インタビュー
日本のゲーム業界が世界で戦っていくために―――セガのキーマン名越稔洋氏に独占インタビュー
しかし同氏は,かれこれ20年以上もゲーム開発に携わる,生粋のゲーム職人だ。古くは「デイトナUSA」のプロデューサーとして知られ,また海外では,累計400万本以上を売り上げた「スーパーモンキーボール」シリーズの開発者として有名な人物でもある。
そんな名越氏の現在の役職は,R&D クリエイティブ オフィサー CS研究開発本部長。要するにセガのコンシューマゲーム部門の現場のトップであり,龍が如くのみならず,セガのコンシューマ向けソフト開発の全般を統括する立場。今後のセガのみならず,いまや日本のゲーム業界の行く末を握るキーマンの一人だといっても過言ではない。
今回4Gamerでは,その名越氏にインタビューを行い,氏が考える今後の戦略や構想,とくに日本のゲームが海外市場で戦っていくために必要な要素についてなど,いろいろな角度から話題を振ってみた。
日本のゲーム業界が世界で戦っていくために
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。
タイミング的に名越さんの新作についてのお話はちょっとしづらいと思いますので,今回は,ちょっとゲーム業界全般……,とくに海外市場への取り組みについて伺えればと思います。
分かりました。よろしくお願いします。
4Gamer:
それでは。単刀直入に聞いてしまいますけれど,名越さんは,いわゆる「海外市場向けのゲーム」についてどう考えています?
名越氏:
いきなり難しい質問ですね(苦笑)。
4Gamer:
というのも,ここ数年,「海外向けのゲーム」って一体なんだろう? とよく考えるんです。何をもって海外向けとするのかな,と。例えば,外人が主人公だと海外向けで,アニメ絵だと国内向け? いや,そんな単純な話じゃないよなぁみたいな。
名越氏:
うーん。僕としては,なんと言いますか,「日本人が外人の振りをして作るゲーム」っていうのは,やっぱり違うんじゃないかとは思っています。単純に嗜好性うんぬんで売ろうと思ったら,外人の好みは外人が一番よく知っているわけですから,当たり前ですけど,現地で作られるゲームの方が現地のニーズを汲み取りやすいわけですよ。
4Gamer:
そうなんですよね。
名越氏:
だから,僕ら日本人がゲームを作って,そしてそれを海外で売っていかなきゃいけないとしても,僕は“日本人としてレッドカーペットを踏めるような作品”を目指さないといけないと思うんです。
4Gamer:
安易な模倣やマーケティングは逆効果だということですか。
名越氏:
ええ。
4Gamer:
ただ例えばですけど,その視点で任天堂さんのゲームなどを考えてみると,任天堂さんの作るゲームって,全部が全部そうじゃないですけど,わりと“本能を刺激するような”ゲームが多い印象を受けるんですよね。
名越氏:
ああ,まさにそうだと思います。
4Gamer:
一方で,スクウェア・エニックスさんのゲームなどは,割と文化とか思想みたいなものが前面に出るタイプの作品が多いとも思うんです。
名越氏:
なるほど。
4Gamer:
それを踏まえたうえで,世界でゲームを売る……要するに人種や宗教,思想の違いを超えて物を売ることがどういうことなのかを考えてみると,やっぱり“本能を刺激するようなゲーム”って有利なのかな? と思ったりもするんです。もちろん,ファイナルファンタジーは世界的にも大きな成功を収めましたし,一概には言えないとは思いますが。
名越さんが今後,世界市場向けに作るであろうゲーム――すでにプロジェクトが動いてるのかもしれませんが――は,どっち寄りの作品になるのでしょうか。
名越氏:
んー,どっちでしょうねぇ(笑)。
4Gamer:
やっぱり,そのあたりはまだ言えませんか。
名越氏:
ただ僕の立ち位置から言わせてもらうならば,正直,そこは“両方ともやっていきたい”とは考えています。僕自身のゲームの作り方からしてそうなのですが,「僕はアクションゲームでいきます」「僕はドライブゲームでいきます」あるいは「パズルゲームでいきます」といったふうに,ジャンルやテーマを絞って作ろうとは思っていないんです。その時その時で,もっとも“熱量のある企画”をやっていきたいと考えています。
4Gamer:
さまざまなジャンルのゲームを手がけられてきた,名越さんならではの発言ですね。
「とてつもない」――海外大手メーカーの凄さについて
4Gamer:
そういえば名越さんって,海外のゲームは結構遊ばれたりするんですか? ほかのメディアのインタビューなどでは,割といわゆる洋ゲーに関する発言をされているので気になっていたのですが。
名越氏:
研究/調査として少し遊ぶ,というくらいですね。「あのタイトルが凄い!」ってスタッフとかから話を聞いたら,ちょっと触ってみて方向性やゲームのボリューム,テンポ感なんかをチェックしてみたりはします。ただ,最近はそんなにゲームをやり込めないので,他のクリエイターの方と比べると,全然浅い研究だとは思いますが。
4Gamer:
海外のゲームを遊んでみて何か感じることはありますか?
名越氏:
やっぱり「凄いな」と素直に思います。それは,絵的な凄さなどという部分もあるのですが,ゲームの背景に見え隠れする膨大な作業量だとか,そしてそれらが上手い具合に一つの形(作品)として完成を見ているところとか,そういう部分は本当に凄い。「とてつもないな」と感じますよ。
4Gamer:
大規模開発に対するゲーム会社のアプローチというのは,ここ数年の大きなテーマですよね。
名越氏:
そうですね。開発のワークフローやそれを支えるツールのあり方,組織のあり方など,それぞれが日本の企業よりも欧米の企業の方が洗練されているのは間違いないと思います。海外のゲーム開発者の方と話をしていると,それこそ“はっとするような一言”をさらっと言うんですよ。
4Gamer:
例えば,どんな一言ですか?
名越氏:
僕自身が衝撃的だったのでいうと,いつだったか「デザイナーってまだ絵を描いてるんですか?」みたいなことを平然と言っていたんです。「ええ!? デザイナーって絵描かないの?」みたいな(苦笑)。いろいろ考えさせられちゃいますよね。
4Gamer:
けれど,そうして作られていく海外の“凄いゲーム”と戦い,勝っていかないといけないわけですよね。
名越氏:
ええ,それはもちろん。
4Gamer:
そこに対する勝算というのは,名越さんの中でどういったものがあるのでしょうか?
勝算……という話からは少しずれるかもしれませんが,海外のメーカーからもの凄い大作がどんどん登場している一方で,それらのメーカーの決算書なんかを覗いてみると,赤字のところが少なくないんですよね。これが何を意味しているかというと,何百万本と売れるビッグタイトルがある裏側で,恐らくですけど,たくさんのリジェクト(不採用/開発中止)をしていると思うんです。
なんていうのかな,大きいプロジェクトならではの,大きな無駄,大きなロスもたぶん沢山あるんだろうなぁと。いやまぁ,赤字うんぬんを言っちゃうと,ウチ(セガ)もひと様のことを言えないんですけど。
4Gamer:
海外市場……とくに北米と欧州を中心にしたゲーム市場って,ここ数年はずっと右肩上がりで拡大し続けてきて,それに引っ張られる形で,もの凄い勢いで開発費も膨れあがっていますよね。人気アクションゲームのビッグネームなんかは,もう500万本以上売ること前提で作品を作っていたりして。端から見ていても,やっぱり危うさは感じるんですが。
名越氏:
現状,そうしたやり方で成功している企業がある以上,僕はそれを一概に否定するつもりはありません。ただ,大きなロスを出しながらも大きな成功を収めて,一挙にリクープ(回収)するというやり方がある一方で,無駄のないスマートな作り方っていうのも,それはそれで大切じゃないかと思うんです。
ほかの産業でいえば,工業廃棄物をどんどん出しながらも急速に発展する国とかがあると思うんですが,そういう時代がありつつも,最終的には,そうじゃないクリーンなやり方が見直されていく……というのかな。そこに僕らがやりきれるヒントみたいなものが潜んでいるんじゃないか。そういうイメージは少し抱いていますね。
4Gamer:
今おっしゃった意味で見て,開発費高騰の主要因ともなっている「ゲーム機の急激なグラフィックス能力の向上」についてはどう思われますか? 個人的には,一昔前にあった「ゲームにおけるムービーシーンの是非」に近い論争なのかな,と感じたりはしていますけど。
名越氏:
僕は「それが適切であれば(ユーザーさんに好まれるのであれば)」あるべきだと思うし,またグラフィックスの向上云々についても,それがゲームの進化軸の一つとして明確にある以上は,「安易にその進化を止めるべきではない」と思っています。
というのも,そもそもゲームという商品は,世の中の数ある娯楽/製品のなかの一つでしかないわけで,それらと密接な関わり合いと競争を繰り返しながら,今の立ち位置を築いているわけですよね。……であれば,いろいろな娯楽/商品が日々進化していくなかで,ゲームがその地位を保っていくためには,ゲームというものも常に進化していかなければならないと思うんです。
4Gamer:
映画やテレビなどの映像メディアに限らず,デジタル家電やWebサービス,携帯電話……,ユーザーの可処分所得と時間の奪い合いは,近年激しさを増してきている感がありますしね。
名越氏:
ええ。ですから,映像面に限らず,インタフェース,ネットワーク対応など,ゲームも負けないように頑張らないといけない。まぁ今のゲーム産業には,常々「ダイナミックさと繊細さを併せ持つ研究開発が求められている」と感じていたりもしますが,正直いって,これがなかなか難しいのも確かです。
4Gamer:
ダイナミックさと繊細さ,ですか。
名越氏:
ただ,僕も組織を運営/経営する側に回ってから,物事を大きく牽引する代わりに小さいロスに目をつむるケースや,あるいは細かく指示を出してロスを削るべきケースなど,いろいろなシチュエーションを体験してきましたが,これからの時代,おそらくはその両方をやりきらないといけないんだろうな,とは感じています。
4Gamer:
確かにそうなのかもしれません。
名越氏:
経営用語では,よく「選択と集中」だとか「フレキシブルに対応を」なんてことを言います。……まぁ,口で言うのは簡単ですよね(苦笑)。けど実際問題として現場に,日々の作業にそうしたものを取り込んでいくことは,一筋縄ではいきません。しかし「無茶言うなよ」と思う一方で,常に「なんとか両立させる方法がないかな?」とも考えています。試行錯誤の毎日ですね。
ゲームの売り方,作り方。映画と同じ道をゲームもまた辿る?
4Gamer:
ほかの産業についてのお話が出たので,これを機に聞いてみたいのですが,名越さんは,著書の「ゲーム屋人生」のなかで,日本の映画産業を引き合いに出して,日本のゲーム産業がどうあるべきか,みたいな話をされていますよね。
名越氏:
日本の映画産業がハリウッド映画とどう向き合っていったのか,という話ですか?
4Gamer:
ええ。ハリウッドの大作映画に対して,日本の映画産業は苦杯を喫した時期があって,その状況っていうのは,ゲーム産業における国産ゲームと海外ゲームの関係に似ているのではないか,みたいな。
名越氏:
そうですね。それがそっくりそのままゲーム産業にも当てはまるとは思いませんけれど,彼ら(日本の映画業界)の取った戦略というのが,ゲーム産業にとっての一つの道筋を示しているのは確かだと思います。
4Gamer:
邦画といえば,近年は非常に好調で,国内市場においては洋画を圧倒する勢いがあるわけですけど,別にハリウッドと同じ規模の予算で映画を作っているわけではないだとか,名越さんが指摘するように,日本のゲーム産業が参考にできる要素は多いですよね。
名越さんは,元々「デイトナUSA」など,海外でヒットしたゲームを作られてきて,龍が如くでは,逆に国内にフォーカスしたタイトルをプロデュースされましたが,やっぱり他の産業を参考にしたところは多いのですか?
名越氏:
龍が如くには,グラフィックスが凄いだとか技術的な革新性はありませんでしたが,“心意気的には”革新的なゲームだったと今でも思っています。具体的には,「売るための努力」について,いろいろなチャレンジをしたタイトルと言えば良いでしょうか。
4Gamer:
龍が如くは,ゲームのテーマもそうですが,広告戦略も奇抜ですよね。
僕は元々アーケードゲームの開発者だったんですけど,僕がアーケードからコンシューマの開発に移って最初にショックを受けたのが,「自分はゲームを売るためのプロセスをなんにも知らない」という事実でした。
その当時というと,アーケードでいくつかのヒット作を手がけて,周りから「凄いね」ってチヤホヤされていた時期です。それなのに,僕は「ゲームビジネスに対しての理解」が浅かった。
4Gamer:
その苦い経験が,龍が如くにも生きたと?
名越氏:
ええ。その経験があるからこそ今の僕があるし,そこで一度リセットして,心を入れ替えてやり直せた流れがあるんですよね。ゲームを売るための努力がいかに大切かを学ぶことができた。
龍が如くは,それこそ「売るためのキーワード」をこれでもかと盛り込んだタイトルでもありました。例えば,「ドンキホーテが出るゲームだよね」とか「キャバクラがあるゲームでしょ」とか,そういう分かりやすい形で話題が広がっていくように,ゲームシステムから宣伝の仕方まで,あらん限りのアイデアが盛り込まれている……それが龍が如くというゲームなんです。
4Gamer:
確かに龍が如くシリーズは,「これを買えば,こういう楽しみ方ができそう」というイメージを掴みやすいなと,とても感心した記憶があります。
名越氏:
これからのゲームは,売り方もそうですが,より適切な遊ばせ方みたいなものも,より一層きっちり考えて作るべきだとも考えています。
龍が如くでいえば,一晩で1章ずつ進めていって,二週間くらいで終わる。でも,根を詰めて遊ぶと2日で終わる……みたいなイメージなんですけど,学校が終わったら宿題やってゲームして寝るみたいな,ユーザーさんがゲームを遊ぶ前後の行動だったり,環境だったり,「人間の行動として,どうゲームというものを遊ぶのか?」というのをもっと突き詰めていかないといけない。
たくさんあるミニゲームやサブストーリー類も,ゲームシステム的には,いわゆる“ボリュームの調整弁的な役割を果たすからくり”の一つなのですが,適度なボリューム感を味わわせつつ,自然に最後まで遊べてしまう……。そんなゲームが良いんじゃないでしょうか。
4Gamer:
なるほど。
名越氏:
まぁ話を戻しますけど,日本のゲーム産業は,ずっと世界市場で競争をしてきたという流れがあって,そこは国内市場がメインの邦画とは違う点だとは思います。しかし僕は,ゲームがゲームという枠だけに縛られて商売をしている限りは,いつかはゲーム産業それ自体が萎んでしまうと考えています。
映画産業が,初めは敵視していたテレビやビデオなどと手を組んでいきながら,自身のビジネスのあり方を立て直していったように,ゲームもまた,同じような道筋を歩んでいくのではないでしょうか。
ゲームと手を組む何かっていうのが,アニメや漫画なのか,あるいはYouTubeやニコニコ動画のようなWebサービスなのか,それはまだ分かりませんけれど。
4Gamer:
ニコニコ動画やYouTubeなどの動画投稿サイトについてはどうお考えですか?
名越氏:
基本的には受け入れるしかないですよね。そういう時代なんだと素直に認めて,それを踏まえたうえで僕らはゲームを作るだけだと思います。
これからのゲーム業界。そして名越氏の今後について
4Gamer:
そろそろ頃合いですので,最後にお聞きしたいのですが,ズバリ,今後のゲーム業界はどうなるでしょう?
名越氏:
そうですね。個人的な見解でいえば,携帯ゲーム機のシェアはもっと伸びるんじゃないかと思っています。据え置き機は……もしかしたらさらにシュリンクしていく可能性があるんじゃないでしょうか。
4Gamer:
テレビの前に座ってゲームを遊ぶ……というスタイル自体が今や“重い”アクションなんですかね。
そうかもしれませんね。例えば,いわゆる体感系の入力装置にしても,それを存分に駆使できる空間(部屋)って,普通の家にはそんなにないわけですよね。特に日本では。一人暮らしの学生なんかを想定するとなおさらです。そう考えると,どうしても据え置き機には,そうした環境的な制限というものが出てきてしまう。
4Gamer:
なるほど。
名越氏:
一方で,携帯ゲーム機はそうした制限が少ないですから,家族みんなが自分のゲーム機を持っているだとか,そういう広がりが出てくる。セールスの余地が生まれてくるんですよね。まぁこれは,結局ゲームってどういう娯楽なんだ? という話にも繋がっていくんですけれど。
4Gamer:
近年,いわゆるハイデフ対応のテレビ自体は大分普及してきましたけど,「大画面で」とか「体感ゲーム」みたいな方向だと,どうしてもリビング限定という方向にはなりますよね。
名越氏:
そういう意味で言うと,僕が今一番気になっているのは,PLAYSTATION 3普及拡大の為の新たなカードをソニーさんが切ったときに,それが“ユーザーに響くかどうか”なんですよね。それによって,据え置き機というものの行く末の一端が垣間見えるのではないかと考えているんです。
4Gamer:
据え置き機が無くなってしまう未来というのも,ありえると思われますか?
名越氏:
本音を言うと,ゲームの作り手としては,やっぱりリッチな環境でゲームが作れ
なくなってしまうのは悲しいです。大金をかけた豪勢なゲームというのも,ゲームの発展/多様性という視点で考えるなら,不可欠だと思いますから。
いずれにせよ,PLAYSTATION 3の次の一手は,ゲームメーカー各社,皆が注目していると思いますよ。個人的にも是非大きく飛躍して欲しい。
4Gamer:
今年のE3では,PSP Goなども発表されましたが,ダウンロード販売についてはどうですか?
名越氏:
ダウンロード販売は,新たなビジネスモデルを構築する余地があるという意味で,とても期待しています。今はまだ小さな市場ですが,これがゲーム市場全体の2割くらいを占めるようになれば,ゲームの作り方もかなり変わってくるはずですから。
4Gamer:
なるほど。
それでは,今度こそ最後の質問です。今後の名越さんの方針について教えてください。
それは少し難しいなぁ(笑)。
ただ,僕の立場で一つ言えることがあるとすれば,それはセガという会社がこれからさまざまなチャレンジをしていくうえで,とりあえず「まず物事を動かす」ところまでは絶対に持っていかせようという点です。
4Gamer:
それはどういう意味ですか?
名越氏:
龍が如くは一つの良い例なのですが,何か新しい取り組みをする,新しい価値観を生むなど,「物事を動かす時」というのは,絶対に中途半端ではいけないと思うんですよね。なぜなら,最初に何か“動かす”時というのは,いろいろな摩擦を乗り越えなきゃいけないから。中途半端な力では,ぴくりとも動かないというケースが多いと思うからです。
物事って一度転がり始めると,後はコロコロと回り始めることも少なくないんですが,とかく最初に動かす時というのは,人もお金も時間も沢山かかる。大抵の場合は,そこをケチってしまって「動かない,動かない」と嘆くだけのケースが多いのではないかと。
4Gamer:
分かります。腹を決め切れるかどうか,みたいな話ですよね。
名越氏:
今の僕の役割っていうのは,何をやるべきかを見定めたうえで,それをきっちり「動くところまで持っていく」ことだと考えているんです。もちろん,それはそれで「動いたはいいけれど,やっぱり買ってもらえなかった」というリスクは残りますが,中途半端にお金と人を使って,「何も動かなかった」ということだけにはしたくない。
4Gamer:
しかし,それを実際に会社という組織の中でやっていくのはとても大変そうですね。
名越氏:
そうかもしれませんね。ただそれをやるには,合議制では難しくて,誰かが決めて行かなきゃいけない。そしてそこは,今は僕の視点でやってしまってもいいのかな,とも思っています。
少し前までは,いろいろと悩む部分も多かったのですが,最近は,「どうするべきか」や「どうあるべきか」が割とハッキリと見えてきたので,そこに向かって頑張っていきたいですね。
4Gamer:
分かりました。
本日はありがとうございました。
セガといえば,近年,いくつもの新ブランドを立ち上げるなど,大手メーカーのなかでも挑戦的な展開が目立つゲームメーカーの一つだが,そんなセガを名越氏はどういう方向に引っ張っていくのか。今回のインタビューは,そうしたセガ(コンシューマ部門)の方向性をうかがい知るという意味で,非常に有意義な内容であった。
ともあれ,世間的には兎にも角にも「龍が如く」のイメージが強い名越氏なのだが,インタビュー中,筆者が何よりも印象深かったのは,名越氏が想像を超えてロジカルな人物であったという点かもしれない。一人のゲームクリエイターとして,プロデューサーとして,あるいは経営レイヤーとして,話題によってさまざま視点で物事を語れるのは,現場から叩き上げた名越氏の大きな特徴だろう。ゲームというものをより広い視野で捉えている人物だと強く感じた次第だ。
今後,名越氏が率いるセガのコンシューマ部隊が,どんな作品を発表してくるのか。先日タイトル名がアナウンスされた「龍が如く4 伝説を継ぐもの」はもちろん,名越氏自身が手がけるというまだ見ぬ新作にも,大いに期待したい。
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