インタビュー
[CEDEC 2008#09]シリーズ生誕15周年を控えて明かされる,女性向けゲームブランド「ネオロマンス」シリーズの精神
また,ネオロマといえばイベントおよび,マーチャンダイズ(関連商品展開)も特徴的である。そのなかにおける,女性向けブランドとしての特異点も,非常に興味深いところだ。
CEDEC 2008ではそんなネオロマシリーズの歩みについて,コーエー ソフトウェア事業部 ソフトウェア3部 リーダーの松涛明子氏が講演した。その講演に関連して,氏にインタビューしてみたのでその内容をお伝えしたい。講演での主題とはあえて若干離れたトピックスを中心にしてみたので,本編を聞いた人にも追加情報としてぜひ読んでほしい。
コーエー得意の「シミュレーション」を女性にも
本日はよろしくお願いします。まず,なぜこのタイミングでネオロマなのかといったあたりから教えてください。
松涛氏:
ネオロマンスシリーズは,来年で15周年を迎えます。この15年の歩み,いろいろなメディアミックスを展開していますし,ネオロマンスシリーズ内部でも多様なシリーズが出ていますので,まずはその流れを時系列で紹介させていただきました。
4Gamer:
初回の「アンジェリーク」が1994年,思えばもう15年になろうとしているのですね。
松涛氏:
ええ。そして製品やサービスを提供させていただく中で,お客様にアンケートを取ったりもしています。そこからお客様の特性,どんなことに興味を持っているのか,何歳くらいが中心になっているのかといった考察をしています。
加えて,さまざまなメディアミックスとゲームの関係,相互作用といったお話も重要な話題です。
4Gamer:
なるほど。では周辺からお聞きします。そもそも「ネオロマンス」は,なぜ「ネオ」なんでしょうか? いまやすっかり定着したので,逆にあらためてお聞きする機会がありませんでしたけれど。
松涛氏:
そもそも,女性向けのゲームを女性だけで立ち上げようというのは,現在弊社のトップである襟川(恵子氏。ファウンダー取締役名誉会長)の発案でした。
そのときただの「ロマンス」だと普通の言葉になってしまう。そこで「New」に当たる言葉を英語以外から検討して,一種の造語としたのがきっかけです。
4Gamer:
これから新しいシリーズを立ち上げるに当たって,意気込みを表現する意味で付けたと。
松涛氏:
そうですね。それが現在ではすっかり定着して。
4Gamer:
「ネオロマ」で十分通じるようになっていますよね。では,現在ネオロマンスシリーズ/関連商品が想定している,顧客層のサイズをどの程度と見ていますか?
松涛氏:
どこまでを想定するかで変わってくるお話ですが,例えばコミックスの読者さんやアニメのファンの方などを含めて考えれば,30万人を超える購買層を持っていると思いますね。
4Gamer:
すでに一大マーケットというべきですね。
松涛氏:
そうですね。
4Gamer:
他社さんの作品,総称して「乙女ゲーム」となりますが,それらもまた,似たターゲットを狙うビジネスとして成立しています。
ただ,ネオロマンスシリーズを立ち上げた1994年当初は,当然ながら状況は不分明で,可能性は未知数だったということになりますね。
松涛氏:
その頃は女性向けのゲームというものがなかったですから。ただ,これから女性もゲームをプレイする時代が来るという信念が,当社のトップにはあったようで,その信念を体現することで,お客様もついてきてくださったということです。
4Gamer:
1994年という早い時期に,トップダウンで女性向け製品の展開が行われ,そこで登場した「アンジェリーク」は好評を博します。これを計画するとき,どんなゲームとして外枠を構想したのでしょうか?
松涛氏:
その段階で私はタッチしていませんので,伝聞情報になりますが,当社は「信長の野望」シリーズや「三國志」シリーズに代表されるとおり,シミュレーションゲーム(編注:ここでは当サイトで通常用いる,広義の「シミュレーション」ではなく,パラメータ操作にフィーチャーしたゲームというほどの意味)で広く評価を得ていました。これを女性にも楽しんでもらいたいという意図が,最初にあったと聞いています。
そして,女性にとって入りやすい形,ハードルに感じられないようなシミュレーションゲームとして構想され,そこでは「信長の野望」や「三國志」で得たノウハウが生かされていました。それが次第に変化していって,現在の製品があるという経緯です。
4Gamer:
例えばパラメータアドベンチャーではなくて……と。
松涛氏:
ええ,シミュレーションゲームでした。「アンジェリーク」はずっとシミュレーションゲームとして作られており,2000年に登場したアドベンチャーゲーム「遙かなる時空の中で」は,シミュレーションの「アンジェリーク」と対比する形で登場したといってよいと思います。
4Gamer:
ただ,シミュレーション/ストラテジーは――現在もしばしば言われることですが――女性とあまり相性が良くないという危惧はありませんでしたか?
松涛氏:
なかなか難しい問題ですが,シミュレーションといっても「信長の野望」や「三國志」のようなものとは違いますし,ジャンル自体は幅広いものなので,見せ方によっては,別に女性層から離れたものではないと思っています。
4Gamer:
シミュレーションという形式の問題では,必ずしもないと。
松涛氏:
ただ,まさしくハードルを下げ,受け入れられやすくすることが,開発中に苦労した部分だとは聞いています。「開墾」や「商業開発」を「ジュリアス」や「クラヴィス」といった素敵な男性に置き換えていく,といいますか。
4Gamer:
何万石増えた,ではなく,相手が返事をしてくれる会話の形にまとめた,と。ラッピングの形としての会話というわけですね。確か,イベントというよりは守護聖様達との会話が主体だったような……。
松涛氏:
そうです。会話が主体です。イベントはまだそれほど強く打ち出されていなかったですし。守護聖には内部数値として五つくらいのパラメータが設定されていて,それが変動することでAIの行動が変化していくというところが,面白さだったと思います。
4Gamer:
そのあたりが,内部的にはシミュレーション性なわけですか。
松涛氏:
はい。でも数字を直に突きつけるんじゃなくて,行動で見せていくところが,女性向けの工夫でした。
4Gamer:
抽象的な地位や財産ではなく。
松涛氏:
デートに誘いに来る回数が増えたな,とか。
4Gamer:
そう考えると,女性向けに限らず,シミュレーション的手法に馴染んでいない人全般に通じる配慮ですね。
松涛氏:
そう言えると思います。
PS版/SS版を介して声優さんのイベントへ
さて,ネオロマンスと聞くと横浜で行われているイベントのイメージも強いところなのですが,そちらの展開が始まるのは,どの作品からでしょうか?
松涛氏:
2000年に行われた「アンジェリーク メモワール 2000」というのが最初です。ゲームに出演する声優さんをお呼びして,お客様に来ていただいて,歌やライブドラマの上演を行うという,現在とほぼ同じ形のイベントの原型ですね。
4Gamer:
確か,「遙かなる時空の中で」が2000年発売でしたよね?
松涛氏:
最初のイベントは2000年の2月末,「遙かなる時空の中で」発売が4月初頭ですので,「遙かなる時空の中で」が出る前にイベントが行われている,という順番です。
4Gamer:
他メディアへの本格的展開が始まったのが,その時期と捉えてよいのでしょうか?
松涛氏:
いいえ,コミックスなどでの連動は,ずっと初期から行っているので,その裾野が広がって,見えやすくなった時期という感じですね。
4Gamer:
ではイベントではなく,オーソドックスなメディアミックスに着手したのは,いつ頃でしょうか?
松涛氏:
「アンジェリーク」発売と同じ時期に,もうドラマCDが出ています。翌年には漫画の連載が始まり,ゲームが2タイトルくらい発売されたあと,「アンジェリーク ラブラブ通信」というファンブックが,毎月発売されていました。
そこで,関連商品の発売予定告知や,ファンの方からの投稿イラストが扱われたりもしたわけです。これが1997年ですね。
4Gamer:
それは,会員限定の頒布品だったりしたのでしょうか?
松涛氏:
いいえ,書店で販売される書籍でした。「アンジェリーク」の初回作はスーパーファミコン用でしたからキャラクターボイスはなかったのですが,プレイステーション版/セガサターン版以降それが付いて,ボイスキャストに対する関心が盛り上がり,これがイベントにつながっていきます。
なるほど。プレイステーション版/セガサターン版を挟んだムーブメントだったから,作品デビューから割と時間が経っていたんですね。ところでネオロマイベントは,当初から盛況だったのでしょうか?
松涛氏:
盛況でなかったわけではないですが,例えば現在は同じ横浜ながら,1日2公演を2日にわたって実施しています。それに比べて当初は1日のみでした。ですから,いまよりも若干小さい規模で始まったという印象ですね。席も現在は満員かほぼ満員が常ですが,当初はそこまでいっていないと思います。
4Gamer:
ネオロマのイベントというと,マーチャンダイズの側面に特徴があるなあという印象もあります。女性ターゲットとなると,ジュエリーとかそういったものも扱われますし。
男性向けのアニメ調ゲームの関連グッズというのは,全体に安っぽい感じがあって,とにかくキャラクターグラフィックスが大きく入っていればよい,みたいなところがありますが,だいぶ違う気がします。
松涛氏:
お客様にアンケートを取ってみても,キャラクターの絵を入れてほしいというご要望と,逆に日常的に使えるものをというご要望が,スパッと分かれているところがあります。
そうなると,両方のラインナップを揃える必要が出てきまして,キャラクターが入ったグッズと,ゲーム内世界にある日用品という設定のグッズが,用意されたりもします。
4Gamer:
ちょっとおしゃれなものを工夫していると。
松涛氏:
そうですね。できれば高級感もあったほうがよいだろう,といった具合に工夫されています。
4Gamer:
なるほど,それでですか。ところで,イベントに来る方と,ゲームをプレイする方の基本的なプロファイルは重なっていますか?
松涛氏:
当初はそうでしたが,アニメ化を含めてメディアミックスが進んでいった結果,まだゲームをプレイしたことはないという方も,イベントに足を運んでくださるようになりました。
男性ゲーマーもゲーム性を評価?
お話の方向を作品自体に戻しまして,ラインナップの考え方についてお聞きします。第1作が西洋ファンタジー,第2作が和風/王朝風で,第3作は現代の学園モノ。ある種うまくバランスをとってきたと思うのですが,続編が順調にリリースされる一方で,モチーフはあえて先の3種類に絞っているのかな? という印象もあります。実際のところどうなのでしょうか。
松涛氏:
うーん,4年に1度くらい新規のラインナップを追加していますから,これがちょうどよいペースかと思っていた節もあるのですが(笑)。1994年スタートで,現在4ラインですし。
4Gamer:
そこがまさに気になるところでして,4本目のラインである「ネオ アンジェリーク」はモチーフで見ると,「アンジェリーク」のリファインバージョンで,逆にモチーフを広げる方向性ではないんだなあと……。
松涛氏:
作品ラインの特徴で見ると,当初の「アンジェリーク」と違ってアドベンチャーゲームにしていたりと,新しい側面は多いんですけどね。
その意味で,「ネオ アンジェリーク」は「アンジェリーク」の続編ではないですし,これから「アンジェリーク」の続編が出るという展開も,十分に考えられます。
4Gamer:
ええと,こだわるようで申し訳ないのですが,モチーフの次元で新しいものを展開することも,選択肢の一つではあり得たわけですよね?
松涛氏:
そうですね,可能性としてはあると思います。
4Gamer:
モチーフであれば,SFなり動物モノなり,シチュエーションとしてはスポーツだとか,手を伸ばそうと思えば届く題材が,無際限にあると思うんですよ。そのなかで絞り込んでいったのが,現在の路線なのかなあと思った次第なんですね。実際,どうなのでしょうか?
松涛氏:
ネオロマンスシリーズとしてはもともと,女性がドキドキして夢のあるものという趣旨がありますので,どのシリーズもその立脚点から,ずれないように作られています。
だから,女性が見てがっかりしたり,見ている人の心を傷つけたりするようなものは作れません。ただ,これからもできる限り多くのお客様にネオロマンスシリーズを楽しんでもらいたいので,その範囲でラインナップはなるべく広げていきたいと考えています。
4Gamer:
例えば全的な悲劇は作りにくいですか?
松涛氏:
いいえ,悲劇はすでに「遙かなる時空の中で」シリーズで,提供していますね。切なさがコンセプトになっているシリーズですから,キャラクターの哀しい過去やつらい出来事なども出てきます。
その意味で,必ずしも悲劇を否定しているわけではないのですが,恋愛ゲームの結末としては,どうしてもハッピーエンドを求めるお客様も多いですから。
4Gamer:
そうですね,そこがまずマスとしていて,そのバリエーションとして悲恋などの要素が出てくるのが,たぶん普通なんだろうと思います。つまり,シェークスピア作品的破滅などは,扱いの難しい要素ということですね。
松涛氏:
なるべくターゲットを広くとるのが,優先課題ですからね。
4Gamer:
ところで「アンジェリーク」は,当時男性プレイヤーにもけっこう評価されていた記憶があります。1980年代中盤くらいからでしょうか,男性も少女漫画を読む時代が来ていました。その意味で感性の部分でも,受け入れられる人はけっこういたろうと。
松涛氏:
そうですね。現在は女性の比率が圧倒的になってしまったので,決して多くはないですが,買ってくださる男性がいらっしゃることはアンケートからも分かりますし,キャラクターや戦闘システムを評価する声も寄せられますので。
4Gamer:
もしかしたら間にアニメなどの文化を挟むのかもしれませんが,恋愛シムは男性向けであれ女性向けであれ,性別を超えて受容される側面が割とあるなあと,思ってもいます。
恋愛以外の大目標を踏まえた,共感できるゲームデザイン
ネオロマンスシリーズは恋愛要素をきちんとカバーしつつも,ゲーム内的に大きな目標を設定していますので,それで男性にも楽しみやすいのかな,とも思います。
男性向け恋愛ゲームでは,意中の女の子と恋をするほかにゲーム内の目的のない作品もありますよね。それに対して例えば「アンジェリーク」の場合女王になることが大目標であって,そこで恋もする,という形になっています。そこがとっつきやすさというか,ガツガツしていない部分として,評価されているのではないかと。
4Gamer:
ああ,そういう側面もありますね。そこは当の女性にとっても重要なポイントなのでしょう。
松涛氏:
やはり,主人公に共感できるという側面が大きいようですね。
4Gamer:
なるほど。恋愛ゲームといっても世界設定やストーリーラインの目指すものを見ないといけないわけですか。
引き続いて,男性ゲーマーとの接点を別方向からお聞きしたいのですが,世に言う「女性向け製品」は,ある程度カップル消費を見込んでデザインされることが多いようです。つまり,パートナーの男性と一緒に楽しめるかどうか,ですね。そこについてはどうでしょうか。なかなか微妙な立ち位置ではあると思うのですが。
松涛氏:
そうですね……ゲーム自体のベースに恋愛がありますので,彼氏と一緒に「アンジェリーク」をやって,「オレはオスカーが好きだけど……」というのは,少なくともあまり作り手側からは意識していないですねえ。ただ,複数人数で遊べるネオロマンスゲームという試みは,何度か行われています。
4Gamer:
イベントのほうでも,男性はほとんどいないですか?
松涛氏:
女性のボイスキャストさんもいらっしゃるので,そうした方が好きな男性はいらっしゃると思うんですけど。男性の方は男性の方でいらっしゃって,あまりカップルはいない印象ですね。コスプレをするグループの一員として,いらしている男性が多い気がします。
「恋のときめき」みたいな部分を大事にしていますので,横で彼氏に見られながらというのも,なかなか難しいのかなとも思いますね。
4Gamer:
ああ,それはゲームの“機能”にも通じる,なかなか示唆的な答のような気がします。例えば「読まれる物」としての少女漫画の消費では,性別の壁はさほど高くありません。たぶん彼氏とも「この漫画の誰それいいよね」という話は,別に抵抗なくできる。
ネオロマがそうならないことには,いろいろな理由があるかもしれませんが,一つにはメディアの特質が大きいのだろうと。
松涛氏:
ネオロマンスシリーズのゲームソフトを貸し借りするという話はしばしば聞きますが,誰かの目の前でプレイすることは,女性同士でも割とぎりぎりな領域なんだと思います。自分だけの楽しみというか,楽しんでいる瞬間は没頭したいといいますか。
少女漫画だと,読者はあくまで第三者ですよね。それに対してゲームの場合,キャラクターと自分という関係性になりますから。
4Gamer:
その部分を核に,ネオロマのイベントも組み立てられているということですね。キャラクターボイスへの愛着が生まれるのも,自分とキャラクターとのインタラクティヴィティの副産物だというか。
松涛氏:
イベント自体でも,基本的に観客の方を主人公になぞらえる形で進行します。観客席に向かって「神子」(みこ)と語りかける演出も多いですし,イベントの組み立てにおいても没入感は意識されています。
4Gamer:
女性ボイスキャストさんも,あくまで観客席から没入して見られる世界を形作るための登場人物として起用されているわけですね?
松涛氏:
そうです。主人公のボイスキャストさんが登場して,より臨場感を盛り上げるといった場合もありますが,基本的に語りかけは観客席に向かって行われます。
4Gamer:
プレイヤー視点をゲームから受け継いでいると。
あくまで女性の嗜好を汲み上げる
ちょっと些末な論点になるのですが,ネオロマにはあまり熱血ヒーロー的キャラクターがいない印象があるのですが,これはなんらかのデザイン意図に基づくものでしょうか?
松涛氏:
うーん,そうですかね? 代表的なキャラクター類型の一つだとは思っているので,1タイトルに一人くらいは必ずいるという認識なんですが。
4Gamer:
ええ,データベース消費的なバリエーションとしてはいるんですけど,なんというか,あまり視点がそちらに移らないような……。
松涛氏:
いや,なるべくバリエーションは作るようにしているので,そんなことはないと思います。少女漫画的な絵なので,見た目は涼やかな場合もあると思いますが,かなり熱い内面を持つキャラクターが配置されています。
ただ,もちろん女性に「ウケ」ることが重要なわけですから,クールなタイプや知的なタイプが多い印象も,ことによってはあるのかもしれません。
4Gamer:
ええと,なんというかぱっと見から来る短絡かもしれないので,違っていたらぜひ明確に否定していただきたいのですが,「インドア派が好みそうな」男性が揃っているなあ,という印象なんですね。これはある程度意図したラインナップではないかとも思えるわけですが,どうなのでしょうか?
松涛氏:
実際それはないですね。むしろどれだけのバリエーションを用意できるか,いかに幅広くいくかということを意識しているので。
寄せられるお客様からのご意見でも,例えば特定方向に偏っているといったご指摘はないです。もちろん,女性が好きそうなキャラクターに偏っている,というのはあると思いますが(笑)。
4Gamer:
ああ,なるほど。男性視点で外側から見てしまうと,それが偏りに映る可能性はありますね。聞き手としての私が滅却できない部分かもしれないという(笑)。
松涛氏:
あとは先ほど申し上げたように,少女漫画的な絵柄で作られていますから,キャラクターの外見もスレンダー気味に寄っているため,そう見えるのかもしれません。
4Gamer:
確かにそうなると,あまり汗くさいイメージはなくなりますからね。ともあれ,女性をターゲットにしたときに幅広いバリエーションが目指されていると。
ゲームと舞台を対比させる形でここまでお聞きしてきましたが,関連商品のお話も少しだけ。一番意外なヒットとなったマーチャンダイズ商品を,ぜひ教えてください。
松涛氏:
あくまで私の印象になりますが,「ボイスカード」がそうですね。ネオロマンスのイベント会場で販売していて,名刺くらいの大きさで,ボタンを押すとそのキャラクターのセリフが聴けるというものです。一セリフしか入っていないんですが,かなり注力して書かれたセリフが新規収録されています。
4Gamer:
製品の性格としては,分かりやすいですね。
松涛氏:
とはいえ,最初はどこまで訴求するものか,手探り状態だったと思います。これがいまやかなり受け入れられているなあという印象ですね。いくつもバリエーションが出ていて,「金色のコルダ」の第▲弾です,みたいな感じになっていますから。
4Gamer:
ああ,それは面白い傾向ですね。男性向け恋愛シムだと,何年か前に目覚まし時計が流行しましたけど,それと似ているようで違う。
松涛氏:
会場ですぐ聴けますし,サイズが小さいので何枚持っていてもあまり邪魔にならない。一つのゲームには8人とか9人のキャラクターがいますけど,それを全部集めても,それほど問題がないというか。
4Gamer:
目覚まし時計は一種のシチュエーション消費ですが,ボイスカードの特徴は手頃であることなので,記念品としての消費にも向いていそうですね。
松涛氏:
そうですね。コレクションにも向いていますし。
4Gamer:
では最後に,CEDECでの講演を踏まえたうえで,コーエーがネオロマンスシリーズについて語る意義を直截にお願いします。
松涛氏:
女性向けのゲームは弊社が開拓した分野で,15年近くにわたり,かなりのノウハウを蓄積したという自負があります。その一端をお話しすることは,理解を深めていただくことにつながると思いますし,場合によっては市場の活性化にもなるのではないかと思っています。
4Gamer:
本日はありがとうございました。
そして恋愛がモチーフであるだけに,その関係性,コミュニケーションは基本的に閉じている必要がある。ゲームもイベントも,各自の閉じた関係性の集積として,多数の顧客を構成するというあたりが,単純なマス・マーケティングと異なる,興味深い部分だと感じた次第である。
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