インタビュー
F.A.T.E.システムで世界は動く――「ファイナルファンタジーXIV:新生エオルゼア」クローズドβテスト・フェーズ1開始直前,吉田直樹氏インタビュー
今回,このβ1の開始を前に,本作のプロデューサー兼ディレクターを務める吉田直樹氏が,世界各国でメディアツアーを実施した。その始めとして,日本メディアに対してのプレゼンテーションも行われたので,その席で見せてもらったベンチマークトレイラーの内容やF.A.T.E.に関しての情報を含めて,いろいろとインタビューしてみた……と,その前に,プレゼンで見せてもらったベンチマークトレイラー,および各種ムービーをまずは確認してほしい。
「ファイナルファンタジーXIV:新生エオルゼア」公式サイト
FFXIVコミュニティサイト「The Lodestone」
新生される「ファイナルファンタジーXIV」という作品を再確認
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。最初にですが,今回の海外メディアツアーを開催する意図は,どこにあるのでしょうか。もちろん,間もなくクローズドβテストが始まるからということもあるとは思うのですが。
日本のメディアさんを始め,αテストを体験したプレイヤーさんは,ご存じだと思うのですが,旧FFXIVと新生FFXIVは何もかもが違います。
4Gamer:
そもそも,サーバーシステム(ゲーム内のワールドのことではなく)ですら,まったく新しいものということですし。
吉田氏:
そうです。でも海外のメディアの方からは,そうは言ってもExpansion(拡張)なんでしょ? と言われる場合もあります。だから,ここで一度,海外の方々にも,しっかりと旧FFXIVとの違い,そして新生FFXIVの素晴らしさをお見せしましょうというのが今回の趣旨になります。
4Gamer:
日本国内でも,そう思っている人はいたりしますからね。では,αテストでの体験や今回のプレゼン内容を踏まえて,もう一度,“新生”について,いろいろお聞きしたいと思います。まずは,旧FFXIVと新生FFXIVの違いを押さえるところから。
吉田氏:
旧FFXIVから新生FFXIVに作り直すにあたっては,クライアントの軽量化,高速化,ワールドレス化(※コンテンツファインダーによる複数ワールドからのパーティマッチング)を行っています。そして,グローバルスタンダードUIの導入と新しいマップへの変更ですね。簡単に言えば「全部」ですが。
4Gamer:
αテストのレポートでも書きましたが,クライアントの軽さにはかなり驚きました。また,新しいマップにおける景色の変化がとても良かったです。
吉田氏:
マップはとくにこだわった部分です。そこに行きたいと思えるかどうか。そして,見た目の設定だけではなく,行けばそこに何かがあり,ちゃんとゲーム体験が存在するというところを重視しています。
4Gamer:
クエストの導線がうまいというか,クエストを進めていくと,途切れることなくマップが広がっていって,キャラクターも育っていくという感じでした。この導線で,どのあたりまで成長を引っ張っていくのでしょうか。
吉田氏:
レベル50までいけますよ。
4Gamer:
おっと,即答ですね。少なくとも1クラスの最大レベルまでは,クエストを追っていくだけで上がっていくわけですか。
吉田氏:
メインストーリーとクエストを追えばそうなります。β1でもレベル25までの大部分が,サブクエストなどを利用して引っ張れます。β1はエリア限定公開なので,メインクエストの導線が一部途切れてしまいますが,レベル25で新しいダンジョンに行けるようになるので,そのままダンジョンに遊びに行っていただければ,(β1レベルキャップの)レベル35まで上がると思います。
4Gamer:
αテストでは,1クラス目があまりに軽快に成長するので,2クラス目以降が体感的に厳しいように感じたんですよね。リーヴやモンスター狩りをすればいいというのは分かっているんですが。
吉田氏:
2クラス目の育成に関しては,まだ確定はしていない部分もあるので,また話せるタイミングがくれば話します。βテストの結果を見つつになりますが,やはりアーマリーシステムに合った成長を考えようという話をしています。
4Gamer:
育成にも関係しますが,戦闘スピードもかなり速くなりました。ただ,それによって状況把握が大変になりそうというイメージがあります。例えば,チャットログの見落としで,コンテンツのクリアに失敗するような可能性ですが。
吉田氏:
新生FFXIVでは,そこはグラフィックスでちゃんと表現しているので,そんなにログを気にしなくても大丈夫でしょう。今回のβ1では,「屋敷」と呼んでいるダンジョンに行けるのですが,そのダンジョンのギミックやボスを体験すると,新生FFXIVの方向性がどういうものか分かりますよ。
4Gamer:
「屋敷」でのギミックがどんなものなのか,早く体験してみたいです。
吉田氏:
参考までに,屋敷ではタンクがいないと厳しいバランス調整をしています。そのため,剣術士がプレイできるようになっています。異邦の詩人に話しかけると剣術士が開放できるので,β1ではタンクをパーティに入れて挑んでみてください。
なおダンジョンのレベルデザインは,コンテンツファインダーの生死が掛かりますので,かなり慎重に調整しています。
4Gamer:
というと?
吉田氏:
難しすぎて初見のパーティでは歯が立たないとか,知識差が大きいとクリアできない,というダンジョンになってしまうと,ファインダーで集めたパーティじゃ攻略できないという話になって,使われなくなりますから。
4Gamer:
ああ,なるほど。結局,リンクシェル(以下,LS)メンバーとばかりになってしまうと。
吉田氏:
また,ボスで全滅したときにリトライまでの距離が長すぎると,全滅したくないですよね。そうなると初めてのダンジョンでは,どうしてもプレッシャーが強くなってしまう。変な話ですが,気軽に全滅できるデザインにしておかないと,ファインダーを使ってくれなくなります。そのあたりをβでプレイしてもらって,どんな反応があるのか楽しみです。
4Gamer:
では,頑張って全滅してみます(笑)。
吉田氏:
はい,お願いします(笑)。少し話が戻りますが,ほかにもグラフィックスで分かりやすくしたものに,フィールドを歩いているとモンスターの間に黄色の線が現れるというものがあります。これは対象のモンスターを攻撃すると,この線で結ばれたモンスターがリンクしますよというサインです。
4Gamer:
相手の数が最初から分かるんですか。
そもそもプレイヤーの戦力はパーティを組んでいる人数によって変わるので,モンスターもそれに合わせて戦力調整されます。でも,攻撃してみるまでモンスターの戦力が分からないというのは,なしにしたいんです。戦略が立てられないですから。これはオプションでオフにできるので,煩わしければオフにしてください。ですが,敵視のラインが次に誰にいくかも,頭上で見えるようになったので,ダンジョンなどで結構便利です。「FFXII」のターゲットラインの進化形みたいな感じですね。
4Gamer:
なるほど,確かにあれは分かりやすかったです。
吉田氏:
ちなみに戦闘スピードはα版よりさらに速くなったので,旧FFXIVのイメージだと心配されるかもしれませんね(笑)。
4Gamer:
え,どれくらい速くなったんですか。
吉田氏:
グローバルクールダウンを0.5秒縮めています。ですが,開発メンバーが1クラスをレベル20までクエストで上げていくと,その速さに慣れていました。だから,そんなに心配しなくていいのではと。おそらくαテストでは突然,旧FFXIVから新生FFXIVの環境に変わったので,ギャップが大きかったのかもしれません。
4Gamer:
ああ,それはありそうです。ところで,今回のプレゼンでは新生FFXIVの特徴として,MMORPGの要素が全部入りであることを強調されていました。
吉田氏:
はい。僕は欲張りなので,全部入れていますと(笑)。これだけバトル系のコンテンツに力を入れていると,ハウジングを導入しないタイトルも多いのですが,新生FFXIVではどっちもやります。ちゃんと住むことに関しても力を入れていこうと思っています。
4Gamer:
プレイヤーが生活感を得られるようなものですね。
吉田氏:
そうですね。ハウジングに関してはオープンβテストのあたりで,どんな風景で,どんなところに家が建てられるのか,負荷試験を兼ねて公開しようと思っているので,楽しみにしていてほしいです。
4Gamer:
期待しています。
吉田氏:
もちろんバトル系のレイドやアップデートコンテンツは,旧FFXIVと比較にならないくらいの物量を入れていこうと思っています。PvPもやります。とにかくMMORPGでできることは,全部やるつもりで臨みます。
明かされる新生FFXIVのストーリーと世界観
次元の狭間からあの人も?
4Gamer:
新生FFXIVのストーリーについては,どうでしょうか。旧FFXIVでは,衛星「ダラガブ」から出現したバハムートによって,「時代の終焉」が訪れたわけですが(関連記事)。
まず新生FFXIVのストーリーは,これまで遊んでいただいた旧FFXIVの設定が破綻しないようにしつつ,メインストーリーを一新しています。また,やはりFFシリーズのウリと言えば,美しいグラフィックスとストーリーです。とくに今回は,何度もリライトを重ねてストーリーを作りましたので,そこを楽しみにしていてください。
4Gamer:
先ほど軽さに驚いたと言いましたが,やはり,あのクオリティであの軽さだからこその驚きなんですよね。
吉田氏:
軽く美しい描画エンジンの賜物です。この短期間でクライアントを作り上げてくれたスタッフには,本当に感謝しています。僕らは,MMORPGのビジュアル面を革新していきたいと思っています。この頭身,クオリティ,そして丁寧さで,MMORPGが遊び続けられるというのが,新生FFXIVの最大のウリであり,特徴だと強く考えています。
ですが5年もすれば,一般的なグラフィックスのクオリティがもっと高くなり,当時の新生FFXIVは綺麗だと思ったけど……といったことになると思います。
4Gamer:
どこまでかは分からないですが,PCスペックはどんどん向上して,現在のハイエンドPCと言われるものが一般的になるときはくるでしょうね。
吉田氏:
そのとき,そう思われないように,グラフィックスに関しては今後も天井知らずで上げていくつもりです。
4Gamer:
それは,今よりも高いクオリティの設定を追加するということですか?
吉田氏:
そうです。たとえば,「The Elder Scrolls V: Skyrim」でMODを導入して,メチャクチャな高クオリティで遊んでいるプレイヤーが世界には結構いると思います。新生FFXIVでも,どんどん上のオプションを増やしていって,常に世界最先端のグラフィックスを維持していきたいと思っています。
4Gamer:
一方で下限はどうなるのでしょうか。
吉田氏:
もちろん下限は下限のままです。下限が上がってしまうとプレイできなくなる人が出てくるので,それを引き上げることはありません。ですが上限を上げることは,こちら的には問題がないので,何年経っても最新のゲームと比べて見劣りしないようにしたいと考えています。
4Gamer:
分かりました。では,ストーリーについて詳しく教えてください。
吉田氏:
新生FFXIVのストーリーに関してですが,三つの柱を想定しています。
一つは,惑星ハイデリンの謎です。プレイヤーの冒険の舞台となるのは,惑星ハイデリンの大陸の一つ,アルデナード大陸の北方に位置するエオルゼアという地域です。そもそもこの惑星ハイデリンは,意識と意思を持っていて,その結晶がマザークリスタルと呼ばれる存在に集約されています。プレイヤーは冒険者として,そのマザークリスタルに導かれて謎と脅威に立ち向かっていきます。
4Gamer:
星の命(エーテル)だったり,ハイデリンそのものが生命のような表現がこれまでもありましたが,意識や意思まで持っているんですね。
吉田氏:
はい。そしてこのハイデリンの意識と,ハイデリン全体に何が起こっているのかというのが大きなストーリーになります。実は,旧FFXIVでアシエンという名前が出てくるのですが,ここは全然回収されていないんです。そこが,この星の謎に迫る重要な役割を果たします。
4Gamer:
そういえば,結局あの正体は分からないままでしたね。
吉田氏:
ただ,これは新生FFXIVスタート時にクリアできるというものではなく,ずっとこの星の謎が,FFXIV全体を貫いていると思っていただければ。
4Gamer:
うーん,FFXIVの世界観そのものを表すものなんでしょうか。
バックグラウンドストーリーが近いですね。そして二つ目が,一番分かりやすいメインストーリーです。いよいよ侵略者「ガレマール帝国」とグリダニア,リムサ・ロミンサ,ウルダハの三都市グランドカンパニーの間で徐々に本格的な戦闘が始まります。プレイヤーは,冒険者として自由を勝ち取るために,この戦いに参加します。このストーリーが決着すると,まずは新生FFXIV最初のエンディングとなります。
4Gamer:
エンディングが用意されているんですね。
吉田氏:
RPGですし,コンシューマを楽しんでいるプレイヤーさんも入ってきますから,このストーリーをクリアすれば,一回やりきったなという感じにはなると思います。もちろんMMORPGなので,それで終わってしまうわけではないのですが。
4Gamer:
ハイデリンの謎だったりは,もっと大きな枠になりそうですね。
吉田氏:
そうです。ほかにもサイドストーリーだったりを残しつつ,アップデートでストーリーが追加されていきますが,ガレマール帝国との戦いは,いったんレベル50で大きな決着がつくようになっています。そのなかで,キーワードとして「光の戦士たち」が登場します。
4Gamer:
お,いくつかのFFシリーズで出てくる,お馴染みのワードですね。
吉田氏:
今回はMMORPGなので,複数形になっています。これは,ゲーム内のテキストとしても出てくる単語ですので,どんな意味を持つのか,今後いろいろお楽しみにということで。
4Gamer:
分かりました。
吉田氏:
そして三つの柱の最後が,召喚獣/蛮神との戦いです。メインストーリーでも,イフリートやガルーダが密接に絡んできますが,それだけに留まらず,旧FFXIVがそうであったように,次々に新しい蛮神がハイデリンに出現します。彼らは出現するたびに星の命を食い散らかすので,冒険者達は星の命が尽きるのを阻止するために召喚獣と戦います。
4Gamer:
召喚獣と言えば,バハムートがどうなったのかも気になるところです。
吉田氏:
そうですね。あれだけ大暴れしたバハムートはどこへ行ったのか。そしてルイゾワはどうなったのか,数多くの謎が残っています。それは,大迷宮バハムートというコンテンツを突き進んでいくと解けるようになっています。
とは言っても,新生FFXIVのサービス開始時に理解できるわけではなくて,レイドダンジョンはパッチで拡張されていきます。バハムートのダンジョンフェーズ2がきた! みたいな感じで進んでいくという形ですね。
4Gamer:
段階的に解明されていくわけですね。
吉田氏:
最終的に世界はなぜ新生したのか――作り直したからでしょ,と言われたらそれまですが(笑)――も,ちゃんとストーリーに落とし込んでいますので,伏線の回収は,このコンテンツで行っていくつもりです。
4Gamer:
なるほど。なんというか,スケール感の違うストーリーが,いろいろ絡み合っている感じですね。ちなみに惑星ハイデリンが舞台で,その中のエオルゼアということになるわけですが,今後,冒険の舞台はどうなるのでしょうか。
吉田氏:
Expasionということになるかもしれませんが,イシュガルドも伏線を回収しないといけませんし,アラミゴは奪還しないのかということもあります。いくらでも広げていく話はありますから,エオルゼア周辺だけではなく,それこそ「FFIV」みたいに月まで行ってもいいと思います。
4Gamer:
そういえば行きましたね(笑)。FFシリーズということで言えば,月もそうですが宇宙にも進出していますし,地底文明,機械文明もあって,SF的な要素もあんがい多いですね。魔導アーマーもその一つでしたし。
吉田氏:
ちなみに魔導アーマーは,もう開発が乗り回せるようになっていますね。
4Gamer:
おお,もうその段階なんですか。
吉田氏:
実装は終わりました。けっこうでかいですよ(笑)。
4Gamer:
さすがに,すぐには乗れないですよね?
吉田氏:
レベルは高くないとダメですね。ですが,超高難度コンテンツでまったく取れないという感じではありません。なので,そんなに心配しなくてもいいと思います。
4Gamer:
イメージ的に,やっぱり帝国との物語が関係してきますよね。
吉田氏:
帝国の乗り物ですからね。そのあたりから,なんとなく妄想してみてください。ストレートにシナリオを作っているので,「なるほど」と思っていただけると思いますよ。
4Gamer:
ストーリーの流れで乗れるというわけですか。
吉田氏:
いきなりポンと乗れてもつまらないですし,何故帝国のメカに乗れるのか,それが納得できる話にしているので,そこは楽しみにしていてください。
ほかにも,これまでお話させていただいているように歴代FFシリーズの要素を入れていきます。例えば,モーグリ,チョコボがいるのは当たり前ですし,クリスタルタワーがあり,アモンがいて,暗闇の雲もいる。あとケットシーのようなものもいますね。もう一つ,初公開になりますが「ギルガメッシュ」も登場する予定です。
4Gamer:
え,“あの”ギルガメッシュですか?
吉田氏:
はい(笑)。ギルガメッシュのストーリーは,連続クエストというかアップデートクエストで入れていこうと思います。
4Gamer:
ギルガメッシュってすごく特殊な存在じゃないですか。FFシリーズ(ナンバリング)の枠を越えて,同じ人物として出てくるキャラクターはこれだけ……のはずですよね。
吉田氏:
そうなんです。だから,FFXIVにもいるでしょ? と(笑)。彼とどう接してどんな報酬がもらえるのかというのは,ぜひ楽しみにしてもらいたいなと。
4Gamer:
やはりあの武器が……。
吉田氏:
どうでしょうね(笑)。これに限らず,長く運営していくなかで,カジノとしてゴールドソーサーをFFXIVならではのイメージで導入してみるなど,どんどんやっていこうと思っています。お知らせできるタイミングがきたら,順次お知らせしていきます。
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FINAL FANTASY XIV(旧)
- 関連タイトル:
ファイナルファンタジーXIV:新生エオルゼア
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