プレイレポート
個性的な指導者を選び,世界に冠たる大帝国を築け。「シドマイヤーズ シヴィライゼーション VI」のプレイレポート
「シドマイヤーズ シヴィライゼーション VI」公式サイト
4Gamerでは,2Kが韓国で行ったイベントや,プレビュー版に基づくファーストインプレッションなどを紹介しているが,今回のレビューでは,製品版をプレイしたうえでCiv6のゲーム内容を紹介していきたい。……さて,あと,もう1ターンだけやってから続きを書こうかな。
個性的な指導者を選んで,世界に冠たる大帝国を築け
「シヴィライゼーション」シリーズは我々人類の歴史をテーマにしたターン制の国家運営シムで,プレイヤーは実在した(あるいは,している)文明の指導者として,石器時代から現代に至る約6000年の期間で自分の文明を発展させていくという,スケールの壮大さが大きな魅力になっている。
ただ,歴史ゲームといっても「デンマークはかつて,インドに植民地を持っていたことがある」といったマニアックな知識が要求されるわけではなく,むしろ,「そういえば,世界四大文明というのを学校で習ったなあ」というくらいの漠然とした情報しか持っていないほうが楽しめるだろう。というのも,このシリーズで扱われる歴史的情報の多くはゲーム用にかなりデフォルメされており,ゲーム展開も史実とは大きく異なるからだ。
その好例が,プレイヤーが選択できる文明とその指導者だろう。彼らが持つゲーム上の特徴は,史実を踏まえながらも,ときに過剰ともいえる省略や誇張が行われている。
Civ6に登場する文明は通常版で18種類あり,DLCではアステカが追加される。というわけで,これらの文明の指導者と特性を簡単に見ていこう。
イギリス帝国 |
フランス帝国 |
インド帝国 |
シュメール帝国 |
エジプト帝国 |
ギリシャ帝国 | |
アラビア帝国 |
アメリカ帝国 |
スキタイ帝国 |
ローマ帝国 |
ロシア帝国 |
スペイン帝国 |
ブラジル帝国 |
コンゴ帝国 |
ノルウェー帝国 |
中国帝国 |
ドイツ帝国 |
日本帝国 |
アステカ帝国 |
日本の指導者が北条時宗,ということからも分かるように,本作の各文明の指導者は,かなり通好みのチョイスになっている。エジプトのクレオパトラやインドのガンジーのようなシリーズ最古参の指導者達のほうが希少な存在だ。
また,19種類の文明をざっと見てもらえば気づくように,各文明には「戦争向き」「内政向き」といった方向付けが行われている。ゲームの勝利条件も「軍事的な征服」「観光による文化勝利」「宗教による支配」「科学力を駆使した火星植民」など,さまざまなものがあり,自分のプレイスタイルに合った文明や勝ち方を選ぶことができる。
もちろん,すべての文明はそれなりに汎用性があるので,デフォルトでは内政向きだが,軍事大国に成長させてみよう,という遊び方も楽しいだろう。
もう一つの地球を探索し,都市を建設して勢力を広げる
伝統と格式を誇るプレイスタイル
文明や,そのほかのセッティングが終わったら,いよいよゲームスタートだ。マップはランダムに生成されるため,現実とはかなり異なる,個性的な地形になることが多い。ファンの多くは,この世界をもう一つの地球ととらえ,ゲームデザイナーにちなむ「シド星」と呼んでいる。プレイヤーは,そんなシド星に降り立って,ほかの文明と競っていくのだ。
シリーズ従来作と同様,Civ6ではスタート時,都市を建設する開拓者と,最初期の戦闘用ユニットが1体ずつ与えられる。筆者の場合,ターン数節約のため,ゲームスタート時に開拓者がいる地点で即座に都市建設を開始することが多いが,まずはマップ上の資源の場所を確認し,それらの近くへ開拓者を移動させてから都市を建てるのがセオリーだ。
戦闘用ユニットである戦士は,都市の守備に回してもいいし,周辺を探索させてもいい。個人的には,マップ上を探索して不明だった部分を少しずつ明らかにし,他文明との出会いを重ねていくことがシヴィライゼーションシリーズの中でも最も楽しい部分であり,どんな世界なのだろうと,プレイのたびにワクワクしてしまう。
この点を含め,Civ6のユーザーインタフェースは全般に「シドマイヤーズ シヴィライゼーションV」(以下,Civ5)のデザインを継承しつつ,ブラッシュアップが図られたという印象だ。都市やユニットに命令を出したり必要な情報にアクセスするためのクリック数は,大型ストラテジーゲームとしてはかなり少なくて済む。また,時間を忘れてプレイしてしまう人のために,現実世界の時刻も画面にちゃんと表示されている。もっとも筆者は,ほかにやるべきことがあっても遊び続けてしまうので,効果のほどは怪しい。
従来作より格段に深みが増した都市開発システム
都市の開発と運営は,「シヴィライゼーション」の根幹となる要素だ。都市にはそれぞれ領域があり,そこに市民を配置することによって,プレイヤーはゴールド,科学力,信仰力などを獲得し,それを原資に文明を発展させる。また,都市は各種ユニットの生産拠点でもあり,勢力をさらに拡張するためにも不可欠だ。
Civ6では,以上のような都市の役割はそのままに,開発システムを大きく変更した。
最大の変更点は,従来は都市の中に建設していた施設の多くを,都市が支配する周辺タイルに設置するようになったことだ。
これにより,まずビジュアルが華やかになった。ゲームが中盤以降に入り都市の開発が進んでくると,マップにはさまざまな建造物が建ち並ぶ。都市開発という,重要だがどちらかというと地味な作業の成果が画面上で明確に表現されるようになったのは,プレイヤーとしても嬉しい。
マップに施設を設置することで,従来作とは別の方法で都市を運営をしていくことがプレイヤーに求められるようになった。
そもそも,都市を建設する場所の選択からして,大きな影響を受ける。従来作であれば各種資源をできるだけ取り込める場所に都市を設置するのが有効であり,スタート時点で資源が近くにないと,その後の展開がかなり不利になった。だが,Civ6では,資源が領域内にある分,施設を建てるスペースが食われる。都市の将来的な発展という点では,資源を周辺に抱えた都市を建設するのは,必ずしも得策とは言えなくなったのだ。
逆に言えば,たとえシヴィライゼーションが初めてという人でも,熟練プレイヤーがするような“都市の専門化”をスムーズに行うための役割を,区域が担っているとも考えられる。
区域の登場によって変わった部分として,海上ユニットを生産できる都市が作りやすくなったことも強調したい。Civ6では,海上ユニットの生産のために都市が海岸沿いにある必要はなく,領域内に区域「港」を設置することでも行える。そのため,「新都市は艦船の拠点となる場所に作りたいけど,内陸にある重要な資源も領域に収めたい」という場合の二者択一がなくなったのだ。
Civ6では艦船にボーナスのつく文明が多くあるが,そうした文明を好むプレイヤーにとっては朗報だろう。
都市開発の,このほかの変更点としては,従来作にあった「幸福度」の廃止が挙げられる。Civ6では,これに代わって「住宅」と「設備」の2種類のパラメータが追加された。住宅は都市人口の上限数を決定し,一方の設備は(日本語だと,ちょっと変な語感だが)住民の満足度を指す。これらの数値が低いと人口増加の速度が鈍ったり暴動が起きたりするのは,シリーズ従来作と同様だ。
このように,Civ6の新しい都市開発システムは,街を作るという点で「シムシティ」のような本格的都市経営シムの面白さを取り込みつつ,シリーズ初心者と経験者の双方にとってやり応えのあるものになっているのだ。
テクノロジーは物質的な「技術ツリー」と
文化的な「社会制度ツリー」の二本化に
都市開発と並ぶ「シヴィライゼーション」シリーズの目玉であるテクノロジーについても,Civ6は前作を継承しつつ変化を加えている。
大きな違いは,Civ5にあった各種の社会制度が,文明の精神的発展を表現した「社会制度ツリー」に1本化され,物質的進歩を表す「技術ツリー」に対置されたことだ。それぞれのツリーに必要なリソースも,「科学力」と「文化力」になった。
都市やユニットを強化し,他文明に勝つには技術ツリーを進めていかなければならないが,社会制度のほうもおろそかにはできない。
なぜなら,社会制度ツリーは,シリーズでおなじみの政治体制とも関連しており,新たな社会制度を発明していくことで,より高度な政府へ「政体」を変更できるほか,さまざまなボーナスを与えてくれる「政策」を設定できるからだ。政策のもたらすボーナスは強力で,局面を大きく変える力を持っている。
これらの新たなツリーシステムでちょっと気になったのは,行き止まりの技術が割と多かったことだ。例えば,「弓兵」の技術は石器時代に研究できるが,次世代技術の前提となっていないため,先進技術を早くアンロックして次の時代に進みたいという場合の魅力が乏しい。
とはいえ,こうした行き止まりの技術には使い勝手の良いものが多いので,プレイヤーは今,役に立つ技術の研究を優先させるか,それとも発展性のある技術にするかの選択を迫られることになるだろう。
また,Civ6では「積極的な研究」と呼ばれる新システムにより,プレイヤーの行動とテクノロジーの進展とがより密接に関わってくる。
例えば,資源の上に施設を作ることで「灌漑」の研究に,あるいはキャラベル船を2隻保有することで「探検」の研究に,それぞれブーストがかかる。これが積極的な研究だ。ブーストは,何も考えずにプレイしていても発動するものから,意図的に狙っていかないと達成できないものまでさまざまあり,ゲームにランダム性を加えつつ,戦略に一定の方向性を与えるという働きを持っている。
実際,研究ツリーのマンネリ化を解消するための模索はさまざまなタイトルで試みられており,例えば,2016年6月に発売されたParadox InteractiveのSFストラテジー「Stellaris」では,研究ツリーを見えなくすると同時に,次に選択できる技術にランダム性を与えていた。
Civ6の積極的な研究は,ブーストの発動を通じてプレイヤーの研究順序に揺らぎを持たせている点でStellarisと似ているが,ゲーム内のアクションと技術進展とをリンクさせることで,インタラクティブな側面をより強調した,斬新なシステムだと感じられる。
前作を継承しつつ,微調整が図られた外交,軍事
Civ6では外交,軍事面でも前作に比べて細かい変更が加えられている。順に見ていこう。
現状,AIがこのアジェンダに縛られすぎるあまり,外交関係が硬直化しすぎる傾向にあるようだが,ここが改善されれば,本作のソロプレイはより楽しいものになるだろう。
軍事面でも基本的に前作を踏襲しており,ヘックスに基づくシステムが採られている。とはいえ,前作の大きな不満点でもあった「戦闘ユニットのスタックができない」という点が改善されているのは,戦いを好むプレイヤーにとって重要だ。
Civ6では,主力となる軍事ユニットにサポートユニット,さらには「偉人」などの特殊ユニットをスタックできるようになり,例えば歩兵に衛生兵を付属させて生存性を強化したりなど,部隊運用に幅を持たせられる。
また,ゲームが進むと,類似ユニットを統合して「軍団」にすることもできる。一度統合してしまった軍団は再度分離できないため,多方面へ軍事行動をしたいときなどには,よく考えなければいけないが,ゲーム終盤でPCの処理が重くなる中,膨大な量のユニットを管理しなくてもよくなったのはありがたい。
ユニットの移動距離と蛮族の出現にはご注意を
以上の特徴のほかにも,Civ5からCiv6にかけて変更された細かいルールは少なからず存在し,筆者は従来作の感覚でプレイしていてミスをすることもしばしばあった。こうした点はシリーズ経験者だから引っかかってしまうともいえるが,初めて本作を遊ぶ人にとっても気にすべきポイントだと思うので,序盤に関する2つの注意点を取り上げたい。
1つめは,ユニットが移動するときのルールだ。前作までは,ユニットの残り移動力が1しか残っていなくても,移動力2が必要となる森林や丘陵のような地形に移動してターンを終えられた。ところが,Civ6ではこうした移動はできない。
このルールの変化でとくに影響を受けるのが,敵ユニットと交戦している場合だ。筆者の場合,「前作までだったら追いついて撃破できた敵を,移動力不足により取り逃がした」というシーンがしばしば起きた。逆に,体力の落ちた移動力の低いユニットを逃がそうとしたが,あと1タイル分足らずに失うケースもあった。
また,序盤の索敵ユニットである斥候は行動力3の快足が売りなのだが,ジャングルなどの移動の難しい地形で1ターンに2マス続けて進むことができなくなったため,スムーズに広範囲を偵察することが難しい。
2つめは,「蛮族」の存在だ。蛮族の前哨地はユニットや都市の視界外に存在し,そこから次々と蛮族ユニットが生まれてくるのだが,プレイの全期間を通じてその頻度はかなり高く,文明が脆弱な序盤ではやっかいな相手となる。
蛮族が自都市を占領することはないようだが,前哨地を放っておくと2か所め,3か所めと次々に新たなものが生まれて都市の周囲が蛮族で埋まり,文明の成長がゲームにならないレベルまで阻害されてしまうのだ。
これを撃退するためには,たとえ序盤でも戦闘ユニットを多めに作っておいたほうがいいだろう。筆者の経験からいえば,2,3ユニットの戦士がいるだけで,防衛がかなりやりやすい印象だ。また,前哨地は視界に入っていないタイルにあるので,自都市の外側にユニットを配置して視界外のエリアを減らすのも一つの手段だ。こうした積極的な防衛策は,交易ルートを守る上でも役に立つ。
さらに,区域の中にあっても兵舎は防衛拠点として機能するので,ゲームが進んで都市からの遠距離攻撃ができるようになると,蛮族を撃退するのはかなり楽になる。
それでも,100%の安全は担保できないため,他文明と接していない後背の都市がいつのまにか蛮族に略奪されていたというケースは,管理する都市やユニットが増加するゲーム後半に気を付けなければいけない点だろう。
シリーズ初心者にも経験者にもオススメできる
ボリュームたっぷりの本格的歴史ストラテジー
全体としてCiv6のゲームシステムは前作に近く,言ってみれば,Civ5の2つの拡張版で追加された交易や観光,宗教などの要素を,新作という器に再度盛り込んだ作品とも言える。このため,リリース直後の,いわゆる「無印版Civ」としてはそれなりに複雑なルールになっているが,シリーズ経験者にとって納得のいくボリュームの作品に仕上がっている。
とはいえ,Civ6は従来のシリーズの流れを継承しながらも,随所に新たな試みが盛り込まれた作品でもある。こうした新しいチャレンジの代償として,バランス面での問題がないわけではないが,本作で導入された新システムはおおむね,うまく機能しているように感じられる。
また,「ルールが複雑」と上には書いたものの,インタフェースが分かりやすく工夫されていることもあって,シリーズ初心者にとってもハードルは高くない。むしろ,初めての人にシヴィライゼーションシリーズの一作を勧めろと言われたら,本作の名前を挙げることになるだろう。
都市開発などのビジュアルにもかなり力が入れられているので,低めの難度で世界のあちこちに都市を作っていくだけでも十分楽しい。
自文明を成長させる過程で歴史の小ネタを拾っていけるのも,シヴィライゼーションシリーズの醍醐味だ。本作でも,その点はしっかりとフォローされており,フレーバーテキストは非常に充実しているし,テクノロジーごとに複数の「引用」が用意されている。
筆者は引用の中でもチャーチルの「私は豚が好きだ…」というフレーズが妙に記憶に残っているが(どのテクノロジーに出てくるのかは,実際にプレイして確かめてほしい),あなたもきっと好きなフレーズができるはずだ。
以上のように,初めての人がプレイすることで,ストラテジーゲームや歴史のファンになるのは間違いない作品であり,すでにストラテジーのファンであるという人にもオススメできる内容だ。機会があれば,ぜひプレイしてほしい。……さて原稿も書き終わったことだし,筆者もプレイに戻ることにしよう,ふふふ。
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