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個性的な指導者を選び,世界に冠たる大帝国を築け。「シドマイヤーズ シヴィライゼーション VI」のプレイレポート
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印刷2016/11/02 10:00

プレイレポート

個性的な指導者を選び,世界に冠たる大帝国を築け。「シドマイヤーズ シヴィライゼーション VI」のプレイレポート

 2016年10月21日,ストラテジーゲームファン待望の「シドマイヤーズ シヴィライゼーション VI」(以下Civ6)が発売された。筆者も発売直後の週末をまるまる費やしてプレイしたのだが,「シヴィライゼーション」シリーズでおなじみの「あと,もう1ターンだけ。それが終わったら原稿を書こう」が続くといった感じの中毒性の高さにしっかりやられてしまった。

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「シドマイヤーズ シヴィライゼーション VI」公式サイト


 4Gamerでは,2Kが韓国で行ったイベントや,プレビュー版に基づくファーストインプレッションなどを紹介しているが,今回のレビューでは,製品版をプレイしたうえでCiv6のゲーム内容を紹介していきたい。……さて,あと,もう1ターンだけやってから続きを書こうかな。

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個性的な指導者を選んで,世界に冠たる大帝国を築け


 「シヴィライゼーション」シリーズは我々人類の歴史をテーマにしたターン制の国家運営シムで,プレイヤーは実在した(あるいは,している)文明の指導者として,石器時代から現代に至る約6000年の期間で自分の文明を発展させていくという,スケールの壮大さが大きな魅力になっている。
 ただ,歴史ゲームといっても「デンマークはかつて,インドに植民地を持っていたことがある」といったマニアックな知識が要求されるわけではなく,むしろ,「そういえば,世界四大文明というのを学校で習ったなあ」というくらいの漠然とした情報しか持っていないほうが楽しめるだろう。というのも,このシリーズで扱われる歴史的情報の多くはゲーム用にかなりデフォルメされており,ゲーム展開も史実とは大きく異なるからだ。
 その好例が,プレイヤーが選択できる文明とその指導者だろう。彼らが持つゲーム上の特徴は,史実を踏まえながらも,ときに過剰ともいえる省略や誇張が行われている。

 Civ6に登場する文明は通常版で18種類あり,DLCではアステカが追加される。というわけで,これらの文明の指導者と特性を簡単に見ていこう。

イギリス帝国は固有能力として考古学に関するボーナスの付く「大英博物館」を持つ。その指導者であるヴィクトリアには「王立海軍造船所」「シードック」「パクス・ブリタニカ」など,海洋国家らしい特性が多いが,「レッドコート」のように陸上戦闘にも対応している
イギリス帝国
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フランス帝国は中世から産業時代までの遺産建設に関するボーナスを持つ。指導者カトリーヌ・ド・メディシスは16世紀のフランス王妃で,出身地のイタリア仕込みの権謀術数を駆使した。ゲームでもそれにちなみ,「特別遊撃隊」のような諜報,防衛系の特性を備える
フランス帝国
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仏教とヒンズー教を生んだインド帝国は,国内に存在する,1人でも信者のいる各宗教から信仰力を獲得できるという「ダルマ」が固有能力となる。ガンジーはシリーズおなじみの指導者で,非暴力非服従運動に基づく特性を持つ。とはいえ,「核ミサイルを乱発する,好戦的なガンジー」はシリーズの不思議歴史を端的に示す定番ネタでもある
インド帝国
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シュメール帝国の固有能力「伝説の勇者」は,蛮族の前哨地を攻略するときや,都市国家からのユニットを徴募するときにボーナスを与える。指導者ギルガメシュ「エンキドゥの冒険」は,同盟国と共同で戦争を行う際に有利となる特性だ
シュメール帝国
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ナイル川の恵みで発展したエジプト帝国は,川沿いや氾濫原に遺産などを建てる際の建設ボーナスを有する。指導者のクレオパトラは,強力な貿易特性である「地中海の花嫁」のほか,「スフィンクス」を固有施設として持つ
エジプト帝国
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政府に追加政策スロットを与える,「プラトンの『国家』」を固有能力とするのがギリシャ。Civ6で登場する文明中の中で唯一,2人の指導者のどちらかを選べる。ゴルゴーはペルシャとの戦争を指導したスパルタの王,レオニダス1世の后で,戦闘に勝利すると,倒したユニットの戦闘力の半分に等しい文化力を獲得できる。一方のペリクレスはスパルタのライバルであったアテネのリーダーで,文化,外交面に強い
ギリシャ帝国
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アラビア帝国は,イスラム教の生まれ故郷にちなんだ「最後の預言者」という固有能力を持つ。指導者サラディンも宗教型だが,特性の「信仰がもたらす正義」は科学や文化にもボーナスを与える
アラビア帝国
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アメリカ帝国は,ゲーム終盤の固有軍事ユニットを複数備える。指導者のテディ(セオドア)・ルーズベルトの固有能力は,自分の首都がある大陸での戦闘にボーナスを与える「ルーズベルト理論」
アメリカ帝国
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スキタイ帝国は,ペルシャと激戦を繰り広げた古代中央アジアの遊牧民族。軽騎兵や,固有ユニットのサカ族弓騎兵を生産するたび,同じユニットをもう1つ入手できる「草原の民」は相当強力なボーナスだ。指導者トミュリスの特性,「キュロスの殺し屋」も戦闘に向いている
スキタイ帝国
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ローマ帝国の固有能力,「すべての道はローマに通じる」は交易にボーナスを与える。指導者トラヤヌスも文化寄りの特性を持つことから,この文明は全体的に内政好きのプレイヤー向けと言っていいだろう
ローマ帝国
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ロシア帝国は,寒冷地での領土拡張に強い文明だ。指導者のピョートルはロシアの大国化に貢献した近世の君主で,自分より高度な文明と交流することでボーナスを得る特性「大使節団」も,彼が西欧に留学した逸話に基づいている
ロシア帝国
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スペイン帝国の固有能力は,通常より早く大艦隊を編成でき,大陸間の貿易にもボーナスを与える「財宝船団」で,固有ユニットは「コンキスタドール」。指導者は,16世紀スペインの全盛期を築いたフェリペ2世で,自国の宗教を布教するのに有利な「エル・エスコリアル」という特性を持つ
スペイン帝国
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ブラジルは熱帯雨林近くの都市開発にボーナスを与える特性「アマゾン」や,固有区域の「ストリートカーニバル」を有している。指導者のペドロ2世は帝政時代のブラジル君主で,偉人に使ったリソースの20%を取り戻せる,「寛容」の特性を備える
ブラジル帝国
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コンゴ帝国の固有能力,「ンキシ」は遺物や秘宝,傑作から追加ボーナスを得ることができるというもの。また固有区域の「ンバンザ」は,ゲーム後半で都市を急速に発展させるのに向いている。指導者ムベンバ・ア・ンジンガの特性「改宗」は,自分で宗教を創始できない代わりに他文明の宗教を布教させてボーナスを得るという,ちょっと変わったもの
コンゴ帝国
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ノルウェー帝国は,史実のヴァイキングの活動を体現する文明で,固有能力の「クナール」により,かなり早い段階で外洋に乗り出せる。指導者の苛烈王ハーラル3世は,海上ユニットによる沿岸部略奪ができる「北方の稲妻」を保有しており,敵に回すと怖い存在だ
ノルウェー帝国
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中国は特性「王朝の盛衰」により,テクノロジー研究に他文明よりも大きなブーストが得られる。また,従来作では世界遺産であった万里の長城も,本作では中国独自の施設になった。指導者である始皇帝は,労働者を使役して遺産建造を推進する「最初の皇帝」という特性を持つ
中国帝国
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ドイツ帝国は,各都市に設置可能な区域を増やす「帝国自由都市」や独自の商業区域である「ハンザ」など,中近世の神聖ローマ帝国時代に由来する特徴を数多く備えている。指導者は赤髭王フリードリヒ1世で,イタリア都市国家相手に戦った史実にちなむ,「神聖ローマ皇帝」の特性を持つ
ドイツ帝国
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気になる日本帝国は,剣士に代わる固有ユニット「侍」や,ゲーム終盤の工業力や文化力を強化できる「エレクトロニクス工場」などが固有能力となる。指導者である北条時宗の特性は,沿岸部での戦闘にボーナスを与えると同時に兵営,聖地,劇場広場の区域の建設時間も短縮する「神風」
日本帝国
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アステカ帝国のモンテスマは,DLCで追加されることになった。強力な戦闘ユニットよりも,「トラクトリ」「君主からの贈り物」などの固有能力によって戦争時の疲弊を抑えながら戦えることが特徴だ
アステカ帝国
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 日本の指導者が北条時宗,ということからも分かるように,本作の各文明の指導者は,かなり通好みのチョイスになっている。エジプトのクレオパトラやインドのガンジーのようなシリーズ最古参の指導者達のほうが希少な存在だ。
 また,19種類の文明をざっと見てもらえば気づくように,各文明には「戦争向き」「内政向き」といった方向付けが行われている。ゲームの勝利条件も「軍事的な征服」「観光による文化勝利」「宗教による支配」「科学力を駆使した火星植民」など,さまざまなものがあり,自分のプレイスタイルに合った文明や勝ち方を選ぶことができる。
 もちろん,すべての文明はそれなりに汎用性があるので,デフォルトでは内政向きだが,軍事大国に成長させてみよう,という遊び方も楽しいだろう。


もう一つの地球を探索し,都市を建設して勢力を広げる
伝統と格式を誇るプレイスタイル


 文明や,そのほかのセッティングが終わったら,いよいよゲームスタートだ。マップはランダムに生成されるため,現実とはかなり異なる,個性的な地形になることが多い。ファンの多くは,この世界をもう一つの地球ととらえ,ゲームデザイナーにちなむ「シド星」と呼んでいる。プレイヤーは,そんなシド星に降り立って,ほかの文明と競っていくのだ。

 シリーズ従来作と同様,Civ6ではスタート時,都市を建設する開拓者と,最初期の戦闘用ユニットが1体ずつ与えられる。筆者の場合,ターン数節約のため,ゲームスタート時に開拓者がいる地点で即座に都市建設を開始することが多いが,まずはマップ上の資源の場所を確認し,それらの近くへ開拓者を移動させてから都市を建てるのがセオリーだ。

マップに点在する資源には,ボーナス資源,戦略資源,高級資源があり,それらを開発(ゲーム内用語では「改善」)することで活用できる
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(左)大半の資源はゲーム序盤に発見できるが,石油,アルミニウム,ウランのように終盤にならないと見つからない重要な資源も存在する。(右)開拓者の生産には,それなりにコストがかかる。開拓者をどんどん作って自文明の領土を拡張するか,それともその分のリソースを既存の都市に振り分けるかは,「シヴィライゼーション」シリーズでおなじみのジレンマだ
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 戦闘用ユニットである戦士は,都市の守備に回してもいいし,周辺を探索させてもいい。個人的には,マップ上を探索して不明だった部分を少しずつ明らかにし,他文明との出会いを重ねていくことがシヴィライゼーションシリーズの中でも最も楽しい部分であり,どんな世界なのだろうと,プレイのたびにワクワクしてしまう。

iv6のグラフィックスは,親しみやすいカートゥーン調が採用されている。また,上のような地図は古典古代を思わせるタッチで,歴史ゲームを遊んでいるという気分に浸れる
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 ユニットの移動や都市における生産の指示などが終わると,1ターンが終了する。Civ6ではAIに委任していないユニットへの命令など,必要アクションを済ませないとターンが終わらず,うっかり命令し忘れることはない。
 この点を含め,Civ6のユーザーインタフェースは全般に「シドマイヤーズ シヴィライゼーションV」(以下,Civ5)のデザインを継承しつつ,ブラッシュアップが図られたという印象だ。都市やユニットに命令を出したり必要な情報にアクセスするためのクリック数は,大型ストラテジーゲームとしてはかなり少なくて済む。また,時間を忘れてプレイしてしまう人のために,現実世界の時刻も画面にちゃんと表示されている。もっとも筆者は,ほかにやるべきことがあっても遊び続けてしまうので,効果のほどは怪しい。


従来作より格段に深みが増した都市開発システム


 都市の開発と運営は,「シヴィライゼーション」の根幹となる要素だ。都市にはそれぞれ領域があり,そこに市民を配置することによって,プレイヤーはゴールド,科学力,信仰力などを獲得し,それを原資に文明を発展させる。また,都市は各種ユニットの生産拠点でもあり,勢力をさらに拡張するためにも不可欠だ。

 Civ6では,以上のような都市の役割はそのままに,開発システムを大きく変更した。
 最大の変更点は,従来は都市の中に建設していた施設の多くを,都市が支配する周辺タイルに設置するようになったことだ。
 これにより,まずビジュアルが華やかになった。ゲームが中盤以降に入り都市の開発が進んでくると,マップにはさまざまな建造物が建ち並ぶ。都市開発という,重要だがどちらかというと地味な作業の成果が画面上で明確に表現されるようになったのは,プレイヤーとしても嬉しい。

マップの表現という点では,前作を上回るクオリティ
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 マップに施設を設置することで,従来作とは別の方法で都市を運営をしていくことがプレイヤーに求められるようになった。
 そもそも,都市を建設する場所の選択からして,大きな影響を受ける。従来作であれば各種資源をできるだけ取り込める場所に都市を設置するのが有効であり,スタート時点で資源が近くにないと,その後の展開がかなり不利になった。だが,Civ6では,資源が領域内にある分,施設を建てるスペースが食われる。都市の将来的な発展という点では,資源を周辺に抱えた都市を建設するのは,必ずしも得策とは言えなくなったのだ。

区域の1つ,「キャンパス」を設置しようとしているところ。設置場所によって,微妙にボーナスが変わってくるので,気をつけたい
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 また,限られたスペースに軍事,教育,宗教,商業などの「区域」を建てていくというシステムも,Civ6における都市経営の戦略性を高めている。時間や資源が限られる中,あらゆる施設を建てることは事実上不可能であるため,「この都市は敵に近くなるだろうから,軍事拠点にしよう」とか「この都市は交易の中心にして,商業特化型にしよう」などの選択を,かなり早い時期にする必要がある。
 逆に言えば,たとえシヴィライゼーションが初めてという人でも,熟練プレイヤーがするような“都市の専門化”をスムーズに行うための役割を,区域が担っているとも考えられる。

全世界で1つしか存在できない「遺産」も,タイルを1枚使う。今回,建設は慎重に行ったほうがよさそうだ
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(左)筆者が初回プレイ時に選んだ日本の北条時宗は,区域を隣接させることでボーナスが得られる「明治維新」という特性も持っているため,都市や区域の設置場所には,とくに頭を使う。(右)労働者だけでなく,都市からもタイル状に区域を広げていけるため,労働者は1人あたり建築3回までの使い捨てに
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 区域の登場によって変わった部分として,海上ユニットを生産できる都市が作りやすくなったことも強調したい。Civ6では,海上ユニットの生産のために都市が海岸沿いにある必要はなく,領域内に区域「港」を設置することでも行える。そのため,「新都市は艦船の拠点となる場所に作りたいけど,内陸にある重要な資源も領域に収めたい」という場合の二者択一がなくなったのだ。
 Civ6では艦船にボーナスのつく文明が多くあるが,そうした文明を好むプレイヤーにとっては朗報だろう。

このウルクのように,都市が内陸にあっても港があれば空母なども作り放題だ
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 都市開発の,このほかの変更点としては,従来作にあった「幸福度」の廃止が挙げられる。Civ6では,これに代わって「住宅」「設備」の2種類のパラメータが追加された。住宅は都市人口の上限数を決定し,一方の設備は(日本語だと,ちょっと変な語感だが)住民の満足度を指す。これらの数値が低いと人口増加の速度が鈍ったり暴動が起きたりするのは,シリーズ従来作と同様だ。

(左)基本的にプレイヤーが道路を引く必要がなくなったことも,Civ6のさりげないが重要な変化。道路は,都市間の交易を行う隊商が勝手に引いてくれる。便利と言えば便利だが,線路や道路を自由に引けなくなったのはちょっと寂しい気もする。(右)現実の都市同様,都市には水が欠かせない。Civ6では「水域」というパラメータがあり,川や海,あるいはオアシスの近くなど,水がある場所に都市を建設しないと,人口の上限数に大きなペナルティを受ける
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 このように,Civ6の新しい都市開発システムは,街を作るという点で「シムシティ」のような本格的都市経営シムの面白さを取り込みつつ,シリーズ初心者と経験者の双方にとってやり応えのあるものになっているのだ。


テクノロジーは物質的な「技術ツリー」と
文化的な「社会制度ツリー」の二本化に


 都市開発と並ぶ「シヴィライゼーション」シリーズの目玉であるテクノロジーについても,Civ6は前作を継承しつつ変化を加えている。
 大きな違いは,Civ5にあった各種の社会制度が,文明の精神的発展を表現した「社会制度ツリー」に1本化され,物質的進歩を表す「技術ツリー」に対置されたことだ。それぞれのツリーに必要なリソースも,「科学力」と「文化力」になった。

 都市やユニットを強化し,他文明に勝つには技術ツリーを進めていかなければならないが,社会制度のほうもおろそかにはできない。
 なぜなら,社会制度ツリーは,シリーズでおなじみの政治体制とも関連しており,新たな社会制度を発明していくことで,より高度な政府へ「政体」を変更できるほか,さまざまなボーナスを与えてくれる「政策」を設定できるからだ。政策のもたらすボーナスは強力で,局面を大きく変える力を持っている。

技術ツリーと社会制度ツリー。ここで表示されているのは全体のごく一部にすぎない。技術のアンロックと,施設やユニットの完成が数ターンおきに,交互にやってくる絶妙さこそが,「あと1ターンだけ……」という熱中を引き起こす原因だと筆者は思っている
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 これらの新たなツリーシステムでちょっと気になったのは,行き止まりの技術が割と多かったことだ。例えば,「弓兵」の技術は石器時代に研究できるが,次世代技術の前提となっていないため,先進技術を早くアンロックして次の時代に進みたいという場合の魅力が乏しい。
 とはいえ,こうした行き止まりの技術には使い勝手の良いものが多いので,プレイヤーは今,役に立つ技術の研究を優先させるか,それとも発展性のある技術にするかの選択を迫られることになるだろう。

政策は,軍事,経済,外交に加えて「偉人」の出現率にさまざまな影響を与える。新たな社会制度を発明したとき,ペナルティなしで政策を変更ができるので,そのつど最適なものを選んでいこう
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時代が進むにつれて,より多くの政策スロットを持った政府が選べるようになる。共産主義に対する評価が妙に高いのも,シリーズ恒例だ
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 また,Civ6では「積極的な研究」と呼ばれる新システムにより,プレイヤーの行動とテクノロジーの進展とがより密接に関わってくる。
 例えば,資源の上に施設を作ることで「灌漑」の研究に,あるいはキャラベル船を2隻保有することで「探検」の研究に,それぞれブーストがかかる。これが積極的な研究だ。ブーストは,何も考えずにプレイしていても発動するものから,意図的に狙っていかないと達成できないものまでさまざまあり,ゲームにランダム性を加えつつ,戦略に一定の方向性を与えるという働きを持っている。

技術ツリーのブーストは「ひらめき」,社会制度ツリーのブーストは「天啓」と呼ばれる
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 余談ながら,Civ6で導入された積極的な研究は,ストラテジーゲームのツリーシステムに対する新たなアプローチとして非常に興味深い。
 実際,研究ツリーのマンネリ化を解消するための模索はさまざまなタイトルで試みられており,例えば,2016年6月に発売されたParadox InteractiveのSFストラテジー「Stellaris」では,研究ツリーを見えなくすると同時に,次に選択できる技術にランダム性を与えていた。
 Civ6の積極的な研究は,ブーストの発動を通じてプレイヤーの研究順序に揺らぎを持たせている点でStellarisと似ているが,ゲーム内のアクションと技術進展とをリンクさせることで,インタラクティブな側面をより強調した,斬新なシステムだと感じられる。


前作を継承しつつ,微調整が図られた外交,軍事


 Civ6では外交軍事面でも前作に比べて細かい変更が加えられている。順に見ていこう。
遺産を作っていたら,中国の始皇帝に「名声が落ちた」といわれのない言いがかりをつけられた。本作のAIは,妙に人間くさい
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 まず外交だが,他文明との資源のやりとりや,同盟,宣戦布告などが行えるのは従来作同様だが,独自要素として,各文明の「アジェンダ」が用意されている。これはAI文明の「外交志向」といえるもので,彼らがどのような文明を好むかを表す。例えば,エジプトのクレオパトラは軍事力の高い文明を好むといった具合だ。軍事勝利を目指さないのなら他文明との友好関係が必要になるが,その場合はこうしたアジェンダを念頭に置いて自国の戦略を練っていくことになる。

 現状,AIがこのアジェンダに縛られすぎるあまり,外交関係が硬直化しすぎる傾向にあるようだが,ここが改善されれば,本作のソロプレイはより楽しいものになるだろう。

(左)都市国家に対しても働きかけができ,影響力を高めることで属国化が可能だ。(右)スパイを送り込んで他文明の動向を探ったり,サボタージュを扇動したりもできる
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(左)宗教システムもしっかりある。都市の信仰力を蓄積することでパンテオン信仰や宗教を開くことができ,その際のボーナスは,リストから自由に選べる。(右)Civ6ではゴールドのほかに信仰力を使って建設できる施設も数多いので,宗教による勝利をめざすかどうかに関わらず,信仰力を蓄積していくようなプレイが良さそうだ
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 軍事面でも基本的に前作を踏襲しており,ヘックスに基づくシステムが採られている。とはいえ,前作の大きな不満点でもあった「戦闘ユニットのスタックができない」という点が改善されているのは,戦いを好むプレイヤーにとって重要だ。
 Civ6では,主力となる軍事ユニットにサポートユニット,さらには「偉人」などの特殊ユニットをスタックできるようになり,例えば歩兵に衛生兵を付属させて生存性を強化したりなど,部隊運用に幅を持たせられる。
 また,ゲームが進むと,類似ユニットを統合して「軍団」にすることもできる。一度統合してしまった軍団は再度分離できないため,多方面へ軍事行動をしたいときなどには,よく考えなければいけないが,ゲーム終盤でPCの処理が重くなる中,膨大な量のユニットを管理しなくてもよくなったのはありがたい。

陸上ユニットだけでなく,艦船もまとめて「艦隊」にできる
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軍団化したうえでサポートユニットと偉人の「大将軍」をつけた部隊は,非常に強力
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ユニットの移動距離と蛮族の出現にはご注意を


 以上の特徴のほかにも,Civ5からCiv6にかけて変更された細かいルールは少なからず存在し,筆者は従来作の感覚でプレイしていてミスをすることもしばしばあった。こうした点はシリーズ経験者だから引っかかってしまうともいえるが,初めて本作を遊ぶ人にとっても気にすべきポイントだと思うので,序盤に関する2つの注意点を取り上げたい。

 1つめは,ユニットが移動するときのルールだ。前作までは,ユニットの残り移動力が1しか残っていなくても,移動力2が必要となる森林や丘陵のような地形に移動してターンを終えられた。ところが,Civ6ではこうした移動はできない。
 このルールの変化でとくに影響を受けるのが,敵ユニットと交戦している場合だ。筆者の場合,「前作までだったら追いついて撃破できた敵を,移動力不足により取り逃がした」というシーンがしばしば起きた。逆に,体力の落ちた移動力の低いユニットを逃がそうとしたが,あと1タイル分足らずに失うケースもあった。
 また,序盤の索敵ユニットである斥候は行動力3の快足が売りなのだが,ジャングルなどの移動の難しい地形で1ターンに2マス続けて進むことができなくなったため,スムーズに広範囲を偵察することが難しい。

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 2つめは,「蛮族」の存在だ。蛮族の前哨地はユニットや都市の視界外に存在し,そこから次々と蛮族ユニットが生まれてくるのだが,プレイの全期間を通じてその頻度はかなり高く,文明が脆弱な序盤ではやっかいな相手となる。

 蛮族が自都市を占領することはないようだが,前哨地を放っておくと2か所め,3か所めと次々に新たなものが生まれて都市の周囲が蛮族で埋まり,文明の成長がゲームにならないレベルまで阻害されてしまうのだ。
 これを撃退するためには,たとえ序盤でも戦闘ユニットを多めに作っておいたほうがいいだろう。筆者の経験からいえば,2,3ユニットの戦士がいるだけで,防衛がかなりやりやすい印象だ。また,前哨地は視界に入っていないタイルにあるので,自都市の外側にユニットを配置して視界外のエリアを減らすのも一つの手段だ。こうした積極的な防衛策は,交易ルートを守る上でも役に立つ。

 さらに,区域の中にあっても兵舎は防衛拠点として機能するので,ゲームが進んで都市からの遠距離攻撃ができるようになると,蛮族を撃退するのはかなり楽になる。
 それでも,100%の安全は担保できないため,他文明と接していない後背の都市がいつのまにか蛮族に略奪されていたというケースは,管理する都市やユニットが増加するゲーム後半に気を付けなければいけない点だろう。


シリーズ初心者にも経験者にもオススメできる
ボリュームたっぷりの本格的歴史ストラテジー


 全体としてCiv6のゲームシステムは前作に近く,言ってみれば,Civ5の2つの拡張版で追加された交易や観光,宗教などの要素を,新作という器に再度盛り込んだ作品とも言える。このため,リリース直後の,いわゆる「無印版Civ」としてはそれなりに複雑なルールになっているが,シリーズ経験者にとって納得のいくボリュームの作品に仕上がっている。
 とはいえ,Civ6は従来のシリーズの流れを継承しながらも,随所に新たな試みが盛り込まれた作品でもある。こうした新しいチャレンジの代償として,バランス面での問題がないわけではないが,本作で導入された新システムはおおむね,うまく機能しているように感じられる。

ゲーム内百科事典,「シヴィロペディア」は本作でも健在。ルールの確認だけでなく,プレイ中に気になった歴史用語を調べるのも簡単
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 また,「ルールが複雑」と上には書いたものの,インタフェースが分かりやすく工夫されていることもあって,シリーズ初心者にとってもハードルは高くない。むしろ,初めての人にシヴィライゼーションシリーズの一作を勧めろと言われたら,本作の名前を挙げることになるだろう。
 都市開発などのビジュアルにもかなり力が入れられているので,低めの難度で世界のあちこちに都市を作っていくだけでも十分楽しい。

ゲームに登場する偉人すべてが固有の能力を持っているのも,開発チームの歴史に対するこだわりだろう
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 自文明を成長させる過程で歴史の小ネタを拾っていけるのも,シヴィライゼーションシリーズの醍醐味だ。本作でも,その点はしっかりとフォローされており,フレーバーテキストは非常に充実しているし,テクノロジーごとに複数の「引用」が用意されている。
 筆者は引用の中でもチャーチルの「私は豚が好きだ…」というフレーズが妙に記憶に残っているが(どのテクノロジーに出てくるのかは,実際にプレイして確かめてほしい),あなたもきっと好きなフレーズができるはずだ。

 以上のように,初めての人がプレイすることで,ストラテジーゲームや歴史のファンになるのは間違いない作品であり,すでにストラテジーのファンであるという人にもオススメできる内容だ。機会があれば,ぜひプレイしてほしい。……さて原稿も書き終わったことだし,筆者もプレイに戻ることにしよう,ふふふ。

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「シドマイヤーズ シヴィライゼーション VI」公式サイト

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