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[GDC 2011]「Spore」のプロシージャルプログラマーからノッチまで。インディーズ系開発者10人が,続けざまのマシンガントークを敢行
今や欧米ゲーム業界の一大勢力となっているインディーズゲームの開発者達だが,複数の大プロジェクトに関わった熟練のプログラマーから,まだ大学も卒業していないアマチュアまで,その層の厚さたるや尋常ではない。
ヘッカー氏といえば,我々ゲーマーにとっては「Spore」(2008年)で,プロシージャル・アニメーションを初めて商業ゲームで利用したことが記憶に新しい。氏は長らく一匹オオカミのように,プログラミング技術だけで業界を渡り歩き,DirectXの元になった「WinG」を開発したり,「Quake」の技術の源泉となったと言われるテクスチャマッピングのノウハウを無料で公開したりなど,ゲーム産業における功績の高さはズバ抜けている人物だ。
そんなヘッカー氏は,「私はインディーズのプログラマーですが,発売できるような作品になるまで何かを仕上げたことはありません」と前置きしたうえで,2D Boyの「World of Goo」やThe Behemothの「Alien Hominid」のような成功したインディーズのゲームには,ある共通点があることを指摘する。
それは,アートワークやゲームデザインが独特なものであるだけではなく,彼ら成功者はみな,「ストーリーを売り物にしている」というのだ。
この場合のストーリーというのは,ゲーム内における物語のことではなく,「インディーズ系開発者自身のストーリー」のことである。大企業を辞めてスターバックスでゲームを作ったとか,自分の好きなタイプのゲームをコンシューマ機で出したいという夢に向かって突っ走り続けたとか,そういった苦労話に人々は飛び付き,ある種の親近感をゲームや開発チームに持つようになるというのだ。
現在のネットワーク化された時代においては,そうした裏話をメディアやアルファブロガー達によって広めてもらうという,新しいタイプのマーケティングを活用する手段もあると論じた。
このほかにも,インディーズゲームの開発現場は,「30代を過ぎると,急激に若い力や企業の圧力に淘汰されてしまう」というゲーム業界の慣習に,危機感を持った人達が流入していることが,活力になっているというHemisphere Gamesのエディ・ボクサーマン(Eddy Boxerman)氏や,「海賊版を恐れてはいけない。宣伝してくれるツールになってくれるとポジティブにあしらっておこう」という「Minecraft」の“ノッチ”ことマーカス・ペルソン(Markus Persson)氏ら,そういったベテランの話には,耳をそばだてて聞き入る観衆が多かった。
また,その一方で「ゲーマー達からの卑語を使った軽蔑も,次のゲーム開発の糧になる」と,批判を恐れないアンドレ・クラーク(Andre Clark)氏,「2時間とか2週間とか,短期間でゲームを作り上げてしまうGame Jamという会合は,まるでクリエイティブな筋肉を強化させているようなものだ」と,自分のルーツを大切にする「Bonesaw」のカイル・パルヴァー(Kyle Palver)氏,そして「インディーズゲーム・プレイヤーなんてマーケットは存在しないのに,なぜ我々はインディーズ系開発者などというレッテルを自分自身に貼り付けるのか」と疑問を呈するデイビッド・ヘルマン(David Hellman)氏ら,若手の元気の良さも感じずにはいられない。
大勢の前で即興演芸を行うほど肝が据わり,若手インディーズ系開発者の代表格に成長しそうなカイル・パルヴァー氏。GDCでは,「Winnitron 1000」というゲームをインディーズ展示会で公開している |
「pOnd」など,禅をモチーフにしたゲームを作るアンドレ・クラーク氏。他人に理解されないゲームが多いのか,随分と批判にさらされるようだ |
最後は,パルヴァー氏がQ&Aセッションをジャックして,物真似や映画「インデペンデンス・デイ」のセリフ暗誦を行って笑いを取るという,まるで体育館でリハーサル中の学園祭のような雰囲気になっていたが,こういった底辺の肉厚さとパワーが,今の欧米のゲーム業界の好調さに直結しているというのを,肌で感じることができたセッションだった。
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