企画記事
「真・三國無双」シリーズの“戦場の臨場感”や“ワラワラ感”はどのように進化したのか。歴代の「黄巾の乱」をプレイして確認してみよう
「タクティカルアクションとしての原点回帰」を目指すORIGINSは,初報が出るや否やこれまでのシリーズを超える“戦場の臨場感”と,戦場に多数の兵士がひしめいている圧倒的な“ワラワラ感”が話題を呼んだ。11月に配信された体験版で,進化した“ワラワラ感”と呂布の強さに驚いた人も多いのではないだろうか。
さて,真・三國無双シリーズにおいて,兵士の“ワラワラ感”や“戦場の臨場感”といった部分は,かなり重要視される点だ。ナンバリングを重ねたり,ハードが次世代に移行したりするごとに上がっている印象があるが,実際のところシリーズはどのように変化してきたのだろうか。
本稿では,真・三國無双シリーズのナンバリングタイトルを初代から7までの黄巾の乱をプレイし,ステージごとの撃破数を検証。兵士のワラワラ感や戦場の臨場感の描写がどう進化していったか,システムがどのように変わっていったかを調べてみた。
なお,真・三國無双8については,オープンワールドというシステムの関係上,撃破数のカウントが困難だったので,今回は対象から外している。
プレイする際のルールは以下の通りだ。
・プレイ環境はPlayStaitonハードで行う
・検証ステージは黄巾の乱。3回プレイして最も高い撃破数を記載
・拡張ディスクの猛将伝を使った場合と使わない場合も検証し,著しい変化がある場合は記載する
・ステージにいる武将は可能な限り撃破し,露骨な稼ぎプレイはしない
真・三國無双(プレイ環境:PS2 / 撃破数:479人)
2000年8月に発売された真・三國無双シリーズの記念すべき1作目。前身となるPlayStationの「三國無双」は対戦格闘ゲームだったが,本作は軍団同士がぶつかり合うタクティカルアクションゲームとなった。
黄巾の乱のステージは,最奥にある祭壇に張角が待ち構え,そこに至るまでの進路を張宝,張梁が塞いでいるというもの。マップのほとんどを占めるのが,中央にあるだだっ広い砦という,後発のタイトルに比べるとシンプルな構成だが,“張角のいる祭壇を目指して連合軍が進軍する”というフォーマットは,ほとんどのタイトルで変わっていない。
初代をプレイして驚いたのが,システム周りの仕様だ。装備品の概念がなかったり,通常攻撃が最大4回しか出せなかったりと後発のタイトルとはかなり異なる。
ステージのグラフィックスに関しても地形や風景がかなりさっぱりしていたり,戦場のイベントボイスがなかったりと,少し寂しい印象を受けた(本作のみ記憶媒体がCD-ROMなのも関係しているのだろうか)。
一方で,兵士の“ワラワラ感”については初代にしては意外と高く,撃破数は479人。画面に表示される兵士の数は15人〜20人程度と今見ると少ないが,こちらに積極的に向かってくるので,大軍を相手にしている感はしっかりと感じられた。
真・三國無双2/真・三國無双2 猛将伝(プレイ環境:PS2 / 撃破数:529人)
前作から約1年後の2001年9月に発売された真・三國無双2は,システム的に大幅なパワーアップを遂げている。プレイアブルキャラが大幅に増えたほか,武器やアイテムといった装備品の概念が登場。アクション面でも通常攻撃の回数が最大6回になるとともに,チャージ攻撃のバリエーションも増加し,武将ごとに個性が引き立つようになった。
黄巾の乱での撃破数は529人と前作からアップしており,画面に表示される兵士の数も増えているように感じた。
さらに,武将の台詞にボイスがついたり,戦闘中に入るイベントシーンが増えたりと,演出が強化されていることもかなり大きな進化点だ。戦局の変化に応じて味方がしゃべってくれるので,共闘感や戦場の流れが強く感じられるようになり,“戦場の臨場感”が大幅にアップしている。
また余談になるが,2の黄巾の乱はステージ構成がほかのタイトルと異なっているという点も印象的だった。
黄巾の乱のステージ構成といえば,“張角のいる祭壇を目指して連合軍が進軍する”というフォーマットを採用するタイトルが多い。これは初代の紹介でも述べた点だ。
しかし2では「連合軍の本陣に黄巾党が攻め込んできており,その包囲網を突破する」という防衛戦に寄ったものになっている。
瞬間移動を駆使して総大将を狙ってくる張角をケアしつつ,高台に陣取って妖術を放ってくる張梁,張宝の2人を撃破しなければならない。戦況を見つつ行動していくという,シリーズが持つタクティカルアクションの面を強く感じるステージになっていた。
真・三國無双3/真・三國無双3 猛将伝(プレイ環境:PS2 / 撃破数:338人)
「真・三國無双3」は,2が築き上げた基礎をそのままにバージョンアップを目指した形になっている。
3で大きく進化したのは,何といってもグラフィックスだ。武将や兵士,ステージといったさまざまな部分のビジュアルがパワーアップしている。今回プレイした黄巾の乱では,敵の妖術に合わせて天候が変化するといった演出もあり,“妖術を使用する集団の本拠地に乗り込んでいる感”がよく出ていた。
また,武将のアクションについても,チャージ1攻撃が固有アクションになったり,連続攻撃のチャージラッシュが追加されたりと,より個性が際立つものになり,触っていて楽しさが増している。2以前はチャージ攻撃がどの武将も画一的なものだったので,そこの手触りが武将ごとに変わったのはうれしいポイントだ。
一方,兵士の“ワラワラ感”については,2に比べて控え目な印象だった。戦場に配置されている敵の兵士が少ないのもあるが,兵士が積極的にこちらに向かって来ず,かなり接近しないとアクティブにならない。
数字にもそれは表れており,黄巾の乱では,猛将伝を使わない状態でプレイした撃破数は228人と,パワーダウンしている感は否めない。
ただ,追加ディスクの猛将伝を使用したところ,この点は改善が見られた。敵兵士の数はかなり多くなり,積極的にこちらに立ち向かってくるようになるなど,ワラワラ感はかなり高まる。撃破数も338人と著しい増加が確認できた。
黄巾の乱では登場しなかったが,3は衝車や架橋車,投石車などの攻城兵器や,武将同士がタイマンで勝負する「一騎討ち」が初登場したタイトルでもある。先述のグラフィックスの強化など総じて,兵士の“ワラワラ感”は控え目なものの,それとは違う部分で戦場のディティールを引き上げたタイトルと言えるかもしれない。
真・三國無双4/真・三國無双4 猛将伝(プレイ環境:PS2 / 撃破数:769人)
真・三國無双4では,3で進化したグラフィックスはそのままに,戦場の兵士数が圧倒的に増加した。プレイ検証でも撃破数769人を記録するなど,敵の“ワラワラ感”はPS2ハードのタイトルでは随一だ。
また,武将周りの新システムとして,無双覚醒が登場。これは,使用すると武将のパラメータや攻撃速度が一定時間パワーアップし,攻撃を受けてものけぞらなくなるというもの。どれだけ敵に囲まれていても,無双覚醒から敵を一気になぎ倒すということも可能になり,一騎当千の爽快感が得られるようになっていた。
本作ではスピンオフタイトルである「真・三國無双3 Empires」に登場した「拠点」を巡る攻防が追加されている。攻撃・防御・補給拠点といった要衝を制圧することで,戦局を有利に傾けられるようになり,ステージ攻略の自由度が増しているように感じた。
遠方の味方もこちらが士気を上げるような仕事をすればしっかりと戦ってくれるなど,爽快感と戦術性の2つをうまく融合させており,PS2最後の真・三國無双にふさわしいタイトルと言えるだろう。
真・三國無双5(プレイ環境:PS3 / 撃破数:890人)
真・三國無双5はハードの移行により,“敵のワラワラ感”は順当にあがっており,黄巾の乱での撃破数も890人を記録した。
特にすごいと感じたのは味方の数で,戦闘が勃発している場所では,味方と敵が画面を埋め尽くし,常に乱戦が繰り広げられている状態が描写されている。また,敵を倒すと兵士がそれに合わせて勝どきを挙げてくれるなど,共闘感も増している。
タクティカル面の仕様変更で驚いたのが,回復アイテム周りのシステムだ。
これまでのタイトルでは,回復アイテムは敵兵を倒したり,道中にある壺の中から手に入れたりすることが多かったが,5では基本的に味方拠点にのみ定期的に出現する形に変更されている。
そのため,戦術的に重要な拠点を味方とともに制圧し,攻めの起点にすることが求められ,拠点を巡る攻防については,前作の4以上に重要になっている。
さらに,本作はステージの地形がかなり起伏に富んでおり,これを利用して高所から奇襲をかけるといった戦術を取れるようになった。そのほかにも,閉じている城門を叩いてこじ開けたり,開いている跳ね橋を架けたりでき,プレイヤーが自ら考えてさまざまな戦術を採ることが可能になっていた。
そのほかには,武将のアクションがボタンを連打するだけで攻撃を途切れることなく延々と出せる連攻撃と,敵のガードを打ち崩す強攻撃に変更されており,攻撃における立ち回りにも変化が出ている。
無双シリーズというと,シリーズを重ねるにつれて敵をガンガンなぎ倒していく派手なアクションゲームになっていった印象がある。しかし,5はかなりタクティカル面を重視しており,プレイヤー自らが戦場を見て,戦術を選んで戦うということに注力しているタイトルだと感じた。
真・三國無双6(プレイ環境:PS3 / 撃破数:1064人)
シリーズ10周年の節目に発売された真・三國無双6は,一騎当千の爽快感に大きくフィーチャーしたシリーズの転換点的タイトルになっていた。
本作をプレイして最初に感じたのは,「これまでのシリーズに比べて,プレイアブル武将がかなり強くなっている」ということ。武将の攻撃や無双乱舞の性能が明らかに上がっており,これまで以上にバッサバッサと敵をなぎ倒せるようになっていたのだ。
攻撃のエフェクトやSEに関しても,かなり派手なものになっており,敵を倒す気持ちよさに重きが置かれていることがうかがえた。
また,本作から武将ごとに武器を2つ持てるようになっており,通常攻撃やチャージ攻撃から武器を入れ替えながら攻撃するヴァリアブル攻撃を挟むことで,今まで以上に爽快なコンボ攻撃を生み出せるようになっている。
6の黄巾の乱は,蜀シナリオの第1章にあてられており,ステージは山間部という今までにないロケーションだ。
操作キャラが劉備に固定されていることもあってか,黄巾党に襲われている民を救うシーンや,山の中腹から風を吹かせる張宝を断崖絶壁を通って奇襲するというイベント(おそらく吉川英治氏の小説,横山光輝氏の漫画に登場した鉄門峡のエピソードが元ネタ)など,劉備にスポットライトを当てたものになっていた。
撃破数は1064人と,シリーズ初の1000人斬りを達成。5の時には,表示数の限界からか兵士が消えたり出たりするという現象が起きていたのだが,それもほぼなくなり,“敵のワラワラ感”については順当に進化を遂げているという印象だ。
一方,5までに存在した拠点を巡る攻防が廃止されるなど,戦術的な要素はかなり簡略化されている。味方の数もかなり抑えられている印象で,軍同士の戦いというよりは,プレイヤーが豪快に敵を蹴散らす楽しさに重きを置いているタイトルだと感じた。
真・三國無双7(プレイ環境:PS3 / 撃破数:867人)
真・三國無双7 with 猛将伝(プレイ環境:PS4 / 撃破数:1212人)
真・三國無双7は,前作6の流れをそのままに,より一騎当千の爽快感を追求し,進化させたタイトルといった印象だ。
プレイアブル武将の攻撃が強力なのは相変わらずだが,7では4に存在した無双覚醒が「覚醒」というより強力なものになって復活。一定時間超強力なパワーアップ状態となり,敵を一掃できるようになっている。
敵武将との戦闘には,新たに武器相性の概念が登場した。武器にはそれぞれ「天」「地」「人」の3種類があり,三すくみの関係になっている。相性の良い武器で攻撃すると,敵の気迫が削れていき,ゼロにすることで強力な攻撃「ストームラッシュ」が発動できる。
前作では,必ずしも武器を切り替える必要はなかったが,7では適宜武器を切り替えて戦う必要が出てきたわけだ。
7の黄巾党の陣地は岩山と洞窟を削ったようなものになっており,自然の要塞といった感じで,洞窟の中を突き進んでいくマップ構成は雰囲気があり,今まで黄巾の乱とはまた違う印象を受ける。
撃破数に関しては,PS3版は867人と前作より少ないが,敵の“ワラワラ感”については遜色ないと感じた。むしろ7のほうが味方がしっかり描写されているため,友軍との共闘感が強かった印象を受ける。
ちなみにPS4版の撃破数は1212人とさすがのスコア。敵軍の数もPS3版に比べて,一段階引き上げられている印象で,今回プレイしたシリーズの中では間違いなく最高の“ワラワラ感”を持っていた。
6同様,ガンガン敵を倒していく部分が前面に押し出されているため,7も戦術的に攻めていくタクティカル要素は薄くなっている。ただ7の無双モードには,普通にクリアすると突入する正史ルートと,各ステージで条件を達成すると突入するIFルートの2つが存在する。
IFルート突入の条件は考えて動かなければクリアできないものになっており,これの達成を目指すことで,シリーズの戦術的な部分が楽しめるようになっている。
シリーズを重ねるごとにどんどん増す爽快感と,薄れていく戦術性。ORIGINSは両方の実現に期待だ
以上,撃破数のスコアを見ても分かる通り,兵士の“ワラワラ感”は多少の浮き沈みはあるものの,基本的にはナンバリングを重ねていくごとに増していることが見て取れる。
また,「戦場の臨場感」といった部分では,武将たちの掛け合いやセリフの追加,グラフィックスの強化,大規模な攻城兵器の登場といった,兵士の“ワラワラ感”以外の要素が与える影響もかなり大きく,長い年月を重ねて進化していったシリーズの歴史が感じられた。
個人的に興味深かったのが,敵を倒す「爽快感」とプレイヤーが考えて行動を決めていく「戦術性」のバランスがシリーズごとに異なるという点だ。
シリーズ初期は,敵の攻撃がかなりアグレッシブで,囲まれるとあっという間にやられてしまうため,戦況をしっかり確認しつつ,友軍と連携して立ち回る必要があった。しかし,後期のタイトルでは,その傾向は薄れ,どんどん倒していく爽快感にフィーチャーしたものになっていった。
これに関しては,過去のインタビューで,ORIGINSプロデューサーである庄 知彦氏も語っている。
[インタビュー]「真・三國無双 ORIGINS」が目指すのは,緊張感を乗り越えた先にある一騎当千。庄 知彦氏がシリーズの原点回帰を語る
本日(2024年7月26日)開幕したChinaJoy 2024のステージで,「真・三國無双 ORIGINS」のゲーム映像が公開された。名前の通りに「原点回帰」を謳う本作は,どのようなタイトルになるのだろうか。プロデューサーの庄 知彦氏に聞いた。
そうした真・三國無双の変遷やアプローチを踏まえたうえで,ORIGINSの体験版を遊んでみると,今までのシリーズにあった要素をうまく取り入れ,ゲームとして昇華させていることが見て取れる。
兵士の“ワラワラ感”はこれまでとは比べ物にならないくらい増しているし,それを切り伏せる爽快感はシリーズ随一と言い切って良い。かといって,一人で敵陣に突っ込むとしっかりと苦戦するような難度になっているため,マップで「戦域」を確認しながら,状況に応じて味方を助け,有利に戦局を運んでいくことが勝利への近道になっている。
体験版をプレイした範囲では,敵を倒す爽快感をそのままに,タクティカルアクションゲームとしての原点(ORIGINS)にしっかり立ち返っている印象だ。
シリーズを重ねるごとに増していった「爽快感」と,近年のシリーズでは少し薄れていた「戦術性」,その両立がORIGINSで達成されるのか,製品版に期待したいところだ。
「真・三國無双 ORIGINS」公式サイト
- 関連タイトル:
真・三國無双 ORIGINS
- 関連タイトル:
真・三國無双 ORIGINS
- 関連タイトル:
真・三國無双 ORIGINS
- 関連タイトル:
真・三國無双5
- 関連タイトル:
真・三國無双5
- 関連タイトル:
真・三國無双5
- 関連タイトル:
真・三國無双6
- 関連タイトル:
真・三國無双7
- 関連タイトル:
真・三國無双6 猛将伝
- 関連タイトル:
真・三國無双6 with 猛将伝
- 関連タイトル:
真・三國無双6 with 猛将伝 DX
- 関連タイトル:
真・三國無双7 猛将伝
- 関連タイトル:
真・三國無双7 with 猛将伝
- この記事のURL:
キーワード
(C)コーエーテクモゲームス All rights reserved.
(C)コーエーテクモゲームス All rights reserved.
(C)コーエーテクモゲームス All rights reserved.
(c)2007 KOEI Co., Ltd. All rights reserved.
(c)2007 KOEI Co., Ltd. All rights reserved.
(C)2007-2008 KOEI Co., Ltd. All rights reserved.
(C) TECMO KOEI GAMES CO., LTD. All rights reserved.
(C)コーエーテクモゲームス All rights reserved.
(C)コーエーテクモゲームス All rights reserved.
(C)コーエーテクモゲームス All rights reserved.
(C)コーエーテクモゲームス All rights reserved.
(C)コーエーテクモゲームス All rights reserved.