インタビュー
「闘神祭2020」決勝大会は5月16日,17日に開催。プロデューサー椎木庄平氏と大会コーディネーター松田泰明氏に闘神祭に懸ける想いを聞いた
なお,インタビューは2020年2月18日に行ったもので,3月11日現在,3月中の闘神祭予選大会の中止が運営より発表されている。今後の闘神祭のスケジュールについては,運営チームから発表があるとのことなので,期待して待ちたい。
「闘神祭2018-19 CHAMPIONS CARNIVAL」フォトレポート。10作品を超えるアーケードタイトルで新たな闘神が決まる
2019年3月23日と24日の2日間にかけて,タイトーが主催するアーケードゲーム全国大会「闘神祭2018-19 CHAMPIONS CARNIVAL」が東京・TFTホールにて開催された。各タイトルを代表するトッププレイヤーが集結し,その腕前を存分に披露した大会の模様をフォトレポートでお届けしていく。
- キーワード:
- ARCADE:ストリートファイターV タイプアーケード
- アクション
- カプコン
- カプコン
- プレイ人数:1〜2人
- 格闘
- ARCADE:機動戦士ガンダム エクストリームバーサス2
- ARCADE:ミリオンアーサー アルカナブラッド
- ARCADE:鉄拳7 FATED RETRIBUTION
- ARCADE:ウルトラストリートファイターIV
- ARCADE:THE KING OF FIGHTERS XIV Arcade Ver.
- ARCADE:湾岸ミッドナイト マキシマムチューン 6
- ARCADE:バーチャファイター5 ファイナルショーダウン
- ARCADE:BLAZBLUE CENTRALFICTION
- ARCADE:GUILTY GEAR Xrd REV 2
- ARCADE:ディシディア ファイナルファンタジー
- ARCADE:FIGHTING EX LAYER
- ARCADE:SNKヒロインズ Tag Team Frenzy AC
- ARCADE
- イベント
- 編集部:T田
- カメラマン:佐々木秀二
- カメラマン:大須 晶
- eスポーツ
「闘神祭2020 -World Championship of ARCADE-」公式サイト
ゲームイベントはコミュニティファーストでなければならない
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。まず始めにお二人の闘神祭におけるポジションから聞かせてください。
椎木庄平氏(以下,椎木氏):
プロデューサーを務めますタイトーの椎木です。イベントの企画決定やメーカーとの交渉に加え,松田さんと調整しながら運営を行っています。
松田泰明氏(以下,松田氏):
大会コーディネーターの松田です。イベント全体のディレクションをしつつ,運営全般を担当しています。
椎木氏:
松田さんには自分たちに足りていない知識や経験部分を補ってもらっています。イベントを企画するときにおおよその規模を伝えるだけで,即座に可能かどうかのジャッジをしてもらえるので,すごく助かっています。
松田氏:
年間100前後はイベントを運営しているので,基本的な情報をもらえればすぐに判断できるだけの経験値は溜まっています。闘神祭の決勝大会は東京ビッグサイトのTFTホールで開催されますが,TFTホールでは何度もイベントを行っているので,今回も任せてくださいって感じです。
4Gamer:
闘神祭も今年で5回目の開催ということで,アーケードゲーマーにとって馴染みのあるイベントになりつつありますが,そもそも闘神祭が生まれたのはどういった経緯からなんでしょうか。
椎木氏:
もともとはタイトーが打ち出している「NESiCAxLive」のPR企画でした。続けていくうちに他社さんから,「NESiCAxLive」以外のタイトルもぜひ取り扱ってほしいという声が届くようになって,いつの間にかさまざまなアーケードタイトルの日本一を決める大会になっていました。松田さんには立ち上げ前から,意見交換や相談をさせてもらっていたんですよ。
松田氏:
自分に話が来たのが,闘神祭が生まれる3年前くらいでしたね。闘劇が閉幕となってしまい,同じような大会形式のイベントをやりたいという気持ちは強かったですし,アーケード業界も盛り上げたかった。自分がその一助になれればという想いもあって,全力で手伝わせてもらいました。
4Gamer:
やはり立ち上げた当時は苦労も多かったのでしょうか。
松田氏:
すべてイチからのスタートだったので,現場でのトラブルは少なからずありましたし,今でこそいろいろな会社が協力してくれていますが,最初は交渉からのスタートだったので,苦労もかなりありました。ただ,回を重ねるごとにブラッシュアップされていって,ここ数年は大きなトラブルが起こることも少なくなりましたね。
椎木氏:
自分は立ち上げ時は企画として関わっていたんですが,当時は未経験のことばかりだったので,松田さんにいろいろと教えてもらいました。
4Gamer:
松田さんは以前のインタビューで,「今後を見据えて後進を育てたい」と話していました。
いつか必ず「闘劇」を復活させます――。ゲームニュートン オーナー・松田泰明氏が語る格闘ゲームシーンの過去と未来
伝説の格闘ゲームイベント「闘劇」の中心人物であり,ゲームセンター「ゲームニュートン」のオーナーを務める松田泰明氏へのインタビューをお届けする。シーンの最前線に20年以上立ち続け,格闘ゲームの隆盛,ゲームセンターの盛衰,eスポーツブームの到来と,すべてを実際に間近で見てきた氏が語る,格闘ゲームシーンの過去と未来とは……。
- キーワード:
- インタビュー
- OTHERS
- eスポーツ
- カメラマン:佐々木秀二
- 編集部:T田
松田氏:
自分もまだまだ現場にいますが,いつかは引退する日が来ます。その時に安心して任せられる状態ができているとうれしいですよね。ゲームイベントはコミュニティファーストでなければならないと思っていて,そのコミュニティは長い歴史が作り上げているんです。それを伝えていくのが自分の役目ですし,その信念がブレることがなければ,いつまでもゲームイベントは成功していくんじゃないでしょうか。
4Gamer:
現在,全国各地で闘神祭の予選大会が実施されています。プレイヤーからの反響はいかがでしょう。
椎木氏:
予選大会に参加するプレイヤー数はかなり増えていますね。直近の予選だと100人を超えたところもありました。実は今年から社内チームの体制が刷新されて,大会運営に力を入れようという流れになっているんです。PRや企画も担当が付くので,露出も増えてきているんですよ。
松田氏:
回を重ねるごとに闘神祭のネームバリューが上がっている実感はあります。現役のアーケードゲーマーにはかなり浸透しているんじゃないでしょうか。
4Gamer:
SNSなどを見ていても,予選大会を勝ち抜いた人を周りのプレイヤーが称賛している様子が見られます。予選通過者の証であるゴールデンチケットもSNS映えしていいですよね。
椎木氏:
ゴールデンチケットは写真に撮って拡散しやすくなるかなと思って今年から採用することにしたんですが,喜んでくれるプレイヤーが多くてうれしいですね。実はあれ,地味にいい紙を使っていて,結構なコストがかかっているんです(笑)。
松田氏:
昨年までは賞状でしたが,記念になるものでもあるし,豪華なものを用意してあげたかったんです。
4Gamer:
闘神祭はタイトーが打ち出している「e-ARCADE SPORTS」国内最大級の祭典とされています。こちら「e-ARCADE SPORTS」の定義や思想などがあれば聞かせてください。
椎木氏:
まず,大前提として,ゲームセンターで開催されるゲーム大会というのが根っこの部分にあります。今日本ではeスポーツブームが来ていて,ゲーム大会をeスポーツと呼ぶことで努力しているプレイヤーがいるのを分かりやすく伝えられているんです。その軸はアーケードでもまったく同じで,それぞれのタイトルにコミュニティがあって,努力しているプレイヤーがたくさんいます。それらすべてをひっくるめて表す言葉が「e-ARCADE SPORTS」なんです。
松田氏:
あまり難しい意味はないと思っていて,アーケードで行われるゲーム競技の総称ですよね。
椎木氏:
日本が誇るeスポーツジャンルといえば格闘ゲームが真っ先に挙がりますが,その源流はアーケードであり,松田さんがやっていた闘劇だと思っています。我々はそれを守っていきたいし,広げていきたいんです。
4Gamer:
ちなみに「e-ARCADE SPORTS」はアーケードで競い合うタイトルであればすべて該当するのでしょうか。例えば,ワニワニパニックのような実際に身体を動かすものも含まれますか?
椎木氏:
個人的な考えですが,eスポーツはイコールすべてのゲーム大会だと思っていて,ワニワニパニックもスコアを競い合うものですから,「e-ARCADE SPORTS」に含まれると考えています。もちろん,闘神祭も今年は14タイトルを採用していますが,もっと大きい会場を用意できるのであれば,いろいろなタイトルを採用していきたいです。
4Gamer:
14タイトルでもかなりの数ですよね。
松田氏:
会場の大きさやタイムスケジュールなどを考慮すると,これくらいが限界になるんです。また,ギリギリまで採用した結果,決勝大会のレギュレーションは1試合先取制になってしまいました。
最近のeスポーツ大会って,2試合先取制が主流だったりするんですが,運も絡みやすい1試合先取のトーナメント――1年に1回だけその日一番強いプレイヤーを決める大会って,ものすごくドラマが生まれるんです。闘神祭ならではの価値があると思っています。
4Gamer:
格闘/アクション,ドライブは昨年もありましたが,今年からここに「音楽」と「パズル」が新ジャンルとして加わりました。ジャンルを増やしたのはどういった意図からでしょう。
椎木氏:
新しいコミュニティのプレイヤーを取り入れる目的が一番ですが,観戦目的で遊びに来てくれた人に楽しんでもらうというのもあります。いろいろなジャンルのスーパープレイが見られたらすごく楽しいじゃないですか? ただ,今回採用した音楽ゲームはゲームセンター中心のコミュニティができあがっているものの,まだまだ闘神祭の認知度が低い。今年はトライアルだと考えています。
松田氏:
こればかりは仕方ないことで,続けることで少しずつ成長していくと思います。ドライブ部門は今年で3回目ですが,プレイヤーにはかなり認知されていて,楽しみにしていますって声をよく聞くんですよ。
4Gamer:
今年選ばれたタイトルの選定基準を聞かせてください。
椎木氏:
大前提はコミュニティが形成されていること。メーカーさんとも打ち合わせをするんですが,新作タイトルでもコミュニティができておらず競技シーンがないと選ぶことはないですね。そして,少しシビアな話になりますが,ゲームセンターのインカムが高いことも重要となっています。
松田氏:
古いタイトルですが,「ウルトラストリートファイターIV」や「テトリス ジ・アブソリュート ザ・グランドマスター2 PLUS」は人気もあって,実はインカムもまだまだ高いんです。
椎木氏:
お店の人に話を聞いてもプレイヤーが毎日来ていると話を聞きますし,そういった盛り上がっているタイトルはコミュニティの期待にも応えてあげたいですよね。
成長するために重要なことは「続けていくこと」
次回開催の検討もスタート
4Gamer:
昨年の闘神祭では,「バーチャファイター」シリーズの伝統ある大会「ビートライブカップ」が同じ会場で開催されました。こちらはどのような経緯で共催されたのでしょう。
松田氏:
昨年の「ビートライブカップ」は実施することが決まっていたものの,会場選びに難航していたんです。なかなか会場と値段の折り合いがつかなくて,すごく困っていました。タイトーさんと打ち合わせをしているときに,雑談ベースでその話もしていたんですが,ある時それであれば一緒にやりませんか? と提案いただけたんです。
4Gamer:
東京オリンピックの影響で,会場選考に苦労しているという話はあちこちでよく聞きますが,昨年の共催タイトーサイドからの提案だったんですね。
松田氏:
「バーチャファイター」はセガさんのタイトルですし,それをタイトーさんの全国大会でやるのは大丈夫ですか? って確認にも,大丈夫ですと力強い返答をいただきまして……。それであればお願いしますということになったんです。
椎木氏:
我々が考える闘神祭の目標はいろいろなコミュニティの集合体となることなんです。「ビートライブカップ」はコミュニティイベントの完成系のひとつ。だからお招きできたことは我々としてもすごくうれしかったし,プラスになったんじゃないかなと思っています。実はうちの社長もすごく喜んでいました(笑)。
松田氏:
メーカー的に「バーチャファイター」は大丈夫なんですか? ってタイトーの社長さんに聞いたことがあったんですが,「タイトーが経営するゲームセンターでバーチャファイターは長年貢献してくれています。それで他社さんのタイトルだから駄目ですとか,そんなことは絶対にありません」と言ってもらえて,そのときは本当にうれしかった。
椎木氏:
GOサインが出れば,あとは自分が企画書を持って,メーカーさんに突撃するだけなので(笑)。「ビートライブカップ」ですごく面白かったのが,カプコンの綾野さんが会場で観戦してらしたんです。タイトーのイベントでバーチャの大会をカプコンのプロデューサーが見ているっていうのが,闘神祭ならではの光景だなって少し感慨深かったです。
松田氏:
今ゲームセンターが苦しいと言われている状況で,メーカーさんみんなが力を合わせてがんばろうという空気になっています。こういったメーカーの垣根を超えたイベントがやりやすくなっているのはすごくありがたいことですね。
4Gamer:
さらに「闘神祭2020」では,「ストリートファイターIII 3rd Strike」のコミュニティ大会「クーペレーションカップ」が共催されることが発表されています。こちらも先ほどと似たような経緯で決まったのでしょうか。
椎木氏:
昨年は松田さんから先に会場選考に難航しているという話を聞いていたんですが,今年はこちらから声をかけました。昨年の「ビートライブカップ」は社内だけでなく,お客さんやメーカーさんの反応もよく,ひとつ成功を収めたと捉えていました。その流れもあって,今年は「クーペレーションカップ」との共催を提案させていただいたんです。
松田氏:
「ビートライブカップ」もそうでしたが,闘神祭とコラボすることで生まれる相乗効果があると思うんですよ。タイトーさんに迷惑がかかってしまうのであればマイナスですが,そこをクリアできるなら,一緒にやれた方が絶対にいいですよね。
4Gamer:
タイトーはいろいろな会社とアライアンスカンパニーの関係でつながっています。交渉や橋渡しをしやすいポジションにいるように思います。
椎木氏:
長年,闘神祭を開催していったことで,いろいろなメーカーの担当者さんとつながりができていました。これは財産であり,自分にとっても大きなプラスになったと感じています。
4Gamer:
タイトルのジャンルを増やしたり,コミュニティイベントとコラボをしたりと,いろいろな施策を行っていますが,今後さらに闘神祭が発展・成長していくには何が必要だと考えていますか。
椎木氏:
もっとも重要なのは「続けていくこと」だと考えています。松田さんが昔からずっと続けているようにプレイヤーやコミュニティが輝ける場所を作り,それを発信していく。その考えがブレることがなければ,おのずとシーンは盛り上がって,発展していくと信じています。
松田氏:
続けていくことが本当に大切なんだけど,それが一番難しい。
椎木氏:
今年の決勝大会がまだ終わっていませんが,闘神祭は2021年の開催も検討して進めています。今は会場をいろいろと見ている段階で,並行して採用タイトルの検討を始めています。今後の発表も楽しみにしてほしいですね。
4Gamer:
決勝大会と言えば,今年はいろいろなイベントがコロナウイルスの影響で中止になっています。決勝大会が中止になる可能性はないのでしょうか。
椎木氏:
現段階では注意喚起を促しつつ,行う予定ではあります。ただ,絶対に強行するというような考えではありません。今後の情勢を見守りつつ,参加者へのリスクも踏まえて慎重に検討していきたいと考えています。
4Gamer:
最後に5月16日,17日に開催されます決勝大会を楽しみにしているプレイヤーや読者に向けてメッセージをお願いします。
松田氏:
闘神祭の決勝大会は入場無料で,たくさんのイベントが楽しめる最高の空間となっています。選手だけでなく,観戦目的でも1日楽しめると思うので,ぜひ遊びにきて,一緒にイベントを盛り上げてください。
椎木氏:
今年も出場する選手を最高にかっこよく魅せられる場を作りあげていきます。今年はこれまでになかった新しい取り組みをする予定もあります。それも楽しみにしていてください。
4Gamer:
本日はありがとうございました。
―――2020年2月18日収録
「闘神祭2020 -World Championship of ARCADE-」公式サイト
- この記事のURL: