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NVIDIAのジェンスン・フアンCEO,AI分野における日本への期待を熱く語る
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印刷2016/10/06 00:00

イベント

NVIDIAのジェンスン・フアンCEO,AI分野における日本への期待を熱く語る

画像集 No.002のサムネイル画像 / NVIDIAのジェンスン・フアンCEO,AI分野における日本への期待を熱く語る
 NVIDIAは2016年10月5日,都内のホテル「ヒルトン東京お台場」で,GPUコンピューティングがテーマのイベント「GTC Japan 2016」を開催。2012年以降,GTC Japanは毎年の開催となっているのだが,今年は,NVIDIAの共同創業者にしてCEOであるJen-Hsun Huang(ジェンスン・フアン)氏が基調講演の舞台に立った。
 結論から先に言うと,Huang氏が語った内容はGPUコンピューティング一色であり,ゲームのゲの字も出てはきていないのだが,NVIDIAの総帥が,日本の開発者に向けて何を語ったのか,今回はその点を簡潔にまとめてみたい。

Jen-Hsun Huang氏(Co-Founder, President & CEO, NVIDIA)
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「AIによってSFが現実になる」


Project Xavier
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 2016年のNVIDIAは,「メインイベント」となる「GPU Technology Conference 2016」(以下,GTC 2016)を4月に開催した後,“GTCワールドツアー”とでも呼びたくなるほど,世界各地でGPUコンピューティング関係の開発者に向けたイベントを開催している。最近では欧州初開催となったGTC Europe 2016で車載およびAI向け新型SoC(System-on-a-Chip)「Project Xavier」(プロジェクト・エグゼイビア,開発コードネーム)の開発を表明したのが記憶に新しいところだ(関連記事)。

 そういう流れのなかで,Huang氏が,GTC Japanの前身となる国内イベント「GPUコンピューティング 2010 Winter」以来,6年ぶりに,日本のローカルイベントで基調講演を担当するというのだから,NVIDIAにとっての重要度は窺い知れよう。

 ではなぜ,GTC Japan 2016がNVIDIAにとって重要なのか。それは,基調講演でHuang氏が力を込めて語っていたように,同社がいま,「AIコンピューティングの会社」という,新しい衣装を身に纏いつつあるからだ。

現在のNVIDIAが注力する分野。GPUコンピューティングとビジュアルコンピューティング,そしてAIが3本の柱であるとし,「AI Computing Company」というキーワードを提示した
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 「なぜNVIDIA(がAI)なのか,それはNVIDIAが設立当初から並列処理に取り組んできたからだ」とHuang氏は語る。GPUの並列処理が,AI,なかでもディープラーニングと呼ばれる技術に極めて適しており,そこにNVIDIAが力を入れるのは必然だというわけだ。
 そのうえで氏は,NVIDIAが従来から力を入れてきたビジュアルコンピューティングの成果でもあるARやVRにAIを活用する例として,映画「Iron Man」(アイアンマン)を引き合いに出す。
 いわく,「私はスタークの,研究所のシーンがとても好きだ」(中略)「このシーンも,もはやSFではない」とのことである。

VRとAR,AIの技術を組み合わせることで,Iron Manの映画における画面のシーンは現実世界で再現できるという意味を込め,Huang氏は「もはやSFではない」と述べた
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「人間の脳は大量の脳細胞でイメージを生成している。大量のプロセッサによる並列処理が行えるGPUは,人間の脳にとても近い」(Huang氏)。だからこそディープラーニングにはGPUが最適なのだとHaung氏は強調する
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 Huang氏はディープラーニング技術が急速に発展すると同時に応用が広がっていることに触れ,「(その進歩速度は)ムーアの法則を超えている。AIは『超成長』しているのだ」と言う。
 そんな急激なディープラーニング技術の発展に対応するために,「NVIDIAは20億ドルを投資してPascalを開発した。20億ドルという投資額はコンピューティング分野としては最も大きなものではないか」とも述べている。

Microsoftが開発した,ディープラーニングによる画像認識システム「AlexNet」は8層のニューラルネットワークだったが,2015年の「ResNet」は152層となり,モデルサイズは16倍に膨れ上がった。また,Baiduの音声認識技術「Deep Speech 1」に対して2015年の「Deep Speech 2」は学習処理が10倍に膨れ上がっているという。こうした例を示しながらHuang氏は,ディープラーニングがムーアの法則を超えて成長しているとした
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ムーアの法則を超えて成長し続けるディープラーニングのため,NVIDIAが20億ドルという巨額の投資を行って開発したのが,「Pascal」世代のGPUであるという
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Pascalベースとなる,ディープラーニングにおける認識アクセラレータ「Tesla P4」はCPUと比べて40倍の電力性能を持ち,学習をアクセラレートする「Tesla P40」はCPUと比べて40倍の性能を持つというスライド
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Pascalのパワーを示すデモとして,学習した画家のタッチで映像にリアルタイムのエフェクト適用するソフトウェア「Artisto」を披露。あらかじめ用意したムービーに対する処理だけかと思いきや,GTC Japan 2016基調講演会場の客席にもエフェクトを適用してみせていた
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産業用ロボット大手ファナックとの協業を会場で発表


IoTデバイスやロボットへの組み込み向けとなる「Jetson TX1」
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 ディープラーニングに代表されるAIの発展は日本においても進んでいる。Huang氏は人気があるディープラーニングフレームワーク「Chainer」を開発しているPreferred Networkや,楽天におけるフリマ商品のカテゴリー分けといった,国内における実例を挙げていた。

AIの活用は日本でも進んでいる。基調講演では,NVIDIAとパートナーを組んでいるPreferred Networkや,楽天,みずほ証券などの事例が挙がった
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 さらにディープラーニングをIoTやロボットに活用する未来像を示しながら,「日本はロボットが誕生した国といってもいい」と日本を持ち上げてみせている。

日本におけるJetson TX1を活用したロボット開発を列挙しつつ「日本こそロボットが生まれた国」と日本を持ち上げていた
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 と,ここでHuang氏は,NVIDIAと産業用ロボット大手ファナックとの協業を発表。ファナックでロボット事業部本部長を務める稲葉清典氏が登壇し,ファナックが目指すAIの生産技術への応用を語った。

日本を盛んに持ち上げたところで,おもむろにファナックとの協業を発表
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稲葉清典氏は,将来の工場においてNVIDIAのAIプラットフォームを採用すると述べた
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 ファナックは多関節産業用ロボット市場で世界シェアの50%を占める有力な企業だ。もちろん,産業用ロボットでは世界最高の技術力を持つ。NVIDIAがファナックと協業するというのはビッグニュースであり,今回のGTC Japan 2016でHaung氏が最もアピールしたかったことの1つだろう。


自動運転研究の進展を報告しつつも日本のパートナーは発表せず


 ファナックとの協業によって産業用ロボットという大市場に乗り込んだNVIDIAだが,続いてHuang氏が大市場になりうると強調したのが自動運転の分野だ。「AIトランスポーテーションの需要はとても大きい。将来的には1000兆円の市場になるだろう」とのことだ。

AIを使った運転技術(トランスポーテーション)は1000兆円産業になるとHaung氏は語る
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 よく知られているとおり,NVIDIAはPascalアーキテクチャを搭載するDrive PX 2シリーズを使い,自動運転システムの開発に取り組んでいる。その成果である自動運転向けOS「DriveWorks」のα版は「向こう数週間以内にパートナーに提供することができるだろう」(Huang氏)。

Pascalアーキテクチャを搭載するDrive PX 2は,小型モデルが自動運転(AutoCruise)向け,大型モデルが運転支援(AutoChauffeur)向け,大型モデルの2枚構成で全自動運転(Full Autonomomy)へと,スケーラブルに展開できるのが特徴という
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NVIDIAが開発に取り組んできた自動運転向けオペレーティングシステム,DriveWorks。α版が数週間以内にパートナーへ提供されるそうだ
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DriveWorksがリアルタイムに走行可能なエリアを認識している様子
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 また,ディープラーニングによる学習だけで自律走行する自動車「BB8」の現状もHuang氏は動画で紹介していた。

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 BB8は,GTC 2016でその存在が明らかとなった実験的なプロジェクトなのだが,3月当時に比べるとかなり賢くなっているようで,今回披露された動画では,走行レーンのない道や,郊外の未舗装路ようなところでも道を認識して走って曲がれるようになり,工事現場の脇を抜けて進むといったこともできるようになっていた。

GTC 2016の時点では,なんとかパイロンの間を走れる,程度だったのが,あれから学習が進み,相当に高度な運転が行えるようになっていた
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 ……という具合に自動運転研究の成果披露があったため,ファナックに続いて,ここで日本の自動車メーカー関係者が登壇するかもと期待したのだが,残念ながらそれはなかった。
 トヨタが米国にAI研究所を解説するなど,日本の自動車メーカーも自動運転技術の開発に取り組んでいる最中だが,少なくともGTC Japan 2016のタイミングで,日本の自動車メーカーとNVIDIAが共同で発表できるようなニュースはなかったようである。

その代わり,というわけではないのだがろうが,Huang氏は,8コアのARMプロセッサと,Voltaベースで512基のCUDA Coreを搭載するSoCであるProject Xavierの性能に関する言及を行った。2基のParker CPUと2基のPascal GPUを搭載する大型版Drive PX 2より高い性能を,Xavierは小型モデルで実現でき,しかもその消費電力は4分の1になるという
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 以上がHuang氏が語った概要だが,やはりファナックとの協業は大きなニュースだろう。ファナックの稲葉氏は,学習によってさまざまな作業を効率よく学習し,周囲を認識して,他のロボットや人間と協業できる産業ロボットといった将来のロボット開発を語っていたが,こうしたことがNVIDIAとの協業で可能になれば産業技術にとって大きなブレークスルーをもたらすはずだ。
 そしてそれは,普段ゲームをプレイして過ごしている我々の生活をも大きく変えることにもつながるだろう。今後の展開に期待したい。

GTC Japan公式Webサイト

  • 関連タイトル:

    Volta(開発コードネーム)

  • 関連タイトル:

    NVIDIA RTX,Quadro,Tesla

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