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名探偵シャーロック・ホームズというのは,つくづく不思議な御仁でのう。19世紀の小説に生まれた人物でありながら,これまで映画やドラマ,ゲームと,数えきれぬほど姿を変えて世に現れてきた。
生真面目な紳士のときもあれば,変わり者の天才のときもある。中には,クトゥルフ神話の邪神をあがめるカルトを相手に大立ち回りを演じる「Sherlock Holmes: The Awakened」なんて作品まであるくらいじゃ。
同じ名前と虫めがねを持ちながら,作品ごとにまるで別人――これほど繰り返し作り直されてきたキャラクターも珍しいじゃろう。
今回取り上げる「Crushed In Time」のホームズも,そんな変わり種の一人じゃ。しかもこの作品でホームズを待ち受けておるのは「ひっぱって,離す」という,探偵業とはおよそ縁のなさそうな珍妙な謎解きなのじゃ。
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ジャンルはポイント&クリックアドベンチャーというやつじゃな。画面の中をあちこち調べて,アイテムを使って謎を解いていく,昔ながらのヤツじゃ。
ただしこのゲームでは,モノを「クリックして拾う」のではない。画面の中のモノをつかんで,ゴムのようにびよーんと伸ばし,狙いを定めて離す。
すると伸びた反動でモノが勢いよく飛んだり,外れたり,動いたりする。これが謎解きの基本になっておる。
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たとえば,ドアにくっついたノブがあるとしよう。ふつうなら回して開けるところじゃが,このゲームでは伸ばして離すと,ノブがポンと外れて床に転がる。
今度はそれを拾い,もう一度ひっぱって,弧を描くように部屋の向こうへ飛ばす。すると別の仕掛けにはまって,また次のものが動き出す……といった具合じゃ。
ひとつの動きが次の動きを呼ぶ流れになっておって,パズルとして組み上げられておるのが面白いところなのじゃ。
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画面のあちこちには白い点が置かれておって,そこが「ひっぱれる場所」の目印になっておる。眠っている人をたたいて起こしたり,引き出しを伸ばして開けたり,水の入った容器をひっぱって相手に水をかけたり……。
やれることは見た目ほど難しくないが,どう組み合わせれば先に進めるかを考えるのがキモになるわけじゃな。
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物語の導入も変わっておる。ゲームの舞台はなんと,ゲームそのものの「制作現場」じゃ。ホームズとワトソンの新作ゲームが発売されたところ,そのゲームの中から重要なキャラクターが忽然と消えておるのが発覚して,開発スタジオは大あわて。
原因を探るため,プレイヤーは探偵コンビとともに,そのゲームが作られてきた過去へとさかのぼっていくわけじゃ。
プロトタイプ,アルファ版,ベータ版と,開発のさまざまな段階を渡り歩きながら,奇妙な失踪事件の謎を解いていくといった具合で,ゲームの内側に潜りこんで,作り手のドタバタやタイムトラベルがごちゃ混ぜになった世界を進んでいく,メタな仕掛けが全体を貫いておるのじゃ。
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謎解きが苦手な者への気づかいもある。このゲームのヒントは,詰まってから呼び出すのではなく,いつでも自分の好きなときにのぞける。しかも一度に答えまで見せてしまわず,段階的に出してくれるのがよい。
「ちょっとだけ手がかりが欲しい」というときに,その少しだけをもらえる。全部わかってしまってはつまらんが,かといって完全に手詰まりも困る――その、あいだをうまく取れるようになっておるのが嬉しいのじゃ。
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というわけで,これは「いつものポイント&クリックに,ちょっと新しい手ざわりがほしい」という者にこそ試してほしい一作じゃ。むずかしい操作はいらん。輪ゴムをひっぱって離すあの感覚と,とぼけた笑いが好きなら,まずは無料の体験版から遊んでみるとよいぞい。


























