プレイレポート
【2021年8月版】今,遊んでおくべきマーダーミステリー12選。300タイトル遊んだマダミスマニアが選ぶ,オススメ作品を一挙紹介
先だってのゲームマーケットでは,マーダーミステリーの専門ブースが設置され,大きな盛り上がりを見せていたし,テレビ番組やYouTubeの人気チャンネルで取り上げられるなど,コアなファンの間でのブームを超えた盛り上がりを見せている。
マーダーミステリーとは,担当するキャラクターを演じながら事件の解決を――もしくは犯人として真相の隠蔽を――目指して議論や調査を繰り広げるアナログゲームのいちジャンルだ。ここで詳細を説明するのは長くなりすぎるので,詳しくは先行する記事を参照いただきたい。
ネタバレありでお届けする,幕末マーダーミステリー「四つの眼窩」誌上リプレイ。未経験者にこそ知ってほしい,マダミスの魅力を徹底紹介
人狼ゲームやリアル脱出ゲームなどに続いて盛り上がりを見せているアナログゲーム「マーダーミステリー」。しかし一度しか遊べないというゲームの特性から,紹介が難しい面があった。そこで今回は,Rabbithole制作による「四つの眼窩」の誌上リプレイを,ネタバレありでお届けしてみたい。ときは幕末,とある寒村で事件の謎に迫る。
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- ライター:瀬尾亜沙子
今,話題の“新ジャンル”「マーダーミステリー」を見逃すな! 「人狼」「脱出ゲーム」に続く,アナログゲームの新潮流を徹底解説
「マーダーミステリー」が今,熱い。その名のとおり,殺人事件を題材とした推理ゲームだが,これが現在,“新ジャンル”としてアナログゲームの界隈で大変な盛り上がりを見せているのだ。今回はこのマーダーミステリーを改めて紹介すると共に,その魅力に迫ってみたい。
※本稿に記載されている情報は2021年8月現在のものです。販売/公演の形式や価格などは変更となる可能性があるのでご了承ください。
パッケージ販売型タイトル3選
始めてマーダーミステリーを遊ぶにあたっての最初のハードルは,「どこに行けば遊べるのか分からない」という点かもしれない。近くに専門店があるなら話は別だが,地域を問わず一番お手軽なのは,パッケージ販売されているタイトルを購入し,友人同士で集まって遊ぶことかもしれない。人数を揃える難しさはあれどゲームマスター(以下,GM)不要なものがほとんどなので,これならカードゲームやボードゲームで遊ぶのと変わらない。
プレイする場所はもちろん自宅などで構わないが,少し広めのスペースがあったほうが遊びやすいので,貸会議室などを借りてみるのもオススメだ。パッケージ代や場所代も,全員で割り勘にすればさほどの金額にはならないはずだ。
ここでは,そうしたパッケージ販売型のタイトルから,とくに初心者にプレイしてほしいタイトルを3タイトルチョイスしている。リアルで集まって何かするのはなかなか難しいご時世ではあるものの,状況が落ち着いたなら,ぜひ挑戦してみてほしい。
「マーダーミステリー・オブ・ザ・デッド」
- 販売形式:パッケージ販売
- プレイ人数:7〜8人(GM不要)
- 公称プレイ時間:180分
- 価格:3520円(税込)
- 制作・販売:グループSNE/cosaic(公式サイト)
「マーダーミステリー・オブ・ザ・デッド」は,テーブルトークRPGやボードゲーム業界でも老舗の制作集団・グループSNEが,「Mystery Party in the Box」と題して制作/販売しているマーダーミステリーシリーズの一作品だ。
本作の物語は,キャラクター達の元に逃げ込んできた男が何者かに殺害されたところから始まる。タイトルからも分かるように,いわゆる“ゾンビもの”のお約束を踏襲した作りになっており,本作でもショッピングモールへの立てこもりやゾンビを信奉する何者かとの抗争,謎の絞殺魔や夜な夜な響きわたる謎の歌声といった,さまざまなトラブルにプレイヤー達は見舞われることとなる。
それでいてマーダーミステリーとしての基本的構造もしっかりと押さえられており,その完成度は非常に高い。例えば本作はプレイ人数が7〜8名であるため,いわゆるバッファキャラ――人数が足りない場合に除外される登場人物――が存在するのだが,これが非常にうまくシステムに落とし込まれているのが面白い。バッファキャラというのは,言い方を変えれば「いなくてもゲームが成立するキャラ」ということでもあり,コアなマーダーミステリーファンには敬遠されがちだったりもするのだが,本作の場合,8人でのプレイ後に誰がバッファキャラだったのか考えてみても,恐らく気付かれることはないだろう。
殺害事件の真相を探りながらも,個々人の目的に沿って下準備を進めていくキャラクター達。そして迎えたクライマックスで,あなたはどういう行動を起こすのか。そして訪れる結末は。ハッピーエンドか,犯人がほくそ笑むのか,はたまたゾンビに蹂躙されてしまうのか。モールの惨劇がどう幕を下ろすのか,ぜひ体験してみてほしい。
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「魔女の聖餐式」
- 販売形式:パッケージ販売
- プレイ人数:5人(GM不要)
- 公称プレイ時間:120分
- 価格:3200円(税別)
- 制作・販売:ワンドロー(公式サイト)
「その館に入った者は呪われて死ぬ」という都市伝説が伝わる古い洋館――魔女館。館を購入した家主は,「事故物件コンサルタント」の探偵と,助手である霊感少女,動画配信者とともに館の調査をすることとなった。そんな導入から始まるのが,ワンドローの著名デザイナー・中村 誠氏が手がけたパッケージタイトル「魔女の聖餐式」だ。
舞台設定から分かるようにオカルト色が強く,キャラクター選択の段階から“記憶喪失の男”や“謎に包まれた眠れる美女”といった怪しげな登場人物が続々と登場。胡乱な空気が早くもテーブルを支配する。
魔女館の調査をする中で,プレイヤー達は新たな気づきを得ていくだろう。だがそれがあなたにとって有益なものかどうかは分からない。そもそも,初めの調査が始まった段階では,キャラクターが全員揃ってすらいないのだ! また館に満ちた不穏な気配は,キャラクターの精神を徐々に蝕んでいく。何度となく狂気に陥り,精神の限界を迎えた暁には……あなたのキャラクターが不幸な運命を辿らないことを祈るばかりだ。
ちなみにマーダーミステリーを数多くプレイしていると気付くのだが,実はマーダーミステリーのシナリオには,ある程度決まった“型”がある。それ自体は決して悪いことではないのだが,コアなプレイヤーほど固定観念に縛られがちな側面はあるかもしれない。その点,本作は独自のシステムがうまく機能しており,文字どおりの“型”破りを実現しているところも,本作の魅力となっている。さすが数々のボードゲームやカードゲームを世に送り出してきた中村氏といったところか。
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「消えたパンツと空飛ぶサカナ」
- 販売形式:パッケージ販売
- プレイ人数:5人(GM不要)
- 公称プレイ時間:60分
- 価格:2000円(税別)
- 制作・販売:アークライト
カードゲームやボードゲームの販売で知られるアークライトが開発を手がけたマーダーミステリー作品が,この「消えたパンツと空飛ぶサカナ」だ。人気のミステリージャンルとボードゲームの懸け橋とすべく同社が立ち上げた「ミステリーポータブル」シリーズのローンチ作品の一つとして発売され,ゲームデザインは国内におけるマーダーミステリーの隆盛を黎明期から支えた,ディアシュピールのかわぐちまさし氏が担当している。
事件の舞台となるのは,男女6人が共同生活を営むとあるシェアハウス。お気に入りの下着が無くなったと気づいたある女子大生が,同居人達を呼び出すところから物語はスタートし,下着の行方を追って物語が進行していく。プレイ時間は1時間程度,必要人数も5人とポータブルの名前にふさわしいライトさながら,推理,会話,密談,隠匿とマーダーミステリーにおける基本的な要素を漏らさず楽しめる,濃密なマーダーミステリー体験が特徴となっている。
章立て形式で,都度必要なものを封筒から取り出していく運用なので,GMがいなくてもカードの混同といったトラブルが起きにくい工夫も凝らされている。マーダーミステリーは初プレイという人同士が集まったときなどに遊んでも,楽しめる作品に仕上がっている。
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「消えたパンツと空飛ぶサカナ」公式サイト
店舗公演型タイトル3選
ご存じのとおり,マーダーミステリーは一度プレイしたシナリオは二度とプレイできないものだ。であればこそ雰囲気たっぷりの空間で,かつプロのGMのマスタリングで遊べる専門店は,初心者にとってもベストな選択肢と言えるだろう。パッケージ販売型に比べると価格面でやや割高ではあるが,その価値はあるはずだ。
ここでは,そんな専門店でのみ遊べる公演型のタイトルから,初心者にオススメの3作を紹介する。
なおこのタイプのシナリオを遊ぶには,まず店舗の公式サイトから予約をとる必要がある。プレイ人数が揃うなら身内で貸切にすることもできるが,空いている枠に飛び込んだ場合は初対面の人達と卓を囲む形になるので,そこは覚えておきたい。また昨今の情勢によって公演タイトルや営業時間,予約システムなどに変更があるケースもある。そこは各店舗のサイトをよく確認のうえ,プレイに臨んでもらえたら幸いだ。
「ミスカトニック大学図書館に潜む者」
- 販売形式:店舗公演
- プレイ人数:8人
- 公称プレイ時間:約180分
- 料金:4500円(税込)/1人
- 制作:Brian Humphreys(翻訳:天藍蒼穹)
- 取り扱い店舗:KING’S CROSS R.H. 水道橋店(公式サイト)
特徴は,本作が“クローズ型”と呼ばれるゲームシステムを採用しているところだ。現在の日本で遊ばれているマーダーミステリーは,そのほとんどがカードを引くことによるランダム性の元で情報を増やしていく“オープン型”なのに対し,クローズ型は得られる情報が最初から決められている。つまり「この物語はこう流れるのが一番面白い!」という制作者の確信の元に,物語が紡がれていくのである。
とはいえ,何もかもが一本道で,誰が遊んでも同じ物語になる,というわけではもちろん“ない”。配布される情報が同じでも,テキストを読み込み,判断し,キャラクターとして発言するのは生身のプレイヤーだからだ。なのでプレイ後は,ぜひともほかの回に参加したプレイヤーと感想を交わしてみてほしい。「同じ情報が与えられたはずなのに,こうも議論の内容が変わるの!?」と,きっと驚くに違いない。
また名称から分かるように,本作はクトゥルー神話をモチーフにした作品だが,プレイにあたって予備知識はとくに必要ない。むしろ知識がないほうが,新鮮な驚きを得られるだろう。またホラーではあるものの,いわゆる絶叫するような恐怖やスプラッタ的な嫌悪感は薄いので,ホラーものが苦手という人も,ぜひ挑戦してみてほしい。
「ミスカトニック大学図書館に潜む者」情報ページ
「裁判員の仮面」
- 販売形式:店舗公演
- プレイ人数:8人
- 公称プレイ時間:約180〜240分
- 料金:4000円(税込)程度/1人 ※店舗によって変動あり
- 制作:Office KUMOKANA
- 取り扱い店舗:JELLY JELLY CAFE立川店(公式サイト),マーダーミステリースペースScape Goat(公式サイト),マーダーミステリー専門店 NAGAKUTSU(公式サイト) など
誤解を恐れずに言えば,マーダーミステリーでは“エモい”と評される作品に人気が集まりがちな傾向がある。もちろん感情を揺さぶられる作品というのは強い印象を残すものだし,本稿でピックアップしているものを含め,筆者自身のお気に入りにもそういった作品は少なくない。
しかしマーダーミステリーをプレイしようと思ったとき,真っ先に期待したのはミステリーではなかったろうか。点在する手がかりを閃きとともに結び付けて,「犯人はこの中にいる!」と叫びたかったのでは? もしあなたが筆者のこの意見に賛同できるなら,選ぶべきタイトルはこの「裁判員の仮面」だ。
物語の舞台となるのは豪華寝台列車「マスカレード」。プレイヤーが演じるのは,その特等車両に集った8人の乗客達。とあるミステリー作品を彷彿とさせる設定からも分かるように,その車内では難解な事件が待ち受けている。仮面舞踏会の名を冠した列車名よろしく,プレイヤー達は実際に配布される仮面(と,車掌役は車掌帽も!)を身に着け,この不可解な謎に挑むことになる。
現在「裁判員の仮面」は,各地のさまざまなマーダーミステリー取り扱い店舗で遊べる環境が用意されている。その詳細はOffice KUMOKANAの公式サイトで確認できるので,未プレイであるなら,ぜひ最寄りの店舗を当たってみてはいかがだろうか。
「裁判員の仮面」情報ページ
「落日のコンスタンティノープル」
- 販売形式:店舗公演
- プレイ人数:8人
- 公称プレイ時間:約240分
- 料金:4500円(税込)/1人
- 制作:クリフ
- 取り扱い店舗:ボードゲームカフェ「ジョルディーノ」(公式サイト)
そんな同店でプレイできる「落日のコンスタンティノープル」は,舞台背景が中東という珍しい作品だ。キャラクターの配役も宰相や皇子,皇女,海軍提督や女官長,宝石商人などやはり独特なもので,異文化を感じながらの推理が楽しめる。
配役からも分かるように,話のスケールも壮大だ。プレイヤーのさまざまな決断や交渉が,後の世に残る国の歴史として刻まれていく。勝者となるには表舞台の交渉だけでなく舞台裏での暗躍が必要で,そのため各人との個別会話――いわゆる「密談」が非常に重要になるのだ。「彼は本当に味方なのか?」「敵対する相手から,何とか協力を取り付けられないものか」と,参加者達は信頼と疑心暗鬼の狭間で葛藤を繰り返すことになるのである。そして迎える予想外の結末とは。自由度の高いシナリオなだけに,結末次第で計り知れない達成感が得られるだろう。
また金属製のコインや,エチケット(ラベル)にタイトル名が書かれたワインボトルなど,物語への没入感を高める小道具が用意されているところもポイントが高い。必ずしも本作用というワケではないが,ジョルディーノでは貸衣装などのサービスもあって,役柄に衣装を合わせて楽しんでいるプレイヤーも多い様子。中東が舞台と聞くと,馴染みが薄いと感じる人も多いかも知れないが,パーティーゲームを起源の一つとするマーダーミステリーだけに,そうした“雰囲気”から入ってみるのも面白いのではないだろうか。
「落日のコンスタンティノープル」情報ページ
オンライン対応タイトル3選
マーダーミステリーを対面で遊ぶ機会がめっきり減ってしまった昨今だが,LINEやDiscordなどの音声通話ソフトを使ってオンラインでプレイする仕組みや,スマホアプリが充実したのはありがたいことだ。ここではそんなオンライン対応タイトルから,オススメの3作をチョイスしてみよう。
なおオンラインで遊べるタイトルの場合は,プレイに必要なシナリオ一式がダウンロード販売されるケースと,専門店による店舗公演の延長としてオンラインに対応したケースがある。今回紹介している3作も,タイトルごとに販売/公演予約の方式が異なるので,各タイトルの情報をよく確認してもらえたら幸いだ。
「償いのベストセラー」
- 販売形式:店舗公演(オンライン/オフライン両対応)
- プレイ人数:7人
- 公称プレイ時間:約180分
- 料金:3500円(税込)/1人
- 制作:Rabbithole(シナリオ:かとうゆうか)
- 取り扱い店舗:マーダーミステリー専門店 Rabbithole(公式サイト)
物語の発端はこうだ。
編集者とのやりとりやインタビューにさえ顔を出さないという小説家・藤原ナルミ。その神秘性からカルト的なファンを多く持つ,彼のオンラインサロンに投稿された一つの書き込みから物語は始まる。曰く,「死期が近づいているので,全財産を藤原先生にお譲りしたい。私が所有する山荘でお待ちしています」。その結果,件の山荘には藤原ナルミを名乗る人物が7人集うこととなった。
果たして本物の藤原ナルミは誰なのか。そもそも本物はこの場にいるのだろうか。山荘の管理人を含めた8人が顔を見合わせる不可思議なシチュエーション。だが,以上は物語の幕開けに過ぎない。ここから何が起きるのかは,ぜひプレイして確認してもらいたい。
ちなみに日本のマーダーミステリーシーンの黎明期を支えた作品に「ヤノハのフタリ」というものがあるのだが,その監修をつとめた久保よしや氏は,「償いのベストセラー」のプレイ後に「ヤノハのフタリは死んだ。役目を終了した」とまで語っている。実際の議論時間にして60分程度と非常にスリムにまとめられた本作に,氏も脱帽せざるをえなかったわけである。
なおオーイシ×加藤のピザラジオの公式サイトでは,本作の“本番シナリオ集”(配信台本)も販売されている。こちらは残部数少とのことだが,出演者が実際に書き込んだ内容がそのまま反映されているので,本作を細部まで味わい尽くすにはピッタリのアイテムとなっている。プレイ後に手に取ってみるといいかもしれない。
「償いのベストセラー」情報ページ
「狂気山脈 陰謀の分水嶺」シリーズ
- 販売形式:パッケージ販売(ダウンロード版あり)
- プレイ人数:6人(GM1人+プレイヤー5人)
- 公称プレイ時間:約240分
- 価格:1500円(税込)
- 制作・販売:山のよろずや ヤクの小屋
- 取扱店舗:BOOTH
舞台となるのは,南極最奥地にて新たに発見された世界最高峰・狂気山脈。その登山隊に参加したプレイヤー達は,隊長の謎の死を切っ掛けに,疑念と陰謀に怯えながらも,狂気に満ちた決死行を続けることとなる。事件の謎を追いながら進む登山隊に,果たしてどんな運命が待ち受けているのだろうか。
本作の大きな魅力は制作者両名による,マーダーミステリーの固定観念に縛られない発想にこそあるのかもしれない。盤面構成一つとっても,実際に登山をしているかのような雰囲気を味わえる仕掛けが施されていて,テーブルトークRPGの経験が長い制作者のこだわりが見てとれる。実際にプレイすると4〜5時間を要する,比較的長丁場なタイトルではあるものの,それに見合う体験ができることは間違いない。
制作者の一人であるまだら牛氏は本作のプレイ動画配信にも積極的で,氏のチャンネルではさまざまなゲストを招いて行われた,本作のプレイの様子を見ることができる。プレイ後に視聴すれば,自分達とは違う運命を辿った登山隊の結末をみられる。また既プレイ者向けのLINEオープンチャットもあり,こちらも盛況なのでプレイ後は覗いてみるのがオススメだ。
「狂気山脈 陰謀の分水嶺」販売ページ
「WORLD END」
- 販売形式:店舗公演(オンライン/オフライン両対応)
- プレイ人数:5人
- 公称プレイ時間:約180〜240分
- 料金:オンライン版2500円(税込)/1人
- 制作:とんとん(@mtmr000)
- 取り扱い店舗:NAGAKUTSU(公式サイト)
「WORLD END」は,地域密着型VRオンラインゲーム「WISH WORLD」の世界を舞台としたマーダーミステリーだ。学校名や勤務先などを登録することで,所属を同じくする身近な人でパーティを組めるというゲームだったが,残念ながらサービスが終了してしまうことに。
そのサービス最終日,ログインしていた彼岸高校に在籍する6人で構成されたパーティ“No.1113”は,ブザー音と共に,あるメッセージを目にすることとなる。曰く,「プレイヤーネーム『勇者』の死亡を確認」と。トラブルによりゲームの世界からログアウトできないなか,プレイヤー達はゲーム世界の中で勇者殺害の犯人を捜し出さなくてはならないのだ。
制作者のとんとん氏は,都市伝説をベースとした作品「裂き子さん」「口裂け女の微笑み」を相次いで発表し,口コミを中心にあっという間にマーダーミステリー作家としての評価を確立した作り手だ。
中でも「裂き子さん」は,TOKYO MXの連続ドラマ「アオイウソ〜告白の放課後〜」の原案にもなり,話題を呼んだ※。ほかにもTwitterマーダーミステリー「其之愛」や,「ひぐらしのなく頃に〜恨返し編〜」「ANIMA〜言の葉の回廊〜」など,幅広く作品を発表しており,今後の活躍にも期待ができる。
※「アオイウソ〜告白の放課後〜」は,現在YouTubeで全話の配信が行われている。ただし「裂き子さん」のネタバレが含まれるので未プレイの人は注意。
「WORLD END」は,当初はオンラインでのプレイを想定してリリースされたタイトルだったが,根強い人気によってオフライン公演も行われるようになっている。大阪・高槻市のマーダーミステリー専門店・NAGAKUTSUではオンラインとオフライン,どちらのプレイ予約も受付ているほか,とんとん氏自身もTwitterのDMで,オフラインでのGM依頼を受け付けているとのこと。制作者自らのGMで遊べる貴重な機会でもあるので,状況が許すならオフラインでのプレイを検討してもいいかもしれない。いずれにせよ,一度はぜひプレイして欲しい一作だ。
「WORLD END」情報ページ
アプリで遊べるタイトル3選
マーダーミステリーが遊べるアプリには「ミステリープレイ」から始まり「マダミ屋」「マダミス」とさまざまなものがリリースされているが,中でも筆者がオススメしたいアプリが「ウズ」(以下,ウズ)である。
この「ウズ」の特徴は,とにかく手軽で扱いやすく,そして遊べるタイトル数も豊富なことだろう。プレイヤーの募集からシナリオの閲覧,通話や密談までアプリ内で完結しており,プレイしたいと思って1分後には始められるほど気軽なのだ。また一部シナリオにはナレーション機能なども搭載されており,基本プレイ無料(有料シナリオあり)ながらリッチなプレイが楽しめる。
ここでは,この「ウズ」で遊べるタイトルから3タイトルを紹介してみたい。
マーダーミステリーアプリ「ウズ」公式サイト
「Smoker`s Panic」シリーズ
- 販売形式:アプリ内配信
- プレイ人数:3人(GM不要)
- 公称プレイ時間:150分
- 価格:無料
- 制作:青鬼才
マーダーミステリー制作サークル・青鬼才による「Smoker`s Panic」は,元々はWeb上で無料公開されていたものを「ウズ」に移植したシナリオだ。舞台は自然豊かな山荘。登場するのはバーベキューを楽しみにやってきた,姦しくもごく普通の3人の女子大生。ただ一つだけ変わっていたのは,3人は超のつく愛煙家だったのです――。
そんな導入から始まる本作では,結論から言えば殺人事件が起きたりはしない。愛煙家の3人は,なくしてしまったあるものをめぐって推理と議論を繰り広げるのである。当人達にとっては,殺人事件より余程大きな問題なのかもしれないが。殺人でなくとも,解明すべき謎があればそれはミステリーなのである。
「Smoker's Panic」を遊んでみて,まず気づかされるのはその圧倒的な筆力だろう。導入から各キャラクターのハンドアウト,エンディングに至るまで,文字数にすれば相当な量になるはずだが,とても読みやすい。文体のリズムも良く,会話シーンで名前が書かれていなくても誰のセリフかすぐ分かるようになっているなど,文章として非常にこなれているのだ。
マーダーミステリーをたくさん遊んでいると,なかなか内容が頭に入ってこないハンドアウトに出会うこともあるのだが,本作の場合その心配はない。それどころか,議論を始めるころには,自身が担当するキャラのファンになっていることだろう。キャラクターに愛着が湧けばこそ,ロールプレイもしやすく,謎の解明に前のめりになるというものだ。
もちろん,文章のみならずシナリオ自体のレベルも折り紙付きだ。プレイを終えて種明かしを聞く頃には,本作のシナリオがとても緻密に設計されたものであることに気付くはずだ。正直この完成度は,無料シナリオのレベルをゆうに超えている。
そうしたシナリオの人気に支えられてか,以降のシリーズ作品もすべて「ウズ」内でプレイできるようになっている。心霊写真をめぐるドタバタ劇を繰り広げることになる2作目「オカルト研には手を出すな!」,2作目で登場したキャラクターが加わり4人用シナリオとなった3作目「闇に滴る」,さらにはリリースされたばかりの4作目「シガーウォーズ」からスピンオフの「女には向かない授業」まで,一気に遊び倒すことが可能だ。
「Smoker`s Panic」公式ページ
「HOTEL Clue to Magic」
- 販売形式:アプリ内配信
- プレイ人数:3人(GM不要)
- 公称プレイ時間:90分
- 価格:無料
- 制作:きみどり水族館
本作もWebで無料公開されていたものの移植版にあたるタイトルだ。Pixiv内の作品ページによれば,公開は2020年4月とのことなので,今や急造しているインディーズのマーダーミステリー作品としても初期の作品ということになる。
3名用シナリオということもあって,本作のプレイ感は最初からクライマックスだ。自分が犯人でないとしたら,残る2人のどちらかが犯人なのだから当然だ。犯人としても,一刻も早く信頼を勝ち取らなくてはならない状況なわけで,ゲーム開始直後から議論まったなしである。
無料シナリオでありながら会話の駆け引きが楽しめる構成になっていて,1時間ほどの議論時間は,あっという間に過ぎ去ってしまう。犯人を特定する以外にも考えなければいけない要素もあり,ミニマムな人数,適度なプレイ時間,アプリというハードルの低さと,マーダーミステリー未経験者を勧誘するのにもオススメの一作となっている。
なおBOOTH内のきみどり水族館氏のページでは,“知人が実は吸血鬼であった?”というシチュエーションが楽しめる「血に飢えたロッジ」,1日時間を戻れる薬をめぐる研究室での事件を扱った「THE Captive to Chemical」,2人用となりサシでの議論に特化した「二人きりの宇宙船」「二人きりの遊園地」の5作が公開されている。本作をプレイして気に入った人は,こちらも手に取ってみてはいかがだろうか。
「HOTEL Clue to Magic」公式ページ
「ガーディアンズ・ミトロジア」
- 販売形式:アプリ内配信
- プレイ人数:5人(GM不要)
- 公称プレイ時間:130分
- 価格:無料
- 制作:えこ・ユート
正直に言えば,本作はこの記事で紹介するかどうか少なからず悩んだ作品だ。というのも,“初心者にオススメ”という本稿の主旨からは,いささか趣が異なるタイトルだからだ。
マーダーミステリーは完全に初めてという人は,できれば10作ほど,少なくとも3〜5作くらいはほかのタイトルを遊んでから,本作をプレイしてもらいたい。そのほうが本作の魅力をより深く理解できるはずだ。
本作の舞台となるのは,神々や精霊と人間が共存している世界。プレイヤーに割り当てられるキャラクターは,人間を守る「ガーディアン」として,日々大いなる邪悪との戦いを繰り返していた。そんな日,とあるガーディアンが殺害されて発見された。そして書きかけの日記には,こう記されていたのだ。
「俺を殺したのは,魂狩に参加しているんっっっっっっっっっっj」
ガーディアンを殺せるのは同じガーディアンのみなので,犯人はプレイヤーの中にいる。そして残された不可解なダイイングメッセージの意味とは。かくしてプレイヤー達は,いわゆるローファンタジー世界で展開される推理劇に巻き込まれていくこととなる。
ミステリーというジャンルに共通する問題として,ファンタジー世界を舞台にすることの難しさというものがある。大前提となる世界観をプレイヤー全員が把握していなければフェアなゲームにはならないし,何の説明も手がかりもなく「実は遠隔で殺せる魔法が使えました」では,真っ当な推理をするのも馬鹿らしくなってしまうからだ。本作「ガーディアンズ・ミトロジア」は,そんな問題への制作者からのアンサーが込められている。
正直,今回取り上げた12作中では若干粗が目立ち,人を選ぶシナリオではあるものの,刺さる人には刺さるタイトルと言える。キャラクターの心情に寄り添えば寄り添うほど,味わいが増すこと請け合いだ。
「ガーディアンズ・ミトロジア」公式ページ
記憶に残る,一期一会のマーダーミステリー体験を
Amazonなどで買えるメジャー作品から,無料で遊べるインディーズ作品まで,さまざまな形態で流通しているマーダーミステリー12作を紹介したが,いかがだっただろうか。今回は紹介できなかった名作も多いのだが,そこはどうかご理解いただきたい。もし遊んでみたい1作が見つかったなら,筆者としてもこれ以上嬉しいことはない。
マーダーミステリーは一期一会。どの作品を選んだとしても,あなたと,そしてあなたと共に卓を囲んだメンバーにとって,それは無二の物語になる。そんな記憶に残る体験を,ぜひとも楽しんでもらえたら幸いだ。
- 関連タイトル:
ウズ - マーダーミステリーアプリ
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マーダーミステリーアプリ「ウズ」
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マーダーミステリー・オブ・ザ・デッド
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