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[GDC 2021]クラシックゲーム・ポストモーテムに「スター・ウォーズ ギャラクシーズ」が登場。ゲーマーの期待を裏切り続けたMMORPGは,どのようにして生まれたのか
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印刷2021/07/23 21:47

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[GDC 2021]クラシックゲーム・ポストモーテムに「スター・ウォーズ ギャラクシーズ」が登場。ゲーマーの期待を裏切り続けたMMORPGは,どのようにして生まれたのか

画像集#002のサムネイル/[GDC 2021]クラシックゲーム・ポストモーテムに「スター・ウォーズ ギャラクシーズ」が登場。ゲーマーの期待を裏切り続けたMMORPGは,どのようにして生まれたのか
 「伝説的」と言われる過去のゲーム作品の秘話を開発者自らが語る,GDCでおなじみのセッション「クラシックゲーム・ポストモーテム」(Classic Game Postmortem)だが,「GDC 2021」では,2003年に正式サービスが始まったMMORPG「スター・ウォーズ ギャラクシーズ」が取り上げられた。開発を担当した北米ゲーム業界の著名人,ラフ・コスター(Raph Koster)氏リチャード・ヴォ―ゲル(Richard Vogel)氏が登壇した。

 「スター・ウォーズ ギャラクシーズ」のクリエイティブディレクターだったコスター氏と,エクゼクティブプロデューサーのヴォ―ゲル氏の2人は,Origin Systemで「Ultima Online」の開発に携わった経歴を持つ人物だ。過去20年以上にわたって,自分達の経験やノウハウをゲーム業界に対して惜しみなく披露してきた開発者としても知られている。
 ちなみにコスター氏は現在,Playable Worldsを設立してクラウド技術を利用した新作を開発中であり,またヴォ―ゲル氏は,「Halo Infinite」のマルチプレイモードを担当したCertain Affinityの制作副社長として活躍している。

「GDC 2018」に登壇した際のラフ・コスター氏(左)と,リチャード・ヴォ―ゲル氏(右)。SOEを離れて以降,職場は違うが,今でも仲が良さそうな2人だ
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 「クラシックゲーム・ポストモーテムにふさわしいゲームではないのですが……」と語ってセッションを開始した2人はまず,「スター・ウォーズ ギャラクシーズ」開発前夜を振り返った。
 Electronic ArtsがOrigin Systemsが開発中の「Ultima IX: Ascension」のキャンセルを発表した1999年,Origin Systemsが進めていた「Ultima Online 2」「Privateer Online」なども同時に開発中止となった。プロジェクト中止の一報が届いたとき,コスター氏は「Ultima Online 2」のプロモーションのためオーストラリアに長期滞在中で,ヴォーゲル氏は,「Privateer Online」のプロトタイプを開発中だったという。

 プロジェクトを失った2人は,ほかの10人ほどのメンバー達と共に,「Ultima Online」のライバルMMORPGとなる「EverQuest」を開発したVerant InteractiveとSony Online Entertainment(以下,SOE。現Daybreak Game)に雇われ,新たなプロジェクトを担当するスタジオを2000年9月,テキサス州オースティンで立ち上げた。

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“ジェダイ”の扱いから混乱していた新プロジェクト


 この新たなプロジェクトこそが,LucasArtsとの提携を念頭に企画された「スター・ウォーズ」をテーマにしたMMORPGだった。開発のために与えられた時間は2年9か月と,1からMMORPGを作るには非常に厳しい開発期間だった。Verantはすでにプロトタイプを作り始めていたが,そのベースになっていたのは「EverQuest II」(2004年)で,SOEの「PlanetSide」(2003年)のような,アクション寄りのゲームとして作られていた。

 そんなVerantのプロトタイプを元に,「スター・ウォーズ」らしさをアピールするために,LucasArtsの1997年のヒット作,「Star Wars: X-Wing vs. TIE Fighter」を思わせるデモを6週間ほどで制作。LucasArtsのプロデューサーに提出したところ,本編リリース後の拡張パック,のちに「Jump to Lightspeed」と呼ばれるDLCを含む正式契約にこぎつけた。

 アートワークの制作が進んでいたこともあり,アートチームはSOEが本拠を置くカリフォルニア州サンディエゴで作業を行い,ゲームデザインや技術開発はオースティンが担うという分業体制が取られることになった。ゲームの基本コンセプトは,「Ultima Online」に近いサンドボックス型のゲーム世界になることが決められたが,これには「EverQuest IIとプレイヤーを奪い合うことを避けるため」という意図もあったようだ。

 ゲームデザインでのチャレンジは,「ジェダイ騎士をどうするか?」だったとコスター氏は回想する。少なくともオリジナル三部作の時点でジェダイは銀河でも非常に珍しい存在であり,ちょっとしたザコキャラならモノともしないパワフルさを持つ。「スター・ウォーズ」のゲームである以上,プレイヤーの多くがジェダイになりたいという願望を持っているのは明らかだ。

 「ジェダイにはなれず,ジェダイのNPCだけ登場」や「時代設定を変え,ジェダイがたくさんいてもおかしくない世界にする」といった意見を出したものの,LucasArtsがすべて却下。「ジェダイがそれほど強くない」ことには反対しなかったが,それではあまり「スター・ウォーズ」らしくないとして,制作側にとっても良い選択ではない。
 ジェダイの中のジェダイ,最強のジェダイになることを目指すというアイデアは,MMORPGではプレイヤーが時間をかけられるため限界があり,結局,プレイヤーに複数のプロフェッション(クラス)を選ばせ,何度もプレイするといったデザインに落ち着いた。

Verant StudiosとSony Online Entertainmentは現在,Daybreak Gameとなってその系譜を受け継いでいる
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テクノロジーは非常に高いレベル


 オースティンの開発チームが「スター・ウォーズ ギャラクシーズ」のために想定したゲーム世界は,惑星1つで「Ultima Online」と「EverQuest」を足したよりも大きく,そんな惑星が10個も存在していた。データ量は2.5GBで,56kbpsのモデムを最低ラインとしてゲームが開発されていた時代においては,あまりにも巨大だったことが分かる。56kbpsのモデムで1GBのデータを転送すると,完了までに18時間がかかるという。
 そのため彼らは,特定のルールに沿ってレイヤーを生成するカスタムツールを作り,それぞれの惑星の地表データを30Kほどに圧縮した。当時はメモリも小さかったため,メモリの負荷を避けるため,それぞれのプレイヤーの動きに合わせて,リアルタイムで周囲が作り出されるというシステムが採用された。あまり良い技術ではないように聞こえるが,事実,コリジョン(衝突)判定やバトルなどで,その後も長く彼らを悩ませていくことになる。

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 もっともヴォ―ゲル氏は,「これは2003年にしてはあまりにも先進的な技術であり,ようやく最近,類似のものが見られるようになってきた」と述べており,高低の座標を収めたレイヤーを元に川の流れも表現できたという。

 開発チームにとって負担だったのが,アートワークやストーリーだけでなく,こうした技術に関する細かなことまで,すべてLucasArtsとLucasfilm,さらにジョージ・ルーカス監督その人の承認が必要だったことだ。ときにはそのプロセスがなかなか進まず,承認を取るための専属のスタッフを雇わなければならなかった。

 コスター氏は「幸いなことに,Lucasfilmがプロデューサーとしてヘイデン・ブラックマン(Hayden Blackman)氏を送ってくれた」と語る。ブラックマン氏は,「スター・ウォーズ」の世界観の連続性を担当するコーディネーターで,“歩くスター・ウォーズ辞典”のような人物であり,かなりの部分,ブラックマン氏に直接聞くことで対処できたという。
 しかし,当時は映画の新三部作の制作時期に重なっており,そのため資料は厳重に保護されていた。資料の中には,一度ファイルを閉じたら,二度と開けられないように暗合化されたものもあり,ゲームの開発現場は混乱をきわめた。

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 例えば,コスター氏のチームは,特定のクリスタルを見つけることで,異なる色に光るライトセーバーが作れるというクラフティングシステムを準備していたが,あるとき「ライトセーバーは赤と青だけにしてください」と通達された。
 映画「スター・ウォーズ エピソード2/クローンの攻撃」のクライマックスである闘技場での大乱戦シーンで,敵と味方が判別しやすいようにライトセーバーの色は赤と青だけにすると,ルーカス監督がほぼ思いつきで発言したことによる通達だったようだ。結局,さまざまな色のライトセーバーでもシーンに影響はなさそうだということになり,数週間後に「戻してよい」という連絡が入ったそうだ。

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技術的にかなりハイレベルな作品


 マップの自動生成システムのように,「スター・ウォーズ ギャラクシーズ」は技術的に見てかなりハイレベルな作品であった。例えば,本作ではサービス開始の段階でヒューマン,トゥイレック,ザブラク,ウーキー,モン・カラマリなど10種類の種族と9つのプロフェッションが用意されていたが,キャラクターの顔やボディの特定パーツをスライダーで調整していく「モーフ・ターゲット」というシステムを使った作品では,「The Elder Scrolls: Morrowind」(2002年)に続く2作目だった。

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 コスター氏が「少なくとも開発時点では,次世代MMOとしてふさわしい,意欲的なテクノロジーやゲームシステムを採用した」と話すように,エモートの中にダンスの特別枠があったり,髪型を途中で変化させたりといったことが可能だっただけでなく,612種類にもおよぶユニークスキルを用意した,「Ultima Online」の開発者らしいスキルシステムを備えていた。
 プレイヤーのイライラ感を緩和するため,PTSD(心的外傷後ストレス障害)と呼ばれるゲームシステムを作り,あまりにも急にダメージを食らったプレイヤーは,しばらくハブに戻ってバーでくつろがなければならなかった。
 「当時出会ったプレイヤーに,踊るウーキーなんて最高だなと皮肉を込めた言い回しで嘲笑されたこともあった」とコスター氏は回想するが,「フォートナイト」など,ゲームキャラクターのダンス系エモートを標準装備しているオンラインゲームは現在,数知れない。

 また個人やグループで探索中のプレイヤーが特定の場所に到達したときには,「Dynamix POIs」というシステムが発動し,例えば廃墟になった建物や宇宙船の墜落現場など,興味深いロケーションが自動生成される。そこに敵が巣食っていたり,どこからともなくストームトゥルーパーの一団が襲い掛かってきたりするといった趣向だが,プレイヤーやグループのレベルに合わせて,敵の強さも自動的に調整されていた。

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 「スター・ウォーズ ギャラクシーズ」の先進的な部分はそれだけではない。例えば,採掘できる資源は特定の時間が経つと消え,別の場所に再生されるが,そのたびにランダムに価値が与えられる。ゲームにはルートアイテムはなく,すべてのアイテムは資源を元にクラフティングすることになり,この部分を評価するゲーマーは少なくなかったようだ。ただし,それぞれのアイテムがユニークということはデータベースが雪だるま式に大きくなりサーバーパフォーマンスに影響することを意味しており,ローンチからの数年後には,このエコノミーシステムは使い物にならなくなっていた。

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βテストの開始時点で,もっと時間が必要であることは明らかになっていた


短か過ぎる開発期間で,未完のまま船出


 それほどまでに注目点が多かったのに,なぜ「スター・ウォーズ ギャラクシーズ」は“失敗作”という烙印を押されてしまったのだろうか。
 最大の理由はやはり,2年9か月という開発期間の短さにあった。2001年6月のE3でデモを公開し,その年の「PCゲーム オブ ザ ショー」を獲得するなど幸先は良かったものの,次第に開発が遅れていった。2002年6月には,開発当初から発表されていたβテストを開始したが,参加者数がわずか250人に限られていたうえ,ゲームコンテンツが用意できず,テスターはゲーム世界を走り回りながらチャットするだけだった。

 ヴォ―ゲル氏は,「大きなプロジェクトを短い期間で作らなければならないことは,SOEに参加した段階で分かっていたので,地形や資源など,さまざまなことをサーバーで制御していました。ミッションも同じで,コンテンツツールさえ出来れば迅速にゲームに落とし込めるはずだったのですが,そのツールの開発が遅れたため,βテストなのに何も用意できていなかったのです」と話した。
 コンテンツツールの完成は2003年2月,つまり正式ローンチのわずか4か月前のことで,「少なくても6か月の時間をかけてデバックを行い,年内のローンチとしたい」という願いもとおらず,2003年6月に正式サービスがスタートした。

ローンチの段階で唯一完成していたクエストラインは,「Jabba’s Palace」のみだったという
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 ローンチ1か月前の段階で,クエストのチェーンが完成していたのは「Jabba’s Palace」のみという状況で,そもそもクエストシステムが完成していなかったため,ミッションターミナルでランダムに生成されるクエストを1つ1つプレイしていくだけという内容。NPCのセリフも書き終わっておらず,ジェダイになるためのクエストのラインも完成していなかったため,612種類あるスキルの中から5つを獲得すればジェダイになってしまう,驚くほど未完成な状態であったとコスター氏は語った。

ビューティーコンテストなど,ソーシャル面では「スター・ウォーズ」ファンの注目を集めた。ペット育成も,優しく接すれば優しく成長するといった,込み入ったシステムだった
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 ヴォ―ゲル氏は,そうしたゲーマーの不評を調整するため,有力なゲーマーを選んで「ジェダイ・カウンシル」を発足させ,彼らをスタジオに招いて会議を行ったが,こうしたゲームコミュニティへのアプローチは,本作が初めて行っものだった。もっとも,中には「スター・ウォーズ ギャラクシーズ」のシステムをよしとしない勢力も存在し,オフィスを襲撃するというウワサも流れた。
 このグループは,アメリカのファン参加型のゲーム/コミック系イベントでは必ず見かける「The 501th Legions」の面々で,ダース・ベイダーをリーダーに,全員がストームトゥルーパーのコスプレで,会場内外で威圧感を放つ。実際は,子供達と一緒に記念撮影をしたりする気の良さそうな人達だが,このときばかりは「スター・ウォーズ ギャラクシーズでストームトゥルーパーをプレイアブルにせよ」と要求してきたという。

 「本当にオフィスが襲撃されたら,ニュースになってゲームが売れてたかも知れない」と笑うコスター氏だが,ヴォ―ゲル氏によれば,映画シリーズでクローン戦争などストームトゥルーパーズにも大きなスポットライトが当てられており,開発時点でLucasfilm側からストームトゥルーパーズの使用を固く禁じられていたという。そうした事情を契約上の理由でゲーマーに話せなかったのも,彼らにとっては辛いことだっただろう。

ストームトゥルーパーになりたいという願望も,「スター・ウォーズ」のファンには存在する
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名作になり得た失敗作


 メディアの「スター・ウォーズ ギャラクシーズ」に対する評価は散々なものであり,当時のPCゲーム市場に強い影響力を持っていた雑誌「Computer Gaming World」や,オンラインゲームメディアとして急成長していた「GameSpy」は,本作を「年間最悪ゲーム賞」に選出した。このことを改めて解説するコスター氏とヴォ―ゲル氏は本当に辛そうで,未完成なままの正式サービス開始について言い訳はできないが,彼らのゲームへの情熱やキャリアに影を落としたのは言うまでもない。

 クエストの欠如,戦闘の未熟さ,ゲームバランスの悪さやサーバーの不具合など,ローンチの時点でさまざまな問題を抱えた「スター・ウォーズ ギャラクシーズ」だったが,クラフティングやソーシャルなどのサンドボックス要素は悪くはなかったとコスター氏は述べる。
 スキルシステムと同様,「Ultima Online」の開発者らしさが感じられたのがプレイヤーの「持ち家」だった。最終的には約25%のプレイヤーが家や建物を作り,サーバー平均で1万2000戸もの建物と,125の町や集落がプレイヤーによって生成された。異なる設計図を元にさまざまな家屋が作られ,自分達でクラフティングしたアイテムで飾り付けられた。

「Ultima Online」以上に凝ったハウジングシステムを持っていた,「スター・ウォーズ ギャラクシーズ」
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 ちょっとしたサイズのギルドなら,自分達の特徴を表すようなギルドホールを設営できたし,複数のギルドが協力することで,ショッピングモールなどを完備した町が作られたという。「スター・ウォーズ ギャラクシーズ」には「政治家」のスキルセットもあったので,中心的なギルドメンバーは選挙で町長に選ばれ,税率など細かい設定もできた。街頭販売を含め,全体の30%のプレイヤーがショップを経営するなど,もはや経営シムのような様子になっていたようだ。

 もちろん,それが「スター・ウォーズ」らしいゲームなのかといえば,微妙なところだ。
 Origin Systems時代には「Privateer」「Wing Commander」シリーズから「Ultima Online」へ進んだヴォ―ゲル氏のような人も多かったため,拡張パック第1弾として2004年10月にリリースされた「Jump to Lightspeed」への意気込みも相当なものだったが,翌11月には「World of Warcraft」が鳴り物入りで登場し,「スター・ウォーズ ギャラクシーズ」に限らず,ほぼすべてのMMORPGプレイヤーがそちらに流れていった。この時点で,人気を回復する手立てはなかったと言ってもいいだろう。
 ただ,「サンドボックス型のゲームシステムはWorld of Warcraftにはなかったので,スター・ウォーズ ギャラクシーズが大きな被害を被ったことはない」とコスター氏は話している。

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 こうした状況下,LucasArtsとSOEは,「スター・ウォーズ ギャラクシーズ」の再スタートを図るため,それまでゲームの根底にあったスキルシステムをクラスシステムに変更する,悪名高い「NGE」(New Game Experience)パッチを2006年にリリース。もちろん,自分達が携わってきたゲームの基本構造を否定されたコスター氏とヴォ―ゲル氏は,パッチの配信を前に退職している。
 NGEは,クリックし続ける戦闘や,プロフェッションを自由に選べなくなったためにクラフトを重視したプレイヤーキャラクターがまったく使いものにならなくなったことが問題視されたほか,ジェダイがスタートクラスというストーリー的にも崩壊したものになり,これまで多くの人が愛していたペットが利用できなくなったことから,ゲーマーの間では葬式が相次いだ。
 その惨状は,ニューヨークタイムス誌やワシントンポスト誌など,普段はゲームを扱わないようなメディアにも取り上げられたほどで,前出の「Computer Gaming World」は,このアップデートを再び年間最悪ゲーム賞に選んだ。

 この時点で「スター・ウォーズ ギャラクシーズ」を熱心にプレイしていたゲーマーはそれほど多くなく,メディアに取り上げられたりソーシャルメディアに使われるようなこともなかったため,忘れられたゲームになりつつあった。しかし,コスター氏は「返金運動が起きるほど散々だったゲームですが,その後の6年間の“New Era”(新しい時代)については語り継がれていくべきです」と言う。ライブチームには「スター・ウォーズ ギャラクシーズ」が好きでたまらないという人達が雇われ,徐々に改良が進められていった。

 この中に,ジェフ・フリーマン(Jeff Freeman)氏という人物がいたことについては,2008年10月10日に掲載した連載記事の第190回「『スター・ウォーズ ギャラクシーズ』の新人開発者」でお伝えしたとおりだ。フリーマン氏の身に起きた悲しい出来事について,コスター氏らが触れることはなかったものの,彼らの功績については熱心に語り,後を託した開発者達の労をねぎらった。

 「最近,“スター・ウォーズ系ゲームTOP10”といったリストにスター・ウォーズ ギャラクシーズが選ばれました」と言うコスター氏に続けて,「3年にも満たない開発期間はあまりにも短かすぎました。ただあの当時笑われたダンスエモートなどを含めて,我々が短い間に達成したことは,今のゲームにも少なからず影響していると思っています」とヴォ―ゲル氏は語った。

「スター・ウォーズ ギャラクシーズの最後の10分間」という,今となっては貴重な画像。熱狂的なファンの中には,エミュレーターでゲームを続ける人も少なくない
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 「スター・ウォーズ ギャラクシーズ」は,2011年12月15日にサーバーがシャットダウンされたが,そのわずか1か月前,ライブチームは最新アップデートとなる「GCW-2」(Galactic Civil War 2)」をリリースしている。これは,自分達の誠意をファンに見せるためのものだったのだろうとコスター氏は話す。この拡張パックでは新たなスペースシップが用意されるとともに,地表から大気圏外に飛び立つことができたが,シャットダウンを迎えたプレイヤー達は,仲間達が宇宙に飛び立つ姿を見送りながらゲームを終えた。

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