんから提供していただいて,技術支援部が土台の部分を整えていたんです。したがってあのデモの開発を始めた時点では,基本的な表示などは十分できるという状態になっていました。
4Gamer:
それにしても,デモ作成から今回の発売までほぼ1年しかなかったわけで,キャラクターのモデルは「真・三國無双 6」のものだったとしても,このクオリティまで作り込めるのかと感心しました。
ところで無双シリーズと言えば,コーエーテクモゲームスの看板タイトルですが,この作品をローンチタイトルとしたのには,何か理由があったのでしょうか。
小笠原氏:
「真・三國無双」は,その前の格闘ゲームの段階からPlayStationプラットフォームで生まれて,ずっと育てていただいたタイトルです。ですので,次の新しい携帯型プラットフォームがくるのだから,やはり「真・三國無双」をPS Vita最初のソフトにするのがいいだろうと思っていました。
また,これはプレイヤーのみなさんもそうだと思うのですが,無双シリーズでどのくらいのキャラを表示できるか,どのくらいのクオリティで,どのくらいのフレームレートで動かせるかというのを確認すると,ある程度そのハードの性能が把握できますよね?(笑)
4Gamer:
ああ,なるほど(笑)。たしかに快適に遊べる範囲,フレームレート内で,敵キャラをどれだけ表示できるのかを確かめる……となると,それはもう一種のベンチマークになっていますね。
小笠原氏:
そうです。無双シリーズがここまでできるなら,例えば1対1の格闘ゲームならもっと豪華なビジュアル表現でリリースされるだろうというような予想ができますよね。
ともあれPS Vitaは,無双シリーズの一騎当千の魅力を表現するという部分においては,性能的にポンとクリアしていましたから,さまざまな新機能をどう使っていくかという部分に,すぐに取り組むことができました。
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