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  • 発表日:2011/12/22
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AMD,「Radeon HD 7950」の自動クロックアップ機能有効化BIOSを公開。ファイルをUpしつつ,その効果を確認してみる
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印刷2012/08/25 00:00

テストレポート

AMD,「Radeon HD 7950」の自動クロックアップ機能有効化BIOSを公開。ファイルをUpしつつ,その効果を確認してみる

 国内ではこれといった発表もなかったのだが,NVIDIAが「GeForce GTX 660 Ti」(以下,GTX 660 Ti)を発表したのと時をほぼ同じくして,AMDは「Radeon HD 7950」の新しいVBIOS(=Video BIOS,グラフィックスカード用BIOS),「Tahiti_PRO_Boost_BIOS_Jul12_2012.exe」をリリースした。
HD 7950リファレンスカード
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 このVBIOSにより,「Radeon HD 7970 GHz Edition」(以下,HD 7970 GHz Edition)で初めて採用された「AMD PowerTune Technology with Boost」(以下,PowerTune Boost)が,HD 7950カードでも利用できるようになる。

 AMDから入手したWindows用のVBIOSアップデータはzip形式で下のボタンからダウンロードできるようにしたので,興味のある人はそちらからどうぞ。ただし,

  • VBIOSの更新作業は自己責任であり,失敗して手持ちのHD 7950カードが動作しなくなっても,AMDやグラフィックスカードメーカー,販売代理店,販売店,筆者,4Gamer編集部はいずれも一切の責任を負わない
  • カードメーカー独自デザインの製品やクロックアップ品などでは正常に動作しない可能性がある

という,重要な注意事項があるので,導入するかどうかはあくまでも読者が自分で判断するようにしてほしい。

HD 7950用VBIOSアップデータ(zip)

※解凍後のサイズは435KB(445724bytes),MD5:7403a238080e53c7da366e95d5b14b51

実行ファイルをダブルクリックすると解凍が始まり,続いて「VBIOSのアップデートを行う」旨のダイアログが表示される。対応カードが差さっている環境で[OK]を押すと更新処理が始まるという,シンプルな設計だ
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 その投入時期からしても,AMDによるGTX 660 Tiへの対抗策だというのはまずもって疑いようがないのだが,実際,効果はいかほどか。ちょうどHD 7950のリファレンスカードが手元にあるので,VBIOSアップデート前と後の違いをチェックしてみることにしよう。

VBIOSアップデート前と後で,「GPU-Z」(Version 0.6.4)を実行してみたところ。「BIOS Version」が015.013.000.007.000000から15.022.000.001.001496へと書き換わっている
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動作クロックが定格850MHzに引き上げられ

PowerTune Boostにより最大925MHzまで上昇


 テストに先立って,PowerTune Boostとは何なのか,軽く復習してみたい。
 このあたりはHD 7970 GHz Editionのレビュー記事が詳しいので,興味のある人はそちらもチェックしてもらえればと思うが,PowerTune Boostは,AMD独自の電力管理機能「AMD PowerTune Technology」(以下,PowerTune)を発展させた自動クロックアップ機能だ。

画像集#006のサムネイル/AMD,「Radeon HD 7950」の自動クロックアップ機能有効化BIOSを公開。ファイルをUpしつつ,その効果を確認してみる
 AMDはPowerTuneで,従来製品よりも細かく動作クロックと動作電圧を調整することで,性能と消費電力のバランスを取ろうとしていたが,PowerTune Boostでは,PowerTuneに用意された基本P-State(≒アクティブに動作しているコアの動作クロックと動作電圧設定値)の上に,より高いコアクロックとコア電圧で動作する「Boost P-State」を用意しているのが大きな特徴となる。必要に応じて自動的にBoost P-Stateへ移行することで,より高い動作クロックとコア電圧を実現するのである。

 下に示したのは,AMDが示したVBIOS更新前と更新後の比較で,VBIOS更新後を示す「Radeon HD 7950 with Boost」(※AMDは「with Boost」のところを「With Boost」と書いたり「WITH BOOST」と書いたりするなど,表記がぶれている)は,GPUのベースクロックが従来の800MHzから850MHzへと引き上げられ,さらに925MHzというブーストクロック値が新設されている。それにより,公称最大電力が200Wから225Wへと引き上げられているのもポイントだ。
 一方,メモリ周りのスペックは,従来から変わっていない。

HD 7950と「Radeon HD 7950 with Boost」のスペック比較
画像集#007のサムネイル/AMD,「Radeon HD 7950」の自動クロックアップ機能有効化BIOSを公開。ファイルをUpしつつ,その効果を確認してみる

 で,どういう挙動になるのか。
 今回は後述するテスト環境で「3DMark 11」(Version 1.0.3)の「Extreme」プリセットを実行し,テスト開始から240秒間のGPUコアクロック変化を,GPU情報表示ツール「GPU-Z」(Version 0.6.4)から追うことにした。その結果がグラフ1だ。

 一見して明らかなように,従来のVBIOSで動作するHD 7950ではGPUベースクロックである800MHzがクロック上限なのに対し,新しいVBIOSを導入した状態(以下,HD 7950 Boost)では,新しいベースクロックである850MHzと,ブーストクロックである925MHzの間で,動作クロックが行ったり来たりするようになる。
 HD 7970 GHz Editionのレビュー時にお伝えしたとおり,PowerTune Boostでは,AMDの社内ツールでないと確認できない頻度でもっと細かく動作クロックが変わっているそうなのだが,少なくとも850MHzと925MHzの間で動作クロックの切り替わりが生じているのを確認できただけでも意味はあるだろう。

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PowerTune Boostの有効化により

テストでは最大約8%のスコア上昇を確認


 動作クロックの向上は確認できたが,性能はどの程度上がるのか。グラフ1のテストも含め,今回はの環境でテストしたいと考えている。

画像集#011のサムネイル/AMD,「Radeon HD 7950」の自動クロックアップ機能有効化BIOSを公開。ファイルをUpしつつ,その効果を確認してみる

 HD 7950 BoostおよびHD 7950の比較対象としては,リリースタイミングからして対抗製品と思われるGTX 660 Tiを用意した。ただし,用いるグラフィックスカードのテスト環境がGTX 660 TiのGPUレビュー記事と完全に同じであるため,GTX 660 Tiのスコアは先のレビュー記事から流用することをお断りしておきたい。
 なお,主役となるHD 7950 BoostとHD 7950のテストには,リファレンスカードと,北米時間8月15日公開の「Catalyst 12.8」を用いるので,スコアの流用はない。

 テスト方法は4Gamerのベンチマークレギュレーション12.2準拠。ただし,スケジュールの都合から,今回は「S.T.A.L.K.E.R.:Call of Pripyat」と「Sid Meier's Civilization V」のテストを省略している。また,これはいつものことだが,「Core i7-3960X Extreme Edition/3.3GHz」では,負荷状況に応じたクロックアップ機能「Intel Turbo Boost Technology」の効き具合がテストタイミングによって異なる可能性を考慮して,同機能をマザーボードのUEFIから無効化してある。

 というわけで,順にスコアを見ていこう。グラフ2は,先ほどExtremeプリセットにおいてクロックの向上を確認できた3DMark 11で,同プリセットだけでなく「Performance」プリセットでもテストを行った結果だ。
 HD 7950 Boostのスコアは,HD 7950と比べると約7%高い。HD 7950 Boostは,HD 7950に対して,GPUのベースクロックで6%,ブーストクロックは約16%
高いものの,常に925MHzで動作するわけではないということなのだろう。

 対GTX 660 Tiでは,HD 7950が11〜14%程度離されているところ,4〜8%へと,かなり詰めてきている。

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 「Battlefield 3」(以下,BF3)のテスト結果がグラフ3,4となる。BF3におけるHD 7950 BoostのスコアはHD 7950より7〜8%高いので,おおむね3DMark 11のスコアを踏襲しているといえるだろう。
 一方,対GTX 660 Tiでは多少巻き返しているものの,いい勝負にまで持ち込めているとは依然として言いがたい。

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 グラフ5,6は,「Call of Duty 4: Modern Warfare」(以下,Call of Duty 4)のスコアとなる。
 「標準設定」だとGTX 660 Tiの後塵を拝するHD 7950だが,HD 7950 Boostでは立場を逆転させている。メモリ負荷が極端に低いこともあって,「高負荷設定」になると分が悪くなるものの,「HD 7950 BoostがGTX 660 Tiとほぼ互角の勝負を演じている」とは評しても問題なさそうだ。

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 高解像度テクスチャパック導入済みの「The Elder Scrolls V: Skyrim」(以下,Skyrim)でテストした結果がグラフ7,8となる。Skyrimだと,HD 7950 Boostのスコアは,HD 7950に対して最大でも約5%高い程度となるので,コアクロックだけを引き上げた効果はそれほど大きくないということになるだろう。
 もっともここではもともと,384bitメモリインタフェースを持つHD 7950が優勢なので,そこから最大5%もスコアが上がるという事実は軽くない。HD 7950 Boostは,「Ultra設定」の1920×1080ドットで約29%,2560×1600ドットでは約39%もGTX 660 Tiより高いスコアを示している。

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 グラフ9,10は「DiRT 3」のテスト結果で,ここでは,HD 7950がGTX 660 Tiに敵わないところ,HD 7950 Boostは標準設定の2560×1600ドットで互角の勝負に持ち込み,高負荷設定では逆転するといった形になっている。対GTX 660 Tiで導入してきたPowerTune Boostの効果が,たいへん分かりやすい形で出た結果と言えそうだ。

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消費電力は最大でHD 7950より32W増加

ファン回転数も上がる


 さて,HD 7950 Boostで搭載されたPowerTune Boostでは,Boost P-Stateに入ったとき,コア電圧も引き上げられることになっている。
 そこで,グラフ1でGPUクロックの動きを追ったときと同じ条件で,GPU-ZからGPUコア電圧である「VDDC」を追ってみることにした。その結果がグラフ11で,HD 7950では最大1.086Vなのに対し,HD 7950 Boostでは最大1.238Vとなり,総じて高めに推移しているのが分かる。動作クロックの引き上げにあたっては,動作電圧も相応に引き上げられているわけだ。

画像集#021のサムネイル/AMD,「Radeon HD 7950」の自動クロックアップ機能有効化BIOSを公開。ファイルをUpしつつ,その効果を確認してみる

 そうなると気になるのは消費電力への影響である。今回も,ログの取得が可能なワットチェッカー「Watts up? PRO」から,システム全体の消費電力をチェックしてみよう。
 無操作時にもディスプレイ出力が無効化されないよう設定したうえで,OSの起動後30分間放置した時点を「アイドル時」,各アプリケーションベンチマークを実行したとき,最も高い消費電力値を記録した時点を,アプリケーションごとの実行時として,スコアをまとめた結果がグラフ12となる。

 すると一目瞭然。アイドル時はともかく,アプリケーションを実行すると,HD 7950 Boostの消費電力が跳ね上がっているのを確認できる。HD 7950 Boostは,HD 7950と比べて22〜32W高い。
 なお,別途,アイドル時にディスプレイ出力を無効化するよう設定してみたところ,HD 7950 BoostとHD 7950はいずれも「AMD ZeroCore Power Technology」が有効になり,システム全体の消費電力がHD 7950 Boostで85W,HD 7950で84Wへと下がったのを確認できた。

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 最後に,3DMark 11の30分間連続実行時を「高負荷時」とし,アイドル時ともども,両時点におけるGPU温度をGPU-Zから取得したものがグラフ13となる。なお,テスト時の室温は24℃。システムはPCケースに組み込まず,いわゆるバラック状態に置いている。

 スコアを見ると,若干ながらHD 7950 BoostのほうがHD 7950よりも温度は高く出ているが,その差は1〜2℃。ほとんど誤差範囲であり,両者に違いはないと述べるべきだろう。ただ,高負荷時におけるファン回転数を比較すると,前者が1844rpm,後者が1702rpmで,前者のほうが100rpm以上大きくなっている。つまり,高負荷時の温度を70℃程度に抑えるべく,HD 7950 Boostではファン回転数を自動で引き上げているというわけだ。
 実際,筆者の体感であることを断って続けると,動作音もわずかながら大きくなった印象である。

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新VBIOSは基本的にリファレンス仕様のカード向け

カードベンダーは「新製品」で対応へ


 以上,PowerTune Boostを有効化するVBIOSは,3D性能,とくに対GTX 660 Tiの性能という意味で,確かに意味があるとまとめられるだろう。消費電力が上がり,リファレンスカードではGPUクーラーのファン回転数も上がったが,とくに冷却面での問題が生じたわけではないので,対応カードであれば,自己責任で新しいVBIOSを導入する価値があるはずだ。

 問題は,「どのカードがVBIOSのアップデートに対応していて,どのカードが対応していないのか。そして,対応していないカードに対してアップデータを適用したらどうなるのか」が明らかになっていないことに尽きる。
 冒頭で注意事項として紹介したように,AMDは,

PowerTune Boost対応VBIOSは,流通しているすべてのHD 7950に対応しているわけではない。AMDのパートナーとなるカードベンダーが独自設計を行った結果としての微調整や設計変更により,対応しないことがある。
原文:this BIOS is not guaranteed to work with all the 7950 boards out in the field due to potential tweaks and changes AIB’s have made to their designs

試しに「Radeon HD 7850」搭載カードに対してアップデータを実行してみたところ。「対応GPUが見つからなかった」いうメッセージとともに処理が止まった
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と,報道関係者向け資料のなかで述べている。要するに,(断言されてはいないが)AMDのリファレンスデザインを採用したカードなら,対応している可能性が高いということなのだろう。
 ただ,「微調整」や「設計変更」がどれくらいサポートされているかはなんともいえないところなので,自己責任で試してみるほかないという現実は揺るがない。また,そもそもの話として,925MHzを超えるクロック設定がカードベンダーレベルでなされている製品の場合は,導入できたとしてもしないほうがいいのではなかろうか。

 こういった部分について,AMD,というか日本AMDは,エンドユーザーに直接説明すべきだと思うのだが……。

 なお,カードベンダー側の動きだが,少なくとも日本において,販売代理店各社からこれといったアナウンスは,原稿執筆時点である8月24日時点だとない。一方,“HD 7950 with Boostを搭載する新製品”の登場が予定されていたりはするようだ。
 店頭では,おそらく少しずつ切り替わっていくことになると思われるが,コアクロックが800MHzと850MHzで,2種類のHD 7950が市場で併存することになるであろう状況には,首を捻らざるを得ない。VBIOSが異なるだけなので,型番を変えるというのが難しいことは分かるものの,それでもなんとかしてほしかったところである。

AMDの資料より。Sapphire TechnologyとHightech Information System,Tulがカードを用意しているようだ
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AMD日本語公式Webサイト

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