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「GeForce GT 1030」と「Radeon RX 550」直接対決。新世代のエントリー市場向けGPUをゲーマー目線でチェックする
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印刷2017/05/27 00:00

レビュー

新世代のエントリー市場向けGPUをゲーマー目線でチェックする

GeForce GT 1030
(ZOTAC GeForce GT 1030 2GB 64bit GDDR5)
Radeon RX 550
(ASUS RX550-4G)

Text by 宮崎真一


画像集 No.002のサムネイル画像 / 「GeForce GT 1030」と「Radeon RX 550」直接対決。新世代のエントリー市場向けGPUをゲーマー目線でチェックする
ZOTAC GeForce GT 1030 2GB 64bit GDDR5(型番:ZTGT1030-2GD5LP / ZT-P10300A-10L)
メーカー:ZOTAC International
4Gamer購入価格:1万238円(税込)
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RX550-4G
メーカー:ASUSTeK Computer
問い合わせ先:テックウインド (販売代理店) info@tekwind.co.jp
実勢価格:1万4500〜1万5700円程度(※2017年5月27日現在)
 2017年4月20日にAMDが「Radeon RX 550」(以下,RX 550)を市場投入し,エントリー市場のGPUマクロアーキテクチャをPolaris世代へ引き上げたかと思えば,それに対抗するかのようにNVIDIAは5月17日付けで「GeForce GT 1030」(以下,GT 1030)を市場投入し,エントリー市場向けGPUのアーキテクチャをPascal世代へ引き上げてみせた。
 Intel製CPUやAMD製APUが持つ統合型グラフィックス機能の性能向上を受けて,AMDもNVIDIAもここ数年はエントリー市場向け単体GPUにはあまりやる気を見せていなかったわけだが,突如として最新仕様のGPUを揃えてきたことで,市場は突然の賑わいを見せつつある。

 その状況を受けて4Gamerでは今回,GT 1030搭載のZOTAC International製カード「ZOTAC GeForce GT 1030 2GB 64bit GDDR5」(型番:ZTGT1030-2GD5LP / ZT-P10300A-10L,以下 ZOTAC GT 1030)を独自に,RX 550搭載のASUSTeK Computer(以下,ASUSTeK)製カード「RX550-4G」をAMDの日本法人である日本AMDからそれぞれ入手した。
 これらエントリー市場向けGPUは,果たして,ゲームをプレイできる最低限の性能を持っているのか。今回はその点に迫ってみたい。


「GP107の半分」を搭載するGT 1030と,完全新作でメモリ4GB対応のRX 550


 まずは,GT 1030とRX 550がどのようなGPUか確認しておこう。NVIDIAもAMDも,このクラスのGPUについて上位モデルと同等レベルの説明を加えることはしないため,一部で筆者の推測が入ることを先にお断りしておきたい。

GP108 GPU。ダイ上の刻印は「GP108-300-A1」となっていた
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 まずはGeForce 700シリーズ以来のエントリー市場向けGeForceとなるGT 1030からだが,搭載するGPUコアは「GP108」。デジタルノギスを用いた計測だとサイズは7.96×9.36mm,つまり74.5mm2だ。GeForce GTX 1050シリーズが採用する「GP107」コアのダイサイズは公式に132mm2だと明らかになっており,かつデジタルノギスを用いた計測は実際よりも大きな数字になることを踏まえると,GP108のサイズはほぼ半分と述べていいだろう。
 GP107とGP108はいずれもSamsung Electronicsの14nm FinFETプロセス技術を用いて製造されるという共通性もあるので,ことによるときっかり半分という可能性もある。

GP108のブロック図(※GP107のブロック図を基にした筆者推測)。ROPユニットの数は公開されていないが,「GP107の半分」だとすれば,16基と考えるのが妥当だろう
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 Pascalアーキテクチャを採用するため,総数128基のシェーダプロセッサ「CUDA Core」が,スケジューラやロード/ストアユニット,超越関数ユニット,L1キャッシュ,テクスチャユニット,そしてジオメトリエンジン「PolyMoprh Engine 4.0」とセットになって演算ユニット「Streaming Multiprocessor」(以下,SM)を成す点は変わらない。GP107の場合,このSMを3基ひとまとめにした“ミニGPU”としての「Graphics Processing Cluster」(以下,GPC)を2つ搭載するが,GT 1030のGP108では,GPCが1基のみとなる。ちょうどGP107を半分にした,総CUDA Core数384基のGPUというわけだ。

CUDA SDKの「DeviceQueryDrv.exe」を実行したところ。GT 1030のL2キャッシュ容量は512KBで,これはGeForce GTX 1050シリーズの半分だ
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 さらに,上のスクリーンショットでも分かるとおり,メモリインタフェースはGeForce GTX 1050比で半分となる64bitしかない。GDDR5のメモリクロックも6008MHz相当(実クロック1502MHz)なので,メモリバス帯域幅はわずかに48GB/sである。これは,かつてエントリー市場向けGPUとして人気を博した「GeForce GTX 750」(以下,GTX 750)の80GB/s比べても約6割という計算だ。

GT 1030のコアクロックをAfterburnerで追ってみると,テスト中は1695MHzまで上がった
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 GPUの動作クロックはベース1227MHz,ブースト1468MHz。Low Profile対応というリファレンスデザインに近いカード設計で,かつ動作クロックもリファレンス相当のZOTAC GT 1030を用い,後述するテスト環境でMSIのオーバークロックツール「Afterburner」(Version 4.3.0)からスコアを追ってみたところ,動作クロックは最大1695MHzに達していた。Pascal世代のGPUらしく,クロックはかなり高い。
 特徴という点では,TDP(Thermal Design Power,熱設計消費電力)が30Wと相当に低いことと,DisplayPort 1.4およびHDMI 2.0bに対応しており,4K/60HzやHDR(High Dynamic Range)に対応していることも見逃せないトピックと言えるだろう。PCI Express x4接続という点も,特記しておく必要があると思う。

RX 550 GPU。ダイ上に「215-0904018」の刻印を確認できる
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 一方のRX 550は,「Polaris 12」コアを採用するGPUだ。ほかのRadeon RX 500シリーズは基本的にRadeon RX 400シリーズのリフレッシュ(≒リネーム)だが,本製品だけは完全新作となる。
 デジタルノギスによる実測ダイサイズは8.84×12.08mm。公式には101mm2なので短辺長辺とも少しずつ短いはずだが,いずれにせよGT 1030と比べると1.5倍弱くらいの大きさという理解でいいのではなかろうか。

 GPUアーキテクチャは第4世代「Graphics Core Next」(以下,GCN)である「GCN 1.3」に基づいており,上位モデルと同じく,シェーダプロセッサ「Stream Processor」64基がキャッシュやレジスタファイル,スケジューラ,テクスチャユニットなどとセットになって演算ユニット「Compute Unit」を構成する仕様になっている。RX 550の場合は,8基のCompute Unitが,ジオメトリプロセッサやラスタライザ,それに4基のレンダーバックエンドと集まった“ミニGPU”的な「Shader Engine」を構成する仕様だ。
 Shader Engineは1基なので,シェーダプロセッサの総数は「64×8×1」で512基となる。

Radeon SettingsからRX 550のハードウェア情報を表示させたところ。「コアのクロック」はブースト最大クロックの1183MHzとなっている
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 グラフィックスメモリ容量は公式だと2GBなのだが,市場では2GBだけでなく,4GB搭載するカードも流通している。日本AMDから届いたRX550-4Gもそんなグラフィックスメモリ容量4GB版カードの1つだ。
 リファレンスのメモリクロックは7000MHz相当(実クロック1750MHz)。メモリインタフェースは128bitあるので,メモリバス帯域幅は112GB/sと,実にGT 1030比で倍以上に達している。

 GPUコアクロックはベース1100MHz,ブースト最大1183MHz。Radeon RX 500シリーズの中では抑え気味だ。公称典型消費電力は50Wで,これもシリーズ上位陣と比べるとかなり低い。

 表1は,ここまで紹介してきた2製品の主なスペックを,従来のエントリー市場向けGPUのうち,国内における搭載カード流通量の多いGTX 750,そして「GeForce GT 740」(以下,GT 740)とともにまとめたものである。

※確度にかかわらず,100%の確証を得られない部分には「?」を加えました
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Low Profile仕様ですっきりしたZOTAC GT 1030と,しっかり作り込んであるRX550-4G


 GPUの仕様を一通り押さえたところで,次に入手したカードを見ていこう。


■ZOTAC GT 1030


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 ZOTAC GT 1030は,実測で約173mm(※突起部除く)というカード長を持つ,Low Profile対応の製品である。GPUクーラーは1スロット仕様で,ヒートシンクに40mm角相当のファンを埋め込んだ,小型のものだ。
 そのクーラーはカード後方へ実測約3mmはみ出ており,基板長自体は同170mmとなっている。

GPUクーラーは,ヒートシンクにファンを埋め込んであるという,とてもシンプルな構造だ。前段でGT 1030はPCI Express Gen.3 x4接続だという話をしたが,見てのとおり,物理的なインタフェースはPCI Express x16だ
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外部出力インタフェースはHDMI 2.0b(Type-A)×1,Dual-link DVI-D×1という構成(左)。カードは1スロット仕様となる(右)
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GPUクーラーを取り外したところ。クーラーのヒートシンクはメモリチップと触れていなかった
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 GPUクーラーの取り外しはメーカー保証外の行為となるが,今回はレビューのために取り外してみると,電源部は2フェーズ構成で,MOSFETはUBIQ Semiconductor製のN-Channelタイプ「QM3092M6」と「QM3098M6」を組み合わせたものになっていることが分かる。
 搭載するメモリチップはSamsung ElectronicsのGDDR5「K4G80325FB-HC28」(7Gbps品)だった。メモリクロックはリファレンスどおりの6008MHz相当なので,チップの仕様上はマージンがあることになる。なお,メモリチップは8Gbit仕様のため,2枚で容量2GBという計算だ。

ZOTAC GT 1030の電源部(左)。QM3092M6とQM3098M6のすぐ近くにはuPI Semiconductor製DC/DCコントローラ「uP1542S」も見える。右は搭載するメモリチップだ
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■RX550-4G


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 次にRX550-4Gだが,カード長は実測約189mm(※突起部除く)。ZOTAC GT 1030と比べると約16mm長い計算になる。GPUクーラーは2スロットタイプで,ヒートシンクに80mm角相当のファンを埋め込んだ,シンプルな構成である。
 ファンはASUSがエントリークラスのグラフィックスカードで積極的に採用している「防塵ファン」(Dust-proof fan)仕様で,これにより,製品寿命はリファレンスデザインに比べて25%向上しているという。

ZOTAC GT 1030とは異なり,カードはLow Profile対応ではなく,クーラーも比較的大きい。標準的なエントリー市場向けグラフィックスカードのデザインだと言える
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外部出力インタフェースはDisplayPort 1.4×1,HDMI 2.0b(Type A)×1,Dual-Link DVI-D×1と充実(左)。右はカードを側面から見たカットだ
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GPUクーラーを取り外したところ。メモリチップと電源部はヒートシンクに密接しておらず,ファンのエアフローで冷却するようになっているのが分かる
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 こちらもGPUクーラーの取り外しはメーカー保証外の行為となることを断りつつ,レビューために取り外して基板を見ていこう。

 というわけで基板だが,電源部は4+1フェーズ構成で,かなりしっかりした作りなのが見てとれる。GPU側ではフェーズごとにUBIQ Semiconductor製のN-Channel MOSFET「QM3056M6」と「QM3054M6」が組み合わせ,そこにASUSが独自に選定した高耐久のコンデンサやチョークを組み合わせた「Super Alloy Power II」仕様だ。基板上では,さらにもう1段分のMOSFETペアを搭載できる空きパターンも確認できる。
 補助電源コネクタの空きパターンもあるので,電源周りを強化したクロックアップモデルを視野に入れたデザインなのかもしれない。

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4フェーズ構成の電源部。MOSFETはQM3056M6とQM3054M6で,1段分の空きパターンがある。ASUS独自の電力制御用カスタムチップ「EPU」の姿も確認可能だ
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こちらはメモリ用の電源部だが,MOSFETはやはりQM3056M6とQM3054M6だった。近くには補助電源コネクタ用の空きパターンも見られる

搭載するメモリチップ。チップ上の刻印は「6YA47 D9SXD」だ
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 搭載するメモリチップはMicron TechnologyのGDDR5「MT51J256M32HF-70」(7.0Gbps品)だった。RX550-4Gのメモリクロックはリファレンスどおり7000MHz相当なので,メモリチップのマージンは用意されていないことになる。
 こちらも8Gbit仕様なので,4枚で容量4GBを実現する計算である。


GTX 750およびGT 740との比較から,エントリー市場向けでの立ち位置を探る


 テストのセットアップに入ろう。今回,比較対象としては,先の表1でも登場したGTX 750とGT 740を用意した。GTX 750はゲームもできるエントリーモデルとして人気が高かったが,主に本製品との比較を行うことになる。
 ただ,GTX 750搭載カードとして用いたGIGA-BYTE TECHNOLOGY製「GV-N750OC-1GI」は,メーカーレベルで動作クロックが引き上げられたクロックアップモデルであるため,Afterburnerで動作クロックをリファレンスレベルにまで下げて利用している。GTX 750はブーストクロックの設定があり,GV-N750OC-1GIはオリジナルクーラーを搭載するので,リファレンスデザイン採用モデルと比べるとスコアは高くなるはずだが,「そもそもGTX 750のリファレンスカードは日本市場で流通していない」ということでご容赦を。

 そのほかテスト環境は表2のとおり。テストに用いたグラフィックスドライバ「GeForce 382.33 Driver」「Radeon Software Crimson ReLive Edition 17.5.2」は,いずれもテスト開始時点における最新版だ。

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 テスト方法は4Gamerのベンチマークレギュレーション19.0に準拠。ただし,「ファイナルファンタジーXIV:蒼天のイシュガルド ベンチマーク」(以下,FFXIV蒼天のイシュガルド ベンチ)に代わり,新しく公開された「ファイナルファンタジーXIV:紅蓮のリベレーター ベンチマーク」(以下,FFXIV紅蓮のリベレーター ベンチ)を行うことにしたので,この点はお知らせしておきたい。
 具体的になテスト方法はFFXIV蒼天のイシュガルド ベンチと同じで,1回だけ実行し,そのとき得られたスコアを採用しつつ,ログとして出てくる平均フレームレートも取るというものになる。

 GT 1030とRX 550がともにエントリー市場向けということもあり,テスト解像度は1920×1080ドットと1600×900ドットの2つ,グラフィックス設定プリセットは描画負荷の低いほうを選択した。ただ,FFXIV紅蓮のリベレーター ベンチは,ユーザーの需要を考慮し,「標準品質(デスクトップPC)」に加えて,「最高品質」でもテストを行うことにしている。

 あとこれはいつもどおりだが,CPUの自動クロックアップ機能「Intel Turbo Boost Technology」は,テスト状況によって挙動が変わる可能性を排除すべく,マザーボードのUEFI(≒BIOS)から無効化している。


GT 1030はメモリ周りの制約が足を引っ張ることがある。RX 550はおおむねGTX 750相当の性能を発揮


 テスト結果を順に見ていこう。
 グラフ1は「3DMark」(Version 2.3.3693)のDirectX 11テスト「Fire Strike」から,総合スコアをまとめたものになる。
 正直,いきなり不思議なスコアなのだが,GT 1030はより描画負荷の高い「Fire Strike Extreme」でGTX 750に対して約110%,逆に描画負荷の低い“無印”Fire Strikeだと約91%というスコアになっている。高負荷条件だと,「グラフィックスメモリ容量1GB」が足枷となってスコアを落とし,結果としてGT 1030がスコア差を詰めるものの,純然たるGPU性能ではGTX 750に及ばない,といったところか。
 一方のRX 550は,より負荷の高いFire Strike ExtremeでGTX 750に対し約20%高いスコアを示し,無印では互角という,「ああ,素性としてGTX 750より上なのだな」と納得できる結果になっている。

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 続いてグラフ2は,同じく3DMarkからDirectX 12のテストである「Time Spy」の総合スコアをまとめたものだ。
 最新グラフィックスAPIを用いてのテストということもあり,旧世代のGPUは大きくスコアを落としている。その点でGT 1030とRX 550には十分な価値を認められるが,主役の2製品で比較するとRX 550のほうがGT 1030と比べて約14%高いスコアを示している点も触れておきたい。

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 グラフ3は「Far Cry Primal」のテスト結果である。ここでGT 1030はGTX 750の85〜88%程度,RX 550はほぼ互角で,両者の間にはかなりのスコア差が付いた。

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 「ARK: Survival Evolved」(以下,ARK)のテスト結果がグラフ4である。これまでも筆者はARKに対するRadeon Softwareの最適化不足を指摘してきたが,今回もその影響を感じる結果が出ている。ご覧のとおり,GT 1030がGTX 750に迫るスコアを示す一方,RX 550はそのGT 1030に対して92〜97%程度に沈んでしまっている。

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 打って変わってRX 550が抜きん出た形となったのがグラフ5の「DOOM」である。VulkanやDirectX 12といったローレベルAPIに強いRadeonと,エントリー市場向けらしからぬグラフィックスメモリ容量4GBの効果もあって,RX 550は比較対象を圧倒している。対GT 1030ではなんと50%以上も高いスコアだ。1600×900ドットで,4Gamerが合格ラインとする平均60fpsをRX 550が唯一クリアしている点にも注目したい。

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 DirectX 11世代のタイトルながら,グラフィックスメモリ負荷の高いタイトルということで,グラフ6の「Fallout 4」も,DOOMと似たスコア傾向になっている。もちろんDOOMほど極端ではないものの,RX 550は対GT 1030で116〜117%程度,対GTX 750で108〜111%という数字だ。逆にGT 1030の立場から見ると,そのスコアは対RX 550で約86%,対GTX 750で93〜96%程度となっている。

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 グラフ7,8はFFXIV紅蓮のリベレーター ベンチの結果だが,ここではGTX 750がトップに立った。FFXIV紅蓮のリベレーター ベンチはGeForceへ最適化されたタイトルなので,ある意味妥当なところだが,それでも,RX 550がGTX 750の95〜99%程度というスコアを示しているのは評価すべきだろう。
 GT 1030はそんなRX 550の79〜96%というスコアで,とくに「標準品質」のスコアが低く見えるが,これはおそらく“逆”で,「最高品質」だとグラフィックスメモリ容量の制約により,GTX 750がスコアを伸ばせていないのだと考えている。

※グラフ画像をクリックすると,平均フレームレートベースのグラフを表示します
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 最後に“メモリ喰い”で知られるDirectX 12タイトル「Forza Horizon 3」だが,GTX 750とGT 740はグラフィックスメモリ容量1GBという仕様がゲームの最低動作条件を満たせず,実行できなかった。これだけでも新世代エントリーGPUの価値はあると言えるが,テスト結果はグラフ8のとおりで,RX 550の独擅場である。グラフィックスメモリ容量4GBのラインナップが存在するという事実は,RX 550というGPUの持つ,大きなアドバンテージということになるだろう。

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消費電力の低さが光るGT 1030。RX 550もGTX 750未満


 エントリー市場向けらしく,TDPもしくは公称典型消費電力が抑えられているGT 1030とRX 550だが,実際にはどの程度だろうか。今回も,ログの取得が可能なワットチェッカー「Watts up? PRO」を用い,システム全体の消費電力で比較を行ってみたい。
 テストにあたってはゲーム用途を想定し,無操作時にもディスプレイの電源がオフにならないよう指定したうえで,OSの起動後30分放置した時点を「アイドル時」,各アプリケーションベンチマークを実行したとき,最も高い消費電力値を記録した時点を,タイトルごとの実行時とすることにした。

 その結果がグラフ10だ。まず,アイドル時はGT 1030が若干低めで,それ以外はまったくの横並び。一方の各アプリケーション実行時は,GT 1030が明らかに低い。対RX 550で10〜22W,対GTX 750で21〜36Wという数字は,このクラスのGPUにとって大きい。
 もっとも,RX 550も決して悪くない。対GTX 750で6〜21W低いため,14nm FinFETプロセス技術を採用する効果は十分に確認できる。

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 最後にGPUの温度も確認しておきたい。3DMarkの30分間連続実行時点を「高負荷時」とし,アイドル時ともども,TechPowerUp製のGPU情報表示ツール「GPU-Z」(Version 2.1.0)からGPU温度を取得した結果がグラフ11となる。
 テスト時の室温は24℃。システムはPCケースに組み込まず,いわゆるバラック状態で机上へ置いている点と,そもそもGPUごとに温度センサーの位置も温度管理の方法も,さらにはクーラーすら異なるため,横並びの比較に意味はない。そのため,あくまでもGT 1030およびRX 550のGPUクーラーがしっかり冷却できているかどうか判断する程度に留めてほしいが,アイドル時の温度は30℃台中盤で,まったく問題なし。高負荷時の温度は70℃強と,エントリー市場向けとしてはやや高いものの,問題視するほでもない。相当にコンパクトなPCケースで導入するときは少し配慮したい,といったところだ。

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 なお,動作音は筆者の主観であることを断ったうえで述べると,GT 1030のほうが静音性は高い印象を受けた。ただ,ファンの口径が小さいため,風切り音の周波数が若干高く,それを耳障りと感じる人がいるかもしれない。
 一方のRX 550は,GT 1030と比べて静音性に秀でているとは言えないものの,PCケースに入れてしまえばさほど気にならないレベルである。


GT 1030は「ゲーマー向け」と言い切るにはやや苦しい。RX 550の課題は一にも二にも店頭価格


ZOTAC GT 1030の製品ボックス
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 まとめよう。GT 1030は,登場の仕方がいかにも「RX 550対抗」という感じだったので,そう意識した人もいると思うが,3DMarkのFire Strikeや,より描画負荷の低いテスト条件におけるRX 550とのスコア差を鑑みるに,純然たる性能では一段下という評価が正しい。

 もちろん(今回用意できていない)RX 550のグラフィックスメモリ容量2GB版と比較すれば,ベンチマークスコア差はもう少し詰まると思われる。ただいずれにせよ,GT 1030の性能は純然たるゲーム用としては少し力不足と言わざるを得ない。グラフィックスメモリ消費の多い,最近のAAAタイトルだと露骨にフレームレートが落ち,グラフィックス設定を下げてもプレイアブルなフレームレートが得られないケースがある点も気になる。
 その意味でGT 1030は,オンラインゲームなどを主目的とした,たとえば「標準品質ならFFXIV紅蓮のリベレーター ベンチの解像度1920×1080ドットでスコア7000オーバーを達成できるGPU」くらいに解釈するのが正解ではなかろうか。

 北米市場におけるメーカー想定売価が69ドル(税別)のところ,税込の実勢価格は9500〜1万1000円程度(※2017年5月27日現在)。あと数千円足せば「GeForce GTX 1050」(以下,GTX 1050)カード――3DMarkのFire Strikeでスコア6000超を叩き出せる――を買えてしまうので,ゲームプレイを大前提にすると,わざわざ指名買いするほどの魅力は欠いている。
 GT 1030は,あくまで主用途を4K/60HzなりHDRなり,最新仕様のビデオ再生なりといったところに置く人が,カジュアルにゲームも嗜むときに選ぶ,低コストかつ低消費電力のGeForceということになるはずだ。

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RX550-4Gの製品ボックス
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 対するRX 550は,ざっくり「低消費電力版GTX 750+α」程度の3D性能を持ち,そこに機能面のプラスもあるGPUだと言える。もちろん,グラフィックス設定や解像度を下げるといった,エントリークラスのGPUらしい制約は入るのものの,「とりあえずゲームをひととおりプレイできる」レベルの性能を持つのは強みだ。
 とくに今回テストしたRX550-4Gのようなグラフィックスメモリ容量4GBモデルなら,グラフィックスメモリ負荷の高いタイトルでも極端にフレームレートが低下したりする心配もほぼ無用というのは大きい。

 一方で,最大の問題は価格である。グラフィックスメモリ容量2GB版RX 550カードの北米市場におけるメーカー想定売価が79ドル(税別)のところ,グラフィックスメモリ容量2GB版の実勢価格は1万800〜1万3000円程度,同4GBだと1万3800〜1万5000円程度(※いずれも2017年5月26日現在)と,かなり高い。とくに後者の価格は,一部のGT 1050カードより高価というレベルだ。
 補助電源コネクタが不要という点では変わらないので,「低消費電力のエントリー市場向けGPU」として人気が出てくるには,グラフィックスメモリ容量4GBモデルがせめて税込1万2000円を割るくらいになる必要があると思うが,どうだろうか。

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 いずれにせよ,機能面の進化から置き去りにされてきたエントリーGPUの市場に,トップ2社から最新仕様のGPUが出てきたことは,素直に歓迎したい。

NVIDIAのGT 1030製品情報ページ

Radeon Technologies GroupのRX 550製品情報ページ(英語)


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