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[COMPUTEX]「GeForce GTX 1080」のプロダクトマネージャーに,発表直後の「Radeon RX 480」についてアレコレ聞いてみた
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印刷2016/06/03 00:00

インタビュー

[COMPUTEX]「GeForce GTX 1080」のプロダクトマネージャーに,発表直後の「Radeon RX 480」についてアレコレ聞いてみた

 外から見ている限り,AMD対NVIDIAの戦いは,非常に楽しい。
 お互いの弱点を指摘し,それを改善したら,相手が持つ別の弱点を見つけて指摘し返すといった具合に,1990年代から続く終わりのない戦いであるが,両社が戦い続けることで,リアルタイムグラフィックスの進化が加速されてきたというのも事実である。

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 古い話になるが,有名な事案に「ピクセルシェーダの演算精度問題」というのがあった。ATI Technologies(当時,以下 ATI)のRADEON 9000シリーズでは,32bit精度の浮動小数点データを扱っていても,最大24bit精度に丸め込まれてしまうという問題をNVIDIAが指摘したことがあったのだ(関連記事)。
 それに対してATIは,GeForce FXシリーズではレンダリングパイプラインの本数よりも,実行ユニットやテクスチャユニットの数が少ないため,実効性能が低いことを指摘し返した(関連記事)。当時のATIは,「(アソコの)24パイプはパイプドリーム」(※Pipe dreamには空想,夢物語という意味がある)という英語ダジャレのTシャツまで作り,NVIDIAをいじり倒したものだ。

やり玉に挙がったRADEON X800。2004年の製品だ
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 すると今度はNVIDIAが,「RADEON X800」の異方性テクスチャフィルタリング機能が正しく実行されず「ベンチマークのスコアを上げるために手を抜いている!」と反撃(関連記事)するといった具合に,喧嘩が続いたこともあった。

 両社の喧嘩は昔話ではなく,今でも続いている。近年における喧嘩の事例としては,AMDが「NVIDIA GPUでは,Direct X12のAsync Compute機能が正しく動作していない」と批判していた(関連記事)。
 それに対してNVIDIA側は,「それは仕様ですけど何か? 改善は次期モデルで行うんで」と事実上完全スルーして,2016年5月には,その改善を取り入れた「GeForce GTX 1080」を発表している(関連記事)。

GTX 1080のリファレンスカードを掲げるNVIDIAの社長兼CEOであるJen-Hsun Huang氏。その裏側では,NVIDIAとAMDによる暗闘があったのだ……
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 この戦い,最近では白熱しすぎた感もある。
 一方がどこかの会場で技術説明会をやると,翌日にはもう一方が,向かいのホテルでネガキャンイベントを開催するというところにまで行き着いてしまったのだ。GeForce GTX 1080の技術説明会では,NVIDIAがイベント開催場所のウソ情報を事前にリークして,AMDが近所でネガキャンイベントを行えないようにするといった騒動にまで発展している。
 今回は,筆者のようなジャーナリストもその影響を受けることになり,イベント開催直前まで,具体的な開催場所どころか渡航先の都市すら明示されないため,渡航手段の確保に支障をきたす有様。火に油を注ぐと言っておきながらではあるが,「君たちは,いったい何をやっているんですか?」と問い詰めたい状況になってきている。

Radeon RX 480で199ドルという大胆な価格を付けたAMD
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 今回のCOMPUTEX TAIPEI 2016は,AMDの番であった。6月1日のイベントでは,GeForce GTX 1080(以下,GTX 1080)の価格をやり玉に挙げ,「700ドルもするGTX 1080に対して,半額以下の199ドルで「Radeon RX 480」はVRを楽しめます。皆さん,700ドルあったら,Radeon RX 480を2枚買って,お釣りを好きなゲームに投資したらどうです?」というわけだ。


GTX 1080のプロダクトマネージャーに聞く

Radeon RX 480登場の影響


 渡航の件はともかく,筆者としては,両社の喧嘩に対して,「火に油を注ぐ」ことに義務感を感じている。そこで,AMDのイベントがあったその日のうちに,NVIDIAでGTX 1080のプロダクトマネージャーを務めるJustin Walker氏に取材を申し込み,話を聞いてみた。

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COMPUTEXメイン会場のNVIDIAブース。ここでの主役はGTX 1080だ
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Justin Walker氏(GeForce Senior Product Manager,NVIDIA)

 「AMDのプレスカンファレンスをすべて見たわけではないけど,まぁ,いくつか語れることはある」とWalker氏。氏が,まず強調したのは,「GTX 1080が,世界最速のGPUであることに変わりはない。ここはいいよね」ということ。たしかに,この事実をAMDも否定はしていない。なにしろ,「Radeon RX 480を2枚使って,GTX 1080と同じ性能になる」と,AMD側がプレゼンしているのだから。

AMDは,プレゼンテーションで,「1枚のGTX 1080よりも,2枚のRadeon RX480のほうが高性能」とアピールしていた。裏を返せば,1枚ではGTX 1080にかなわないということでもある
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 仮想現実(以下,VR)は,グラフィックスに対する性能要求の厳しいアプリケーションなので,GPUの性能は,高ければ高いほどいい。AMDのRadeon RX 480は,あくまで「VRに適応できる性能を有している」のにすぎず,GTX 1080とは違って性能に余力がない,というのがWalker氏の主張だ。

 PC用VRヘッドマウントディスプレイ(以下,HMD)の2大巨頭といえば,HTCの「Vive」とOculus VRの「Rift」であるが,映像の解像度はどちらも2160×1200ドット(※片眼あたり1080×1200ドット)である。GPUレンダリング解像度としては,およそフルHD(1920×1080ドット)+α程度にすぎない。この解像度を90fps程度で描画できる性能があれば,VR対応と謳えるわけである。

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 「グラフィックスオプションをすべて最高に設定した場合,十分なレンダリング性能がなければフレームレートは落ちる。また,VR HMDの進化として,将来は4Kや8Kといった解像度の向上が行われるだろうから,そのときに十分なレンダリング性能がなければ,やはりフレームレートは落ちる。GTX 1080には,そうしたVR HMDの進化にすら対応できる性能の余力がある」とWalker氏は述べた。
 また,氏は「Riftが要求する推奨GPUは確認したかな? NVIDIAのほうは『GeForce GTX 970』(※単精度浮動小数点演算性能は約3.5TFLOPS)以上だが,AMDのほうは『Radeon R9 290』(※同約5 TFLOPS)以上となっている。NVIDIAの場合,先代のGTX 970でも十分なVR対応能力があるということだ。そして我々はGTX 970の後継的製品である『GeForce GTX 1070』(※同約6 TFLOPS)でグンと性能を引き上げた。彼らは?」とも言う。

製品版のRiftは,推奨GPUとしてGeForce GTX 970以上か,Radeon R9 290以上を要求する
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 Radeon R9 290の公称性能値は約5 TFLOPSで,新製品のRadeon RX 480も5 TFLOPS以上だから,演算性能に大きな差はない。ただし,Radeon RX 480の想定売価は199ドルなので,Radeon R9 290の399ドル(※発表時点での税別想定売価)に比較すれば安くなっている。きつい言い方をすれば,Radeon RX 480という製品は,アーキテクチャの変更によって性能を維持しながら,想定売価を引き下げただけの製品と言えなくもない。

 「価格に視点を移そうか。現在の店頭売価だと,GeForce GTX 970(以下,GTX 970)は279ドルで,Radeon R9 290よりも1つ上位クラスの『Radeon R9 290X』(約5.5TFLOPS)は,249ドルくらいかな。Radeon RX 480とRadeon R9 290Xの価格差は,50ドルちょっとという感じだろう。もっとも,GTX 970は事実上の製造終了となる製品なので,今後,継続販売することはないけどね」

 「さて,VR対応のPCを自作しようとすれば,最低でも1000ドルはかかる。VR HMDはさらに600ドルくらいだ。これだけの予算をやりくりする中で,50ドルをGPUで節約するよりは,50ドル高いGPU(=Radeon R9 290X)を選択したほうがいいと僕は思うね」(Walker氏)。
 このようにWalker氏は,VR対応のPCを自作したり購入したりするならば,VR HMDを動かすのに最低限必要なだけの性能を目指すのではなく,より高い性能を目指したほうがいいと,繰り返し強調していたのが印象的であった。

 ついでにWalker氏は,もう一言付け加えている。「すでにレポートが上がっているみたいだけど,彼ら(※AMD)がプレゼンテーションで使っていた『Ashes of the Singularity』の性能比較を見た? 右側にあるGTX 1080のほうが,ディテールが細やかだったのに気が付いたかい。たぶん,GTX 1080のほうがグラフィックスオプションの設定は高いと思うね(笑)」

問題のシーンがこちら。左側がRadeon RX 480,右側がGTX 1080による映像だ。「199ドルのGPU×2によるフレームレートが,700ドルのGPUと同じだなんてすごくないか?」というデモであったが,たしかによく見ると,右側のほうは斜面に積もった雪のディテールが細かい気もする……
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※2016年6月3日20:30頃追記
 Ashes of the Singularityのところで,ゲーム画面の表示が左右で異なる件についてはAMDのWebキャストを見ていた一般ユーザーも気づいたようだ。それに対するAMDの公式な回答がRedditに上がっている(関連リンク)。
 そこでAMDのRobert Hallock氏が行っている説明によると,「本来であれば,雪はもっと積もっているのが正しい。雪が少なく見えるGTX 1080のほうに問題がある」とのことだ。

 一方,Ashes of the Singularityの開発元であるOxide Gamesの見解はというと,ドライバのバグ,もしくはシェーディング精度にFP16を採用している影響(※ただし「どっちが」という件に関する言及はない)とのことである。




VRに興味のある人やコンテンツ開発者は,

「VR Funhouse」を体験してほしい(Walker氏)


 GTX 1080のFounders Editonは,メーカー想定売価が699ドルだったが,実際の店頭売価は,日米のどちらも想定売価よりもだいぶ高い。この点についても聞いてみた。

 「初物価格ということだね。実勢価格が高騰していることは,我々も把握している。これは市場のダイナミクスだから,我々にも制御しきれない部分がある。ただ,量産はうまくいっているので,いずれは適正価格に落ち着くとは思うよ」(Walker氏)とのこと。当面は高値が続きそうである

GTX 1080搭載PCで,最新ゲームを大画面でプレイできる試遊コーナー。このときにプレイされていたのは,6月9日発売予定の「Mirror's Edge Catalyst」だった
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 最後にWalker氏から,日本のNVIDIAファンに向けたメッセージを預かってきた。

 「VRに興味がある人は,ぜひ『VR Funhouse』を試してみてほしい(関連リンク)。
 VRの楽しさは,仮想世界とインタラクト(相互作用)できることが大きい。VR Funhouseは,仮想世界に登場するさまざまなキャラクターや道具と,非常に近づいてのリアルタイムなインタラクションが楽しめるので,VR入門にはもってこいだ。さらに,開発者の諸君。VR Funhouseは,オープンソース化してあるので,自身のVRコンテンツ制作に向けて役立ててほしい。
 ゲーム本編はSteamで無償提供するし,オープンソース版は『VRWorks』で今後提供するので,ぜひチェックしてみてくれ。それと,Insomniac Gamesが開発したVRゲーム『The Unspoken』もお勧めだ。対戦型のVRゲームには,新しい楽しさがあるね」


「ラチェット&クランク」シリーズで有名なInsomniac Gamesが開発した対戦型VRゲーム「The Unspoken」。2人のプレイヤーが互いに向き合い,魔法を撃ち合って相手を倒すVRゲームだ。筆者も体験したが,2回やって2回とも敗戦(笑)
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NVIDIAのCOMPUTEX TAIPEI 2016特設ページ(英語)

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  • 関連タイトル:

    GeForce GTX 10

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