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「SHIELD Tablet」レビュー。NVIDIAが放つ「ゲーマー向けAndroidタブレット」の気になるところを片っ端から検証してみた
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印刷2014/10/09 10:00

レビュー

NVIDIAが放つ「ゲーマー向けAndroidタブレット」の気になるところを片っ端から検証してみた

NVIDIA SHIELD Tablet


SHIELD Tablet
メーカー&問い合わせ先:NVIDIA
実勢価格:4万2000〜4万6000円程度(※2014年10月9日現在)
画像集#002のサムネイル/「SHIELD Tablet」レビュー。NVIDIAが放つ「ゲーマー向けAndroidタブレット」の気になるところを片っ端から検証してみた
 NVIDIA製のゲーマー向けAndroidタブレット「SHIELD Tablet」が,2014年10月10日に発売となる。
 4Gamerでは,発表会の時点で簡単にファーストインプレッションをお届けしているが(関連記事),今回はその実機と別売りのワイヤレスゲームパッド「SHIELD Wireless Controller」,そしてやはり別売りの専用カバー兼スタンドである「SHIELD Cover」の3点セットを入手できたので,気になるベンチマークテスト結果や,実際のゲームにおける使い勝手を中心に,ライターのBRZRK氏と宮崎真一氏,そして4Gamer編集部Orecchiの助けを借りながら,徹底的にチェックしてみたいと思う。

 PCのゲームをストリーミングしてプレイできる「GameStream」や,Androidのタッチ操作に対応したゲームをゲームパッドでプレイできるようにするキーバインドツール「Gamepad Mapper」,いいプレイができたときにその映像を遡って書き出せて,Twitchへの生配信も行える「ShadowPlay」など,ゲームに特化した機能を多数備える「ゲーマー向けタブレット」は,果たしてどこまでゲーマー向けなのだろうか。

今回は“全世界のレビュワー向けSHIELD Tablet専用ボックス”入りで入手した。中には,SHIELD TabletとSHIELD Wireless Controller,SHIELD Coverのそれぞれ製品ボックスと,HDMI Mini Type C−HDMI Type A変換ケーブル入りの黒ボックス,そして緩衝材となる黒ボックス×2が入っていた
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随所に“2代目”らしい完成度の高さが

見えるSHIELD Tablet


SHIELD Tabletの製品ボックス
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 発表会のレポートでもお伝えしてあるとおり,SHIELD Tabletは,8インチワイドで1920×1200ドット解像度のIPS液晶パネルを採用したタブレット端末だ。NVIDIAが手がけるタブレット端末としては,日本で2013年12月にZOTAC Internationalのブランドで登場した「Tegra Note 7」に続くものということになる。

 北米市場においては,内蔵ストレージ容量が16GBでWi-Fi接続のみに対応するモデルと,内蔵ストレージ容量32GBでWi-FiとLTEの両接続に対応するモデルが展開されているが,10月10日の時点で国内販売が始まるのは前者だ。今回4Gamerで入手した個体も,もちろん前者である。

製品ボックスを開けると,製品ロゴと「THE ULTIMATE TABLET FOR GAMERS」の文字列がプリントされているプラスチックカバーに入った状態でSHIELD Tabletが姿を見せる。取り出すと,その下には付属品が入っていた
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製品ボックス内の付属品一式(左)。日本仕様と欧州仕様のプラグとブロック型のACアダプター本体,充電用のケーブルが,笑ってしまうほど情報のないマニュアルと一緒に出てくる。中央はACアダプターの組み立て前,右は組み立て後だ
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横置き時の本体サイズは221(W)×126(D)×9.2mm(H)で,重量は約390g。サイズは8インチ型として標準的だが,やや重めだ
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 外観からチェックしていくと,底面のサイズは実測約221(W)×126(D)mmで,Tegra Note 7よりも一回り大きくなっている。ただ,これは液晶のパネルサイズ(=対角線の長さ)が1インチ(25.4mm)長くなっているので,当然といえば当然だろう。
 横から見るとかなりの厚みも感じるが,実のところ,実測約9.2mmで,Tegra Note 7と同じ厚さだ。相対的には薄型化を実現したことになる。ぱっと見で分厚く感じられるのは,Tegra Note 7だと本体側面部が丸みを帯びているのに対し,SHIELD Tabletでは角張っているためだと思われる。

 実測重量は約390gで,見た目どおり(?)重く感じられる。Tegra Note 7も約320gと7インチタブレットのなかでは重いほうだったが,それがさらに70gも重くなると,さすがにずっしり感が増す印象だ。今回も,決して軽いとはいえないタブレット端末になっているわけである。
 ただ,重いということは,よく言えば,かっちりしているということでもある。実際,質感は悪くない。

前面は強化ガラスが貼られ,それを左右から挟み込むようにステレオスピーカーが埋め込まれている。これは,正面から見てゲームをプレイするときに,音をしっかり聞けるようにという配慮だ
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 前面に強化ガラスが貼られ,横置き時の左右端にステレオスピーカーを備え,さらにその側面には低音強化のためのバスレフポートも用意するという仕様は,Tegra Note 7を踏襲。NVIDIAによれば,左右のスピーカーそれぞれに2基のバスレフポートを持つ,デュアルバスレフ構造になっているという。
 なお,インカメラは本体向かって左側,スピーカーを分断するような格好で中央部に配されている。画素数は500万だ。

本体向かって左側は,スピーカーの中央部に500万画素のインカメラがあり,また,側面に各種インタフェースがあるため,バスレフポートは本体向かって下側(左の写真で右側)に寄っている。一方,右側のスピーカーとバスレフポートに窮屈さはない。このアンバランスさゆえに不安を覚える人はいるかもしれないが,ステレオの定位はしっかりしており,変な音ズレは感じない
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背面はつや消し加工された灰色
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 背面は中央にSHIELDロゴがエンボス加工された,つや消しの灰色。ややざらっとした触感で,持ちやすさは上々だ。黒系の割に,指紋汚れが割割と付きにくいこともあわせて,歓迎する人は多いのではなかろうか。
 アウトカメラは,本体正面から見て背面側左上の端――右の写真では背面側から見ているので右上の端――に用意されている。画素数はこちらも500万。インカメラとアウトカメラでは画素数が同じだが,実のところ仕様も同じだそうだ。インカメラのスペックをアウトカメラ並みにしてあるのは,ビデオ録画&配信機能であるShadowPlayで,ゲームをプレイしながらの生配信に対応しやすくするためとのことである。

 先ほど写真のキャプションで,インタフェースは本体向かって左端に並ぶと述べたが,そこにあるのは外部ディスプレイ出力用のHDMI Mini Type C(※HDMI 1.4a対応)とUSB 2.0 Micro-B(※USB 2.0クライアントモードとUSB 2.0ホストモード兼用),4極・3極両対応の3.5mmミニピン型ヘッドセット&ヘッドフォン接続端子である。
 多くのAndroidタブレットではHDMI出力対応がMHL(Mobile High-definition Link)経由で,USBと兼用になるため,ディスプレイ出力にあたってはHDMIケーブルとMHL−HDMI変換アダプターが必要になったりする。それに対してSHIELD Tabletでは(Tegra Note 7から引き続き)HDMI出力とUSBが分かれているため,HDMI Type C−HDMI Type Aケーブルを用意するだけでディスプレイデバイスと接続可能だ。

左が本体向かって左側,右が右側の側面。横持ち利用時の左手側には,左から順に3.5mmミニピン,HDMI Mini Type C,USB 2.0 Micro-Bが並ぶ。一方の右手側にはバスレフポートがあるのみ
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本体側面上側。左からスタイラス(とそのホルダー),microSDカードスロット(の蓋),音量調整用シーソーボタンと,電源/スリープ用ボタンという並びだ。ちなみにSHIELD Tabletは,北米市場での発売直後,一部の個体で側面に亀裂が入るという問題が発生したが,「その問題は認識しており,現行ロットでは解決済み」(NVIDIA)とのこと
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 電源/スリープ用ボタンと音量調整用のシーソーボタンは,横持ち時の上辺となる側面に集約されている。外部ストレージ用途たるmicroSDXC対応のmicroSDスロットもこちら側だ。1つ,取り外せない蓋もあったので,LTE対応モデルではここにSIMを差すことになるのかもしれない。

 原稿執筆時点におけるAndroid OSのバージョンは4.4.2(KitKat)。Tegra Note 7に引き続き,特別なカスタマイズがなされていないOSになっており,また,機能追加やバグ修正のためのOTAアップデートはNVIDIAが自ら行う仕様になっている。

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KitKatでは標準だと外部ストレージにアプリから書き込みができなくなったので,使い道は限られるが,蓋を開けるとmicroSDカードスロットがある
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microSDカードとスタイラスの間くらいに蓋のようなものがある。これはLTE対応版で使うSIMカードスロットだろう。Wi-Fi版だとこの蓋は外れなかった

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 横持ち時の底辺に当たる側面には,マグネットによる半固定式のSHIELD Coverを本体を噛み合わせるときに使う凹みが2つ用意されていた。

専用設計のSHIELD Cover。SHIELD Tabletに近づけると,マグネットによって自動的にかちっと固定されるようになっている。装着時は,カバー側先端部のマグネットと本体側のセンサーを用い,開くとSHIELD Tabletがスリープから復帰する仕様だ
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カバー側先端部のマグネットは,本体横置き時の底面となるSHIELD Tabletの背面カバーに固定できるので,それを使えば,さまざまに角度を変えられるスタンドとしても使える
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 搭載されている液晶パネルがIPS方式のものだというのは本稿の序盤で触れたが,視認性,発色はともに良好。7インチサイズで1280×800ドット仕様のTegra Note 7と比べると,精細感は圧倒的だ。
 タッチパネルは最大10点タッチ対応で,これは現在では標準的と言っていい。

液晶パネルは視野角が広く,かなりの斜めから覗き込んでも偽色はほぼ生じない。同じくIPSパネルを採用するTegra Note 7の場合,視野角には問題ないものの,斜めから見るとタッチパネル用電極の存在をうっすら確認できてしまうという問題があったが,SHIELD Tabletではそれがなくなっている
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 先ほど軽く触れたとおり,SHIELD Tabletはスタイラス(=ペン)を内蔵している。静電容量式のタッチパネルを採用しながら,筆圧検知が可能なスタイラスが付属し,ペンタブレットとしても使える機能「DirectStylus」は,Tegra Note 7と同じくSHIELD Tabletでも利用可能だ。NVIDIAはSHIELD TabletのDirectStylusに「DirectStylus 2」という名を与えている。
 もっとも,ゲーマー向けタブレットという位置づけのためか,DirectStylus 2について,Tegra Note 7のときのような全力のアピールは行われていない。NVIDIAは,DirectStylus 2では1秒間に最大300回のサンプリングを行うことでペンの検出精度を向上させているとしているものの,初代のDirectStylusでどうだったのかは明らかになっておらず,精度がどの程度向上したのかよく分からないというのが,正直なところである。

 体感レベルで語るのを許してもらえるなら,少なくともタブレットの通常操作は,すべてスタイラスで置き換えても違和感のないレベルになっていた。Keplerアーキテクチャの高いGPU性能を活かして,入力精度は引き上げられているようだ。

付属のパッシブスタイラス。ペン先が気持ち柔らかめで,斜めに切られており,どの面を使うかで(対応アプリにおける)筆の太さを自由に変えられるという特徴はTegra Note 7から受け継いでいる。ただし,先代で反対側の面に用意されていた消しゴム機能はSHIELD Tabletのスタイラスで廃止された。使う人が少なかったということなのだろう
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 ペンタブレットとして,機能の充実はしっかりと図られている。その1つが,スタイラスを使って絵が描けるNVIDIA製アプリ「Dabbler」(ダブラー)である。

Dabbler。ちなみにDabblerには「水遊びする人」という意味がある
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 SHIELD TabletにプリインストールされているDabblerは,一般的なペン描きだけでなく,水彩と油彩のシミュレートもできるドローツールだ。水彩モードでは,カンバスにスタイラスを走らせると,紙に絵の具が染みこんだり,重力に従って下方向に広がったりする“後処理”がリアルタイムでなされる。また油彩モードでは,光が当たる方向を変えたり,後からカンバスの生地を変えたりして,色の見え方を変えるといったことができるようになっている。
 筆者に絵を描く素養がなく,また,4Gamerで検証すべき機能でもないため,「Dabblerは使えるか」の評価は保留するが,趣味で絵を描くような人なら楽しめるのではなかろうか。

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Dabblerの水彩モード。紙に絵の具が広がりながら染みこんでいく様子がリアルに再現される。ドライヤー機能を使えば瞬時に乾かすことも可能
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こちらは油彩モード。拡大すると,インクに当たっている光の様子を確認できる。光源の方向を変えることもできる

スタイラスをホルダーから抜くとポップアップするDirectStylus Lancher。Tegra Note 7にもあった機能で,ペン入力対応のアプリを登録しておける。初期状態ではDabblerのほか,手書きメモアプリ「Write」,定番のメモツール「Evernote」,そして手書き対応のスケジューラ「JusWrite」が登録されていた
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 スタイラスを本体のホルダーから抜くと,スタイラスに対応するソフトウェアを簡単に起動するためのランチャー「DirectStylus Lancher」がポップアップする。これはTegra Note 7から引き続いての採用だ。ただ,先代では机の上にポンとタブレットを置いただけでも誤動作してランチャーが起動してしまうことがあったのが,試した限り,SHILED Tabletでそういう誤動作はなくなっていた。細かい点だが,おそらくホルダーやペンを改良したのだろう。

 以上,ひとまずSHIELD Tabletの基本仕様をチェックしてきたが,Tegra Note 7のいいところを踏襲しつつ,細かい部分を丁寧に仕上げてきたことを実感できた。画面にうっすらと見えていた電極が見えなくなっていたり,スタイラスの誤動作が減っていたりといった部分がそうで,Tegra Note 7の経験を踏まえ,自社製品として完成度を上げてきた製品と言っていいのではないかと思う。


Tegra K1は間違いなく速いが

さまざまな事情でスコアに反映されない場面も


 続いてはベンチマークテストである。

 本稿ではここまであえて触れてこなかったが,SHIELD Tabletはメインプロセッサに,NVIDIAが開発したSoC(System-on-a-Chip)「Tegra K1」の32bit版を搭載している。
 32bit版Tegra K1は,CPUコアとして「Cortex-A15」の改良版である「Cortex-A15 r3」を4基搭載し,さらに,低負荷時用に起用するCPUコアとして省電力版Cortex-A15 r3も1基組み合わせた,NVIDIA独自の「4-PLUS-1」構成を採用。そこに,Keplerアーキテクチャで128基の「CUDA Core」を集積したGPUコアを組み合わせたものである。CPUコアの動作クロックは最大2.2GHzだ。

ZOTAC Tegra Note 7は,ZOTAC Internationalの販売代理店であるアスクから貸し出してもらうことができた。ZOTAC Tegra Note 7は1万9000〜2万3000円程度(※2014年10月9日現在)の実勢価格で,現行製品として販売中だ。コスト重視なら今でも十分に選択肢となるだろう。なお,iPad Airは,4Gamerで独自に用意したものである
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 今回,そんなSHIELD Tabletの比較対象として用意したのは,事実上の前世代機となる「ZOTAC Tegra Note 7」と,定番のタブレット端末といえる「iPad Air」の2製品である。

 国内版Tegra Note 7となるZOTAC Tegra Note 7は,SoCとして「Tegra 4」を搭載する7インチタブレットだ。パネル解像度は1280×800ドット。心臓部たるCPUコアはCortex-A15を4基に省電力版Cortex-A15を1基組み合わせた4-PLUS-1構成で,組み合わせられるGPUコアは,固定パイプラインの「Ultra Low Power GeForce」(以下,ULP GeForce)だ。

 一方のiPad Airは,64bit版ARMアーキテクチャに基づくApple独自開発のCPUコアを2基と,「PowerVR Series6 G6430」GPUコアが集積された「A7」プロセッサを搭載するタブレットとなる。あらためて述べるまでもなくOSはiOSで,液晶パネルは9.7インチ,解像度2048×1536ドットと,そのスペックはSHIELD Tabletとまるで異なるのだが,広く普及している製品なので,AndroidとiOSで横断的に比較できるテストにおいて使う限りは目安になるだろうという判断である。

 というわけでテストのセットアップに入るのだが,課題は「省電力関係の設定をどうするか」だろう。タブレット端末に搭載されるSoCでは極めて高度な動的クロック制御が行われるため,省電力設定次第で,得られるテスト結果が大きく変わる可能性があるからだ。
 ただ,だからといって「テスト対象の全機種で省電力設定を無効化する」などといった特別な設定を行っても,ユーザーの実使用環境に近い環境でのテストにはならない。そこで,このパートでは,用意した3製品をいずれも工場出荷時設定のまま使うことにした。
 テストの実行時にはACアダプターによる給電を行い,バッテリー残量に応じた電力制御がなされる可能性を排除している。

 以上をお断りしつつ,ベンチマークテストごとに,具体的な検証結果をチェックしていくことにしよう。


■3DMark(Version 1.3.1439)

 まずはPCの3Dグラフィックスベンチマークとしてもお馴染みの「3DMark」だ。モバイル版では,WindowsでいうDirectX 9レベルのAPIを用いた「Ice Strom」と「Ice Storm Extreme」「Ice Storm Unlimited」という3つのテストプリセットを実行できるようになっているが,このうち,解像度や,解像度に応じた画面のスケーリングといった影響を排除した,いわゆるオフスクリーンのテストはIce Storm Unlimitedだけなので,今回のような,異なる解像度のタブレット間でテストを行うにあたっては,当然のことながらIce Storm Unlimitedのみを使うことになる。

 結果はグラフ1のとおりだ。
 総合スコアである「Score」を見てみると,SHIELD TabletはTegra Note 7比で約1.91倍,iPad Air比で約2.16倍という,圧倒的な状態にある。
 Tegra Note 7との比較だと,「Graphics Score」では約2.17倍と大きなスコア差を付ける一方,CPU性能を見る「Physics Score」では約1.38倍に留まった。SHIELD Tabletが採用するCortex-A15 r3が,Cortex-A15の改良版で,かつ動作クロックが約1.2倍ということを考えると,おおむね妥当なところといえるかもしれない。

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 対iPad Airでは,約2.67倍ものスコア差がついたPhysics Scoreが目を引くが,これは3DMarkが32bitアプリで,かつCPUコアの数が“効く”ものになっているためだろう。
 Graphics Scoreのほうも,iPad AirのA7プロセッサに統合されるPowerVR Series6の発表年は2012年とやや古いので,KeplerアーキテクチャのGPUを統合するTegra K1と比較すれば,これくらいの違いは出るであろう,といったところである。


■GFXBench 3.0(Version 3.0.16)

 モバイル向けベンチマークでは3DMarkと並んでポピュラーな「GFXBench 3.0」も使ってみよう。GFXBench 3.0はグラフィックス技術の開発を手がけるKishontiが提供しているツールだ。

 GFXBench 3.0には「高レベルテスト」として,3Dグラフィックスのシーンを描画する「マンハッタン」と「ティラノサウルスレックス」という2つのテストが用意されている。ただし,マンハッタンとティラノサウルスレックスは,そのままだと,タブレットのパネル解像度でレンダリングが行われるため,今回のように,異なるパネル解像度のタブレットを比較するのには不向きだ。重視するのは,オフスクリーンの1920×1080ドット(1080p)解像度でレンダリングするテストということになる。

 なお,マンハッタンのほうは,OpenGL ES 3.0のエクステンションが実行条件に合わないようで,Tegra Note 7では動作しなかった。また,GFXBench 3.0はiOS版は,手元のiPad Airだとやはり動作しなかったので,結果,比較できるのはティラノサウルスレックスの2条件のみだ。これらの点を注意しつつ,グラフ2を見てほしい。

 ティラノサウルスレックスでは,SHIELD Tabletが2.25倍のパネル解像度を持つため,案の定,Tegra Note 7のスコアを下回ったが,重要なのはオフスクリーン実行したときのスコア「1080pティラノサウルスレックスオフスクリーン」のほうだ。こちらはご覧のとおり,SHIELD TabletがTegra Note 7に対して約3.5倍と圧倒的なスコア差を付けている。GFXBench 3.0のオフスクリーンレンダリングではGPUがきちんと使われているので,これが目を見張るほどのスコア差を生んだということなのだろう。

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 実際,「低レベルテスト」として用意されているテストを実行してみると,シェーダの演算性能を見る「1080p算術論理装置オフスクリーン」で,SHIELD Tabletが対Tegra Note 7で7倍以上というスコアを叩き出していた(グラフ3)。

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■MOBILE GPUMARK(Version 2.0)

 続いては,シリコンスタジオが開発するAndroid向け3Dベンチマークアプリ「MOBILE GPUMARK」だ。MOBILE GPUMARKについては西川善司氏が詳細な解説記事を執筆しているので,興味のある人はそちらをチェックしてほしいと思うが,簡単に紹介しておくと,MOBILE GPUMARKは,シリコンスタジオ独自開発のグラフィックスポストプロセス専用ミドルウェア「YEBIS 2」を用いたゲームシーンの描画と,GPUの個別テストを実行するグラフィックスの総合ベンチマークである。
 使用するAPIはOpenGL ES 2.0。初期の「Version 1.0」と現行の「Version 2.0」とではスコアの集計方法が変わっており,異なるバージョン間でのスコア比較はできないとされているため,今回はVersion 2.0を使うことにした。

 テストの内訳は,「GRID GEMS」「DEAD PARKING」「NATURAL BONE」「GPU BENCHMARK」の4つ。パネル解像度に左右されないテストがGPU BENCHMARKのみとなる点は注意してほしい。一応お断りしておくと,残る3テストでは「Quality」設定が用意されるので,これは「High」で統一している。
 その結果はグラフ4,5のとおり。総合スコアは4テストすべての合算値で,あまり意味はないのだが,解像度が2.25倍も違うことを考えると,GRID GEMSとNATURAL BONEでSHIELD TabletがTegra Note 7より高いスコアを示したことは評価できそうだ。

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 ただ,よく分からないのはGPU BENCHMARKで,オフスクリーンの解像度固定であれば,SHIELD TabletがTegra Note 7に圧勝してもおかしくなさそうなのだが,スコアは横並びとなっている。レンダリング解像度が850×450ドットと低いところで固定されているので,それが頭打ちの原因になっているのだろうか?


■PCMark for Android(Version 1.0)

 続いては総合ベンチマークの結果も見ておきたい。まずはお馴染み「PCMark」のAndroid版となる「PCMark for Android」からだ。
 ……と,何ごともないように紹介したが,実のところ,PCMark for Androidはまだ公開されていない。今回用いたのは,メディア向けにテスト配布されている公開候補版である。

 そんなPCMark for Androidに含まれるテストは下に挙げた4項目で,それぞれの結果に対して重み付けしたスコアが算出され,総合スコアが示される形になっている。いずれのテストもAndroidネイティブのAPIを使っているのがポイントといえるだろう。

  • Web Browsing:Androidのコアに含まれるHTMLレンダリングエンジン「WebView」を使ってWebページのレンダリングやJavaScriptの実行を行う
  • Video Playback:Androidのコアに含まれる「MediaPlayer API」を使って1080pのビデオを再生したりシークを行ったりする
  • Writing:Androidのコアに含まれる「EditText API」を使ってテキスト編集を行う
  • Photo Editing:400万画素のJPEG画像をAndroidに用意された4種類のAPIを使用して編集・加工する

 テストは「Work Benchmark」と「Work battery life」の2つがある。前者は先の4つのテストを順に実行してスコアを算出するテスト,後者は4つのテストを使ってバッテリー駆動時間を計測するテストだ。後者については次の段で紹介したい。
 なお,PCMark for Androidのテストもパネル解像度に影響を与えるが,このテストは日常作業の性能を見るものなので,パネル解像度に依存するスコア差も正しい性能差とみなすべきだろう。

 結果はグラフ6のとおり。SHIELD Tabletのスコアが上回ったのはVideo Playbackだけだ。Video Playbackで高いスコアを示したのは,SoCに内蔵されるビデオデコーダが改良されたのと,ビデオの解像度が固定なのが理由と思われるが,それ以外の結果を見るに,1920×1080ドット解像度のパネルは,やはり高い負荷になっているということなのだろう。
 また,詳しくは後段で紹介するが,SHIELD TabletではTegra Note 7よりも省電力機能周りが拡張されており,ACアダプター駆動時にも積極的に省電力機能が働くようになっている。なので,PCMark for Androidで用意されるような“日常系アプリ”を,SHIELD Tablet側で負荷が低いと判断し,より省電力な動作モードに落としてしまった結果と見ることもできる(※実際,SHIELD Tabletで省電力機能を無効化すると,総合スコア「Work performance score」は5555にまで跳ね上がった)。

画像集#043のサムネイル/「SHIELD Tablet」レビュー。NVIDIAが放つ「ゲーマー向けAndroidタブレット」の気になるところを片っ端から検証してみた

 いずれにしても,ここでのテストルール「買ったままの状態で,ACアダプター駆動」という条件下において,PCMark for AndroidのスコアがTegra Note 7より若干低いスコアを示すのは,計測ミスではない。


■AnTuTu Benchmark(Version 5.1/5.0.1)

 モバイルのテストではポピュラーな総合ベンチマークである「AnTuTu Benchmark」も実行してみよう。CPUの演算性能やメモリ性能といった個別のチェックができるので,個々の性能はPCMarkより判断しやすいはずだ。付け加えるなら,AnTuTu BenchmarkはCPUをフル回転させるタイプのテストが中心となっており,実際,テスト実行時のステータスによるとSHIELD Tabletで2.2GHzまでCPUクロックが上がるのを確認できているので,PCMark for Androidのような事態が生じることは考えにくい。
 なお,AnTuTu BenchmarkにはiOS版もあるためiPad Airの結果も併記しておくが,Android版のバージョンが5.1なのに対してiOS版は5.01とバージョンが異なる点に注意してほしい。あくまで参考のための並記となる。

 まず,総合スコアを見てみる(グラフ7)。SHIELD TabletはTegra Note 7比で約1.37倍のスコアが得られた。iPad AirはTegra Note 7より少し高い程度だ。

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 次にグラフ8はユーザーエクスペリエンス(UX)のスコアで,マルチタスキングの演算性能とユーザーインタフェース周りの性能を示している。
 結果は,SHIELD TabletがTegra Note 7に対しマルチタスクで1.18倍,Dalvikで1.23倍のスコアとなった。CPUクロックアップ分に相当する違いが現れていると述べていいだろう。

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 続いてメモリ性能を測るRAMの結果がグラフ8だ。「RAM演算性能」はメモリ城のデータ操作性能を,「RAM速度」はメモリの帯域幅をそれぞれ見るものとなる。
 SHIELD TabletとTegra Note 7で比較すると,スコア差は前者で約1.40倍,後者で約1.27倍となっていた。メモリ周りの性能についてNVIDIAはこれといった情報を公開していないものの,スコアを見る限りは,何らかの改良が入っているようである。
 気になるのはiPad AirのRAM演算能力が異常に低いことだが,ここで何が起こっているのかは,残念ながらはっきりしない。

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 グラフ10,11は,CPU性能を見る「CPU(Multi-thread)」と「CPU(Single-thread)」の結果である。
 結果はほぼ順当で,CPU(Single-thread)の浮動小数点演算でSHILED Tabletの伸びが対Tegra Note 7で約1.15倍に留まるのを除けば,いずれも1.25倍以上のスコア向上が得られている。クロックアップ分+αということで,ここまでのCPUテスト結果とおおむね合致しよう。
 参考値ながら,iPad Airの結果もなかなか興味深い。デュアルコアということもあってCPU(Multi-thread)の結果は振るわないものの,CPU(Single-thread)の整数演算では高いスコアが得られているからだ。64bit化の恩恵だろうか。64bit化にあまり意味がない浮動小数点演算だとさほどでもないところを見るに,その可能性はあると思う。

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 AnTuTu BenchmarkにはGPUテストもある。ただし,3Dのテストはパネル解像度でレンダリングを行うため,パネル解像度込みのスコアという点に注意は必要だ。
 結果はグラフ12のとおりで,「2Dグラフィックス」はほぼ横並び。「3Dグラフィックス」だとSHILED TabletがTegra Note 7に対し約1.68倍高いスコアを示した。1280×800ドットに対して1920×1080ドットの解像度でスコアが伸びているのだから大したものだ。

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 最後に,ストレージ性能を測る「IO」の結果をグラフ13に掲載しておこう。
 「ストレージのI/O」はストレージの速度を単純に計測したスコアで,つまりは内蔵eMMCの速度ということになる。大差はつかないと予想したが,結果はご覧のとおり。SHIELD TabletがTegra Note 7に対して約1.32倍と,有意なスコア差を示した。
 だが,「データベースのI/O」で見ているSQLiteの性能のスコアは,両者でほぼ大差なしという結果になっている。ストレージの速度が上がり,CPUコアの性能が上がっているのだから,SQLiteの性能も向上してよさそうなのだが……。

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 以上,CPUコア周りは,省電力性能が邪魔しなければ,カタログスペックから期待されるとおりの性能が得られると述べていいように思う。
 一方のGPUは評価が難しい。ULP GeForceとKepler世代のGPUコアとでは比較自体がなかなか難儀で,また,GFXBench3.0やMOBILE GPUMARKの結果からすると,既存のゲームタイトルで性能向上を期待するのはなかなか大変そうだ。Tegra K1のGPU性能は,それこそUnreal Engine対応タイトルのような,次世代3Dゲームで初めて生きてくるのではなかろうか。少なくとも,どんなタイトルでも3Dゲームなら速くなると思っていると,肩すかしを食らいそうである。


最も厳しい条件「3DのAndroidゲーム」を前にすると

約3時間のバッテリー駆動時間に


 モバイル端末で,ある意味において性能以上に重要なのがバッテリー駆動時間だ。しかしSHIELD Tabletの場合,公式では「1080pのビデオ再生時に連続10時間」という,非常にざっくりとしたというか,ゲーマー向けデバイスとしてはまったく役に立たない情報が開示されているだけ。実際にゲームをプレイしてどれくらいバッテリーが持つのかといった情報はない。
 しかも,NVIDIAの公式データによると,バッテリーの容量はTegra Note 7が4100mAhなのに対してSHIELD Tabletは19.75Wh。単位が異なり,バッテリーの出力電圧が分からないため,単純に換算して比較するのは不可能である。なので,バッテリー容量が増加したのか減少したのか現時点では分からないとしか言えない。バッテリー容量については考慮外としてテストするしかなさそうだ。

Tegra Note 7のnServer設定。使用頻度の低いアプリに対してスライダーを「OON」にしておくと,バッテリー消費を抑えることができる
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 さて,Tegra Note 7について軽く振り返っておくと,Tegra Note 7では省電力機能として,独自の「nServer」が用意されていた。nServerは使用頻度の低いアプリの「アクティビティ―」――どうやらCPU割り当て時間のようだ――を削減してバッテリー消費量を抑えるというもので,たとえば「Googleカレンダーをあまり使っていないなら,アクティビティーを落としておくと,GoogleカレンダーのCPU消費が抑えられ,バッテリー駆動時間に貢献する」という仕組みになっていた。

「設定」にある「SHIELD電源コントロール」をタップすると,省電力に関するきめ細かな設定を行える。プロセッサモードの選択肢は4つで,初期設定は「最適化」だ
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 一方。SHILED TabletではnServerが廃止され,その代わりにプロセッサの性能をどれだけ使うか,システム全体とアプリ個別に設定可能な「プロセッサモード」という機能が追加されている。
 システム全体の電力制御においては,左下のスクリーンショットで示したとおり,「最大パフォーマンス」「最適化」「バッテリ節約」「マイパワーモード」と4つのプロセッサモードが用意されている(※工場出荷時設定は最適化)。Tegra K1をフルパワーで動作させる最大パフォーマンスと,自動制御に任せる最適化,CPUコアの動作クロックを落として運用するバッテリ節約の3つが基本設定で,マイパワーモードではユーザーが,使うCPUコアの最大数と(パーセンテージでの)CPUコアクロック値,そして20/30/45/60fpsから選択できるフレームレート上限設定を利用できる。

プロセッサモードでは,4つの選択肢から選べるだけでなく,閾値となるバッテリー残量を境に自動でプロセッサモードを切り替えるような指定も可能。右はマイパワーモードの詳細設定である
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 アプリタブに移れば,いま挙げた4つのプロセッサモードをアプリ別に設定できるようになる。あるゲームにだけ最大パフォーマンスを割り当てる,といったことも行えるわけだ。

アプリタブからはアプリごとのプロセッサモード設定が可能。3DMarkを選択したところ,システムタブでは選べなかった「解像度レンダリング」という項目が追加され,1920×1200/1280×800/1024×640/640×400ドットから選択できるようになっていた。なお,初期設定は「無効」で,この場合はシステムタブ側で選択したプロセッサモードが適用される
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 要するに,SHIELD Tabletでは相当に細かく電力管理設定を行えるようになったことになるが,バッテリー駆動時間のテストで特別なカスタマイズを行うのは公正とはいえない。そこで,性能検証の段に引き続き,ここでも工場出荷時設定のまま,バッテリー駆動時間を2つの方法で調べることにした。
 1つは,一般的なタブレット利用を想定したもので,前段で紹介したPCMark for Androidのバッテリーベンチマークを用いるやり方だ。Work battery lifeでは,先に紹介した4つのワークロードをバッテリー駆動で繰り返し実行し続け,バッテリー残量が20%になるまでの時間を計ることになる。Futuremarkは,バッテリー残量80%以上で実行するよう推奨しているので,今回は100%の状態からスタートさせる。

 スコアは,20%を切るまでの所要時間と,総合スコアおよび個別スコアの平均値で得られるようになっている。
 よって,これらを見れば,Androidの一般的な運用を続けることができる時間と,省電力機構の効き方をチェックできることになる。バッテリー運用時にCPUクロックをアグレッシブに落とすなどの制御がなされていれば総合スコアや個別スコアが低くなり,代わりにバッテリー運用時間が長くなるといったことが分かるわけだ。

 問題はディスプレイの輝度設定次第でバッテリー運用時間が大幅に変わる点だろう。よく知られているとおり,今日(こんにち)のモバイルデバイスで最もバッテリーを消費しているのは,ディスプレイのバックライトとドライバである。
 そのためPCMark for Androidでは,室内光を250±50ルクスに,ディスプレイの輝度を200cd/m2にキャリブレーションすることが推奨されている。ただ,どちらも設定には測定器が必要で,限られたスケジュールにおいて用意することはできなかった。そのため次善の策として,一般的な明るさの事務所内にタブレットを平置きで設置し,「画面の明るさ」を「オート」にしたうえで,Work battery lifeを実行することとした。これは,一般的な明るさの中なら自動設定で適切なディスプレイ輝度に調節してくれるだろうという考えによるものである。

 グラフ14は,いま述べたテスト条件におけるSHIELD TabletとTegra Note 7のバッテリー駆動時間を比較したものだ。SHIELD Tabletは6時間34分,Tegra Note 7は2時間4分なので,バッテリー駆動時間は1.6倍に伸びている計算になる。

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 しかし前段でも触れたように,SHILED TabletはPCMark for Androidを軽負荷のアプリケーションと見なすようで,Work battery life実行時の平均スコアは,「Video Playback score」を除き,軒並みSHIELD TabletがTegra Note 7を下回った(グラフ15)。
 要するに,PCMark for Androidにおける長いバッテリー駆動時間は,プロセッサ性能を落として手に入れたものということになる。もっとも,スコアに1.6倍もの違いは出ていないので,スコアに比してバッテリー駆動時間が長いという見方はできるだろう。

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 続いては,実際のゲームプレイ時におけるバッテリー駆動時間だ。
 GameStream時のスコアも取れればよかったのだが,Tegra Note 7がGameStreamに対応していないため,今回はElectronic Artsのサードパーソン視点アクションアドベンチャーである「Dead Space」のAndroid版を使い,検証してみたいと思う。

Android版Dead Spaceをプレイし,何時間遊べるかを計測した
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 テストにあたっての基本設定はPCMark for Androidと同じ。輝度設定は自動としたうえで,バッテリーを100%まで充電した状態で給電ケーブルを抜き,あとはゲームをプレイし続けるというものだ。Android OSはバッテリー残量が15%を割ると警告画面を表示するので,それが出るまでの時間を計測することにした。
 ただし,2時間も3時間もゲームをひたすら続けると疲れてしまうので,さすがに適宜休憩は取る。幸い,Dead Spaceは周囲に敵がいない状況なら放っておいても問題ないので,そういう場面を見繕って,SHIELD TabletとTegra Note 7でだいたい同程度の時間,休憩を挟んだと考えてほしい。
 なお,Dead Spaceは(ユーザーがGamepad Mapperから機能を割り当てない限り)ゲームパッド非対応ということもあり,ここではタッチパネルに負荷を与える意味も込め,SHIELD Wireless Controllerを使わず,タッチパネルでプレイしている。

 その結果がグラフ16で,3時間9分対3時間3分と,ほぼ変わらない結果になった。3DゲームでGPUを使っている状況だと,バッテリー駆動時間に大差はないことになる。バッテリー容量が不明なだけにSoCの消費電力がどうなのかはなんとも言えないが,1920×1200ドットの高解像度パネルを駆動しながら,Tegra Note 7と大差ないバッテリー駆動時間が確保できている点は評価できるだろう。

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■発熱も計測してみた

 消費電力のグラフを見ると,次は発熱が気になるという読者は多いだろう。Dead Spaceのテスト中,2時間が経過した時点で机上に置き,その表面温度をチノー製サーモグラフ「TP-U0260ET」で計測したので,その結果も下に掲載しておきたい。室温は約26℃という環境で,1枚めが本体向かって背面側,2枚めが本体正面側から計測した結果だ。
 今回は,斜め上から撮り下ろすような感じで計測しているが,背面側も正面側も40℃をわずかに下回った。正面から計測したほうの画像で左に見える切り欠きはインカメラだが,その周辺温度は30℃台前半程度に留まっており,タッチパネル上のバーチャルパッドでプレイしていても,苦痛は感じないレベルだった。真夏に冷房の効いていない部屋だとどうなるか分からないものの,そうでもない限り,温度が問題になることはないだろう。

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サーモグラム:SHIELD Tablet背面側
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サーモグラム:SHIELD Tablet正面側

 なお,ゲーム中にこれ以上の温度にならないことから,タブレットなら当然ではあるのだが,表面温度制御は行われているようだ。爆熱で触れなくなるような心配はまずもって無用だと思われる。



見た目どおり使いやすいSHIELD Wireless Controller

「マウスが必要な局面」に対応できるのがありがたい


 やっと「ゲーム用途」における壮大な前置きが終わった。ここからは,別売りのワイヤレス/ワイヤード両対応ゲームパッドであるSHIELD Wireless Controllerを見ていくことにしたい。

SHIELD Wireless Controllerの製品ボックス(左)と,それを開けたところ(右)
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全体的なイメージは「アナログスティックがPlayStation系配置のXbox 360 Controller」といったところ。グリップ感はとてもよい
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 その形状はXbox系で,スティック配置はPlayStation系。全体的には少しずんぐりした印象ながら,本体裏側のカーブは「Xbox 360 Controller」に近いような印象で,グリップ感,ホールド感はいずれも上々だった。手が小さい筆者からすると,もう少し小さいほうが助かるけれども,一般的な手のサイズの日本人成人男性なら自然に使えるのではないかと思う。

 そんなSHIELD Wireless Controllerには,非常に多くの機能が詰め込まれているのだが,ゲーマー的に注目したいのは,ワイヤレス接続にあたって,一般的なBluetoothではなく,Wi-Fiを使ったダイレクト接続規格である「Wi-Fi Direct」を採用していること。Bluetooth接続を使用しなかった理由は,「Wi-Fi Directだと,Bluetoothの半分の遅延で済むから」(NVIDIA)とのことで,強いこだわりが感じられる。

本体奥側。充電用のUSB Micro-Bコネクタの横にある3.5mmミニピン端子がヘッドセット接続用の4極端子となっている。その上に見える小さな凹みがマイクだ。なお,バッテリーが切れたときや,PCで使いたいときは,USB接続のワイヤード接続を利用できる
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 また,Wi-Fi Directを採用したことで十分な帯域幅が確保できたため,サウンド入出力機能をSHIELD Wireless Controller側で持つに至っている点も注目したい。ヘッドセットをつなげば,たとえばSHIELD Tabletをテレビの脇に置いて,HDMI出力によって映像をテレビに出すときも,長いケーブルを取り回すことなく,サウンド入出力を利用できるのだ。
 また,NVIDIAロゴの入ったボタン状タッチセンサー(以下,[NVIDIA]ボタン)のすぐ近くにマイクを内蔵し,また,後述する[Home]ボタン長押しでGoogle純正の「音声検索」を呼び出せるため,SHIELD Wireless Controller単体で音声検索なども行えるようになっている。

 アナログスティックやD-Pad(十字キー),[A/B/X/Y]ボタンはかっちりした押し心地で,少なくとも現時点だと耐久性以外に不安はない。一方,バンパーボタンは左右に広く,どこからでも入力が入るので押しやすいのだが,[A/B/X/Y]ボタンと比べると明らかにふにゃふにゃしているので,これを嫌う人はいるかもしれない。
 また,アナログトリガーが小さいのも,「ストロークが短いから素早く操作できる」と判断するかどうかで好みが分かれるだろう。

左右アナログスティックは,倒すとカチカチ決まる操作性。D-Padと[A/B/X/Y]ボタンもかっちりした押し心地が得られる。バンパーボタンとアナログトリガーはやや人を選ぶ印象だった
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シンプルな見た目ながら非常に多機能なタッチパネル群。再生ボタンのようなマーク入りのものが[Start]ボタンだ。通電時,[NVIDIA]ボタンは緑に,残る3ボタンは白くうっすら光り,通電インジケータとして機能するようになっている
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 ここまでの説明で,[Start]ボタンや[Select]ボタンといった追加ボタンがなく,このままだとGameStream時にボタンが足りないのでは? と思った読者は鋭いが,結論から言うと,その点に問題はない。
 先ほど[NVIDIA]ボタンの話をしたが,その周囲,銀色のV字型をした帯の部分には[Start][Home][Back]ボタンとして機能するタッチセンサーがある。そして,GameStreamでPCゲームをプレイするときには,ゲーム側が[Start][Select]ボタンを使う場合,[Start][Back]ボタンがそれらに自動で割り当てられるようになっているのだ。

 ちなみに[NVIDIA]ボタンとその周辺は長押しによる操作も行えるようになっており,[NVIDIA]ボタンの場合は3秒でスリープ解除,6秒でスリープ,15秒以上でSHIELD Tabletとのペアリング解除となっている。
 [Start]ボタンは数秒の長押しでGamepad Mapperを呼び出すことが可能。[Home]ボタンは前述のとおり音声検索の呼び出しトリガーとして利用でき,[Back]ボタンはShadowPlayを呼び出せる,といった具合である。

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タッチパッドを操作しているところ。ここでは撮影のために人差し指を使っているが,実際には握った状態から親指を使うことが多くなるだろう
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タッチパッドの手前側には[+][−]ボタンがあり,ここからSHIELD Tabletの出力音量調整が可能。両方を長押しするとミュートの有効/無効を切り替えられる
 Android対応ゲームをゲームパッドでプレイしようとするとき,どうしても一部の操作でタッチ操作が必要になり,タブレットなりスマートフォンなりに手を伸ばすことになってストレスを感じた人も少なくないだろうが,SHIELD Tabletでは,この問題にもメスが入っている。左右アナログスティックの手前側に広がる三角形の地帯はタッチパッドになっていて,ここをマウス代わりに使えるのだ。

 タップ操作には非対応ながら,スイッチを軽く押し込めば左クリック,長押しすれば右クリックとして利用できるのはとても便利。また,手前側にあるため,「DUALSHOCK 4」のように指を思い切り伸ばしたりせず利用できるのもグッドである。ゲーム用途で使えるものではないが,ゲームをプレイするときの補助的な入力インタフェースとしては文句なしに合格点を与えられるデキだといえるだろう。

 また,このタッチパッドがあるおかげで,SHIELD Tabletをテレビにつないで,自分はSHIELD Wireless Controllerを持ってソファなどへ座るようなときに,SHIELD Wireless ControllerだけでAndroidの通常操作をひととおり行えるようになっているのもポイントが高いところだ。


ゲームパッド非対応のゲームをゲームパッドでプレイできるようにするGamepad Mapper


 冒頭でも簡単に紹介したが,SHIELD Tabletは,SHIELD Wireless Controllerと組み合わせることで,PCゲームとAndroidゲームのほぼすべてをプレイできるというのがウリだ。GameStreamを使えば,PCゲームをSHIELD Tabletへ配信でき,望むならそこからさらにHDMIでディスプレイ出力しつつプレイ可能。また,ゲームパッド操作に対応するAndroidタイトルはそのまま,そうでないタイトルはGamepad Mapperを使って機能を割り当てることで,やはりSHIELD Wireless Controllerからプレイできるようになる。

 順に見ていこう。GameStreamは,Kepler世代以降のGeForce GTXを搭載するPCとSHIELD Tabletを使って,PC上で実行するゲームをSHIELD Tablet上でプレイできるようにする機能だ。

SHIELD Hub
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 接続にあたっては,まずはSHIELD Tablet側でアイコンをタップするか,SHIELD Wireless Controller側から[NVIDIA]ボタンを押して「SHIELD Hub」を起動。そのうえで,「マイPCゲーム」を選び,[サーバーにログインする]ボタンを押す。ネットワーク上にある対応PC一覧が表示されたら,正しいマシンを選ぶと,4桁のPINコードが表示されるのだが,それと同時にターゲットとなるPC上ではGeForce Experienceにコード入力用ダイアログが表示される。あとはここにPINコードを打ち込んで,[接続する]ボタンを押せば完了だ。

GameStreamの初期設定。正直,悩むようなところは何もない
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 設定が完了すると,「マイPCゲーム」メニューが現れる。
 ここには,PC上でGeForce Experienceから認識されているタイトルと,Steamクライアントが並ぶようになっている。直接起動できるものなら直接,そうでないものはSteam経由で起動できるようになっているというわけだ。詳細は後段でお伝えする。

Dead Spaceの実行中に[Start]ボタンを長押ししたところ。こんな感じでランチャーが出現する
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 もう1つの目玉機能であるGamepad Mapperだが,これは前段で紹介したとおり,SHIELD Wireless Controllerの[Start]ボタン長押しで呼び出せるランチャーから「マッパーの編集」をタップすることで開けるようになっている。起動中のゲームに対する操作を割り当てて,プロファイルとして保存するイメージだ。
 問題は,このGamepad Mapperが,非常に取っつきにくいこと。初見だと何をしたらいいのかまったく分からないという人が大多数ではないかと思われ,正直,これを説明なしで実装したNVIDIAのセンスにはちょっと首をかしげざるを得ない。

何もない空間に放り出されたような絶望感を覚えるGamepad Mapper。「Gizmoの任意のコントローラーをドラッグするか、ジェスチャーを録画してださい」(※原文ママ)と言われても何のことやらといった感じである
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 Gamepad Mapperには上の段と下の段にアイコンが並んでいるが,上は保存や書き込み,読み出し,共有関係の操作を行うためのもので,実際にゲームパッドへの操作を割り当てるのに使うのは下の段のアイコンである。下段のアイコンには「Gizmo」(ギズモ,小道具)という名称が与えられている。

アイコン群のクローズアップ
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 順に見ていくと,上段左はゲームのアイコンだ。ここにアイコンが表示された状態で設定を行うと,以後,設定内容が起動するごとに読み出される。ちなみに,一部のタイトルではNVIDIAがプロファイルを用意しているとのことだ。
 その右隣にあるのはページ名で,ここは任意に変更可能。2ページめ以降は作成すると,その右隣にある[<][>]ボタンで切り替えられるようになる。アプリごとに複数のプロファイルを持てるわけである。
 その右隣にあるクラウドアイコンは,NVIDIAのサーバーにアップロードされたプロファイルをダウンロードするためのもの。その右隣に3つ並ぶのはお馴染みだろうが,順に共有,メニュー,Gamepad Mapper終了用のボタンだ。2ページめ以降のプロファイルはメニューから新規追加もしくは削除できる。

 続いて下段のGizmoだが,一番左は「Motion Sensor Gizmo」。タブレット本体を動かしてプレイするタイプのゲームをプレイするときにその動きを左または右のアナログスティックに割り当てられる。

 その隣,[LS][RS]と書かれた2つのGizmoは「Left Stick Gizmo」「Right Stick Gizmo」で,文字どおり左右アナログスティックの動きを割り当てられる。画面上に表示されるバーチャルパッドでプレイするようなタイトルにおけるバーチャルパッド操作をアナログスティックで行えるようになるわけだ。配置後,[A][Y]ボタンでGizmoのサイズを調整できるのだが,これは指の移動量,すなわち感度の幅を変更できる。移動系の操作に使うなら,大きめに設定したりすることになるわけである。
 ちなみに[LS][RS]ではいずれも,Gizmo自体を長押しすると,その挙動を指定できる。選択肢は,アナログスティックの動きに忠実な入力となり,スティックを中点に戻すと操作も中点に戻る「ジョイスティック」と,中点には戻らない「FPSルックアラウンド」の2つだ。標準は前者だが,ここはうまく使い分けたい。

 その右隣にある白いGizmoは「Button Gizmo」で,文字どおり,SHIELD Wireless Controllerのボタン操作を画面上のタップに割り当てる機能を持つ。
 さらにその右にある,人差し指を立てた手のGizmoは「Cursor Gizmo」。Android用ゲームタイトルのなかには,キャラクターなど,画面上のオブジェクトを選択して動かすといった操作を行うタイトルがあるが,そうした操作を割り当てるためのものだ。
 設定自体は簡単で,カーソルギズモを適当な位置に引き出した後,SHIELD Wireless Controller上のボタンから割り当てたいものを押し,さらに左右どちらかのアナログスティックを動かせば設定完了だ。たとえば[Y]ボタンと左アナログスティックを割り当てた場合は,[Y]ボタンを押しながら左アナログスティックを操作することで,特定のオブジェクトを操作できるようになる。ざっくりいえば,「Angry Bird」の操作的な動きをするための機能である。

 その右隣は「Gesture Gizmo」で,これは,タップやフリック,スワイプといったアナログ操作全般を行うためのものだ。移動距離や方向,時間などが忠実に記録されるので,使い方によっては長押しとフリックを組み合わせたりといった複合技も登録できる。登録したら,それを割り当てたいボタンを選べば,次からはその操作をボタン一発で利用できる,というわけだ。
 登録はなかなか難しいが,右端のゴミ箱Gizmoと組み合わせながら,試行錯誤するだけの価値はあるといえるだろう。なお,当該設定のみを消したい場合は,一度その設定をタップしたうえでゴミ箱Gizmoをタップする必要があるので,この点はご注意を。

Dead Space 2を使って試行錯誤中の様子
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 ……正直,これをさくっと理解できる人が多いとは思えないので,NVIDIAは早急に,日本語解説ビデオなどを作るべきだと思うのだが,ともあれ試してみると,確かにバーチャルパッド対応タイトルをプレイできるようになった。このあたりは続く段落で細かく紹介したいと思う。
 理想的には,国内でよくプレイされているタイトルのプロファイルがNVIDIAのクラウドに上がり,誰でも簡単にダウンロードできるようになると,使い勝手は格段に上がると思う。いいプロファイルができたと思ったら,共有アイコンを使って,積極的にNVIDIAのクラウドサーバーへ上げていくと,ユーザー全員が幸せになれそうだ。


GameStreamとGamepad Mapperのデキやいかに?

いろいろプレイしてみる


 SHIELD TabletとSHIELD Wireless Controllerでどんな風にゲームをプレイできるのか理解してもらったところで,ここからは,BRZRK氏と宮崎真一氏,Orecchiによる,ゲームジャンルごとのインプレッションをお届けしたいと思う。
 なお今回,GameStreamのテストにあたっては,Project White(ツクモ)から,ゲーマー向けデスクトップPC「G-GEAR GA7J-Z62/E」を貸し出してもらうことができた。「GeForce GTX 970」と「Core i7-4790」を搭載し,高い3D性能を確保しつつ,BTO標準構成価格は税別12万9800円(税込14万0184円)という,コストパフォーマンスの高さがウリの製品だ。

G-GEAR GA7J-Z62/E
メーカー:Project White(ツクモ),BTO標準構成価格:12万9800円(税別)
ハイスペックを標準的なミドルタワー筐体に収めたゲーマー向けデスクトップPC。内部構成にゆとりがあって冷却性能が高いだけでなく,将来の拡張にも対応できるのが魅力
ツクモネットショップの販売ページ
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■GameStreamでTitanfallをプレイ

■by BRZRK


GeForce ExperienceからTitanfallを認識させると,「マイPCゲーム」にリストアップされるので,それを選択。するとOriginのログイン画面が立ち上がる。この場面ではPCに接続されたキーボードか,SHIELD Wireless Controllerの[Y]ボタンを押すと開くソフトウェアキーボードを使ってIDとパスワードを入力することになる
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 筆者の担当はGameStreamでのFPSということで,長いこと遊ばせてもらっているPC版「Titanfall」(邦題 タイタンフォール)を,PCからSHIELD Tabletへストリーミングしてプレイすることにした。
 TitanfallはElectronic Artsのゲーム配信システム「Origin」で配信されているタイトルだ。GeForce Experienceによって自動的にSHIELD Hubの「マイPCゲーム」へ登録されているため,これを選択し,続く画面でOriginのIDとパスワードを入力すれば,とくに問題なく起動した。

 さて,まずはUSB−LANアダプターを用いた有線接続からだ。有線接続時は解像度1920×1080ドットを指定できるので,それを指定。また,筆者は普段からVsyncを無効化設定でプレイしているので,それも行った。TitanfallはXImputに対応しているため,ボタン設定を1から割り当てたりする必要はない。好みに応じてスティックの感度やボタンレイアウトを少々調整するだけでOKである。

有線接続時はまずまず快適にプレイできる。理想を言うなら,テレビなどの外部デバイスへ出力したいところだ
画像集#086のサムネイル/「SHIELD Tablet」レビュー。NVIDIAが放つ「ゲーマー向けAndroidタブレット」の気になるところを片っ端から検証してみた
 気になるラグだが,体感レベルでは「若干のラグが感じられるものの,一昔前の“ラグい”液晶ディスプレイと比べたらまったく問題ない」といったところ。PCからディスプレイに出力しつつ,同時にGameStreamで配信している様子を撮影し,下に掲載したのでチェックしてもらえればと思うが,アップロード前のムービーでコマ送りして確認したところ,GameStreamによる遅延はおおむね0.03秒(3ms,2フレーム弱)だった。「QuakeやCounter-Strikeなどは厳しいが,いわゆる非e-Sports系タイトルなら問題ない」というレベルである。
 ただ,描画される絵は綺麗なのだが,8インチの画面はやはり小さく,かなり食い入るように画面を見なければ敵味方の視認すら難しい。今回は遅延の比較のためにPC用ディスプレイの近くに置いたが,実際の運用にあたっては,SHIELD TabletからHDMI出力でテレビなどへ出力する必要があるのではないかと思う。「蹴っても蹴っても倒せないなコイツ! とか思ったら味方だった」ということが何度もあり,同じチームだった人ごめんなさい……。

 あと,プレイしていて気づいたのは,Vsyncを無効化していても,SHIELD Tablet上に表示される映像はVsyncが有効化された(ような)ものになっているということだ。担当編集に確認したところ「(GeForceに内蔵されるハードウェアエンコーダである)『NVENC』側では,描画内容がフレームバッファへ書き出された時点でエンコードしているのではないか」とのことだった。

Wi-Fi接続時は正直,ラグがキツい
画像集#087のサムネイル/「SHIELD Tablet」レビュー。NVIDIAが放つ「ゲーマー向けAndroidタブレット」の気になるところを片っ端から検証してみた
 続いてはIEEE 802.11nによる無線接続である(※SHIELD TabletはIEEE 802.11acをサポートしない)。Wi-Fi接続時は,帯域幅の関係で,対応解像度が1280×720ドットに下がる。なので,いったんPCからTitanfall側の解像度を下げて再起動し,実際にゲームをプレイしてみたのだが,なんというか,明らかに“ラグい”。ワンテンポとまでは言わないが,半テンポは遅れる感じだ。こちらもコマ送りで確認してみると,0.1秒(10ms,6フレーム強)遅れていたので,さもありなんといったところだが,なんとも微妙な気分にさせられてしまう。
 また,無線LANルーターの品質や回線状況にもよるのだろうが,大なり小なりビットレートも低下するようで,4Gamerのスタジオでプレイした限りでは,ブロックノイズの存在が目に付くようになって,なんとも残念な映像になってしまった。遊べないこともないが,個人的な意見として言わせてもらえば「これでマルチプレイFPSはキツイ」といった感じだ。

 TitanfallをGameStreamでプレイしたいなら有線で,ということになるだろう。


画像集#088のサムネイル/「SHIELD Tablet」レビュー。NVIDIAが放つ「ゲーマー向けAndroidタブレット」の気になるところを片っ端から検証してみた
 なお,今回のテストにあたり,筆者が愛してやまないスタンドアローン版「DayZ」でもテストを行ったのだが,DayZ自体がXInputに対応していないためかどうか,SHIELD Wireless Controllerではタッチパッドしか使えなくて,視点変更とパンチくらいしか利用できず仕舞いだった。さすがアーリーアクセス!


■GameStreamで新生FFXIVをプレイ

■by 宮崎真一


「マイPCゲーム」から新生FFXIVを選ぶと,お馴染みのログイン画面が開く。Titangallと同様に,PCと接続されたキーボードか,[Y]ボタンで呼び出せるソフトウェアキーボードを使って,IDとパスワードを入力しよう
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画像集#090のサムネイル/「SHIELD Tablet」レビュー。NVIDIAが放つ「ゲーマー向けAndroidタブレット」の気になるところを片っ端から検証してみた
 SHIELD TabletでPC版の「ファイナルファンタジーXIV:新生エオルゼア」(以下,新生FFXIV)をGameStream経由でプレイするための条件はTitanfallと同じだ。新生FFXIVもGeForce Experienceから認識されるので,認識さえ済めば,SHIELD Hubの「マイPCゲーム」からゲームのランチャーを起動できるようになる。ここまで,とくに難しいことはない。
 なお,余談気味に続けておくと,GeForce Experienceに認識されないタイトルの場合は,PC上でSteamにログインした状態から,「ライブラリ」の「ゲームを追加」→「非Steamゲームを追加」を選ぶと「Steamから起動するタイトル」として登録できる。この場合は,SHIELD Hubから「マイPCゲーム」→「Steam」と進んでSteamをBig Pictureモードで起動し,そのゲームライブラリから当該タイトルを起動する必要があるので,この点は注意してほしい。

 話を戻そう。
 このあたりはSHIELD Wireless Controllerを紹介する段で言及されているとおりだが,「DUALSHOCK 3」の[SELECT][START]ボタンに相当する機能は,[Back][Start]のタッチセンサーに割り当てられているため,ボタンが足りないということはない。ただ,物理的なボタンではなくタッチセンサーなので,押したいときにうまくいかず,何度もタッチし直す必要があったり,別のセンサーを反応させる“誤爆”が生じたりして,少しイライラさせられた。残念ながら,新生FFXIVのボタン機能割り当てには制限があり,[Back][Start]ボタンの機能を別の場所に移そうと思うと,使用頻度の高い[A/B/X/Y]ボタンしか行き先がないため,使い勝手を考えると,これはもう慣れるしかないだろう。

新生FFXIYのHUDレイアウト変更ツール。SHIELD Tabletでプレイするたびに設定し直さねばならない
画像集#091のサムネイル/「SHIELD Tablet」レビュー。NVIDIAが放つ「ゲーマー向けAndroidタブレット」の気になるところを片っ端から検証してみた
 もう1つ気になったのは,画面がとにかく小さいということだ。普段,筆者は解像度1920×1080ドットのフルスクリーン表示でプレイしているのだが,SHIELD Tabletを有線接続し,SHIELD Tabletの8インチ画面に1920×1080ドットで表示させると,HUDの文字が小さすぎて読めないのだ。無線接続ならどうかというと,1920×1080ドット解像度用に最適化されたHUDの並びはぐちゃぐちゃになってしまい,再設定が必要となる。
 ここでのハードルは,新生FFXIVが,HUDのレイアウトやフォントの大きさ設定を,プロファイルとして複数持てるような設計になっていないこと。なので,SHIELD TabletからHDMI出力でフルHD解像度のテレビに出力してプレイするという場合を除き,PC(あるいはPS4やPS3)とSHIELD TabletでプレイするたびにHUD配置やフォントサイズを弄らなければならない。これはかなりのハードルになると感じた。
 あるいは,クラフターやギャザラーといった採集や製作職に徹するといった割り切りったプレイが必要かもしれない。

1280×720ドット設定時のゲーム画面
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 なお,筆者は試行錯誤の末,1920×1080ドット表示時はHUDのサイズをすべて140%,フォントサイズを20に,1280×720ドット表示時は順に100%,12に設定し,レイアウトを適宜調整することにしたが,ここまで設定すると非常に快適だ。下に示したのはそれぞれF.A.T.E.に参加したときのものだが,SHIELD Tabletの画面を見ながらSHIELD Wireless Controllerでプレイしたときの違和感はない。新生FFXIVをプレイするにあたっては,有線接続でも無線接続でも,ラグに関する不安はないと断言してしまっていいだろう。



■SHIELD Wireless Controllerでモンストをプレイ

■by Orecchi


 前述のとおり,SHIELD Tabletでは,本来ならゲームパッド操作に対応していないAndroid用タイトルをSHIELD Wireless ControllerでプレイするためのGamepad Mapperが用意されている。では,これを使うと,タッチ操作が大前提のスマートフォン向けタイトルをプレイできるだろうか? Android版「モンスターストライク」を使ってテストしてみよう。

 まずはGamepad Mapperを使わない設定からだが,SHIELD Wireless Controllerは,SHIELD Tabletと接続された時点で,基本操作を行えるようになっている。デスクトップなら,右アナログスティックでマウスカーソル移動,[A]ボタンで決定,[A]ボタンの長押しでホールド,[B]ボタンでキャンセル,D-Padでアイコン選択といった具合だ。そのため,モンスターストライクの場合は,右アナログスティックと[A]ボタンを使えば,「画面の好きなところを[A]ボタン長押しでホールドし,右スティックで引っ張り,[A]ボタンを任意のタイミングで放す」ことで操作を行える。メニュー操作などもこれでOKだ。
 実際にプレイしている様子は下に示したムービーを参照してほしいが,まずもって問題なくプレイできているのが分かると思う。


定規を用意して,水平な線が引けないか試行錯誤してみたのだが,スタイラスの先端が柔らかいのも手伝って,完璧に水平な線は最後まで引けなかった
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 モンスターストライクのユーザー的には,Gamepad Mapperの持つ「タッチ操作をゲームパッドに割り当てられる」ことから,画面下部から垂直/水平に引っ張るテクニックである,いわゆる“横カン/縦カン”をボタンに割り当てたら便利だと思うかもしれない。筆者もそう思ったのだが,アナログ入力が前提のタッチ操作で,水平や垂直の線を引くのは至難の業だ。これができれば,確実な横カン/縦カンができると思うのだが……。


■SHIELD Wireless Controllerで白猫をプレイ

■by Orecchi


 モンスターストライクに続いては,Android版「白猫プロジェクト」をプレイしつつ,HDMI出力でディスプレイデバイスに出力した状態から,Gamepad Mapperでフルカスタマイズし,快適にプレイすることを目指してみようと思う。

白猫プロジェクト向けのGamepad Mapperカスタマイズ結果。「shironeko」というプロファイルにしてある。このデータは共有したりすることも可能だ
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 白猫プロジェクトでは,バーチャルパッドによる操作系が採用されており,画面にタッチしたところを起点に,スワイプした方向へキャラクターが移動するシステムが採用されている。攻撃に用いるのはタップだ。
 そのため,Gamepad Mapperの[LS]ボタンを画面上に配置すると,それだけで左アナログスティックによる移動操作が可能になる。[LS]ボタンは[Y][A]ボタンで拡大縮小が可能で,大きくした分だけスワイプ操作が大きくなるため,今回はかなり大きめに置いてある。
 タップ操作は,アイコン一覧の左から4番めにある白い丸アイコンで設定可能。画面上に配置してからSHIELD Wireless Controller上の任意のボタンを押せば登録できるため,ここまでやれば,最低限の操作を行えるようになる。

 さらに,アイコン一覧の右から2番めにあるフリック動作のようなアイコンでは,白猫プロジェクトの必殺技を発動するアクション「1秒弱ホールドしてからフリックする」という複雑な操作も1ボタンで行えるようになる。
 設定方法はいたってシンプル。マッパー編集画面で,フリック動作のようなアイコンを選択して,実際に登録したい動作を行った後に,割り当てたいボタンを押すだけだ。今回は,「タップした状態で1秒弱ホールドしてから左上にフリック」を[X]ボタンに,「タップした状態で1秒弱ホールドしてから右上にフリック」を[B]ボタンに割り当て,1ボタンで必殺技が発動できるようにした。

 あとは,(スマートフォンを右手で持って操作する場合)右上にパーティが表示され,交代したメンバーをタップすることで操作キャラクターが変更できるのだが,これは,攻撃時に設定した白い丸アイコンをD-Padの上/左/下に割り当てることで対応。アイコン一覧の右から3番めにあるマウスカーソルアイコン配置し,移動を右スティックに,クリックを[LB]バンパーボタンなどに割り当てておけば,こまごました操作も問題なく行えるようになる。

 その結果としてのプレイムービーは下に示したとおりだが,Gamepad Mapperを使えば,スマートフォン向けのタイトルも,据え置き型ゲーム機のような感覚でプレイできるようになるわけで,これは衝撃的だ。Gamepad Mapper自体はクセのあるツールで,慣れるまでは使いづらいと思うが,複合操作も1ボタンに割り当てられるので,ぜひ使いこなしたいところだ。バーチャルパッドは嫌いという人ほど,この操作性には感動できるだろう。



■ShadowPlayは拍子抜けするほど簡単

ShadowPlayのメインメニュー
画像集#104のサムネイル/「SHIELD Tablet」レビュー。NVIDIAが放つ「ゲーマー向けAndroidタブレット」の気になるところを片っ端から検証してみた
 なお,あまりにも簡単だったので,追記的に記すのみとするが,ShadowPlayは,呼び出して有効化するだけで,過去最大20分間の自動録画や手動録画,Twitchへの配信をさくっと行える。[Back]ボタンの長押しからShadowPlayのメニューを呼び出したら,後はしたいことを呼び出すだけでOKだ。下に示したムービーは,ShadowPlayからカメラおよびマイクを有効化したうえで,自動録画を行いつつ,Twitchに配信している例だが,Twitchのアカウント情報さえあらかじめ登録すれば,あとはボタン操作だけで全部できてしまう。あまりにも手軽すぎて笑ってしまったほどだ。
 なお,録画したムービーは,SHIELD TabletをPCとつなげば簡単に取り出せる。



ゲーマーの期待に応えるタブレットだが

総額でPS4以上という価格が大きなハードルに


画像集#066のサムネイル/「SHIELD Tablet」レビュー。NVIDIAが放つ「ゲーマー向けAndroidタブレット」の気になるところを片っ端から検証してみた
 とんでもなく長くなったが,まとめよう。SHIELD Tabletで謳われているゲーム関連の性能は,一部で使い勝手が悪かったりするのを除けば,触れ込みどおりと言っていい。GameStreamではPCゲームを確かにリモートでプレイできるようになっており,内蔵スピーカーのデキはゲーム用途として大変優秀で,SHIELD Wireless Controllerはかゆいところに手が届き,ShadowPlayは簡単で便利だ。
 今回はAndroid用の3Dゲームで3時間強というバッテリー駆動時間だったが,GameStreamでは事実上のビデオストリーミングなので,GameStreamなら,もっと長時間のバッテリー駆動を期待できるはずである。

 そもそもこれだけゲームを意識して作られたタブレット製品は他にないということも含め,現時点におけるゲーマー向けタブレットの決定版と断言していいのではないかと思う。

 そんなSHIELD Tabletに問題があるとすれば,それは価格だ。北米において299ドルのWi-Fiモデルが国内では4万円超えとなっており,この時点でPlayStation 4(以下,PS4)とほぼ同等。しかも「ゲーム機」として使うには単品で8600〜1万円程度するSHIELD Wireless Controllerがほぼ必須であり,さらに純正カバーたるSHIELD Coverの4400〜5000円程度(※価格はいずれも2014年10月9日現在)も加えたりすると,総額は「PlayStation Camera」込みのPS4すら超えてしまうのである。いま5万円前後の予算を確保している人が新しくゲーム機を購入するとして,PS4とSHIELD Tabletで後者を迷わず選ぶというケースは,正直,そう多くはないだろう。
 PS4と比較しないにしても,7〜8インチクラスのタブレット端末としては,かなりの割高感が否めない。性能と機能だけを見る限りは相当にお勧めなのだが,価格まで考慮に入れると,SHIELD Tabletの評価は分かれるのではなかろうか。

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