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日本と中国は,お互いの長所を合わせていいゲームを作ればいい―――Shandaから独立した若き女性社長の会社GameMoonは,常にグローバルを見据えて動く
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印刷2017/09/12 11:45

インタビュー

日本と中国は,お互いの長所を合わせていいゲームを作ればいい―――Shandaから独立した若き女性社長の会社GameMoonは,常にグローバルを見据えて動く


2017年の7月27日から30日まで,上海で行われた「ChinaJoy 2017」の話題の中心は,昨年に引き続きスマホとVR。コンシューマも順当に台数を伸ばし,まさに花開こうかというタイミングではあるが,まだまだ(中国内では)マーケットとしては小さく,ChinaJoyで大きな存在感を示すほどではない。

昨年も書いたことだが,中国という国のゲームエンターテイメントの成長カーブは半端ない。例えばスマホゲームがメインである超大手「テンセント」の2017年1Qの売上は約7930億円で,純利益が約2315億円という規模感である。もう何がなにやら(年度ではなく四半期だ!)。
 中国は,すでに世界のモバイルゲームの市場規模の3分の1を持っていると言われており,しかもその拡大は,いまのところは留まるところを知らない。コンシューマ機もVRも,これからだ。やや成長曲線に鈍化が見られるとはいえ,類を見ない速度でまだまだ上がっていくのだろう。

そんなわけで昨年に引き続き,中国ゲームマーケットについて何人かと話をしてみよう。政府のお役人でもなく,プラットフォーマーでもなく,現場でゲームを開発して運営/経営している人達だ。彼らは肌感として,数字として,熱量として,マーケットに対峙しているのだから。

いまなお伸びていくモバイルゲームの会社達は,現状と未来をどのように見ているのだろうか。それを知りたくて,何社かの会社にインタビューの打診をしてみた。昨年とはちょっと毛色を変えて,日本ではまず知られていない,社長が若い会社をメインに“生の声”を聞いてみたので,そのインタビューの模様をお伝えしよう。


日本のスマホゲームは運営に人を使いすぎ。もっと効率化するために,中国の“ゲームエンジン”を使うべきではないのか―――飽和状態の日本のスマホゲームマーケットに,中国のデベロッパが提唱?

「とりあえずやってみる中国」と「分からないからやらない日本」。先が見えなくても,新しいことへの挑戦は欠かさない―――日本進出を果たしたSnail Gamesの今後

挑戦を恐れる企業の未来は,困難になるだけ。「持続可能なIP」を持っていないからこそ,成長し続けなければいけない―――NetEase Gamesの若き本部長が語る,中国業界事情



日本と中国は,お互いの長所を合わせていいゲームを作ればいい―――Shandaから独立した若き女性社長の会社GameMoonは,常にグローバルを見据えて動く
 2017年7月27〜30日まで行われていたChinaJoyで,何社かに送ったインタビュー依頼。これに真っ先に反応して受けてくれたのが,今回紹介する「GameMoon」だ。ベクターの一件で注目してはいたのだが,幸いにもChinaJoy期間中に,社長に時間をもらうことができた。

 先日掲載したGameMoon Japanのインタビューに続き,GameMoonという会社が登場するのは2回目となるが,こちらは本家。本家とはいっても,2013年にShanda(盛大)から独立したばかりの新しい会社なのだが,すでに作品も数本作り,海外展開の分野においては類を見ない成功を収めている。

 中国の会社の「行動の速さ」には,本当にいつも驚かされるが,設立わずか数年でここまでの動きを見せるGameMoonという会社を率いるのは,一体どんな人なのだろうか。“あの”Shandaから独立したばかりか,政府関係筋にも結構顔が利くという噂の社長に一度会ってみたいと思って申し込んだインタビューだったが,当日現れたのは,予想を裏切って,若い女性だった。

 むろん男尊女卑などではないが,「やり手」のイメージをプンプンさせた,頭のキレる若い中国人独特の雰囲気をまとった男性が来るのだろうと思っていただけに,ちょっとびっくり。やや空気に飲まれた形でのインタビューとなったが,彼女がどんな人で,GameMoonがどんな会社なのか,ある程度聞くことができた。

「GameMoon」公式サイト


刘曼菁(Cathy)氏
ソフトウェアエンジニア修士卒業。ゲーム業界歴13年。The 9やShanda(盛大网络)など大手企業で仕事をして,数多くのゲームのプロジェクトマネージャー,各種子会社のCEOなどの職歴を持つ。2013年にShandaから独立し,GameMoon(上海盛月网络科技有限公司)を設立。

4Gamer:
 本日はお時間いただきありがとうございます。実は女性が来るとは思っていなかったんですが,まずはCathyさん自身のことを教えてください。

刘 曼菁氏(Cathy:以下,Cathy氏):
 では大学卒業のあたりから……。ちょうどそのころ中国はWorld of Warcraftが大ブームになってたころでした。大学を出て最初に就職したのは,そのWoWを中国で運営してる会社だったんです。

4Gamer:
 The 9ですか?

Cathy氏:
 そうです。よくご存じですね(笑)。最初はそこに就職して,そこでゲーム業界に入ったんです。

ChinaJoy 2007のThe9ブースで出展されていた「World of Warcraft」
日本と中国は,お互いの長所を合わせていいゲームを作ればいい―――Shandaから独立した若き女性社長の会社GameMoonは,常にグローバルを見据えて動く
4Gamer:
 The 9はずいぶん昔……ちょうど10年前ですね,社長にインタビューしたことがあります。なんというか,とても迫力とすごみのある人でしたね。

Cathy氏:
 そうですね,社員もみんなそう思ってました(笑)。ちょうど中国のゲームマーケットが「海外作品の運営」を大々的に行いはじめたフェーズでした。

4Gamer:
 ええ。まさに中国のゲーム市場が開花したあたりというか。

Cathy氏:
 その後私はShandaに転職したんですけど,そのときの業界は,Webゲームに移行するタイミングでした。日本などを筆頭に海外運営もやってみようか……というムードになっていたので,その業務を始めたんです。

4Gamer:
 中国の開発力がじわじわと上がってきたのがそのころですよね。

Cathy氏:
 はい。それで,Shandaには2013年までいたんですが,そのころにはもうスマホゲームがずいぶん盛り上がりはじめていて,グラフィックスやゲームシステムもどんどんレベルアップしている最中でした。そんな中で「このマーケットには将来性がとてもありそうだ」と思ったので,会社を辞めて独立して,運営会社を作りました。それがこのGameMoonです。

4Gamer:
 でも2013年時点だと,中国のスマホゲームマーケットはまだそこまで巨大になっていないタイミングですよね。その段階で,何を見て「これならいける」と思ったんでしょうか。

Cathy氏:
 確かに,盛り上がりという点ではまだそこまでではなかったですね。でも業界の知人や友達などに話を聞いたり,また当時自分なりにマーケットデータ――例えばダウンロード数であったり課金額であったり,そういうものを調べてみたところ,とても将来性が高そうなものに思えたんです。

4Gamer:
 なるほど。

Cathy氏:
 もちろんそれだけではなく,Shanda時代に,いろんな海外の会社から中国マーケットへの期待を聞いてましたし,中国の開発会社が作った作品を買いたいというオファーなどを仕事としてやっていたので,「これはイケるんじゃないか」と思いました。

4Gamer:
 中国のビジネスについてあまり詳しくないのでこれは純粋な好奇心なんですが,中国において女性がトップに立って起業するというのは,何か障壁とか苦労することとかはないんでしょうか?

Cathy氏:
 私はポッと出で社長をやっているわけじゃなくて,実はShanda時代に子会社のCEOをやってたんです。最初のThe 9のときも,プロジェクトマネージャーとして5つくらいのプロジェクトを同時に回していましたし,それらの経験を積んでいるときも,結構な数の女性CEOにお会いしました。

4Gamer:
 あれ,無知ですみません。女性CEOってそんなに昔から多かったんですね。

Cathy氏:
 ええ。確かに「ゲーム業界」を見渡すと女性CEOというのはそんなに多くありませんが,中国全体で見れば相当数いるので,実は日本のみなさんが考えるよりも普通のことなんですよ。

4Gamer:
 なるほど。実は中国って,少なくとも仕事という部分においては男女の差はほとんどないですよね。マネージャークラスへの女性進出が相当進んでいることも理解はしていましたが,改めて聞いてみた次第です。でも想像してたより以前から進んでたんですね。

Cathy氏:
 女性CEOにはメリットもデメリットもありますけどね。それはまぁ,男性がトップに立っても同じことですから(笑)。

4Gamer:
 でも正直なところ,日本には女性CEOってそんなに多くはいませんよ。

Cathy氏:
 言われてみれば確かに,韓国の会社とか日本の会社と接するとき,女性のCEOは一人もいませんね。

4Gamer:
 しかし話を聞いていると,ゲーム業界そのものは結構長いんですね。

Cathy氏の母校,北京邮电大学
(C)北京邮电大学 2013

Cathy氏:
 大学卒業してずっとこの業界ですから(笑)。きっと今後もずっとこの業界にしかいられないんじゃないでしょうか。

4Gamer:
 大学ではどんな勉強を?

Cathy氏:
 情報処理とプログラミングを学んでいました。

4Gamer:
 文学部出身の僕より全然業界に近しい人なんですね……。
 最近の日本のスマホゲームマーケットは,業界の外から人とお金が流れ込んできていて,昔のゲーム業界らしさは失われてるんです。もちろん,それには良い面も悪い面もあるので一概に否定するものではないですが,一方でそうやって昔からゲーム業界にいる人がトップに立っているという話を聞くのは,ちょっと嬉しいお話ですね。

Cathy氏:
 自分も,業界内の周りの友達も,ずっとゲーム業界にいるのは,単に「儲かりそう」とか「将来性がありそう」とかそういう理由だけじゃなくて,自分の趣味なんですよね。趣味を仕事にしているわけで,そういう意味ではすごく楽しいし充実してますよ。

4Gamer:
 お。本当にゲームが趣味なんですね。

Cathy氏:
 最近はそこまでじゃないですけど,実は大学の4年間は,授業をサボってずっとPCゲームをしてました。そのときはまだ,時代はシングルゲームでしたけど。

4Gamer:
 それは……全然ダメな学生だと思います(笑)。

Cathy氏:
 そうかもしれません(笑)。
 でもゲームで遊ぶことは,私達にとってはとても重要なことですよね。なので会社のスタッフ達には,とにかく新しいゲームで遊んでもらうようにしています。そうでないと,新しいゲームに対する感性も鈍ってしまいますし,新しい価値観を創造できませんから。

4Gamer:
 Cathyさん自身は?

Cathy氏:
 さすがにもうそんなにプレイする時間はないんですが,中国に限らず,日本やアメリカなど世界中の新作は一通り見てみますし,なんで人気なのかなと考えたり,そういうことはずっとしてますよ。

4Gamer:
 会社の規模は違いますが同じような立場なので聞いてみたいんですが,ゲームが好きでこの業界にいるのに,マネージメントの立場になると,ゲームに対して「一歩引いた」見方をしちゃいませんか?

著作権の概念が高まっている中国ではあるが,ちょっと業界から外に出ると,まだこのありさま。上海のショッピングモールの中にある看板なのだが,モールのいたるところに“モンスターボール”が飾ってあって,まだまだ「中国」だった
日本と中国は,お互いの長所を合わせていいゲームを作ればいい―――Shandaから独立した若き女性社長の会社GameMoonは,常にグローバルを見据えて動く
Cathy氏:
 確かに社長になると,毎日たくさんの時間をゲームプレイに費やすわけにはいかないですよね。なので時間さえあれば若いスタッフと話をしたりして……。

4Gamer:
 いやCathyさんも若いと思うんですけど……。

Cathy氏:
 そんなに若くないですよ(笑)。それで,彼らがどんなもので遊んでいるのか,どこが面白いのか,そういう部分を聞いて,感覚を少しでも吸収するように心がけてます。

4Gamer:
 確かにやりますねそれ。若い人のモノの見方は,とても刺激になりますし。

Cathy氏:
 ええ。あと自分はCEOとして「判断」をしなければならない場面がとても多いわけで,そういう場合,いまのマーケットの状況や将来をキチンと見極めていないと間違えてしまいますから。なので自分自身でも,時間を作ってでもプレイしようとはしています。

4Gamer:
 でも昔みたいに「うひゃー楽しい!」という感覚ではなくて,いつもどこか冷めた感じで冷静に見ちゃうんですよね。

Cathy氏:
 ホントそうですよね(笑)。


中国は,サーバー周りには強いけど,イラストレーターの数が足りない


4Gamer:
 それで,そんなCathyさんが作ったGameMoonという会社は,いままでどんなことをしてきた会社で,どんな部分に強みがあるんでしょうか。

Cathy氏:
 会社としては,中国のゲームを海外に展開するのが強い部分です。そういう業務をやっているので,海外の市場にとても詳しいというのも,会社の強みになる……でしょうか。日頃から研究してますし,情報を集めています。


4Gamer:
 中国にはこれだけ多くの会社がありますが,海外展開という部分においてはまだ弱いんですね。

Cathy氏:
 やはりまだまだ中国の会社は,中国国内で開発して,中国国内でのシェアを奪うことに注力していて,海外展開の経験はとても少ないんです。そういうときに,私達GameMoonがお役に立てると思います。いままでに手がけた中では,海外106か国に展開できた例もありますし。

4Gamer:
 106! 世界に何か国あるのかとっさには分かりませんが,106はすごいですね。

Cathy氏:
 それはもう膨大なプレイヤー数ですよ(笑)。

4Gamer:
 最近の中国のスマホゲームは,ゲームとしてのレベルもクオリティもとても上がっていて,世界に出しても恥ずかしくないものになっていると思います。けれども,つい数年前までの中国のゲームって,正直そこまでのものじゃなかったと思うんです。そういうタイトルを売るときに,苦労はなかったんでしょうか。

Cathy氏:
 おっしゃるとおり,中国のスマホゲームの発展は,まだまだ途上です。日本やアメリカに追いついた……とは言えないかもしれません。しかしPCゲームの開発がとても長かったので,開発者の数はとても多く,育成の必要がなかったんですね。
 しかも彼らは,PCゲームで使っていたような膨大なデータを処理する能力にとても長けているんです。なので「ゲーム性」はさておき,そのほかの部分は非常に優れていたんです。

4Gamer:
 確かにあのころPCゲームで培われたものは,いまになって大きな意味を持っています。

Cathy氏:
 はい。それと無視できないのは「人口」の問題ですね。
 中国のスマホゲームの立ち上がりは,韓国とほぼ同じタイミングだと思うんですが,人数差の問題がそこで重要になってきます。韓国や日本でスマホゲームを作ったときには,1つのサーバーに……分散の話を入れるとややこしいのでいったん置いておいて,そうですね,例えば5000人とか7000人とかが入れば十分なのかもしれませんが,中国でスマホゲームを作るのなら,1つのサーバーに1万人とか2万人とか入ることが前提になります。だから,そういう部分のテクノロジーにとても長けているんですね。一般的な中国のサーバーエンジニアなら,それくらいのことは対応できますから。

4Gamer:
 数万人ですか……。しかも,スマホそのもののスペックもさまざまですし,通信回線のクオリティもさまざまで,それらを考慮しながら作るのは,ホントにすごいと思います。

Cathy氏:
 そうですね。そこは中国の大きな強みかと。
 私が会社を作った2013年当時は,確かに中国のスマホゲームはまだまだ遅れていました。でもそれは日本人である4Gamerさんやアメリカのマーケットから見ての話であって,実際には韓国や東南アジアではとても人気のあるコンテンツだったんです。つまり,日本やアメリカには進出できなかったんですけど(笑)。

4Gamer:
 あぁなるほど。しかし確かに中国は,PCのMMORPGで培った膨大な数の開発者と,サーバーに対する知見の深さが特徴で,それがここ2,3年で急激に花開いてる感はあります。

Cathy氏:
 確かにサーバーエンジニアの数は多いですけど,中国には中国の問題があって,「絵を描く人」がまだまだ足りてないんです。

4Gamer:
 グラフィックスデザイナー?

Cathy氏:
 というよりイラストレーター……でしょうか。キャラの立ち絵を描いたりしてくれる人です。そういう人達についてはまだまだ数が足りないし,全体的なレベルもまだちょっと低いと思っています。韓国や日本,アメリカにゲームを進出させようと思ったときには,それぞれ現地のグラフィックスデザイナーにオーダーしたりとか,そういうこともやり始めていますけど。

4Gamer:
 ちょっと意外でした。最近では,結構なレベルの絵を中国でも見かけるので。

日本と中国は,お互いの長所を合わせていいゲームを作ればいい―――Shandaから独立した若き女性社長の会社GameMoonは,常にグローバルを見据えて動く

Cathy氏:
 確かにそういう人もいますし,絶対数が少ないわけでもありません。でもやっぱり全体のレベルを考えると,まだまだ数が足りないと思うんですよね。

4Gamer:
 その「レベル」というのは,どこと比べてですか?

Cathy氏:
 どこと比べて……というより,まず国内の話でしょうか。

4Gamer:
 国内?

Cathy氏:
 先ほども話題に出ましたが,中国のデベロッパは,国内で開発して国内のシェアを取ることをまず目標にします。

4Gamer:
 内需だけでも相当なものですからね。

Cathy氏:
 ええ。でも実は,中国という国はスマホゲームが盛んな都会だけでできているわけではありません。もっと小さい街や,もっと田舎のほうに行くと,村みたいな場所や,さまざまなエリアが混在した巨大な国なんです。
 上海や北京など大都会のプレイヤー達は,例えば日本っぽいグラフィックスのセンスを見て「いいね!」とか「クールだな」とか思うわけですが,ちょっと田舎のほうに行くと,まったく正反対の評価がされるわけです。

4Gamer:
 なるほど,分かります。

Cathy氏:
 どっちが正しいとか間違っているとかではなく,それが中国という国なんです。そういう風土と,海外進出に必要な要件を同時に満たすのはとても難しくて,満たせるイラストレーターともなると,ほとんどいませんね。

4Gamer:
 中国そのものがヨーロッパみたいなものなので,エリアによって全然好みが違うんですね。深いなぁ……。

Cathy氏:
 そうですね,ヨーロッパほどややこしいわけではないんですけど,確かに似た感じかもしれません。中国のちょっと田舎のほうに行くと,昔ながらの中国風……武侠とか三国志とかそういうものがとても好まれますし,都会のプレイヤーには,やはり日本風のものが好まれます。

違う会社のブースだが,これも中国オリジナル。ChinaJoy会場にはこのレベルの絵を作る会社がわんさか来ていて,数年前より格段にレベルが上がっていることを実感する


知見はずいぶん溜まってきたが,日本への本格進出はまだ早い。まずは拠点を作ってからゆっくりと


4Gamer:
 しかし今まで話してて思うんですが,そうやって中国のゲーム業界の強みと弱みをちゃんと把握しているGameMoonが,いままで日本に進出しなかったのはなぜなんですか? なにかやりようがあった気も。

Cathy氏:
 もちろん2013年に会社を作ってから,いままでずっと,日本のマーケットにはとても注目しています。ただし,日本の方がどう思っているかは分かりませんが,日本というマーケットはあまりにも特殊です。いままでの長年の発展によって市場はすっかり熟成されてますし,プレイヤーもセンスがあって,とても目が肥えています。

4Gamer:
 日本があまりにも特殊だというのは,世界のどの国にいっても言われますね。

Cathy氏:
 でしょう?(笑) それに対してトライしたこともありますが,弊社を始め,たいていの中国の会社は日本に進出して失敗していますよね。なぜかというと,日本のマーケットに進出するときに,日本風に改善もしていないですし,プロモーションの方法も変えていませんし,運営方法も変えていません。それらが「これなら大丈夫」と思えるまでは,まだまだ派手な動きはしないと思います。

4Gamer:
 でも日本にオフィスを作りましたよね。

Cathy氏:
 はい。まずは拠点を作ってゆっくり,です。とりあえず手始めに,今年の東京ゲームショウに,作品を1つ出展します。初心に返ってそういうところから始めてみようかと。

GameMoonとInitialWorldが共同開発したタイトル「小小軍姫」(国内では「侵攻のオトメギアス」としてベクターより配信予定)
日本と中国は,お互いの長所を合わせていいゲームを作ればいい―――Shandaから独立した若き女性社長の会社GameMoonは,常にグローバルを見据えて動く

4Gamer:
 なるほど。GameMoonに限らず,中国のスマホゲームはここ2,3年で急激にレベルが上がってますよね。その理由はなんだと思いますか。

Cathy氏:
 確かに中国のゲーム業界は2013年あたりから猛スピードで発展してきました。当初は韓国あたりからゲームを買って運営することが多かったんですけど,いまでは逆です。
 結局のところ,先ほど話に出たような長いPCゲーム時代を経て,今の中国のゲーム開発能力というものは,世界レベルにもっとも近い位置にいるんだと思います。ですので,国もさまざまな保護をかけて,ルールを作って,資金を注入し,どんどん育てていこうとしています。

4Gamer:
 国家政策上,優遇されている?

Cathy氏:
 そうなんです。なので,ほかの業界などさまざまなところから人材や資金が大量に流れ込んできますし,開発会社は莫大な資金を得て,どんどん発展していけるんですね。

4Gamer:
 正のスパイラル羨ましいですね。日本も見習ってほしい……。
 自国の発展のために社会情勢に即座に対応するのは,ホント中国の素晴らしいところだと思います。それがどんなことであれ。

Cathy氏:
 ゲーム産業は,なんだかんだといっても10年近く積み重ねてきた基礎があって花開いているわけですから,国としても本腰入れてやっていこうという気になっているんだと思います。

4Gamer:
 そういう状況になってもなお,日中両方で人気の出るタイトルを作ることは難しいと思いますか?

Cathy氏:
 不可能ではないでしょうが,まだ難しいと思います。なぜかというと,日本に進出しようと思ったら,単にグラフィックスがキレイだとか,エンジニアの能力が素晴らしくてプログラムが軽いとか,サーバーに人がいっぱい入るとか,そういう理由だけではどうにもならないからです。
 日本のマーケット独特の特徴や,ユーザーの好みを十分に把握して対策したうえでじゃないと,成功できないと思います。「日本人の好きそうな絵にしたぞ」とか「サーバーが軽いぞ」とか,そんな程度の理由では,受け入れてもらえないんです。

4Gamer:
 なるほど。

Cathy氏:
 なので,4Gamerさんならよく理解してると思うんですが,いま中国の会社が日本進出する理由は「儲かるから」ではありません。もちろんそれはそれで大事ですし,利益は上げたほうがいいに決まっていますが,日本マーケットの勉強という意味合いが強いです。こうしたらこうなった,とか,こういうことをしたら人気が出たとか怒られたとか。

4Gamer:
 ちょっと前までは「日本に進出したぞ」というステータスのためでしたけど,目的がだんだん将来を見据えたものになってきてますね。

Cathy氏:
 スマホゲームのランキング……とくにアメリカやヨーロッパなんかではその傾向が顕著なんですが,ゲームランキングのTop10を見ると,そのほとんどはグローバルで人気のある作品なんです。つまりどこの国のユーザーでも好きになってくれる要素がないと,普通はやっていくのは厳しいんです。それに適合していない日本という国は,やはりとても難しい国だと思いますよ。

アメリカとドイツのApp StoreセールスランキングTop30。確かに共通するタイトルは多い(2017年9月6日夜撮影)
日本と中国は,お互いの長所を合わせていいゲームを作ればいい―――Shandaから独立した若き女性社長の会社GameMoonは,常にグローバルを見据えて動く 日本と中国は,お互いの長所を合わせていいゲームを作ればいい―――Shandaから独立した若き女性社長の会社GameMoonは,常にグローバルを見据えて動く

4Gamer:
 その特殊な状況に対応するためにGameMoon Japanを作った?

Cathy氏:
 そのとおりです。いままでいろんな国のマーケットに進出した経験がありますが,日本という国ではまだうまくやっていける自信はありません。それを解消するためには,やはり日本に拠点を作って,チームを作って,日本人のスタッフの感覚を重要視して,コミュニケーションをちゃんと取って,少しずつちゃんと把握していきたいと思っています。

4Gamer:
 ほかの国でもそうしてたんでしょうか。

Cathy氏:
 いい質問ですね(笑)。実はほかの国々では,ほとんどの場合はリモートコントロールです。それでもうまくやっていけましたから。ちゃんと拠点を作っているのは日本だけなんです。

4Gamer:
 そこまで本気でやるぞ,と。
 まず最初にやることは,中国のゲームの日本でのローンチでしょうか。

Cathy氏:
 それだけでもないですよ。日本のゲームを中国でローンチしたりとか。あと運営だけじゃなくて,日本のIPを使って中国で作品を作ったり,中国の技術者を日本で使ったり。お互いの長所を合わせていいゲームを作ればいいんじゃないでしょうか。

4Gamer:
 誰かがそれをやるべきだと思ったし,昨年のChinaJoyでDeNA Chinaの社長ともそんな話をしたんですが,GameMoonがそれをやろうとしてるんですね。まさに最近は,有名なIPでも中国に開発委託されることが増えてきましたし,時流に乗った動きだと思いますよ。

Cathy氏:
 そう期待してます。とくに昨今の我々は,とても腕のいい中国の開発会社との関係も増えてきましたし,ぜひともうまく動いて形にしたいですね。中国ではたいがいの開発者はUnityを使えますし,そういう意味でも日本とはいろいろと動いていけると思うんです。

4Gamer:
 ホントにみんなUnity使えますもんね。

Cathy氏:
 ええ。あとなにより中国は,数年前から「グローバル展開」を念頭においてすべての開発を進めているので,多言語対応や多サーバー対応など,そういう部分の知見はとても多いんです。技術面や運営経験は申し分ないと思います。

4Gamer:
 いまの若手スタッフは,昔以上に日本好きな人が多いと聞きます。

Cathy氏:
 それももちろんですが,単にそれだけじゃなくて,例えばGameMoonだと,日本に留学経験があったりする「本気のスタッフ」を採用することにしています。

4Gamer:
 そこまで……?

Cathy氏:
 中国と日本という国は,やはりどこまでいっても「異文化」ですから,分かり合うためにはそれなりの“コスト”を払う必要があるでしょう。そういう意味でも,本気のスタッフが欲しいんです。
 そういうスタッフがいるGameMoon Japanは役に立つと思いますよ(笑)。もっとスムースなコミュニケーションを図れるようになると言ったらよいでしょうか。

4Gamer:
 なるほど。日本の会社も,レッドオーシャン化した日本のスマホマーケットから外に出たいだろうと思いますし,これからGameMoonがいろんな活躍をすることに期待しています。ありがとうございました。

―――2017年7月28日収録
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