インタビュー
「Dishonored」の開発者インタビュー:「このゲームのクリエイティブな楽しさを実感してほしい」
Harvey Smith氏(左)とRafael Colantonio氏 |
Arkane Studiosはこのほかに,2K Gamesの「BioShock 2」(PC/PS3/Xbox 360)のデザインやアニメーション制作に参加した経験などを持っているが,2010年に正式にZenimaxの傘下に入った。したがって,同じZnimax傘下のBethesdaやid Softwareとは兄弟会社ということになる。
また,Smith氏は,Origin Systemの「Ultima VIII: Pagan」デザインチームに在籍,そこで優れた仕事をすることで頭角を現した人物だ。Smith氏が在籍していた1990年代前半のOriginは,「Origin大学」と呼ばれるほど優れた人材を多数輩出することになるのだが,その一人であるWarren Spector氏と共にION Storm(Austin)を設立したSmith氏は,「Deus Ex」「Deus Ex: The Invisible War」などのプロジェクトを統轄してさらに経験を積んだ。
現在は,Arkane Studios Austinのスタジオヘッドとして,Colantonio氏と二人三脚でDishonoredの開発を続けている。
というわけで,さっそくインタビューにいってみよう。
4Gamer:
まずお聞きしたいのですが,Dishonoredは完全な新IPということで,そのユニークさが続編などに比べて伝わりにくい部分があると思います。それは,どうお考えでしょうか?
Smith氏:
そのとおりです。「Thief」や「Deus Ex」が発売された頃と比べれば“一人称視点のステルスアクション”というコンセプトそのものは理解されやすくなっていると思いますが,「どうやってそのゲームのコンセプトをユーザーに伝えるか」というのは,独自IPの新作タイトルが共通して持つ難しい点です。本作に関しては,過度にスクリプト化されたゲームではなく,思うままのスタイルで楽しめるというゲームデザインの哲学が分かってもらえるかが最大のポイントになるでしょう。
Dishonoredは,我々ゲーム開発者がゲームの流れを作り,「ほら,こうやって遊ぶとマックスで楽しめるんだよ」と押し着せるのではなく,例えば10代の頃に廃墟に侵入して肝試しをしたときのような感覚,ドアを開けても何にもなくて失望するかも知れないけど,そこに至るまでのドキドキした気分が十分に味わえる,そんなゲームにしたいのです。
4Gamer:
なるほど。ところでゲームに「アウトサイダー」という謎の人物が出てくるのですが,これはいったい誰なのでしょう。
Smith氏:
ゲーム世界のアウトサイダーは,時間や空間を超越した存在です。ゲームでは,ミッションを遂行する前に「神殿」に行って,これからどういうミッションに挑むのかを彼から聞くこともできますし,ミッションが終わった後で神殿に行って,自分の働きがどの程度のものであったかのコメントをもらえたりもします。また,彼のいる世界に出かけたりする場面も用意されています。
4Gamer:
主人公にとっての,メンター(指導者)のような存在なのでしょうか。
Smith氏:
主人公はアウトサイダーによって特殊能力を授かるのですが,何をすべきか直接教えてくれる存在ではありません。アウトサイダーは善でも悪でもなく,特定の方向にプレイヤーを誘導したりもしません。
4Gamer:
ミッションは,どのようにして請け負っていくんですか。
Colantonio氏:
主人公は脱獄後にレジスタンスに加入し,もともと酒場だった廃墟を根城に活動するようになります。今回のデモでは,主人公が,ある人物の漕ぐボートに乗って移動するというシーンがありましたよね?
4Gamer:
コートを着た白髪の男性ですね。
Colantionio:
ええ。彼はサミュエルという名前なのですが,彼が操作するボートで運河を移動し,船を下りて街をうろつくうち,さまざまなNPCと出会ってクエストをもらったり,ショップに立ち寄って必要な物資を手に入れたりすることになります。ちなみに,デモでお見せした「Golden Cat」というミッションの場合,舞台となる地域をくまなく探索するには1時間半ぐらいかかります。
4Gamer:
マップはかなり広いというわけですね。
Smith氏:
本作の場合,各ミッションに3つか4つくらいの進行ルートが用意されており,さらにさまざまなサイドクエストがあります。シングルキャンペーン専用ゲームですが,リプレイバリューは非常に高いと思っています。
4Gamer:
それぞれのマップで,進行ルートは決まっているのですか。
Colantonio氏:
その前のミッションでどのような活動をしたかで,次のミッションのアプローチも異なることがあります。Golden Catのミッションを例に取ると,最初のステルスタイプのデモでは運河に近い道路から,アクションタイプのデモでは屋根の上からスタートしたのを覚えているでしょう。簡単に言えば,屋根からスタートするほうが,警護も手薄でゲームを有利に進めていけます。そして,屋根からスタートできるのは,前のミッションでサイドクエストをこなし,建物の家主から鍵をもらっているです。
4Gamer:
ゲームの開始後にアウトサイダーから特殊能力をすべてもらい,それらを成長させていくことになるのですか。
Colantonio氏:
いえいえ。最初にアウトサイダーからもらう特殊能力は1つだけです。そのあと「ルーン」を取得して1つずつ能力を覚えていくことになります。それぞれの特殊能力にもレベルがあり,これも入手したルーンでアップさせていきます。
4Gamer:
デモでは,引き出しを開けたりしてゴールドを集めていましたが,ゴールドは何に使うことになるのでしょうか。
Smith氏:
主人公であるコルヴォは,親衛隊員として最初から高い身体能力を持っていますが,ゲームを進めるにつれて強い敵や困難なミッションに遭遇することになります。そのため,武器やアイテムをアップグレードしていく必要性が出てきますが,例えば職人に頼んでクロスボウの飛距離を上げるパーツを付けてもらったり,発火性の弾丸を買ったりするときにゴールドを使うわけです。ルーンによる特殊能力の獲得など,Dishonoredはアップグレードの要素が高いゲームになっていますよ。
4Gamer:
どのようにミッションを遂行したか,どの人物を殺したかで,その後のゲームプレイやミッションの内容に影響が出てきたりするのですね。
Colantonio氏:
そうです。また,プレイヤーのプレイスタイルに合わせたコメントをNPCがしてくれたり,プレイヤーがネズミを使いすぎて(主人公は,ネズミを相手にけしかける超能力が使える場合がある),健康な人だった人が伝染病にかかったりということなどがあります。
4Gamer:
プレイスタイルについて,お2人はどのようなタイプのプレイがお好みですか。
Colantonio氏:
私はステルスとアクション,両方をミックスしたプレイをしますが,どちらかといえばステルスを多用していると思います。Dishonoredでは,ターゲット以外を誰も殺さずに進めていくこともできますが,失敗して見つかったら,やっぱり戦闘モードに入ってしまいますからね。
Smith氏:
私も両方を生かしてプレイするほうですが,Dishonoredは本当にパワフルなゲームだと思いますよ。鍵穴から部屋の様子を覗いたり,物陰で相手の会話を盗み聞きしたり,本当にその世界にいるような気になってきます。
ステルスを使ってひっそりと侵入し,ようやくターゲットのいるテラスに手をかけたところ,そこに置いてあったボトルを倒して音を出し,結局敵に見つかってしまったという,本当にドキドキする体験ができます。社内のテストも進めていますが,テスターの中にはいろいろな人がおり,例えばゲーム中で殺せるものはすべて殺し,挙句の果てに自分で召還したネズミも殺していくといった,とんでもない人もいました。
4Gamer:
では最後に,プレイヤーにはDishonoredから何を感じてもらいたいと思いますか。
Smith氏:
このゲームは,プレイヤーが自分の思うままにゲームを進めていけるという点で,非常にユニークでパワフルな作品になっていると思います。特殊能力やガジェットを自分の好きなように組み合わせ,作っている我々でさえ考えもしなかった攻略法を生み出していくのは,ほかのゲームではほとんど見られないものでしょう。
時間を止めてクロスボウを発砲し,さらに敵に憑依してその矢の先に立たせるなどというゲーム,ほかにはないですよね。とにかく,ゲーマーの皆さんにはDishonoredに触れて,そのユニークさを実感してもらいたいですね。
4Gamer:
本日はどうもありがとうございました。
「Dishonored」公式サイト
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