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[GDC2008#22]データ自動生成技術を大胆に導入したFPS,「Far Cry 2」の光と影
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印刷2008/02/22 15:17

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[GDC2008#22]データ自動生成技術を大胆に導入したFPS,「Far Cry 2」の光と影

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 2008年内の発売が予定されている「Far Cry 2」は現在,Ubisoft Entertainmentのモントリオールスタジオで開発が進められている。前作「Far Cry」(邦題 ファークライ 日本語版)を制作したドイツのデベロッパCryTekは,パブリッシャをElectronic Artsに移して2007年に「クライシス」をリリースしたが,Far Cryの商標がUbisoftに残ったため,こういうことになったのだというのは既報の通り。
 南国ムード満点のトロピカルFPSとして知られるFar Cryだが,続編「2」の舞台となるのはアフリカ。プレイヤーは一人の傭兵として,戦火の収まらないアフリカ某国を舞台に危険な仕事を請け負うことになる。
 ゲームシステムは「Grand Theft Auto」ばりの,ミッションオリエンテッドなスタイル。50平方kmにもおよぶ広大なサバンナで,あるときはミッションをこなし,あるときは自由にアフリカ観光を楽しめるものになりそうだ。

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 というわけで,GDC08の2日目(現地時間2月21日)に行われたセッションが「Procedual Data Generation in Far Cry 2」である。スピーカーはUbisoftでFar Cry 2のテクニカルディレクターを担当するDominic Guay氏。で,何が「というわけで」なのかといえば,つまり「サバンナ広すぎ!」。50平方kmを後楽園球場で換算すると約1070個分に相当し,まあよく分かんないけどかなり広いわけで,建物こそ少ないものの,いちいち木を植えていくだけでも大仕事になる。こういうときは「繰り返しのパターン」が使われることが多いのだが,ここにGuay氏らは新しい技術,つまり自動的に自然を生成する方法を持ち込んだわけであり,今回はそれについて語ろうということなのである。
 あらかじめお断りしておかなければならないが,Far Cry 2が開発途中のタイトルであるということもあって,会場の撮影,録音などは禁止。記事では,これまで掲載されたスクリーンショットなどでお茶を濁すわけだが,ページの最後にエキスポ会場で展示されていた同作のテックデモの直撮りムービーを掲載したので,なんとなく雰囲気をつかんでいただければこれ幸いである。

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 さて,この自然を自動生成する「Procedual Data Generation」というテクニック,実のところ昔から使われている。Guay氏が挙げた例は,1996年に発売された「The Elder Scrolls: DAGGERFALL」。広大な世界を自由に散策できるというBethesda Softworksお得意のゲーム性を持ったRPGなのだが,このゲーム世界が自動生成。もっとも,さすがに使い回しが多く,同じような場所ばかりだったそうである。
 また,さらに古い1984年に発売されたスペースシム「Elite」では,惑星データが自動生成されていた。こちらも8ビット機の少ないメモリを使っていたため,いろいろ問題があったらしい。個人的には「エイジ オブ エンパイア II」のマップが自動生成だったなあと思い出すし,MMORPG好きの人にとってはインスタンスダンジョンがデータ自動生成の好例だろう。
 もっとも,上記の例はゲーム内における自動生成であり,Guay氏らが行っているのは,ゲームの開発にプロシージャルなデータ生成を持ち込もうというアプローチである。

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The Elder Scrolls: DAGGERFALL
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Elite

 自動生成技術は,うまくいけば省力化とそれに伴うコストの軽減に貢献する。Guay氏の場合,Far Cry 2のプリプロダクション時にアニメーションの責任者から,「まともにやったらどれだけ時間がかかるか分からない」と言われたことでプロシージャル化に踏み切ったとのこと。というのも,Far Cry 2では地形だけでなく数多く登場するNPCの動きも自動生成が試みられているからだ。このへん,Guay氏の講演はやや未整理なのだが,プレイヤーがNPCに働きかけたときの反応が自動的に作られるもので,こちらはゲーム内の自動生成となる。
 想像していたより簡単に実現できたとGuay氏は言うが,これに関連して紹介されたムービーには,マウスカーソルを目で追う男性の上半身が映し出され,確かに視線の移動にともなう頭や体の動きは自然だったが,これだけじゃなんとも分からんという印象も。

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 とはいえ,自動的に作られるサバンナは確かに見事である。vegetation systemと名付けられた技術により,アフリカに生える多種多様な樹木を簡単に生成できるだけでなく,葉や枝が風にそよいだり,銃撃で木が倒れたり枝が折れたり,さらには火炎放射器で丸焼きにしたりといったことまで可能なのである。
 紹介されたムービーでは,何もなかった土地にモリモリと木が生え,移動する太陽と,それによってダイナミックに変わる樹木の影,そして霧の発生などが映し出されていた。とくに,サバンナを取材したデザイナーが「ぜひ再現したい」と気合を入れたという,サバンナの夕日は驚くほど美しい。
 こうした環境を作るシステムは,ひっくるめて「バイオム」と呼ばれ,基本としては,ベースとなる要素の上にデータベースに登録されたルールに従って,さまざまなものを作り出していくことになる。Procedual environment building Toolsと総称される各種ツールによって,土地の修正や変更なども容易であるとのこと。

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 ただし,こうした新技術の導入に伴う問題もある。開発チームにとって重要なのは,エンジニアとデザイナーの役割分担が不明確になることだ。向こうの開発現場はパイプライン化が進んでおり,デザイナーが作り出した各種構成要素をプログラマがマップに配置し,それにまたデザイナーが手を入れるという反復作業の流れが出来上がっている。
 ところが,土地そのものが自動生成されてしまうと,プログラマがいろいろなデザインワークを要求されることになる。人にもよるだろうけど,プログラマに芸術性を求めることは難しく,思ったものが作れないデザイナーもまたストレスを感じることになる。
 Guay氏らのチームは現在も解決方法を模索中だが,多くの妥協を強いられていることも事実らしい。

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 これはもっぱら時間の足りなさが理由なのだが,バイオムに使われる数多くのツールのいくつかのユーザインタフェースが劣悪で,デザイナーの負担になっているとのこと。とくに雲を描くツール「Procedual Sky」は直感的でなく,プログラマが手直しを繰り返してはいるものの,満足のいくものには仕上がっていないそうだ。こうしたことは「作ってみるまで分からない」というデータ自動生成の基本的性質にもよる。
 この性質は,クオリティコントロールにも負担を与える。Guay氏は,週末まではちゃんと動いていたのに,月曜日に出社するとフレームレートががっくり下がっていて驚いたことがあると語る。これは週末,デザイナーが樹木の生成レートを数%上げたことが原因で,見た目は良くなってデザイナーは満足したが,彼が気がつかなかった場所でオブジェクトが過剰に生成され,それがフレームレートに悪影響を与えていたのだ。要するに50平方kmもの広さがあると,隅から隅まで目を届かせるのが困難なのである。

 こうした問題はあるものの,プロシージャルなデータ作成は避けられないだろうとGuay氏は見ている。1972年にATARIから「PONG」が登場したとき,プログラムだけでなくグラフィックスから音楽まで,すべてたった一人のプログラマによって作られた。やがてデータは指数的に増加し,今や単位はギガバイト。これまで多くのことを人海戦術で成し遂げてきたゲーム業界だが,自動的なデータ生成は,これから向かうべき道だという。
 いずれにしろ,いろんな意味でFar Cry 2は早く遊んでみたいタイトルに(個人的にだが)なりつつある今日この頃だ。

  • 関連タイトル:

    Far Cry2 日本語マニュアル付英語版

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