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Access Accepted第692回:Netflixのゲーム市場参戦で,クラウドゲームサービスは加速するのか
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印刷2021/07/19 10:30

業界動向

Access Accepted第692回:Netflixのゲーム市場参戦で,クラウドゲームサービスは加速するのか

画像集#005のサムネイル/Access Accepted第692回:Netflixのゲーム市場参戦で,クラウドゲームサービスは加速するのか

 映画やドラマのストリーミングで日本でも高い知名度を誇るNetflixが,いよいよ本格的にゲーム市場にも参入してくることになるようだ。Netflixのゲームサービスはゲーム市場の未来にどのような意味を持っているのだろうか? ゲームマーケットの現状を振り返りつつ,考えていく。


ゲームコンテンツに目を向け始めた映像ストリーミングの雄


Netflixでゲーム開発部門のバイスプレジデントに就任するマイク・ヴァードゥ氏。AmazonやGoogleなどがゲームの自社開発で苦戦する中,どのようなコンセプトでビジネスを展開していくのだろうか
画像集#002のサムネイル/Access Accepted第692回:Netflixのゲーム市場参戦で,クラウドゲームサービスは加速するのか
 定額制動画配信サービスとして,現在世界中に2億人という視聴者を持つNetflixに,これまでFacebookに在籍していたマイク・ヴァードゥ氏(Mike Verdu)がゲーム開発部門のバイスプレジデントに就任したとBloomberg誌(外部リンク)が報じた。
 ヴァードゥ氏は,2019年5月にFacebookのAR/VRコンテンツを担当するバイスプレジデントに就任していたが,さらに遡ればKabamやZyngaにも在籍していたことがある。2000年代にはElectronic Arts Los Angelesにて,プロデューサーとして「SimCity BuildIt」などのモバイルゲームを開発し,さらに遡ると「コマンド & コンカー」のような作品にも関わるなどゲーム業界の経験値の高そうな人物だ。

 映画やドラマコンテンツのストリーミングにおいては絶大なプレゼンスを示すNetflixが,ゲーム業界に目を向けたのは2019年のことで,自社のオリジナルドラマなどを原作としたゲーム化するとして,ゲーム業界への参入を,E3 2019会場のパネルディスカッションで表明している(関連記事)。

画像集#001のサムネイル/Access Accepted第692回:Netflixのゲーム市場参戦で,クラウドゲームサービスは加速するのか

 今年のE3 2021においても,「Netflix Geek Week」関連記事)と題したデジタルイベントを開催し,「バイオハザード: インフィニット ダークネス」「Cuphead Show」などゲームをアニメ化した新作を一気に紹介したり,CD Projekt REDと共催した「WitcherCon」関連記事)ではドラマ版「The Witcher Season 2」の詳細を公開するなど,Netflixの視聴者層と親和性の高いゲーム関連コンテンツの拡充には力を入れている。

 そんなNetflixにヴァードゥ氏が加わったことについて,Bloomberg誌は,同社関係者への取材として「来年(2022年)までには,映像ストリーミングプラットフォームをゲームにも活用していく」と報じた。少なくともサービス開始当初は,動画配信とサービスを分けず,例えばドキュメンタリーやコメディのような,Netflixが提供するジャンルの1つとしてオンデマンド形式のストリーミングでゲームが遊べるようになるという。要するにクラウドゲームサービスを提供するというわけだ。

 ちなみにNetflixが,現在のような定額型ストリーミングサービスを開始したのは2010年のことで,日本では2015年からサービスを展開している。2016年2月には,Amazonが提供するAmazon Web Services(AWS)に完全移行してクラウド化しており,高画質なゲームをストリーミングする環境はすでに整っているようだ。
 ジャンルとしてはまだ「ゲーム」が置かれていない現状でも,たとえば「ブラック・ミラー:バンダースナッチ」などは,視聴者がストーリーの流れをコントロールできるインタラクティブ映像であり,選択によっては“ゲーム”オーバーになってしまう(途中で物語が終わってしまう)こともあるという。このような,ある意味ゲーム的なコンテンツはNetflixにも存在するし,こういった手法の作品はSteamでもリリースされている。Netflixの参入により,本格的にコンテンツが拡充していく可能性も大きいだろう。


クラウドゲームの未来はどうなる


 当連載の読者であれば,今さら“クラウドゲーム”について説明する必要はないだろうが,簡単に言えばテレビなどの映像出力装置と,コントローラといった入力装置,そして高速インターネット回線があれば,ゲームが遊べるというシステムだ。ゲームの処理は高性能なクラウドサーバで行われるため,ゲーム機や高性能なPCがなくとも,ハイエンドなゲームを楽しめる。
 クライアント側でデータを保有しないということは,チートやハッキングもほぼ不可能になるので,オンラインで遊ぶタイトルには魅力的な環境だろう。
 技術的な課題もまだ多いが,「“クラウドゲーム”はブロードバンド化やクラウドサーバの拡充とともに主流となり,PlayStation 5及びXbox Series Xの世代を最後に,コンシューマ機は役目を終える」という意見もあり,今後が楽しみな分野である。

 クラウドゲームに対してプラットフォームホルダーは敏感で,Nintendo Switchでは「アサシンクリード オデッセイ」「ファンタシースターオンライン2 ニュージェネシス」などのクラウドバージョンがリリースされている。また,ソニー・インタラクティブエンタテインメントは「PlayStation Now」,Microsoftは「Xbox Cloud Gaming」といったクラウドゲームサービスを提供している。
 クラウドゲームについては,Azureのデータセンターを世界各地に保有するMicrosoftが有利だが,この点ではMicrosoftとソニーがパートナーシップを締結(関連記事)しており,共同開発を検討すると発表している。

 クラウドゲームの推進役と目されていたのが,Googleが2019年11月から欧米を中心にサービスを運営している「Google Stadia」だ。しかし,今年2月にはStadia専用のタイトルを開発していたはずの自社スタジオStadia Games & Entertainmentが閉鎖されるなど,その未来に暗雲が立ち込めている。魅力的な独占タイトルの有無がプラットフォームの成功に大きく関わるのは,この業界では常識と言っても過言ではないため,少々求心力に欠ける状態だ。
 さらに,Google Stadiaはビジネスモデルも不可解で,Stadia向けに専用の月額サブスクリプションを払うのに加えて,それぞれのゲームも別途購入しなければならない。そんな状況で独占タイトルに期待できないのであれば,同じ月額制ながらゲームを遊び放題の「Xbox Game Pass」のようなサービスに消費者が流れるのも無理はない。

4K解像度の「DOOM Eternal」のようなAAAタイトルでさえ,クライアント側にダウンロードせずにプレイできるのがGoogle Stadiaの魅力。将来的には8K/120fpsまで引き上げることを目標していると2020年末の時点で述べられている
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 Microsoftのフィル・スペンサー氏(Phil Spencer)は,今年6月の「Xbox & Bethesda Games Showcase」を前に,一部のメディアに対してクローズドな形で行ったデジタルイベント「What’s Next for Gaming」関連記事)において,「プラットフォームのパラダイムシフトは,今後10年で完全に達成すると予想されている」と発言。すでに,世界中に広がったコンシューマ機市場の上限が見え始めていることを受けて,クラウドゲームとサブスクリプションサービスを併用していくことで,ゲーム端末を必要とせずに市場拡大を狙う戦略を,改めて明確にした。

 スペンサー氏の言う,いかにしてユーザー層を広げ,引き留めていくかというコンセプトは,Netflixが描く方向性と同一のものである。
 とはいえ,クラウドゲームはまだまだ主流と言えない状況だ。そんな中でNetflixがどのようなゲームサービスを展開していくのか,非常に気になるところである。アメリカのiOS系のジャーナリストであるスティーブ・モーザー氏(Steve Moser)は,「Netflixは,NGamesという動画ストリーミングサービスとは異なるものを立ち上げ,SIEとの提携もあるようだ」と,自身のTwitterアカウント(外部リンク)で伝えている。Bloombergの報じた内容とは少し違う展開だが,これが実現すればクラウドゲームとサブスクリプション,そして魅力的なタイトルという3本柱を用意でき,ゲーム産業を大きく変えていく可能性もありそうだ。いずれにしても今後の動向に注目しておく必要があるだろう。

Netflixで配信されている「ブラック・ミラー:バンダースナッチ」。こうしたインタラクティブコンテンツを拡充するだけでも十分にアリだと思うが,より本格的なゲームをクラウド化させてくるとゲーム市場に一石を投じることになりそうだ
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著者紹介:奥谷海人
 4Gamer海外特派員。サンフランシスコ在住のゲームジャーナリストで,本連載「奥谷海人のAccess Accepted」は,2004年の開始以来,4Gamerで最も長く続く連載記事。欧米ゲーム業界に知り合いも多く,またゲームイベントの取材などを通じて,欧米ゲーム業界の“今”をウォッチし続けている。


 来週,2021年7月26日の「奥谷海人のAccess Accepted」は,筆者取材のため休載します。次回の掲載は,8月2日を予定しております。
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