インタビュー
「ディアブロ イモータル」開発者インタビュー。モバイル向けMMORPGをベースにしながらも,スマホやPCでしっかり遊び込めるデザインに
当初はモバイル専用ゲームとしてアナウンスされた外伝的な存在だったが,iOSおよびAndroid版の正式ローンチに合わせて,6月3日にPC向けオープンβ版の公開が始まることも発表されている。
「ディアブロ イモータル」が6月3日に正式リリース。PC版のオープンベータテストも同日実施に
Blizzard Entertainmentは本日(2022年4月25日),基本プレイ無料(アイテム課金制)のスマートフォン向けオンラインアクションRPG「ディアブロ イモータル」を,日本時間6月3日にリリースすると発表した。また,Windows PC(Battle.net アカウントが必要)版のオープンベータテストも同日実施される。
今回,この開発チームにインタビューを行えることになったので,ローンチ直前の状況やゲームの狙いについて聞いた。インタビューを受けてくれたのは,Blizzard Entertainmentで19年めとなるベテランデザイナーで,「ディアブロIII リーパー オブ ソウルズ」をリードしたゲームディレクターのWyatt Cheng氏と,過去10年にわたってGREEやEA Shanghaiなどモバイルゲーム畑で経験を積んできたエグゼクティブ・プロデューサーのPeiwen Yao氏の二人だ。
ゲームディレクター Wyatt Cheng氏 |
エグゼクティブ・プロデューサーを務めるPeiwen Yao氏 |
ファンのフィードバックが生かされた,新しい形の「Diablo」
4Gamer:
まずは,すでに「ディアブロ イモータル」のプレ登録者数だけで3500万という驚くほどの数字を獲得していることについて,どうお感じですか?
「NetEase Connect 2022」の中国向け配信レポート。“Sky 星を紡ぐ子どもたち”や“ディアブロ イモータル”の最新情報もお届け
NetEase Gamesが実施したオンラインイベント「NetEase Connect 2022」は,日本向けの映像とは別に,英語圏向け,中国向けにも行われていた。そこで本稿では,中国向け番組の概要を紹介すると共に,「Sky 星を紡ぐ子どもたち」や「ディアブロ イモータル」などの現地情報をお届けする。
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- Android:ディアブロ イモータル
- ライター:川崎政一郎
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Peiwen Yao氏(以下,Yao氏):
正直,驚いていますが,そのためにテストを繰り返してきたとも言えます。これまで,1年半ほどにわたって3回の異なるαテスト,βテストを行いましたが,これはサーバーに負荷を与えて最高の状態でローンチできるようチェックすることを主眼に置いたものです。プレ登録の良いところは,どれだけのゲーマーが参加してくるのかを大まかに確認できるところで,こうした状況をエンジニア達と共有してローンチのために準備しているのです。
4Gamer:
PC版もリリースされますが,クロスプレイも可能なのですか?
Yao氏:
iOSとAndroid,そしてPCプラットフォームすべてで,クロスプレイとクロスプログレッション(異なるプラットフォーム間で進行を共有できる機能)を実現しています。4人でレイドパーティを組んだとして,それぞれのプレイヤーがお互い違うプラットフォームだったことに気付かず,楽しんでもらえるでしょうし,自宅にいるときでも,外出中でも,同じアカウントでストーリーやキャラクターの育成を継続していただけます。
4Gamer:
PCをサポートするというニュースは,私にとってもうれしいことです。年齢のせいか,少し(スマートフォンで)プレイしていると指が痛くて。
Wyatt Cheng氏(以下,Cheng氏):
当初の計画にはなかったPCのサポートを決定したのは,βテスト期間中に3〜4時間を超えてプレイし続ける人が多く,指が疲れるという意見が多く寄せられたこともあります。ローンチ時点でPC版はまだベータですが,サーバーはモバイル/PC版で共有されていますし,βから正式に移行する際にも進行が失われることはありません。
また,「Diablo」シリーズでも初めてのモバイルで基本プレイ料金が無料となることから,さまざまな層のゲーマーの皆さんが興味を持たれて参加してくると思いますので,アクセシビリティの良さは我々開発チームにとっても大きな課題であり,そのためにタッチコントロールだけでなくゲームパッドもサポートしています。
PC版でもゲームパッドをサポートしており,すべてのプラットフォームで異なる入力デバイスを心地良く使っていただけるよう努力しました。
4Gamer:
ただ,「ディアブロ イモータル」の大きなウリの1つであるPvPモードで,プラットフォームや入力デバイスにより差が出てくるということはないのでしょうか。
Cheng氏:
どのプラットフォームやどの入力デバイスでも,シリーズ本来の斜め見降ろし型視点によるゲームプレイやシステム面での変化は,ほぼないと確信しています。PC版のアナウンスをする以前には,この「ディアブロ イモータル」はモバイル専用ゲームであるというスタンスを我々が取っていたこともあり,コアゲーマーの中には「エミュレーターを使ってPCでプレイする」という声もありました。それなら我々が本気でPC向けのクライアントを作ったほうがいいと。
4Gamer:
キャラクターのカスタマイズ機能の追加は,シリーズにとっても初になりますね。ファンの間ではかなり期待されているようですが。
Cheng氏:
キャラクターのカスタマイズをアナウンスしたのは最近のことですが,実際にはかなり早くから開発を行っていました。具体的にお見せしていないのですが,ゲーム中の3Dキャラクターとポートレートの2Dキャラクターをどのように同期できるのか,つまり3Dキャラクターがギアでパワーアップした変化を,どのように2Dに落とし込むかに苦労しました。それも解決していますから,ローンチ時には皆さんに披露できるのを楽しみにしています。
Yao氏:
現実的には,小さなスクリーンのモバイルプラットフォームを主体とする「ディアブロ イモータル」でどれだけ多くのゲーマーの皆さんが,自分のキャラクターの見た目にこだわるのかという疑問は残ります。
しかし,我々はモバイルプラットフォームにおいても手を抜かず,AAAタイトルのアクションRPGを本気で作っています。ですから細かいアートやカスタマイズ機能も同様に開発を進め,ゲーマーの皆さんがDiabloのゲーム世界に没入していただくことを願っているのです。
4Gamer:
新しい機能と言えば,ロードアウト(迅速に装備などのビルドを切り替える機能)も見逃せませんね。
Cheng氏:
ロードアウト・マネージャは,多くのプレイヤーがβ期間中に熱望していたもので,そのフィードバックを我々が採用した良い例と言えるかもしれません。とくに他のプレイヤーと一緒にプレイする機会が多い「ディアブロ イモータル」では,異なるアクティビティを次々と行っていくためにプレイヤーのロードアウト,つまり身に着けている武器やアーマーをスピーディに変更するシステムが欲しいという声は多く出されていました。Armoryにてボタン1つで変更できますが,スキルセットやエッセンス・トランスファー,パラゴンツリーのセレクションなどもすべて記憶した状態でスイッチできるようになっています。
イモータルズとシャドウの飽くなき戦いをサポートする「闘争の円環」
4Gamer:
「ディアブロ イモータル」はMMO型アクションRPGと銘打たれ,グループでのプレイを念頭に置いたゲームシステムが用意されています。その中でも,「イモータル」が大きな特徴ですが,1つのサーバーに“イモータル”(不死の存在)と呼ばれる人物は1人しかいないのでしょうか。
Cheng氏:
それでは,このシステムについて説明させてください。簡単に言えば,1つのサーバーにあるサンクチュアリの支配者たる“ジ・イモータル”と呼ばれる称号を獲得できるのは1人のプレイヤーで,それは同サーバーで1位を獲ったギルドリーダーに与えられます。そして,そのギルドと2つの同盟相手が“イモータルズ”と呼ばれることになります。
もちろん,イモータルズはその地位を永遠には保てません。ギルドがイモータルズに昇格した時点で,サーバーにいる他のプレイヤーやギルドに狙われることになるからです。そして,ジ・イモータルに決戦を挑むことができるのは,ゲーム内の世界観で“シャドウ”という勢力に忠誠を誓い,“ダーク・ギルド”として登録したギルドに属するメンバーなのです。
4Gamer:
シャドウに所属するダーク・ギルドの数は決まっているのですか?
Cheng氏:
ダークであるかどうかに関わらず,1つのギルドに所属することができるのは100人までです。ダーク・ギルドがサーバー中にいくつ存在するのかは制限がありませんが,そうしたギルド同士のPvP戦に参加するギルドもあれば,緩い活動に留めてシャドウに参加しないというギルドも多くあるでしょう。
現時点で,少なくても1つのサーバーに50チームくらいのダーク・ギルドができるのではと想定しています。また,いくつものギルドが乱雑に誕生してしまうようなことを避けるために,ギルドを結成するには発起人がLv30に達し,プラチナを払うというプロセスを踏む必要がありますし,イモータルズになるにはLv43であるのが最低条件です。
4Gamer:
そのイモータルズとシャドウの戦いが,「闘争の円環」と呼ばれるシステムですね。
Cheng氏:
はい。毎週,ダーク・ギルドの中からトップの10組が選ばれて,イモータルズ(8vs.8)にチャレンジできます。シャドウ勢力側がイモータルズを追い詰めていくと,最終的にはそれぞれのダーク・ギルドの中から3人ずつ,計30人の代表者が選ばれて,ジ・イモータルと決戦するアリーナ「Rite of Exile」に進出。ジ・イモータル自身は巨大化して能力にもバフが与えられた“ラスボス”となり,30人と同時に戦うことになるわけです。
そして,ダーク・ギルドがジ・イモータルを倒すと,その時点でタイムカウンターが作動し,それがゼロになった時点で,今度は30人のプレイヤーによる,名誉をかけたバトルロイヤルが始まります。具体的には3人1組の10チームの対戦で,混沌としたプレイの中でうまくギルドメンバー同士で連携し合うこともできるかもしれません。
いずれにせよ,この決戦で最後まで残ったプレイヤーのギルドが次のイモータルズに,そのリーダーがジ・イモータルとなり,他の2つのギルドと同盟を組んで,少しでも長い間,シャドウの猛攻に耐えていくという流れになります。
4Gamer:
イモータルズになることの特典はなんでしょう。
Cheng氏:
まず,イモータルズに昇格した時点で,特典として“Founder’s Buff”が4時間にわたって与えられます。これは,10ヤードの範囲にいる個々のイモータルズに,+50%のマジックファインドが付与されるというもので,つまり4人でパーティを組めば+200%という驚くようなものとなります。さらにリーダーは,+100%のマジックファインド,+30%のアタックスピードと移動スピードが追加されます。
一方,ジ・イモータルとして,毎日こなさなければならないバウンティ風の“デイリー・ゴール”があり,これを達成しないとイモータルズのメンバーの毎日の活動に影響するので,リーダーとしての献身が必要です。
これとは別に,イモータルズの運営者として4人のメンバーにLeutenant(将校)という称号が与えられ,ジ・イモータルを含めた5人の上級幹部に,異なる属性を持つ「永遠なる王冠」(Eternal Crowns)が与えられます。幹部ではないイモータルズでも,彼らとパーティを組むことで,さまざまなバフが得られます。さらに,エリートと呼ばれるメンバーを複数選出でき,エリート以上のプレイヤーが参加することで,イモータルズ専用の48人レイド「カイオンの試練」(Kion's Ordeal)に挑戦できます。
幹部ではないメンバーも,それぞれにタスクをこなして得た「Sigil of Dominance」というリソースを幹部に提供することで,彼らの王冠がレベルアップしてより良いバフを得られます。
4Gamer:
それは,イモータルズになりたいというギルドも出てくるでしょうね。シャドウ側にも,そうした独自のゲームシステムはありますか。
Cheng氏:
シャドウの場合も,コントラクトなど行うべきアクティビティはいくつもありますが,中でも「宝物庫」(Vault)へのレイドは白熱したPvP戦になると思います。これはイモータルズがさまざまなお宝を収納している特別なエリアなのですが,条件を達成することでシャドウ側が侵入できます。もちろんイモータルズにとっては相手が盗みに来るわけですから,それを守るために実際のプレイヤーが防御側として立ちはだかり,4vs.4の戦いが繰り広げられるという趣向なんです。
さまざまな角度で誰でも楽しめるゲームに。さあ,聖戦に飛び込もう!
4Gamer:
「ディアブロ イモータル」のグループプレイでは“ウォーバンド”(Warband)も気になる要素です。
Cheng氏:
1つのギルドは最大100人と説明しましたが,その中でも時間が合ったり,気心が知れた仲間だったり,最大8人のプレイヤーで参加できる,それほど拘束力のない“ギルド内ギルド”のようなものがウォーバンドです。
拠点となる都市「ウェストマーチ」からアクセスでき,専用のプライベートチャットで何をするかといったことを話し合って,一緒にレイドを楽しんだりするわけです。
グループでレイドをこなすことで得点が加算され,8人協力プレイのレイドコンテンツ「ヘルクアリ」のリーダーズボードでも優位になりますし,PvEコンテンツをプレイしている最中には,専用のシェア・スタッシュ(共有倉庫)が利用できます。なお,属性の異なるルートアイテムを共有できますが,自分のものにできるのは1つだけという制限があります。
4Gamer:
ローンチ直前ですが,エンドコンテンツとして「破滅の領域」(Realm of Damnation)という新しいゾーンが紹介されました。
Cheng氏:
はい。ローンチ時のストーリーの最終ゾーンという位置づけで,“破滅の王”であるスカーンを追いかけて,地獄界へと潜入することになります。隠れ家や賞金クエスト,イベントなど,さまざまなアクティビティを最大8人でプレイできます。ここはLv55からLv60のプレイヤーを想定しています(β時のレベルキャップLv55から,ローンチ時にはLv60へと引き上げられる)。スカーンとの戦いは,月に1度程度のスピードで更新されていく予定です。
4Gamer:
「苦悶の縦坑」(Pit of Anguish)というのもその一部ですか?
Cheng氏:
そうです。苦悶の縦坑もスカーンのストーリーにおいては重要な役を果たしており,地獄の奥深くに埋められていた巨大なガルガンチュアン“Zaka”がこの場所から出現します。ゲーム中では難度の設定も可能で,ノーマルであれば一人でもプレイできますが,「Hell 1」や「Hell 2」へと難度を上げるたびに敵も強力になり,最大4人のプレイヤーが楽しめます。さらにウォーバンドを使ったウェストマーチから入るシステムを利用すれば,8人でプレイ可能です。
これとは別に,広大な「破滅の領域」のゾーンのどこかで一日に複数回,ランダムな地点に「地獄の門」(Damon Gate)が出現し,スカーンは自分の軍勢を強化しようと門の扉を開けます。ここに飛び込んで高い報酬を得ることもできますよ。
4Gamer:
報酬に関してですが,βテスト期間中で多く聞かれたのは,(アイテムの究極的なアップグレードに必要な)レジェンダリー・ジェムは,マイクロトランザクションでないと入手がほぼ不可能という話だったのですが。
Cheng氏:
それについては,2つの観点でしっかりお話ししておかなければなりません。1つは,この「ディアブロ イモータル」では,プレイヤーキャラクターを成長させていく方法は複数用意されているということです。レジェンダリー・ジェムは,その中の1つでしかなく,どのようなギアを装備し,どのランクにあるのか,どんなスキルを身に着け,パラゴンレベルはどうなっているのかなども重要です。
我々はXPブーストやゴールドブーストにつながるようなアイテムを販売しませんし,ゲーム中に出会う他のキャラクターが身に着けている荘厳なレジェンダリーアイテムは,彼らがゲーム中に自分の手で見つけ出し,ランクアップさせたものなのです。
それを踏まえた上で,レジェンダリー・ジェムには,β期間中のフィードバックからグローバルローンチでは大きく変更を加えており,エルダーリフトのクエストで獲得できる“クレスト”を利用することで,より入手しやすく改善されています。
つまり,レア・クレストをゲーム中に見つけてルーンを生産し,このルーンを使ってレジェンダリー・ジェムへと進化させるという工程を作ったのです。もちろん,レジェンダリー・ジェムそのものがレアですが,これで多くのゲーマーに満足してもらえると感じています。
4Gamer:
「ディアブロ イモータル」は,MMO型のゲームプレイが非常に濃厚ですが,ソロでプレイしたり,カジュアルなゲーマーだったり,もしくは仕事や学業にスケジュール上のムラがあって,ギルドへの奉仕になかなかコミットできないというゲーマーも多いとは思いますが。
Yao氏:
モバイルゲームという特性上,これまでDiabloシリーズを知らなかったというゲーマー層も多いですし,中には,他のプレイヤーと関わりたくないというゲーマーがいることも想定しています。ですから,とくにユーザー体験については慎重に検討や調整を重ね,チュートリアル部分はしっかり作り込んでおります。時間がそれほどないという方でも,自分のペースでストーリーをフォローしていけば,それだけで楽しい時間を過ごせるはずですよ。
Cheng氏:
本作には,サーバーレベルで「ワールド・パラゴン・システム」という新しいシステムを用意しています。これは,キャラクターレベルでのパラゴンシステムとは異なり,サーバーそのものに毎日+2のパラゴンレベルが加えられていきます。
これでどうなるかというと,そのパラゴンの平均値よりも低いプレイヤー,例えば新しく参加した人だったり,しばらくアクセスしていなかった人だったりが,そのサーバーにアクセスすると,経験値の上昇率が最大で2倍に上昇します。これは,レベルの違うキャラクターであっても仲間同士でプレイしやすくなることを念頭にデザインしたものですが,もちろんソロの人でも恩恵を受けられます。ですから,より多くの人に気兼ねなく自分のペースでプレイしてもらいたいですね。
4Gamer:
最後になりますが,「ディアブロ イモータル」を始めるうえで,プレイヤーが理解しておくことがあるとすれば?
Yao氏:
とにかく,ストーリーを追うだけでも本当に楽しくて引き込まれるゲームだということですね。それから,ハブとなっているウェストマーチに行って気軽にほかのゲーマーを見つけ,一緒にプレイするというソーシャルな体験をしていただければと思います。
そして最後に,このゲームは我々Blizzard Entertainmentが作り,運営するゲームだということで,ローンチ後もファンの声を聞きながらしっかりと改善し,より良いゲームに育てていくとお伝えしたく思います。Diabloシリーズを20年以上にわたってプレイしてきた人にも,「ディアブロ イモータル」が初めてという人にも,素晴らしい体験になるよう願っています。
4Gamer:
本日はありがとうございました。
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