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[インタビュー]国産ロボACT「Vulture」の開発者は,20代前半の若きクリエイター。“ロボを動かすゲーム”に込めた熱き想いを語ってもらった
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印刷2023/07/28 08:00

インタビュー

[インタビュー]国産ロボACT「Vulture」の開発者は,20代前半の若きクリエイター。“ロボを動かすゲーム”に込めた熱き想いを語ってもらった

 地上に生き残った国産ロボゲーは「アーマード・コア」だけではない。インディーシーンにも,ロボの炎は灯っている。

 2023年6月25日,日本のインディーゲーム開発チーム「濡れ路」が2017年から開発している新作タイトル「Vulture -Unlimited Frontier- /0」(以下,Vulture)のクラウドファンディングが,CAMPFIREでスタートした。本稿掲載時点で,募集終了までは残り23日となっている。

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「Vulture -Unlimited Frontier- /0」クラウドファンディングページ(CAMPFIRE)


 ロボゲーファンの中には,Twitterで流れてきた「やたらかっこよく動く開発中の謎のロボゲー」の動画を見たことがある人もいるかもしれないが,おそらく,このVultureが“それ”だ。360度対応のバレルロールを駆使し,地上と空中を自在に飛び回る機動戦闘は,多くのロボゲーファンを驚かせた。
 4Gamerでは,東京ゲームショウ2022に出展されたバージョンのプレイレポートを掲載しているので,そちらも参考にしてほしい。

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 TGS 2022のインディーゲームコーナーに,ロボットゲームファン必見のタイトル「Vulture -Unlimited Frontier- /0」がプレイアブル出展されている。360度に可能な回転移動を駆使した機動制御が盛り込まれており,自在な空中戦によるエースパイロット体験が存分に楽しめるのだ。

[2022/09/17 14:16]

 今回は,そんな本作を開発するロボ好き氏(ハンドルネーム)とむつのはな氏にインタビューを行った。「ロボ好き」という,直球すぎる名前を名乗っている開発者は,いったいどのような人物で,Vultureは何をコンセプトにしているのか。熱い“ロボ愛”が感じられる若者たちが語ってくれた。

東京ゲームショウ2022での濡れ路の皆さん
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「Vulture -Unlimited Frontier- /0」
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ロボの格好良さは全部詰め込んだ! 最高のロボアクションを,自分の手で実現できるゲームを目指す


4Gamer:
 まずは,自己紹介をお願いできますか。

ロボ好き氏:
 ゲーム開発サークル「濡れ路」で代表を務めています,ロボ好きと申します。Vultureの企画,開発を主導しています。肩書きとしては監督的なものでしょうか。

むつのはな氏:
 私は肩書きとしてはシナリオライターですが,いわゆるプロデューサー的な役割も兼ねています。ロボ好きと一緒にシステム設計と調整をして,外部と折衝して,販売にあたって必要な情報を洗い出して……といった具合に,コミュニケーションコストの部分も合わせて受け持っています。

4Gamer:
 現在の作業分担はどのようになっているのでしょう。

ロボ好き氏
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ロボ好き氏:
 最初は僕が1人で開発をしていたのですが,現在は実装作業のほか,メカと敵生物などのグラフィックス部分を受け持っています。音楽は専門の担当がいて,シナリオ執筆はむつのはなにお願いしています。

むつのはな氏:
 システム設計は,2人で話し合って進める部分も多いです。「このボタンはここにあった方がいい」とか「この機能は必要だけど実装の手間に見合うのか」とか,そういった調整は基本的に2人でやっています。
 ただ,あくまでロボ好きが制作を主導する方式なのは変わりません。最終的な仕様は2人のゴーサインが出ないと実装されない,といった感じですね。

4Gamer:
 今の濡れ路は何名で構成されているんですか?

むつのはな氏:
 コアメンバーは私とロボ好きを含めた5人ですね。残りのメンバーは,音楽周りを引き受けてくれている方と,UI専門のデザイナー,そして最近になって参加してくれたUnreal Engineのブループリンターになります。
 とはいえ,チームメンバーが少ないものですから,完全に専門の仕事だけをやっているわけではありません。それぞれが対応可能な雑多な業務をしつつ,任されているメインの仕事をしっかりこなす。それができるメンバーが集まってくれています。

4Gamer:
 このチームは,どういった流れで作られていったのでしょうか。もともと,何かしらのコミュニティがあったんですか?

ロボ好き氏:
 いえ,特にそういったものはありません。最初の3年間くらいは僕が1人でゲームを作っていて,そこに少しずつメンバーが集ってきました。僕が直接お願いしたこともありましたし,Vultureを見てくれた人が声をかけてくれたこともありましたね。

むつのはな氏:
 私も自分から声をかけた側です。もともとは,「星の翼のパラドクス」(以下,星翼)というアーケードゲームで知り合いました。星翼プレイヤーはTwitterである程度つながりがあって,ツイートでロボ好きが作っているゲームの映像がたまたま流れてきたんです。それを見てコンタクトを取った,というのが始まりになります。

4Gamer:
 星翼つながり,という時点ですでに濃くて,妙な納得感があります(笑)。

ロボ好き氏:
 音楽担当さんは,アポを取ってからイベントに突撃して「ウチのゲームの音楽を作ってください!」とお願いして,それからご参加いただきました。

むつのはな氏:
 最初の段階では,まさに「憧れの人に外注した!」という感じでしたね。1年以上一緒にゲームを作っていく中で密接な付き合いになっていき,現在はコアメンバーとして活動していただいている,という形になります。

ロボ好き氏:
 プロジェクトについてきて良かったと思ってもらえるように,しっかり完成させて満足したリターンを提供したいです。

4Gamer:
 では改めて,Vultureの内容に踏み込んでいこうと思います。まず,「このゲームはどんなゲームですか」と聞かれたら,お2人はなんと答えます?

ロボ好き氏&むつのはな氏:
 ロボットを操縦するゲームです!

ロボ好き氏:
 僕がにとっての「ロボットのかっこよさ」を,思いつく限りすべて詰め込んでいます。

むつのはな氏:
 「あとは自らの手で,かっこいいシーンを実現しろ!」といった感じですね。

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4Gamer:
 最初はロボ好きさん1人で作っていたということですが,そもそもどんな経緯で開発を始めたのでしょう。

ロボ好き氏:
 僕はいろいろなロボゲーを遊んで,そこからたくさんのことを学びました。でも,この企画を始めた2017年前後というのは,ロボゲーが消滅しようとしていた時期だったんです。
 このままでは,自分を育ててくれたジャンルが途絶え,それを好きになる素質がある人を育てるゲームがなくなってしまう。「そんな残念なことがあっちゃいけない!」という想いから,作り始めました。プログラムを覚えるところから。

4Gamer:
 なるほど,それでプログラムを……って,これ初作なんですか!?

ロボ好き氏:
 そうなんです。まずはUnityに触れて,少しずつ勉強しながら構築していきました。

4Gamer:
 それでここまでのクオリティを叩き出すとは,素で驚いています。ということは,最初からゲームクリエイター志望というわけではなかった?

ロボ好き氏:
 はい,もともとは小説家を目指していたんです。それもあって,Vultureは「しっかりと物語のあるゲームを作ろう」という構想が,最初からありました。

4Gamer:
 ロボゲーとひとくちに言っても色々ありますが,当初の構想としてはどんなロボゲーを目指していたのでしょう。

ロボ好き氏:
 古今東西の,あらゆるロボゲーの良いところをギュッと集めたような作品にしたい,でしょうか。なんならゲームにとどまらず,あらゆるロボット作品からエッセンスを受け継いだ作品にしてやろうと。
 重たくてデカイのもロボット,素早く飛び回るのもロボットで,どちらにも良さがあって,どちらも捨てたくない。今は,そのバランスを維持するような感覚で作っています。

4Gamer:
 言うは易し行うは難しというやつですよね。本作は空中機動にこだわっているように見えましたが,空中戦がメインというわけではない?

ロボ好き氏:
 もちろん,地上でも空中でもかっこよく戦えます。僕は個人的に,空中を常に飛んでるのが有利であり続けるのは,あまり良くないと思ってるんです。なので,Vultureではロボットの構成次第でどちらも肯定できるゲームを目指しています。

むつのはな氏:
 当然,空中から地上に降り立った瞬間には隙が生まれますが,着地に隙ができるのは問題ないという前提でゲームを構築しています。隙を消せる動作を見つけるたびに私が報告して,ロボ好きがそれを消す,という作業をよくしていました(笑)。

4Gamer:
 確かに「着地」へのこだわりは,かなり強く感じました。その辺りも,意図して作られているのですね。

ロボ好き氏:
 空から降ってくる巨大ロボが「ズシンッ!」って着地するのは,その良さを体感できるポイントの1つじゃないですか。そこを否定するような構造には,したくないなと。

4Gamer:
 しかし,ゲーム的に見れば着地の隙が大きいと,かなり不利な行動になりますよね。

むつのはな氏:
 確かに着地はリスクではありますが,それがリスクであるからこそ,かっこよさが輝くんです。
 たとえば「ミサイルとの距離感を測って早めに着地を選択し,体制を立て直して着弾を避ける」といったかっこよさは,それがリスクでなければ演出できない。だから,着地自体をどうこうする仕組みは,意図的に排除しています。

4Gamer:
 なるほど。これはインディーならではのこだわりポイントですね。安易にシステム化せず,リスクを前提にしたゲームデザインにしていると。

むつのはな氏:
 いちおう,着地の隙を軽減する手段は存在します。超低空でエアロールを出して地面を滑ったり,着地直前に落下速度を落とすようにバーニアを噴かせたりすれば,ある程度状況を有利にすることが可能です。
 ですが,いずれも極めて高難度かつ,有効に使える状況が限定的です。それを前提にしたゲームデザインにはしませんし,奨励もしません。「Vultureをバッキバキにやり込んだ人であれば使いこなせるかも?」くらいの温度感で受け止めていただければと。

4Gamer:
 地上と空中の格好良さは,それぞれ違う部分があると思います。それぞれについて,こだわりポイントなどがあれば教えてください。

ロボ好き氏:
 地上戦では,ロボットの“泥臭さ”を表現したいと思っています。ちょっと融通が利かない重力と地上の摩擦に対して,プレイヤーが「自分のがんばりでどうにかしてる!」と思えるような体験を実現したいですね。

むつのはな氏:
 地上戦は動きづらい代わりに,エネルギー消費が少ないんです。対して空中はスピーディだけど消費が激しい。地上戦と空中戦を組み合わせたダイナミックな動きができるようになると,少ない消耗でかっこよく動く姿を実現できます。

ロボ好き氏:
 そう,片方じゃダメなんです。「地上と空中を行き来するのが,最もかっこよくて,ゲーム的にも嬉しい」動きになる形を目指しています。

むつのはな氏:
 現状のバージョンでも,そうした動きは相当に洗練されてます。例えば,地上でエネルギーを回復してバーンと空中に飛び出し,一瞬空中で止まって地上の敵を攻撃し,横からの反撃をバレルロールで回避しつつ着地して地上戦に移行!
 ……なんてこともできちゃいます。かっこよくないですか?

ペットボトルを使ってブンドド(※)を披露するむつのはな氏
※ブンドド:「ブーンドドドドー!」といった擬音語の略で,フィギュアなどを使ったごっこ遊びを指す言葉
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4Gamer:
 かっこいい……。

ロボ好き氏:
 こうした動きは,やっぱり地上でのヘビーな印象があってこそ映えるものです。どちらかに偏ることなく,地上と空中をシームレスにつなげたゲームを届けたいと思っています。

4Gamer:
 ただ,そうなると操作体系を整えるのが最大の課題になりますよね。

ロボ好き氏:
 そうですね。初期の頃は本当に感覚で作っていたので,操作がかなり複雑でした。そのあたりの整備は,むつのはながチームに参加して進んだ部分です。

むつのはな氏:
 ご想像の通り,ロボ好きは高難度の操作に慣れすぎてしまっていて,それが普通になってしまっていました。たとえば,「ボタン半押しの状態を長時間維持しながら,左右のトリガーを使い分けて武器を発射し,さらに細かな移動や旋回も行う」みたいな。

4Gamer:
 それはそれで面白そうではありますが,最初に掲げられたコンセプトとは少し乖離してますね。

むつのはな氏:
 そんなの,普通はうまく動かせないですし,開発しているロボ好き専用の操作です。キラ・ヤマトがOSを書き換えた後のストライクみたいな(笑)。
 なので,私がシステム設計に入ってからは,簡易化が可能な部分の洗い出しや,操作ミスが頻発する要素の排除などを行ってきました。調整した中でも分かりやすいのは,超加速をする「オービタル」の操作システムですね。

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ロボ好き氏:
 最初は左スティック押し込みで長距離ブーストが勝手に発動したんです。それを現在では,いったんモード移行ボタンを押して,移行が完了したら加速ができる仕組みになりました。

むつのはな氏:
 FPSをコントローラでやってる人は分かると思うんですが,スティックの押し込みって誤操作が起きやすいんですよね。そんな場所に,致命的なくらい足が止まって,下手すれば遠くにすっ飛んでいくような挙動は入れるべきではないだろうと。
 明確な意図がなければ使わない操作なので,モード移行というシークェンス(手続き)を噛ませる形を提案したんです。もちろん,移行中は別の行動でキャンセル可能なので,たとえ誤操作でもすぐに取り消せます。

4Gamer:
 ミスをしても影響が小さくなるように調整したわけですね。前回のTGSで出展されたバージョンは,両手の武器をワンボタンで同時撃ちする形式が採用されていましたが,これも調整の結果なのでしょうか。

むつのはな氏:
 そうです。あれは提案した中でも,特にケンカしたね(笑)。

ロボ好き氏:
 しましたねぇ。最初は左右の武器のボタンを分けて,使い分けられるようにしていたんですが,これをボタン1つにまとめるのは,抵抗感がすごかったです。

4Gamer:
 気持ちは分かりますよ。腕は2本あるんだから,ロボットをカスタマイズするゲームなら撃ち分けたいよね,と思いますし。

ロボ好き氏:
 そう,そうなんですよ。

むつのはな氏:
 でも,攻撃ボタンが2つ以上あるのって,プレイヤーにかなりの負担をかけるんです。ゲーム性も「敵がいて,攻撃をどう当てるか」が中核以上になってしまいます。
 Vultureが追い求めるのは,あくまで「ロボットを気持ちよく,かっこよく操縦できるゲーム」なので,それは少し違うなと思ったんです。当時の議論はもうケンケンガクガクでしたが,最終的にはロボ好きも納得してくれたと思います。

ロボ好き氏:
 攻撃手段を複雑化することで,「俺がかっこよく操縦しているんだ」という感覚を邪魔してしまうのは,Vultureにとって良いことではないなと納得しました。

4Gamer:
 しかし,武器は両手で別のものを持てるんですよね。ハンドガンとスナイパーライフルを一緒に装備する場合とか,どう処理するんですか?

むつのはな氏:
 そこは,ロボ好きが回答をひねり出した部分で,攻撃に使うボタンは1つですが,実は操作次第で両手の撃ち分けは可能になってるんです。

ロボ好き氏:
 具体的には,サークルの中央に敵を捉えているときは両手で撃ち,右に外れると右手で,左に外れると左手で撃つという仕組みになっています。こういう仕組みがないと,相手の横を通り過ぎながら右手武器だけで射撃とかいった,かっこいい動きができなくなりますから。

むつのはな氏:
 同じボタンで違う挙動が出ても,その挙動はいずれも攻撃なので「ボタンを押した理由」を満たしてくれる。そのうえで,カジュアルさを損なわず,テクニックを伸ばす余地にする。ワンボタンにすべきだという難しい注文に対して,非常に良い回答を出してくれたと思ってます。
 ロボ好きは天才なので,正しい目標が定まれば到達できる男なんです。ただ,目標を定めるにあたっての言語化や,製品として形にするのは不得意なので,そこは私が調整役に入っている感じです。

ロボ好き氏:
 僕が1人でやっていたら,まったく実現できなかったと思います。

むつのはな氏:
 でも,すべての前提にあるのはロボ好きの才能と熱意です。だから,あくまで着地点を決めるのは彼で,私は「であればこういう手段になるだろう」を提供する。そういったやり取りをして,Vultureは作られています。

4Gamer:
 操作関連の話を聞いていて気になったのですが,キーボード操作も可能なんでしょうか。

ロボ好き氏:
 かなり難しいと思いますが,一応は動きます。ただ,2本のスティックがあることを前提に動作を作っているので,基本的にはコントローラの使用を推奨します。

4Gamer:
 となるとプラットフォームとしてはコンシューマが合っていそうですが,進出は考えていますか?

ロボ好き氏:
 もちろん,コンシューマ向けの展開もしたいと考えています。多くの人にロボゲーを届けたい,広めたいとなったときに,コンシューマで遊べないのは問題ですから。

むつのはな氏:
 パッケージで売りたいよね。そのためにも,パブリッシャさんに納得してもらえる実績をPCで作らなきゃいけません。

4Gamer:
 パッケージを出すとなると,どうしても一定のボリュームが必要になりますよね。最終的にはどの程度の内容になるんでしょうか。

むつのはな氏:
 ロボ好きの構想を実現すると,40ステージくらい必要になります。そこに,ステージとは別のカスタム要素などを取り入れるような形ですね。
 また,同じミッションで異なる条件で挑めるようにしたり,より深くゲームを楽しめる要素を用意したりして,長時間楽しめるコンテンツにしようと考えています。

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4Gamer:
 ボリュームといえば,カスタマイズ要素も気になるところですね。本作では,どの程度の調整が可能なのでしょうか。

ロボ好き氏:
 外装は頭,右腕,左腕,胴体,足,ブーストバインダーの6か所です。内装はエンジンを3種類組み合わせる仕組みになっているほか,制御システムも変更できます。さらに,オプションパーツを2つほど装着可能になる予定です。

むつのはな氏:
 さらに,ロボット内部のパーツをカスタムするシステムも用意する予定です。当初は工数的に難しいと思われていた仕様なのですが,ブループリンターの方がコアメンバーとして加入したことで実現に近付けました。

4Gamer:
 TGSでの出展などを見ていると,カスタマイズをまだ積極的にアピールしていなさそうに見えるのですが,最初からガッツリ楽しめる要素なんですか?

むつのはな氏:
 最初は万能機から始まり,少しずつカスタムしていく楽しさを味わえるようにアンロックしていく予定です。内部パーツのカスタムなどは,終盤のエンドコンテンツに近い位置づけにしようと思っています。そして,シナリオ部分を攻略したら一気に自由度を高めるのが良いだろうと。

4Gamer:
 シナリオ全体を通してカスタマイズの楽しさを覚えていくような形ですね。あくまでカスタマイズ自体がメインのゲームではないと。

むつのはな氏:
 そうですね。最初から全開放でドカンと渡して「さぁ,やれ!」と言われても困ってしまう人も多いと思うので,まずはシナリオを通じてロボットを好きになってもらえればと思っています。
 あくまで,ゲームとしてロボットを動かすことを楽しめないと意味がないですからね。


令和のガチロボゲーマーはどこから来た? 予想以上に若い開発者達


4Gamer:
 熱量も知識量も,ロボゲーへのめちゃくちゃな愛を感じますね。しかし,2人ともかなりお若く見えるのですが,失礼ですがおいくつですか?

ロボ好き氏:
 今年で23歳,本業は大学生です。

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むつのはな氏:
 僕は,1つ上の24歳です。

4Gamer:
 めちゃくちゃ若い!
 まさか現役の学生とは。学業と並行してゲーム開発をしているんですか?

ロボ好き氏:
 最初はそうでしたが,4月からこのゲームを作るために大学を休学しています。なので,就活は来年からですね。
 就活するにしても,このまま卒業したら特に実績のない状態になってしまいますから,しっかりと作品を作り込んで「Vultureを作って売りました」という実績を得てからのほうがいいだろうなと。

4Gamer:
 20代前半となると,アニメにしても,ゲームにしても,リアルタイムに楽しめるロボットものは限られてきますよね。正直,若者がどんな遍歴を辿ればこれほど“濃い”ゲームを作ってしまうようになるか気になるのですが……。原体験として大切なロボット作品というと,どのあたりになるのでしょう。

ロボ好き氏:
 今でも覚えています。「アーマード・コア」シリーズに初めて触れたのは,中1の冬のことでした。タイトルは「アーマード・コア マスターオブアリーナ」(MoA)です。

4Gamer:
 初代PlayStationのゲームですよ,MoA。何を間違ったら,平成も終わりという時期の中学生が触れるんですか?

ロボ好き氏:
 当時は古いゲームを漁るのが好きで,その流れからPS Vitaで遊べるPS用ソフトのアーカイブを探していた時期がありまして。そこで出会ったのが,617円で買えたMoAだったんです。もう,最初のムービーから完全にやられてしまいました(笑)。

4Gamer:
 つまり,PlayStation時代のあのムービーであっても,今の若者を魅了するだけの力があったわけですね。
 MoAを手に取ったということは,それ以前からロボット作品自体は好きだったと思うのですが,どの辺りから入ったのでしょう。定番で言えば,やっぱりガンダムシリーズですが?

ロボ好き氏:
 ロボとの初接触は,確か玩具の「ZOIDS」(ゾイド)ですね。そこから遡る形で無印のアニメを観て,それからロボットものはずっと好きでした。ガンダムシリーズに触れたのは,だいぶ後です。

4Gamer:
 ちなみに,最初に見たガンダムってなんですか?

ロボ好き氏:
 「機動戦士ガンダムAGE」です。

4Gamer:
 AGEかぁー!

ロボ好き氏:
 なんというか,実際に観るまで,ガンダムに対して「面白いから観るもの」ってイメージがなかったんです。ちょっと教訓的な要素が強くて,ある程度成熟した大人が観る作品みたいな……。でも,ちゃんとロボットの魅力や,エンタメ的な良さもある作品で,楽しく観ていました。

4Gamer:
 若い人の感想を聞くの,すごく興味深いです。

ロボ好き氏:
 それから,ガンダムに限らずいろいろなロボットもののアニメを観るようになりました。「マブラヴ」シリーズも,アニメの「マブラヴ オルタネイティヴ トータル・イクリプス」から入って,PS Vitaの全年齢版を遊びました。

4Gamer:
 もともとアダルトゲームですから,年齢的に全年齢版やアニメから入るしかないですもんね。
 では,ゲーム関連作品に関してはいかがでしょう。特に心に残ってる作品や,Vultureにつながった作品はありますか?

ロボ好き&むつのはな氏:
 いっぱいあるんだよなぁー。

ロボ好き氏:
 全部言ってたらキリがないかも。

むつのはな氏:
 でもやっぱり,Vultureにつながった作品といったら「ZONE OF THE ENDERS」(以下,ZOE)だよね。ゲームの構造的にも,影響は大きいでしょ?

ロボ好き氏:
 そうだね。実はVultureを作る以前から「ストーリーを前提としたロボゲー」を作りたいという気持ちはあったんですが,どんな形なら成立するのか分からなかったんです。でも,ZOEはそれを見事にかなえている作品でした。
 先に1作目をやって,ちょっとだけ心配になりましたけど,2作目の「ANUBIS ZONE OF THE ENDERS」(以下,ANUBIS)は衝撃的なくらい面白くて。「本当にこんなことできるんだ」という希望を見せてもらいました。演出面も素晴らしくて,カメラワークの面でも参考にしています。

4Gamer:
 しかし,ANUBISもまだ世代ではありませんよね。古い作品が新しい世代にちゃんと受け継がれている様子を見ると,ちょっと嬉しくなっちゃいます。

むつのはな氏:
 大人世代がやっているものって,ちょっと「いぶし銀」な良さを感じるんですよね。ロボ好きも,そういうのあるんじゃない?

ロボ好き氏:
 いや,僕は単に面白そうだったから買っただけです。

むつのはな氏:
 そういえば,こういうやつだった(笑)。

ロボ好き氏:
 ほかにも,ロボットものの作品から学んでいることはいろいろあります。「ガンダム バトルオペレーション」からは,重量感のある歩きの感覚や,ゴロンッ! と転がる緊急回避の動きを,かなり参考にしている部分があると思います。

むつのはな氏:
 空中モーションとかは「マブラヴ」の戦術機が入っている部分もあるよね。

4Gamer:
 TGSで触ったとき,戦術機感は強く感じました。「完璧に操作すると凄まじい動きを実現できる」というのが実感できる感覚が,マブラヴじゃん! と。

ロボ好き氏:
 もちろん,そういった部分も実現したくて取り入れています。僕はマブラヴの空中戦闘が一番格好いいと思っているので!

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4Gamer:
 先に名前が挙がった星翼についてはいかがでしょう。お2人が出会った作品ですから,思い入れも強いのでは?

むつのはな氏:
 それはもう,強いですよ。正直,星翼のフルドライブ(長距離移動用のブースト)は,Vultureにも強い影響を与えています。
 フルドライブは,タメの状態から右ペダルを踏み込むと,ドンッとダッシュするんです。飛び出す瞬間にカメラが置いていかれる演出が入って,これがめちゃくちゃかっこいいんですよ。

ロボ好き氏:
 スティックの操作感なども含めて,本当に大きな影響を受けていますね。

4Gamer:
 星翼の前には,近いコンセプトのアーケードゲームとして「機動戦士ガンダム 戦場の絆」(以下,戦場の絆)がありましたよね。そちらは遊んでいなかったのでしょうか。

ロボ好き氏:
 遊びはしたんですが,お金がなくてガッツリは遊べなかったんです。当時は中学生でしたから(笑)。

むつのはな氏:
 私はゲーセン好きだったので,よく遊んでいました。「電脳戦機バーチャロン」からゲーセンのコミュニティに入り,戦場の絆を経て,星翼に至ったという流れです。

4Gamer:
 いやいや,待ってくださいよ。その年齢で,ゲーセンで,バーチャロン……?

むつのはな氏:
 昔の名作に触れるのが好きで,バーチャロンもその流れで遊びました。バーチャロンって,ライトノベルなどの中で「特にマニアックなゲーマーが触れるもの」としてよく名前が挙がっていたんです。それなら理解しなければと思って,ゲーセンを回って探しだしました。

ロボ好き氏:
 バイタリティすごいっていうか変だよ。

4Gamer:
 2人とも漏れなく変なのはよく分かりました(笑)。


クラウドファンディングの達成状況次第でオンライン対戦も視野に


4Gamer:
 そんな皆さんが,何もないところからゲームを組み上げ,複数のイベントに出展し,さらにクラウドファンディングを実施するところまで来たわけですね。今回のクラウドファンディングを実施する理由の部分を,改めてうかがえますか?

ロボ好き氏:
 発端は,開発に使っている機材が限界を迎えたことからです。すでに4〜5年使い込んだPCをギリギリで動かしている状態で……。

4Gamer:
 切実な理由だ……。確かに,学生で開発を続ける機材を揃えるのは,そう簡単ではないですよね。

ロボ好き氏:
 もう僕だけのプロジェクトじゃない,いろんな人の想いを背負ったゲームになっているので,不安定な環境での作業を続けるのは良くないと思ったんです。機材を使い潰してデータ壊したりなんかしたら,冗談じゃ済みませんから。
 それでメンバーのみんなに相談した結果,結局は「どうにか開発を継続するための費用を調達するしかない」となって,クラウドファンディングに踏み切った形になります。

むつのはな氏:
 近々,Steam向けに無料体験版を公開します(※)。
 現状で提供できる素材はそれが一番分かりやすいものなので,まずはそちらを遊んでみて,支援に値するかを判断してもらえたら嬉しいです。そう思ってもらえるだけの自信はあります!

※7月21日に公開されている(Steamストアページ)。

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4Gamer:
 今回はCAMPFIREでの実施となりますが,別のプラットフォームでの実施は予定していますか?

むつのはな氏:
 まずはCAMPFIREで開始してみて,クラウドファンディングの感覚を掴んだらKickstarterの方でもやろうかと考えています。

4Gamer:
 Kickstarterで展開をするとなると,多言語対応がカギになりますよね。対応言語には英語も含まれるのでしょうか。

むつのはな氏:
 はい,初期は日本語と英語に対応する予定です。ただ,チーム内に海外とのやり取りに長けた人間はいるのですが,販売に関する連絡をリアルタイムに取るのは難しいので,販路をどのように確保するかは現在調整中です。

4Gamer:
 となると,パブリッシャさんも募集したいところですね。

むつのはな氏:
 そうですね。ただ,現状はゲームの土台を作り込んでいる段階であって,「ステージがいくつある」「カスタマイズパーツがこれだけある」といった部分をお話しできない状況です。
 パブリッシャさんとしても,この状態で自社の製品としてサポートすることを決断するのは難しいでしょうから,今回のクラウドファンディングを通じて,Vultureを「商品として見れる段階」まで持っていきたいと考えています。

4Gamer:
 クラウドファンディングを終えてリリースする際には,アーリーアクセスを挟まずに正式版を発売する形式になるのでしょうか。

むつのはな氏:
 はい,リリースと同時にキチンと完成したものを提供する予定です。そこから,さらにアップデートを提供するかは,まだ検討しているところです。
 後に対戦モードは実装したいと考えているのですが,そこまでを完成とするか,実装後に提供すべきかなどは検討の余地があると思っています。

4Gamer:
 そういえば,対戦モードはオンラインに対応するのでしょうか。インディーゲームの対戦モードはオフラインのみになることが多いのですが……。

むつのはな氏:
 正直難しいと思っていたんですが,5人目のコアメンバーの参入によってオンラインも実現できる可能性が出てきました。ただ,どの程度工数がかかるかは完全に未知数なので,ハッキリとしたことが言えないのが現状です。
 工数が確定して,根本的に資金が足りないとなった場合は「オンライン対戦を実装するためのクラウドファンディング」という形で,協力をお願いする可能性があります。

4Gamer:
 今回のクラウドファンディングで十分な資金が集まったなら,そこも賄えるかもしれませんね。

むつのはな氏:
 もし,想定よりも圧倒的に多くのご支援をいただいた場合は,ストレッチゴールとしてオンライン対戦の開発を設置するかもしれません。

4Gamer:
 分かりました。本日はありがとうございました。若いクリエイターのエネルギーを感じられて嬉しかったです。あとは,ここで語っていただいたことを形にするだけですね。

むつのはな氏:
 できますよ。ロボくん天才だから。

ロボ好き氏:
 言ってくれるねぇ……。でも,引く気はないです。ぜひ期待していてください!

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