連載
西川善司 / グラフィックス技術と大画面と赤い車を愛するジャーナリスト
(善)後不覚 |
2017年はいろいろなゲーム機が発売された年でしたね。3月にNintendo Switch,9月にはニンテンドークラシックミニ スーパーファミコンが発売されました。ソニー・インタラクティブエンタテインメントからは新型のPlayStation 4 Pro(型番:CUH-7100BB01,以下 PS4 Pro)やPlayStation VR(型番:CUH-ZVR2)も発売されています。
そして,今年最後に出たのが日本マイクロソフトのXbox One Xです。発売されたのは11月7日で,メーカー想定売価は4万9980円(税別)でした。
それにしても最近は,新しいゲーム機が発売されても,入手しにくいと思いませんか。昔はもう少しマシでしたよね。「ゲームはスマホに支配された。ゲーム専用機はもうオワコンだ」とか言われているわりには,ゲーム専用機の人気が上がっているような気がします。
それほど大人気というわけでもない(失礼!)Xbox One Xまでも,争奪戦の対象になるなんて思ってもみませんでした。
そうです。ボクは発売日にXbox One Xを入手できませんでした。
その結果,日本マイクロソフトから4Gamer編集部経由で本体一式を貸してもらい,12月に入ってようやくプレイを始めた感じです。皆さんは手に入りましたか?
Xbox One Xを開封する――小ささに驚く
まず,本体を開封して思ったのは「小さっ!」でした。
いや,E3で一度見てはいるんですが,こういうのって自分の部屋で開封すると,部屋の景観を基準にした生活ベースのスケール感が伝わってくるので新鮮ですよね。テレビも売り場と自室では,同じ画面サイズなのに違って見える,あの感覚と同じです。
で,あらためて初期型Xbox Oneと比べてみると,厚さも占有面積も二回りは小さくなっている印象です。「Xboxはでかい」という固定観念ができあがっていたせいか,ちょっとした衝撃でした。
気を取り直して,さっそくセットアップを開始しました。接続先はもちろん,HDR対応の4Kテレビ。機種は,2016年モデルの東芝の「REGZA 55Z700X」です。
ちゃんと4K出力ができているかどうかは,「設定」→「画面とサウンド」→「4Kテレビ詳細」で確認ができるようです。
ボクは念のために,ここで「ネイティブ4K対応」になっているか,「HDR対応」になっているかどうかをチェックしました。
少し前の4Kテレビには,「ネイティブ4K対応」でも「HDR未対応」の製品もあるので,4K初心者はここでチェックするのが良いと思います。
ゲームを始める前に,もう一つチェックしておきたいのが「プレイ環境」メニューの「配信とキャプチャ」です。
Xbox One Xではゲームプレイだけでなく,ゲーム映像のキャプチャも4K&HDRで行うことができます。その設定を行えるのが,このメニューなのです。
4K&HDRのゲーム映像のキャプチャができるのはスゴイですよね。現状,4K&HDRの映像をキャプチャできる機器は,まだ民生向けに市販されていませんし,同じ4K対応ゲーム機であるPS4 Proも,4Kキャプチャは静止画までの対応でしたからね。
4K&HDRのゲーム映像の録画は,本体内蔵HDDには最長30秒に制限されていますが,保存先をUSB 3.0接続の外付けHDDに設定すると,なんと直近1時間までの録画が行えます(Xbox公式サイトの解説ページ)。しかも,そのHDDをWindows 10ベースのPCに接続すれば,録画されたビデオファイルを読み出すこともできます。つまり,PC上で編集することも可能だということですね。このあたり,さすがはMicrosoftといったところでしょうか。
「Forza Motorsport 7」をプレイ――車内視点でHDR表現の「別のすごさ」に気が付く!?
最初はXboxプラットフォームの代表作の1つ,「Forza Motorsport 7」をプレイしてみました。
初代Forza Motorsportが登場したのは2005年。初代Xboxの後期でした。その後,第2作から第4作までXbox 360でリリースされましたが,とくに第3作と第4作は日本でもなかなかのヒットになりましたね。ビジュアルをカスタマイズできたり,日本の実在サーキットや日本をイメージした架空のコースが収録されたりして,日本のレースゲームファンにも響いたためだと思われます。
ライバル(?)となるPlayStationプラットフォームの「グランツーリスモ」シリーズは発売が結構スローペースなので,「その合間にForzaを楽しむ」というレースゲームファンは多かったように思います。かくいう,ボクもそうです。
で,Xbox Oneでは「Forza Motorsport 5」が出たのですが,まさかの日本のサーキットが未収録だったため,日本のファンからの支持を落とすことになります。実際,ボクもXbox Oneのローンチタイトルだった同作を買いましたが,引き続き日本のサーキットが収録されなかった「Forza Motorsport 6」は買いませんでした。
Xbox One Xに完全対応した最新作のForza Motorsport 7は,鈴鹿サーキットが収録されています。待望の復活ということで,ボクも俄然,興味が戻りました。鈴鹿サーキットは場所が遠いので,自分の車で走ったことはありませんが,「ウイニングラン鈴鹿GP」(アーケードゲーム/ナムコ/1989年)の時代から,日本のレースゲームファンにとって聖地のコースですからね。
贅沢を言えば,ツインリンクもてぎや富士スピードウェイも収録してほしかったところですが,これらはDLCや次回作に期待することにしましょう。
さて,今年のE3では可動筐体でプレイしましたが,自室でプレイするのはこれが初めてです。Xbox One用のステアリングコントローラを久しぶりに物置部屋から引っ張り出してセットアップしました。製品はMad
Forza Motorsport 7のグラフィックスはクオリティが高く,コースはもちろんのこと,車の内外装がリアルに描かれていることに感動しますね。コクピット視点でプレイすると,HDR表現のおかげで,車内から屋外を見たときの見え方がリアルなところにも感心します。
なんというか,「車内の空間」と「車外の空間」が別々に存在しているような感覚が味わえるのです。言い換えると,ゲーム画面なのに「一枚の映像」ではなく,「自分は車内にいる」「車の外には屋外の世界が広がっている」という感覚が増強されるんですね。陳腐な言葉で表すなら,「3D的」というか。
HDR表現というと「明暗差の激しいコントラスト表現」ばかりが取り沙汰されますが,「車内のやや暗めな空間」「屋外の眩しい世界」をそれぞれ異なる輝度レンジで正確に描画できているために,こうした感覚になるのでしょう。「3D立体視より,4K&HDRのほうが立体的に見える」という人が少なからず存在しますが,おそらくこういう感覚を言い表していると思います。
Forza Motorsport 7をプレイするときには,ぜひともHDR表示をオン,そして車内視点を選んでみてください。
「STAR WARS バトルフロント II」をプレイ――VRさながらの臨場感。ストーリーモードはファン必見
続いてプレイしたのは,エレクトロニック・アーツの「STAR WARS バトルフロント II」です。前作と同様,オンライン専用の対戦型バトルアクションシューターという感じのゲームですが,個人的に楽しみにしていたのは,スター・ウォーズの正史外伝となる1人プレイ用のストーリーモードでした。
ご存じかもしれませんが,スター・ウォーズのゲームには,映画を補完する内容というか,世界観を分厚く補強するサイドストーリーの名作が多いのです。最も有名なものは,ジェダイナイトシリーズでしょう。
ジェダイナイトシリーズでは,映画本編のキャラクター達が登場し,映画で描かれなかった有名な場面の異なる視点での物語も描かれていました。さらに,このシリーズをプレイした人だけが分かる小ネタが,映画のほうにも出てきたりするので,映画をより楽しく見るためのコンテンツでもあります。最近ではメディアミックスが当たり前になっていますが,1990年代からこうした仕掛けを行っていたのは大したものです。
さて,STAR WARS バトルフロント IIで描かれる物語は,まさにジェダイナイトシリーズ的です。とてもしっかり作り込まれていました。
プレイヤーは帝国軍の女性士官アイデンの視点で物語を体験することになります。映画「ジェダイの帰還」あたりからストーリーが始まり,なんと劇場公開中の「最後のジェダイ」の時間軸である「ファースト・オーダー」編にまで到達します。ファンの間では「ファースト・オーダー編の女主人公レイの出生の秘密につながる謎が隠されている!?」とまで考察されていて,ファンならばプレイ必須の内容だと思います。
STAR WARS バトルフロント IIも4K&HDRに対応しているので迫力満点です。最前線の戦闘では,ビーム兵器や爆発の閃光が同時多発的に発生しますが,その輝きが眩しく,目に飛び込んでくるので,「自分は危険な場所にいる」という自覚が深まる印象です。
ボクは55インチの4K&HDRテレビで,視距離が50cm強のところでプレイしたのですが,敵のビーム兵器が予想外のところから来たときは,「わぁっ」と声を上げて,VRでもないのに身体を揺らして避けてしまうことがたびたびありました(笑)。HDRは確実に戦場のリアル感も増強してくれます。
また,人間キャラクターの表現がよくできていて,肌の質感や感情表現を伴う顔の演技が秀逸でした。よく観察すればCGだと分かりますが,気を抜くと「人間の俳優が演技している」ように見えるほどのクオリティです。とくに主人公クラスのキャラクターは,それこそ不細工になるくらいに顔を歪めて演技をしますから,4Kで楽しむとさらに感動が大きくなると思います。
その一方で,遠方のザコ達は銃撃を受けても痛そうにせず,マネキンみたいな無表情で倒れていきます。4Kだと遠くにいるキャラクターの表情まで見えてしまいますが,ここには開発側も気が回らなかったのかも(笑)。
ゲームそのものも楽しいのですが,あの壮大なテーマ音楽が大音量で鳴り響くと興奮をかき立てられます。自室には7.1chサラウンドシステムを構築しているので,この部分の満足度も高かったです。
4K Blu-rayを再生――Xbox One XのHDR出力はRGB101010がデフォルト!?
現世代のゲーム機では,Microsoftとソニーの光ディスクメディアに対する考えが反転したことに興味を感じています。
かつてのPlayStationシリーズは,新しい光ディスク規格を積極的に取り入れてきました。しかし,新規格であるUltra HD Blu-ray(以下,UHD BD)への対応を見送っています。
UHD BDは,BDレコーダー機器が以前から採用していた規格「BDXL」をベースとする読み出し専用メディア「BD-ROM Version 2」に,主に4K&HDR映像を収録したビデオソフトの規格です。これにより,従来のBlu-rayよりも記録密度と記録層数が向上し,これまでの50GB(25GB×2層)に対して,UHD BDは100GB(33GB×3層)へと最大容量が増えています。もちろんディスクサイズは従来のまま,直径12cmです。
MicrosoftはXbox 360のデビュー当時,ライフタイム末期だったDVDメディアを採用して物議を醸しました。PlayStation 3版はBlu-rayディスク1枚なのに対して,Xbox 360版ではDVD複数のパッケージになったゲームも珍しくありませんでした。その苦い経験を踏まえてなのか,2016年に発売された「Xbox One S」や今回のXbox One Xでは新しい光ディスク規格のドライブを採用してきたのです。この判断は前世代機とは対照的です。
「4K&HDRのコンテンツがない」と言われたりもしますが,そんなことはありません。いわゆる大作映画の過半数ではUHD BD版の選択肢があります。新しいメディアに対して比較的及び腰な姿勢のディズニーまでが参入しているくらいです。
UHD BD対応プレーヤーを購入する気はない人も,Xbox One SやXbox One Xで再生できるということであれば,話は変わってくるのではありませんか。せっかく4K&HDR対応のテレビを持っているのであれば,お気に入りの映画の1つでも試してみてはいかがでしょう。
かくいう筆者はUHD BD対応プレーヤーを持っているものの,Xbox One SでUHD BDを再生したことがありませんでした。そこで,今回はXbox One Xでブラッド・ピット主演のスパイサスペンス映画「マリアンヌ」を再生してみました。この作品はテレビの評価で使われる定番ソフトの1つとしても有名なんですよ。
ボクがよく見るのはチャプター2です。車に乗ったブラッド・ピットが現れ,ヒロイン役のマリオン・コティヤールが待つ会員制高級クラブを訪れる場面が描かれます。
夜の街を行き交う人々が暗めの階調で描かれると同時に,点在する街灯の光とのコントラスト感が楽しめる映像です。Xbox One Xで再生しても,このあたりの表現が美しく再現されていました(当たり前ですが)。
実際に,どういう信号を出力しているのかも調べてみました。REGZA 55Z700Xには,入力信号の詳細を表示してくれる便利な機能が搭載されています。いろいろな映像を入力する筆者のような人間にはとてもありがたいのですが,今回もこの機能が役に立ちました。
なんとXbox One Xでは,UHD BDの映像を4Kの10bitRGB(いわゆるRGB101010)のHDRで出力しているのです。
UHD BDの記録フォーマットにおいて,色解像度は4K相当の輝度情報を4分の1に削減した10bitの「YUV420」になっています。つまりXbox One Xは,内部でクロマアップサンプリングを行ってRGB101010に変換したうえで,テレビに出力していることになります。これはちょっとユニークですね。
映像を見た感じでは,とくに違和感はありませんでしたが,この出力方式だとテレビ側の高画質なクロマアップサンプリング機能は利用できません。また,
ちょっと調べてみると,2015年以前のファームウェアアップデートによってHDRに対応したような4Kテレビでは,Xbox One SでのHDR表示が行えないという記事が見つかりました。ただ,この問題は2017年春のシステムアップデートで改善されたようです。
どうやらRGB101010出力ができない場合には,10bitのYUV422出力を選択できるようになったようです。やや古めの4Kテレビを使っている人は,この設定を利用するといいかもしれません。
おわりに
やっと我が家にやってきたXbox One X。まだ使い始めたばかりで,すべての機能に触れてはいません。プレイすべき作品もまだありそうなので,これから徐々に手を出したいと思っています。
なかでも,Haloシリーズは外せませんね。初代「Halo」から「Halo 3」までの三部作はプレイしたのですが,新三部作としてスタートした「Halo 4」はプレイしていません。「3」の終わり方があまりにも良かったので,新しいトリロジーが始まると聞いても,嬉しい気持ちと「なんで?」という気持ちが半々で,結局手を出さなかったんですよね。
ただ,第1作から第4作までをXbox One向けにリマスターした「Halo: The Master Chief Collection」が出ているので,これで復帰したい思っています。「Halo 5:Guardians」はXbox One Xの登場に合わせて,4Kリマスターが行われていますから,そちらにも一気になだれ込んでいきたいところです。
あとは配信機能でしょうか。
Xbox Oneシリーズでは,無料のゲーム実況配信アプリ「Mixer」が利用できるようになっているので,Xbox One Xでも試してみたいと思っています。最近,ボクもゲームの実況プレイをよくやっています。多くて20人くらいしか見ていないのですが,それでも誰かの目があると,緊張感が伴ってゲームが楽しくなりますよ。
MicrosoftのXbox日本語公式サイト
■■西川善司■■ テクニカルジャーナリスト。バルログ使いの現役格闘ゲーマーでもある西川氏。近頃は「ストリートファイターV」の鍛錬に勤しんでおり,毎日1時間のトレーニングを欠かさないとか。その甲斐あって,腕前はSuper Platinumに到達。EVO Japan 2018の参加も申し込んだそうです。プロゲーマーデビューを目指してスポンサー募集中とのことですが,まずは予選を通過しての話にしてくださいね。 |
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