連載
Hearthstoneで勝ち抜くためにいますぐあなたが学ぶべきこと 第4回「メタゲームとはなんぞや」
デッキ構築について説明するという連載の性質上,ゲームの遊び方の説明は一切いたしません。すでに遊び方を理解している人が,対人で勝ち抜いていくためのデッキ作りのイロハを中心とした連載となりますので,ご了承ください。
Hearthstoneが正式リリースされてからすでに半年以上が過ぎた。そろそろ,思いどおりに動くデッキを組めるくらいに資産が集まってきたプレイヤーも少なくないのではないだろうか(すみません,原稿が遅れた言い訳です)。これまでの連載でも,いくつかのサンプルデッキを紹介してきたが,それらのリストをコピーするだけでなく,自分の組んだデッキでランクマッチで勝ちたい! というプレイヤーもいるだろう。
Hearthstoneカードリスト
連載第1回 デッキとマナの関係を理解しよう
連載第2回 初心者向けHero4名をご紹介
連載第3回 クセのあるHero5名をご紹介
近頃のHearthstone:日中対抗戦では,大将を任されながら最後に踏ん張り切れずに負けてしまい申し訳ありません……。そして,新拡張セットの「Goblins vs Gnomes」がついにリリースされましたね! 色々なデッキを試しつつ存分に楽しんでいますが,Snowchuggerの「チャガチャガチャガチャガ……」のボイスがくせになってきている今日この頃です。
ランクマッチのメタゲームとは?
まず,ランクマッチを勝ち抜くためには“メタゲーム”の意識が欠かせない。メタゲームとは,カードゲームをやってない人には聞き慣れない言葉だが,「ランクマッチにおける流行デッキを鑑み,そういった環境に対して勝率が高くなるようなデッキを構築,もしくは選択すること」だ。
このメタゲームという要素は,ランクマッチで上位に位置するプレイヤーほぼ全てが意識していると言っても過言ではなく,ランクマッチを勝ち抜くための必修科目ともいえる。実際に試合をする前から,既に情報戦という形で戦いが始まっているのだ。
では,メタゲームを意識するためにまず何をするべきなのかというと,まずは現環境の流行デッキを調べることだ。大半が英語の情報になってしまうのがややツラいところだが,海外の有名チームDKMRによる「Meta Report」が定期的に掲載されているので,そちらのランキングを見ることでHeroごとのメタゲームにおけるランキングを見ることができる。
具体的な各Heroごとのデッキ内容については,「HearthPwn」というサイトに様々なデッキリストが投稿されているほか,「HearthStone Top Deck」というサイトに,最近の大きな大会で使用されたデッキリストが載っているので,そちらを参考にすることでおおよそのデッキ内容はつかめるはずだ。また,国内のウェブサイトでは「Hearthstone Dojo」で定期的に翻訳や最近のHearthstoneニュースなどの情報が集められているので,そちらを参考にするのも非常にオススメだ。
The Meta Report #47 - IHEARTHU.com
HearthPwn - Hearthstone Database, Deck Builder, News, and more!
HearthStone Top Deck - Heroes of Warcraft Deck list Database
Hearthstone Dojo
もっとも現状では,新拡張である「Goblins vs Gnomes」が導入された直後であることもあり,これらの情報は今後大きく変動する可能性があるので,最新のメタレポートやそのほかの情報を逐一集めていくことも重要だ。最新の拡張が入った今に限らず,Hearthstoneのメタゲームは非常に速いスピードで移り変わっていて,1日経ったらメタゲームが変わってしまっていることも決して珍しくない。この素早く移り変わる情報を制する者こそが,Hearthstoneのランクマッチを制すると言っても過言ではないのだ。
ランクマッチで勝つためのデッキコンセプトとシナジー
さて,情報を制することも大変重要ではあるが,情報を鑑みて作っても,使い物にならないデッキを作ってしまってはお話にならない。デッキを作る前に,連載第1回で説明した「マナカーブ」と「デッキコンセプト」の概念について軽くおさらいしておきたい。
マナ域が高マナミニオンや高マナスペルに極端に偏ったデッキで勝ち続けられるほど,ランクマッチは甘くはない。もちろん,「アグロ」「ミッドレンジ」「コントロール」それぞれのアーキタイプによって多少のマナ域の偏りはあるが,最低でも序盤の相手の攻勢に耐えられるぐらいには1〜3マナ域のカードをデッキに採用するのが望ましいだろう。
また,自分のデッキに採用するカードを考える上で,それが自分のデッキのコンセプトに合致しているのか,またきっちりとカードごとのシナジー効果を出せるような構成になっているか,その2点についてもよく考えるべきだ。
例えば,Undertakerという非常に強力な1マナミニオンがいるが,Undertakerが強力なカードとして機能する条件として,Deathrattleの能力を持ったミニオンが必要になる。だが例えば,DeathrattleのミニオンがHaunted CreeperとHarvest GolemしかいないZooデッキに,Undertakerを採用する価値は果たしてあるだろうか?
新拡張が入る前には,環境を定義していると言っても過言ではなかった強力カード「Undertaker」。しかしその真価は,大量のDeathrattleミニオンと組み合わせて初めて発揮される |
Undertakerは,素の状態だと1/2という貧弱な能力であり,Deathrattleミニオンを出すことではじめて2/3,3/4という能力に成長する。だが例えば上記のようなZooデッキの場合,少なくとも2マナの時点で,デッキに1〜2枚しかないHaunted Creeperを引いてなければすぐに2/3には成長できず,1/2の弱い状態のまま相手に処理されてしまう可能性が高い。運よく2ターン目を生き延びたとしても,3ターン目にHaunted CreeperかHarvest Golemを引いてなければ1/2のままとなり,その能力に見合ったリターンを得られないことになる。
どうせ処理されてしまうのだからと,仮にその状態で出さなかったとしても,序盤に出して育てることで大きなアドバンテージを得るUndertakerの利点を殺していることになり,宝の持ち腐れになってしまう。ゆえに,Undertakerはそのようなデッキには採用すべきではなく,もしあえて採用するならば,1マナDeathrattleミニオンのLeper Gnomeや2マナDeathrattleミニオンのNerubian Eggといったミニオンを共に採用してDeathrattleミニオンを増やし,Undertakerがキチンと機能しやすい環境を整えてあげないとならない。
ランクマッチで勝つためのメタゲームを意識すると,さらにこの事情は複雑になる。仮にデッキコンセプトが明確であったとしても,それがランクマッチのメタゲームの事情に合っていなければ,その時点でそのコンセプトは"勝つためのデッキ"ではなく"ファンデッキ"となってしまうからだ。
例えば,Starving Buzzard,Unleash The Houndsが共にまだ2マナだった頃には,ランクマッチでこの鳥と犬の群れにいかに対処するかがメタゲームにおける最重要事項の一つであり,ミニオンを大量に並べるというコンセプト自体が非常にリスキーなものであった。ゆえに鳥犬全盛期の当時は,ミニオンを大量に並べることで力を発揮するSea Giantのようなカードは環境にマッチしておらず,ミニオンを多く並べてSea Giantを出す……といったコンセプトのデッキはほとんど使われることがなかった。鳥犬の弱体化に伴い,「Sea Giant Shaman」のようなSea Giantを活かすデッキも台頭してきたが,そのデッキコンセプトがメタゲームに合致しているかどうかについては熟慮すべき項目だ。
現在のトップメタ「Mech Mage」「Warrior Control」
最後に,現在のアグロ型のトップメタデッキといえる「Mech Mage」,そしてコントロール型のトップメタデッキである「Warrior Control」の2つのデッキについて触れてみよう。
Mech Mage:
カード名 | 枚数 | タイプ | コスト | Atk | HP |
---|---|---|---|---|---|
Frostbolt(Mage) | 2 | Ability | 2 | 0 | 0 |
Snowchugger(Mage) | 2 | Minion | 2 | 2 | 3 |
Fireball(Mage) | 2 | Ability | 4 | 0 | 0 |
Goblin Blastmage(Mage) | 2 | Minion | 4 | 5 | 4 |
Archmage Antonidas(Mage) | 1 | Minion | 7 | 5 | 7 |
Clockwork Gnome(Neutral) | 2 | Minion | 1 | 2 | 1 |
Cogmaster(Neutral) | 2 | Minion | 1 | 1 | 2 |
Annoy-o-Tron(Neutral) | 2 | Minion | 2 | 1 | 2 |
Mechwarper(Neutral) | 2 | Minion | 2 | 2 | 3 |
Harvest Golem(Neutral) | 2 | Minion | 3 | 2 | 3 |
Spider Tank(Neutral) | 2 | Minion | 3 | 3 | 4 |
Tinkertown Technician(Neutral) | 2 | Minion | 3 | 3 | 3 |
Defender of Argus(Neutral) | 1 | Minion | 4 | 2 | 3 |
Mechanical Yeti(Neutral) | 2 | Minion | 4 | 4 | 5 |
Piloted Shredder(Neutral) | 2 | Minion | 4 | 4 | 3 |
Fel Reaver(Neutral) | 2 | Minion | 5 | 8 | 8 |
Mech Mageデッキはその名の通り,新カードであるMech軍団の優秀なカードがこぞって採用されているのが大きな特徴だ。
序盤の動きを大きく左右するのが,2マナのMechミニオンMechwarperで,このカードはMechを召喚するためのマナコストを1軽減してしまうという恐るべき効果を持つ。
例えばこのカードが場にある場合,2マナのMechミニオンを2枚展開して,かつ1マナのMechミニオンを1体展開するといった芸当が,たった2マナを支払うだけで可能となり,序盤に一気に盤面のアドバンテージを取れる。
また,Mage固有のMechミニオンSnowchuggerも非常に優秀で,このカードで相手Heroを攻撃してフリーズさせ続けることで,序盤の強力な武器によるアタックを防ぐことができる。WarriorやPaladinなどの,武器に大きく依存したHeroにはこのフリーズ効果によるアドバンテージは絶大で,これらのHeroを相手にするときには最重要カードになると言っても過言ではない。
なおMageのもう一つの固有カードGoblin Blastmageも,4マナとは思えないハイスペックを持った優秀なミニオンで,序盤の攻勢を大きく加速するカードだ。
また,このデッキのフィニッシャーとなるArchmage Antonidasは,Mechミニオンから手に入るSpare Partsと非常に相性が良く,後半に相手のライフを一気に削り切るときの必須カードとして働いてくれる。
1マナで唱えられるSpare Partsは,どれを唱えてもFireballを手に入れられるが,とりわけ相性が良いのは,対象ミニオンを1ターンStealth状態にするFinicky Cloakfield。8マナ時にまずArchmage Antonidasを召喚し,残った1マナでFinicky Cloakfieldを唱えてAntonidasをStealth状態にしてしまえば,そのターン中にはほぼ除去されることがなくなる。その状態から次のターンまでAntonidasが生き残れば,もはや勝利は目前といっていいだろう。
もちろん,きっちりこのフィニッシュの形に持っていくためにSpare Partsを無駄遣いしないプレイングも大事で,特にコントロール型のデッキを相手にするときには,Antonidasによるフィニッシュの形を強く意識していきたい。
Warrior Control:
カード名 | 枚数 | タイプ | コスト | Atk | HP |
---|---|---|---|---|---|
Execute(Warrior) | 2 | Ability | 1 | 0 | 0 |
Shield Slam(Warrior) | 2 | Ability | 1 | 0 | 0 |
Whirlwind(Warrior) | 2 | Ability | 1 | 0 | 0 |
Armorsmith(Warrior) | 2 | Minion | 2 | 1 | 4 |
Cruel Taskmaster(Warrior) | 2 | Minion | 2 | 2 | 2 |
Fiery War Axe(Warrior) | 2 | Weapon | 2 | 3 | 2 |
Shield Block(Warrior) | 2 | Ability | 3 | 0 | 0 |
Death's Bite(Warrior) | 2 | Weapon | 4 | 4 | 2 |
Shieldmaiden(Warrior) | 2 | Minion | 6 | 5 | 5 |
Grommash Hellscream(Warrior) | 1 | Minion | 8 | 4 | 9 |
Acolyte of Pain(Neutral) | 2 | Minion | 3 | 1 | 3 |
Big Game Hunter(Neutral) | 1 | Minion | 3 | 4 | 2 |
Harrison Jones(Neutral) | 1 | Minion | 5 | 5 | 4 |
Sludge Belcher(Neutral) | 2 | Minion | 5 | 3 | 5 |
Sylvanas Windrunner(Neutral) | 1 | Minion | 6 | 5 | 5 |
Baron Geddon(Neutral) | 1 | Minion | 7 | 7 | 5 |
Dr. Boom(Neutral) | 1 | Minion | 7 | 7 | 7 |
Ragnaros the Firelord(Neutral) | 1 | Minion | 8 | 8 | 8 |
Alexstrasza(Neutral) | 1 | Minion | 9 | 8 | 8 |
上記のデッキリストは,NA/EUの両サーバーでLegendランク1位に到達したSjowの,Warrior Controlのリストとなる。Warrior Controlのコンセプト自体はこれまでのWarrior Controlとそれほど変わっておらず,序盤はアーマーを稼ぎつつ武器や除去スペルなどで凌ぎ,終盤にGrommash HellscreamとDeath's BiteやCruel Taskmasterとのコンボでフィニッシュを決めるといった形だ。そのデッキパワーを大きく加速したのが,新たに採用されたDr. Boom,Shieldmaidenといったカード達だ。
Dr. Boomは,自身も7マナ7/7というスペックを持ちながら,召喚時に1/1ミニオンのBoom Botを2体召喚するといった能力を持っており,デッキの種類を問わずその性能を発揮するハイスペックカードだ。
しかもこのBoom Botはただの1マナミニオンではなく,破壊時に相手Heroもしくは相手ミニオンをランダムに選び,1〜4のダメージを与えるという効果を持っており,この効果は盤面のコントロールにせよ相手のライフを削るにせよ,万能に働いてくれる。Warrior自体と大きなシナジーがあるカードではないのだが,Dr. Boomの採用によりWarrior Controlがより一層強力になったのは,疑いのない事実だ。
また,ShieldmaidenはWarriorのカードと強力なシナジーを持っており,アーマーを増やす効果が場面を問わず有効に働いてくれる。召喚時の+5アーマーという能力も,アグロデッキの攻勢を止める手立てとしても有効に働くが,7マナ時であればShield Slamとのコンボも可能。自身の5/5というスペックも,召喚時の効果を考えれば合格点であり,今後のWarrior Controlには必ず入ってくるカードになるだろう。
メタゲーム上位のデッキに戦えるデッキを使おう
以上,アグロ型の「Mech Mage」,コントロール型の「Warrior Control」の2つのトップメタデッキを紹介してきた。勝つためには,これらのデッキを使うことも一つの回答だが,もし別のデッキを使う場合は,少なくともこれらのデッキに対して“勝負になる”デッキでなければ話にならない。ランクマッチのデッキ構築では,メタゲームで上位のデッキに対して勝つことができるか,ということをまず考えねばならず,その条件を満たしているかどうかをよく考えてデッキを組んでいくべきだ。
とはいえ,メタゲーム上位の全てのデッキに有利になるようなデッキは基本的にほぼ存在せず,何かに対するマッチアップを有利にするならば,違う何かに対するマッチアップを犠牲にしなければならない。もちろん,多くのデッキに対して対応できる形が理想ではあるが,下手にそれを意識しすぎるとどのマッチアップでも有利をとれない器用貧乏なデッキになってしまいがちなので,ある程度は割りきって「このマッチアップではほぼ負けない」くらいの仕上がりを目指したほうが良いだろう。
とはいえ,もちろんデッキ選択・構築だけで勝負が決まるわけではなく,実際にはデッキを組んだ後の実戦でのプレイングも非常に重要であり,開始時のマリガンやボードアドバンテージの取り方などは特に重要な項目である。次回の記事では,それらのテクニックについて紹介していきたいと思う。
著者紹介:ルネ
カードゲームやボードゲームの攻略・レビュー記事をメインに担当するフリーライター。第1回ドミニオン世界選手権優勝,第4回ドミニオン日本選手権優勝,その他複数のアーケードカードゲームで全国ランキング入りなどの経歴を持つ。Hearthstoneでは,AmericaサーバのLegendランク18位までの到達,およびGAMERS LEAGUE Season#1でSemifinal進出経験あり。主にアナログのカードゲーム/ボードゲームが大好物だが、コンシューマ,アーケードからソーシャルゲームまで,ゲームと名がつけば何でも食いつく雑食系。
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