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「Ryzen 5 2400G」「Ryzen 3 2200G」レビュー。デスクトップPC向けRaven Ridgeはゲーマーの選択肢になるか?
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印刷2018/02/12 23:00

レビュー

デスクトップPC向けRaven Ridgeはゲーマーの選択肢になるか?

Ryzen 5 2400G,Ryzen 3 2200G

Text by 米田 聡


 2018年2月12日23:00,AMDは,開発コードネーム「Raven Ridge」(レイヴンリッジ)と呼ばれてきた新世代APUのデスクトップPC向けモデルとなる「Ryzen 5 2400G」「Ryzen 3 2200G」を正式に発表した。国内価格は順に1万9800円(税込2万1384円),1万2800円(税込1万3824円)となっている。

Ryzen 5 2400G(左)とRyzen 3 2200G(右)。いずれも製品ボックスに「Wraith Stealth」クーラーが付属する
Ryzen

 デスクトップPC向けRaven Ridgeには,「Ryzen Desktop Processor with Radeon Vega Graphics」という,少々長ったらしい正式名称が与えられているが,それを見ると分かるように,本製品は,CPUのRyzenとGPUのRadeon Vegaを合体させたAPUとなる。最新世代のCPUコアと最新世代のGPUコアを統合する,史上初のAPUということで,登場を心待ちにしていた読者も多いことだろう。

AMDから届いた評価キット(の化粧箱)
Ryzen
 2月8日の記事でお伝えしているとおり,4Gamerでは今回,AMDからレビュワー向けの評価キットを入手しているので,これを使い,Ryzen 5 2400GとRyzen 3 2200Gのゲーム,そして日常使用における実用性を探ってみたい。
 新世代,そして待望のAPUは,どれだけの実力を持っているだろうか。


改良版Ryzenコアと,Radeon Vegaコアの合体版


Ryzen
 最近のAMDは,新製品の情報を小出しにすることを好むのだが,1月にはほぼ全体像と言える製品概要を明らかにしていた(関連記事)。正式発表となる今回のタイミングで,何か画期的な新情報がもたらされたりはしていない。
 そのため,ほとんど復習になってしまうが,まずはデスクトップPC向けRaven Ridgeのスペックを,簡単におさらいしておきたいと思う。


CPU:改良版Ryzenによる最大4コア


 デスクトップPC向けRaven RidgeのCPUコアは,現行のRyzenプロセッサと同じ,第1世代Zenマイクロアーキテクチャを採用したものになる。

デスクトップPC向け第1世代RyzenにおけるCCXの構成
Ryzen
 第1世代Zenマイクロアーキテクチャでは,4基のCPUをひとまとめにして,容量4MBのL3キャッシュと組み合わせた「CPU Complex」(以下,CCX)が1つの単位となっている。HEDT(High-End DeskTop)市場向けのRyzen Threadripperを除くデスクトップPC向け第1世代Ryzenで,物理コア数の違いにかかわらずCCXを2基つないだ構成になっていたのを憶えている読者も多いと思うが,デスクトップPC向けRaven Ridgeで,CCXの数は1基だ。つまり,物理CPUコア数は4基,共有L3キャッシュ容量は4MBがいずれも最大ということになる。

Ryzen
第1世代のPrecision Boostは負荷がかかっているコア数でブーストするクロックを制御していた。そのため,スレッド数が増えると動作クロックはがくっと低下することになる
Ryzen
Precision Boost 2は電力や熱で制御するため,滑らかにクロックが変化する
 それを踏まえてデスクトップPC向けRaven Ridgeだが,モデルナンバーが2000番台となっている本製品では,新しい自動クロックアップ機能「Precision Boost 2」を採用したという違いがある。

 1000番台のモデルナンバーを採用したデスクトップPC向け第1世代Ryzenは,自動クロックアップ機能として「Precision Boost」を採用するが,Precision Boostにおける自動クロックアップのトリガーは,スレッド数(≒負荷がかかっているコア数)だった。それに対してデスクトップPC向けRaven Ridgeでは,CPUコアの温度や消費電力がトリガーになっているのだ。

 Precision Boostだと,稼働しているスレッド数が増えた場合,自動クロックアップは原則として行われなくなる。しかしPrecision Boost 2であればプロセッサ側の温度や電力に余力がある限り,スレッド数に関わらず動作クロックを引き上げられるので,理論上,より高い性能を期待できることになる。


GPU:Radeon Vega世代の演算ユニットを最大11基搭載


 組み合わされるGPUコアは,言うまでもなく,単体GPU「Radeon RX Vega」と同じRadeon Vega世代のものだ。
 ただし,単体GPU向けRadeon Vegaにおける最大の特徴とも言える「広帯域幅のHBM2(High Bandwidth Memory 2)をキャッシュとして採用し,512TBという広大な論理アドレス空間を持つ」アーキテクチャは非採用。従来のAPUと同じように,CPUのメインメモリ空間をGPUが共有する仕様である。

Ryzen
 一方,GPUコア自体はRadeon Vega世代そのものだ。
 そもそもGCNアーキテクチャを採用するGPUでは,1クロックあたり16個の32bit単精度浮動小数点(FP32)の積和算を行えるSIMD-16ベクトル演算器を4個ひとかたまりにして,これを1つの単位演算ユニットたる「Compute Unit」として扱っている。Radeon Vega世代でAMDは,このCompute Unitを拡張し,プリミティブシェーダ(Primitive Shader)や新しいジオメトリエンジン(Next-Generation Geometry engine)を搭載し,16bit半精度浮動小数点演算と8bit整数演算の「Packed実行」を行える「Rapid Packed Math」に対応させて,それを「Next-Generation Compute Unit」と呼んでいるわけだが,デスクトップPC版Raven Ridgeが統合する演算ユニットは,まさにこの新世代モデルのほうというわけだ。

 もっとも,現時点でいま紹介した新要素の積極的な活用例はなかったりするので,エンドユーザーにとってのメリットは,DirectXの対応が第7世代APUの「Feature Level 12_0」から「Feature Level 12_1」へ上がったことのほうかもしれない。

DirectXには,Feature Levelという,一種のオプションがある。当該DirectX APIをサポートするにあたり必須ではないものの,使えればそれなりのメリットがある要素だ。DirectX 12のサポートにあたって,AMD製GPUではRadeon Vega世代で初めて現状のフルサポートに相当するFeature Level 12_1に対応したが,そんなRadeon Vega世代のGPUを統合するデスクトップPC版Raven Ridgeも,当然,Feature Level 12_1対応となる
Ryzen


メモリコントローラ:DDR4-2933に正式対応


 デスクトップPC版Raven Ridgeで重要な新要素となるのが,メモリコントローラである。デスクトップPC向け第1世代RyzenではDDR4-2400までの正式対応となるところが,新世代APUではDDR4-2933に正式対応したというのは,大きなトピックと言えるだろう。

 というのもZenマイクロアーキテクチャでは,プロセッサの内部インタフェースである「Infinity Fabric」(インフィニティファブリック)の動作クロックが,メモリクロックと同期しているからだ。メモリクロックの引き上げは,Zenマイクロアーキテクチャ系の製品にとって,単なる「足回りの高速化」に留まらないトピックなのである。

デスクトップPC版Raven Ridgeでは,GPUコアとCPUコアの間をInfinity Fabricで結んでいる。ZenマイクロアーキテクチャはInfinity Fabricがメモリクロックと同期する仕様なので,より高速なメモリクロックに設定するほど性能が伸びることに期待可能だ
Ryzen

 デスクトップPC版Raven Ridgeでは,CCXとGPUコアの間をInfinity Fabricで結んでいる。なのでメモリクロックを引き上げれば,CCXとGPUコア間の帯域幅も自動的に拡大し,メモリクロックに応じて性能が伸びる可能性が高い,というわけだ。


デスクトップPC版Raven Ridgeのスペックを確認。マザーボード側では対応BIOSの導入が必須となる点には注意


 ここで,今回正式発表になったRyzen 5 2400GとRyzen 3 2200Gの主なスペックを確認しておこう。
 表1を見てもらうと分かるが,Ryzen 5 2400GのCPUコア部は4コア8スレッド対応で,つまりはSMT(Simultaneous Multithreading)サポートということになる。一方のRyzen 3 2200GはSMTが無効なので,4コア4スレッドの対応だ。
 GPUコア側は,Ryzen 5 2400GがCompute Unit数11基(シェーダプロセッサ数704基),Ryzen 3 2200Gが同11基(512基)となっている。


参考までに,「Ryzen 7 1800X」に対するCPU-Z実行結果
Ryzen
 下に示したのは,「CPU-Z」(Version 1.83.0)実行結果だ。CPUの「Family」「Ext.Family」「Model」は変わっていないが,同一モデル内のバリエーションを示す「Ext.Model」は「1」から「11」に,「Revision」は「ZP-B1」から「RV-B0」にそれぞれ変わっている(※Ext.Modelが変わっているので,ステッピングの違いに意味はないはずだ)。
 これらの値はCPUID命令で取ってこられる情報なので,第1世代Ryzenと比べてCPUコアに改定があったと理解していいだろう。

Ryzen 5 2400G(左)とRyzen 3 2200G(右)に対するCPU-Z実行結果
Ryzen Ryzen

 ちなみに,GPUアーキテクチャの世代を無視して,Compute Unit数だけで比較すると,Ryzen 5 2400Gの11基というのは,通常版Xbox Oneシリーズの12基に近い規模になる。GPUコアの動作クロックは初代Xbox Oneが853MHz,Xbox One Sが914MHzなので,総合的にはXbox One S並みか,それより高い程度のスペックと言っていいかもしれない。

Ryzen 5 2400G(左)とRyzen 3 2200G(右)を差した状態で,Radeon Settingsの「ハードウェア」タブを開いたところ
Ryzen Ryzen

 公称のTDP(Thermal Design Power,熱設計消費電力)は2製品とも65W。4基のCPUコアと,相応の規模を持ったGPUコアを統合するAPUとしては,かなり扱いやすいと言っていい。だからこそ標準添付のリファレンスクーラーも,静音性重視のWraith Stealthになっているのだろう。

Ryzen 3 2200G搭載システムへ「Radeon RX 480」搭載グラフィックスカードを差して,Radeon Settingsからレーン数を確認したところ。8レーン接続となっていた
Ryzen
 一点,AMDが明言していない――なので上の表1にも入れていない――事実として,デスクトップPC版Raven Ridgeでは,グラフィックス用のPCI Express Gen.3レーン数が8になっている点は指摘しておきたい。デスクトップPC向けの第1世代Ryzenでは16なので,ここは半分という計算だ。
 筆者が掴んだ情報によると,グラフィックス用途以外には,主にNVM Express接続型SSDを想定した4レーンと,チップセットとの接続に使う4レーンもあるようだが,AMDはこのあたりのスペックを公開していないので,現時点で100%の確証はない。

 いずれにしても,デスクトップPC向けRaven Ridgeの統合型GPUをひとまず使って,後からグラフィックスカードを購入しようという場合に,レーン数が8しかないことは,少し引っかかるポイントということになるだろう。

 プロセッサパッケージは既報のとおりAM4で,対応チップセットも現行の300シリーズ。最上位の「X370」チップセット搭載マザーボードだと,ディスプレイ出力を持たないものが多いので,基本的にはミドルクラス市場向けの「B350」やエントリー市場向けの「A320」といったチップセット搭載モデルを組み合わせることになると思われる。

300シリーズチップセットで,デスクトップPC版Raven Ridgeに対応するBIOSを搭載済みのマザーボードには,パッケージにスライドのようなバッジが印刷される予定だそうだ
Ryzen
 300シリーズチップセットの利用にあたっては,BIOS(UEFI)の対応が必須だ。発売に合わせてマザーボードメーカー各社から対応BIOSが出てきているので,ショップでマザーボードを購入する場合には,対応BIOSにアップデートされているか否かを店頭で確認したほうがいいだろう。
 AMDによると,デスクトップPC版Raven Ridge対応マザーボードには,対応を示すバッジが貼られる,もしくは印刷されるそうなので,それを目安に選べばより安全なはずだ。


評価キットはドライバ周りにやや難あり


評価キットの内容物
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 以上を踏まえて性能検証に移っていきたいが,今回,テストに用いるのはもちろん,AMDの評価キットである。評価キットに何が入っていたかは2月8日掲載の記事に詳しいので,ぜひそちらを参考にしてほしいが,肝心のマザーボードは,MSI製でB350チップセット搭載のMini-ITXモデル「B350I PRO AC」だった。
 レビュワー向けには対応BIOS(UEFI)「E7A40AMS.112PT5」がAMDから提供されたので,これを用いることになる。

 ただ,評価キットは最後まで若干の難があった。テストにあたって全世界のレビュワーに向けて配布されたグラフィックスドライバは「17.40.3602-180126a-323860C-ATI」と,Radeon Software Crimson ReLive Edition(以下,Crimson ReLive Edition)ベースのものだったのだ。
 17.40.3602という「Display Driver」のバージョン表記は,Crimson ReLive Edition最後のリリースとなった17.11.4の「17.40.2511」と比べると相応に大きなものになっているが,いずれにせよ,17.50系Display Driverを採用するRadeon Software Adrenalin Edition(以下,Adrenalin Edition)にはなっていない。

Ryzen 5 2400Gを差したシステムで,レビュワーに配布されたドライバを導入した状態で,Radeon Settingsの「概要」および「ソフトウェア」タブを開いた状態。「Radeon Softwareバージョン」は「17.7」と,トンデモなく古い数字を示しているが,「ドライバーパッケージのバージョン」を見る限り,ベースはCrimson ReLive Edition 17.11.4ということになる
Ryzen Ryzen

 このままエンドユーザー向けに配布されるとは思えないので,あくまでもレビュワー向けドライバという理解でいいと思うが,少なくともこのドライバでは,Adrenalin Edition以降の機能である「Radeon Overlay」などはもちろんのこと,Crimson ReLive Editionの目玉機能である「Radeon ReLive」も利用できなかった。将来的にサポートされるか否かに関する説明も今のところ得られていない。
 いずれにせよ,レビュワー向けドライバはかなり特殊なバージョンという理解でいいだろう。よって今回,ドライバソフトウェア周りについてはこれ以上触れないので,その点はあらかじめお断りしておきたい。

 なお,今回のレビュワー向けドライバはチップセットドライバも17.40.3602-180126a-323860C-ATIベースのものを使う必要があった。
 バージョン的に古いため,Windows Updateがより新しいバージョンを拾ってきてしまい,再起動するたびにチップセットドライバが変わって動作がおかしくなるというトラブルにもテスト中は見舞われたが,こうした問題は,発売に合わせて改善されることを期待したいところである。

※2018年2月13日追記
 デスクトップPC版Raven Ridgeの発売に合わせて,AMDが新しいAPUドライバをリリースした。「Display Driver」のバージョンは「17.40.3602-180126a-324287C-ATI」。レビュワー向けのドライバと比べて若干新しくなっているが,Crimson ReLive Editionベースであることや,Radeon Settings上から確認できるRadeon Softwareバージョンが17.7のままといったところは,レビュワー向けドライバと同じだ。
 このドライバはチップセットドライバを包含しているが,新しいチップセットドライバでは,レビュワー向けドライバにあった「勝手に更新されてしまう」症状が生じないようである。

17.40.3602-180126a-324287C-ATIドライバを導入した結果。Radeon Softwareバージョンは依然として17.7のままだが,ソフトウェアタブを見ると,いろいろ新しくなっていた
Ryzen Ryzen

 「安定しているか」は,リリース直後だけに判断しようがないものの,新世代APUを入手した人には,ひとまずこのドライバの入手をお勧めしておきたい。ただし,ドライバの導入作業は自己責任なので,その点はご注意を。

AMDの17.40.3602-180126a-324287C-ATIドライバ入手ページ

 続いてはテストの設定を紹介しておきたい。
 主役のデスクトップPC向けRaven Ridgeでは今回,G.Skill International Enterprise(以下,G.Skill)製の「F4-3200C14D-16GVK PC4-25600」(容量8GB×2)を用いた。評価キットにはG.Skillの「F4-3200C14D-16GFX PC4-25600」が付属していたのだが,これは利用していない。
 その理由は簡単で,短いテスト期間を効率的に使うべく,先行して比較対象のマシンで検証を始めるにあたり,手元のF4-3200C14D-16GVK PC4-25600を使ってしまっていたので,メモリモジュールを揃えた次第だ。もっとも,性能的にはいずれもDDR4-3200対応,かつメモリタイミング14-14-14-34対応なので,ここに大きな問題はないはずである。

AMDは,「i5-8400+GT 1030と同等の性能を120ドル近く安価に実現できる製品」だと,Ryzen 5 2400Gを位置づけている
Ryzen
 比較対象には,AMDがRyzen 5 2400Gの競合として想定している「Core i5-8400」(6C6T,定格2.8GHz,最大4.0GHz,共有L3キャッシュ容量9MB)と,同CPUに「GeForce GT 1030」(GP108コア,演算ユニット数3基,シェーダプロセッサ数384基,ベースクロック1227MHz,ブーストクロック1468MHz,グラフィックスメモリ容量2GB)搭載グラフィックスカードを組み合わせた状態を用意した。以下順に,「i5-8400」「i5-8400+GT 1030」と呼ぶことにする。

 i5-8400並びにi5-8400+GT 1030で用いるマザーボードは,B350 PRO ACと同じMini-ITXサイズから,GIGA-BYTE TECHNOLOGY(以下,GIGABYTE)製の「Intel Z370」チップセット搭載モデル「Z370N WIFI」とした。
 本来ならメーカーは揃えるべきなのだが,AMDに問い合わせ,「評価キットに入っているマザーボードはGIGABYTE製」という案内を事前に受け,万全の備えをするべくGIGABYTE製のi5-8400対応製品を用意したところ,到着した評価キットに入っていたのがMSI製マザーボードだったという経緯があるので,この点はご了承を。

テストシステム
Ryzen
 最後にもう1つ,今回のテストにあたっては,サイズ製の空冷式サイドフローCPUクーラー「MUGEN 5 Rev.B」を用いていることも,お断りしておく必要があるだろう。
 Wraith Stealthクーラーを使っていないのは単純に,AMDとIntel,両プラットフォームで冷却性能を揃えるためだ。両プラットフォームに対応できる手持ちのクーラーがMUGEN 5 Rev.Bだけだったので,これを用いた次第だが,クーラーの大きさ的に,Wraith Stealthクーラーと比べると冷却性能はかなり高く,いきおい,Precision Boost 2(や「Intel Turbo Boost Technology」)もよく機能する可能性があるので,その点は踏まえておいてもらえればと思う。

 そのほかテスト環境は表2のとおり。デスクトップPC版Raven Ridgeでは,定格のDDR4-2933に加え,メモリモジュールの仕様でもあるDDR4-3200設定でもテストを行う。i5-8400では定格のDDR4-2666メモリアクセスを行うが,アクセスタイミングは全条件を14-14-14-34で揃えている。


 テストにあたっては,まず4Gamerのベンチマークレギュレーション21.0に準拠した検証を行いつつ,いくつか日常用途を前提とするテストも行うことにした。
 日常用途のほうはテスト方法そのものも後述するとして,レギュレーションに準拠するほうだが,まず,デスクトップPC版Raven Ridgeの「単体で言えばエントリー,もしくはローエンドクラス」というGPUスペックを考慮し,エントリーGPU向けプリセットを選択することにしている。具体的なプリセット設定は以下のとおりだ。

  • Prey:中
  • Overwatch:NORMAL
  • PLAYERUNKNOWN’S BATTLEGROUNDS(以下,PUBG):低
  • Middle-earth: Shadow of War(以下,Shadow of War):中
  • ファイナルファンタジーXIV:蒼天のイシュガルド ベンチマーク(以下,FFXIV紅蓮のリベレーター ベンチ):標準品質(デスクトップPC)
  • Forza Motorsport 7(以下,Forza 7):中

 「Tom Clancy’s Ghost Recon Wildlands」(以下,Wildlands)はなぜ消えた? と思った読者はなかなか鋭いが,本タイトルではベンチマークモードが完走しなかったため,テスト対象から外している。Wildlandsのベンチマークモードには,グラフィクスメモリの容量やGPUの負荷といった情報をリアルタイム表示する機能があるが,どうやらこの機能が現時点ではデスクトップPC版Raven Ridgeに対応できず,それがトラブルの原因になっているようだ。

Wildlandsだとグラフィックスメモリ(VRAM)の使用量が100%を超えているというメッセージが表示されてしまう。ちなみに,本稿を執筆している時点では,GPU情報取得ツール「GPU-Z」のバージョン2.5.0より新しいバージョンを使った場合にも問題が生じるとAMDはアナウンスしている。Wildlandsと同じく,アプリケーション側が新世代APUにまだ対応できていないのだろう
Ryzen

AMDはRyzen 5 2400Gを「フルHDでゲームをプレイできる性能がある」とアピールしている
Ryzen
 「3DMark」(Version 2.4.4180)を除く6タイトルでは,2560×1440ドットと1920×1080ドット,1280×720ドットの3解像度でスコアを取得することにした。AMDはRyzen 5 2400Gのターゲット解像度を1920×1080ドットと位置づけているので,そこを基準に,より荷の重い条件と荷の軽い条件も用意した次第である。
 ただし,i5-8400+GT 1030ではGeForce GT 1030(以下,GT 1030)側のグラフィックスメモリ容量が2GBしかないため,2560×1440ドットは非対応だ。そのためスコアはN/Aとなるのでご注意を。


無理なケースもあるが,おおむねフルHDでゲームをプレイできる3D性能


 前述のとおり,デスクトップPC版Raven RidgeではAPUごとにDDR4-2933およびDDR4-3200設定の両方でスコアを取っている。なので以下本稿では,「Ryzen 5 2400G(2933)」などといった具合に,メモリアクセス設定を丸括弧書きで並記していくとお断りしつつ,テスト結果を順に見ていくこととしよう。

 まずは3DMarkからだ。グラフ1は,「Fire Strike」の総合スコアをまとめたものとなる。
 UHD Graphics 630を統合するi5-8400に対し,Ryzen 5 2400G(2933)は,2.8〜2.9倍程度という,圧倒的なスコア差を付けた。Ryzen 5 2400G(3200)だとスコア差はさらに広がり,3.0〜3.1倍程度となっている。
 Ryzen 3 2200G(2933)はi5-8400比で2.3〜2.4倍程度,Ryzen 2200G(3200G)では2.5〜2.6倍程度といったところだ。「GPUを統合するCPU同士」の比較で,競合製品を圧倒していることは間違いない。

 では単体GPUであるGT 1030を組み合わせたi5-8400+GT 1030比ではどうかだが,GT 1030がフルHDまでしかサポートしないことから,“無印”のFire Strikeで比較すると,Ryzen 5 2400G(2933)が約96%,Ryzen 5 2400G(3200)が約99%という数字になった。DDR4-2933設定だと完全に互角とまでは言えないかもしれないが,DDR4-3200であれば互角と言ってしまっていいのではないだろうか。
 Ryzen 3 2200G(2933)は約78%,Ryzen 3 2200G(3200)は約82%で,Compute Unit数が少ない影響は相応に出ていると言える。


 ここで注意してほしいのは,いま述べたとおり,GT 1030が2540×1440ドット以上の解像度をサポートしないということだ。2560×1440ドット相当のレンダリングを行う「Fire Strike Extreme」や,3840×2160ドット相当のレンダリングを行う「Fire Strike Ultra」では,オフラインレンダリングしてスコアを得ているが,サポートされない解像度なので,ここで比較しても参考にはならないと思われる。

 なお,ここではもう1つ,メモリアクセス設定がスコアに与える影響にも注目しておきたい。Ryzen 5 2400Gで比較すると,DDR4-2933に対してDDR4-3200では5〜6%程度高いスコアを示しているのだ。メモリクロックの違いが約9%のところ,スコアが5〜6%程度変わるのだから,高速なメインメモリを採用する効果はまずまずあるといったところか。

 続いてグラフ2はFire StrikeからGPU性能を示す「Graphics score」の結果を抜き出したもの,グラフ3は同様に,CPU性能を見る「Physics Score」の結果を抜き出したものだ。
 Graphics scoreのスコア傾向は総合スコアとほぼ同じである。


 一方,Physics Scoreのほうには,いくつか興味深い点がある。
 まず,最も目を惹くのは,デスクトップPC版Raven Ridgeで,DDR4-3200設定時よりもDDR4-2933設定時のスコアが高い点だ。矛盾した結果に思えるが,Ryzen 5 2400GとRyzen 3 2200Gの両方で同じ傾向が出ているので,スコアに間違いはない。
 原因は何とも言えないものの,デスクトップPC版Raven RidgeのPrecision Boost 2では消費電力や温度に動作クロックが左右される。なので,メモリクロックを上げたことでメモリコントローラの負荷が増大する結果となり,APUアンコア部の消費電力や温度が上昇し,その結果としてCPUクロックが抑えられた……という挙動が起きている可能性はある。

 i5-8400では統合型GPUを用いる場合に対してGT 1030を組みわ合わせた場合のほうが,スコアは6〜7%程度高くなる。GT 1030を動かすと,i5-8400側のGPU負荷がほぼゼロになり,電力的,熱的にCPUコアを動作させるための余裕が増すからだろう。

 なお,i5-8400と比べた場合,Ryzen 5 2400G(2933)は89〜90%程度という結果になった。ネイティブ6コアでブースト時の動作クロックも高いi5-8400に対し,4コアのRyzen 5 2400Gはかなり健闘している。
 一方,Ryzen 3 2200G(2933)のスコアは60〜61%程度。4割ほど低い結果である。


 グラフ4は,同じく3DMarkから,DirectX 12世代のテストである「Time Spy」の総合スコアをまとめたものだ。
 Ryzen 5 2400G(2933)がi5-8400+GT 1030を上回っているが,Time Spyは2560×1440ドット相当のテストなので,その解像度をサポートしないi5-8400+GT 1030のスコアが低いのは当然だろう。


 グラフ5はTime Spyの「Graphics score」を,グラフ6は「CPU score」をまとめたものになる。
 傾向としては総合スコアと変わらずと言っていい。


 CPU scoreを見ると,Ryzen 5 2400G(2933)でもi5-8400比で約81%のスコアに留まるなど,Fire Strikeとおおむね同傾向になった。Time Spyにおいても総合スコアに占めるGraphics scoreの比重は高いので,CPU scoreが8割程度でも総合ではRyzen 5 2400Gが上回れるわけだ。
 デスクトップPC版Raven Ridgeにおける,DDR4-3200設定時のスコアの落ち込みは,Fire StrikeのPhysics scoreと比べると軽微だ。ただ,DDR4-3200設定を行うことで微妙にCPU scoreが落ち込む傾向自体は変わっていないため,ここでも前述の現象が起きている可能性はあると見ている。


 ゲームタイトルを用いたベンチマークに移ろう。前述のとおり,AMDはRyzen 5 2400Gのターゲット解像度を1920×1080ドットに置いているので,以下,当該解像度のスコアを中心に見ていく。

 というわけでグラフ7〜9はPreyの平均および最小フレームレートをまとめたものだが,1920×1080ドット条件における平均フレームレートは,ベンチマークレギュレーション21.0が快適にプレイできるレベルだと規定する平均60fps,最小45fpsに遠く及ばない。もっとも,i5-8400+GT 1080でも同程度のスコアなので,エントリークラス以下のGPUには負荷が高すぎるタイトルという理解をしたほうがよさそうである。

 そこで1280×720ドット条件を見てみると,Ryzen 5 2400G,Ryzen 3 2200Gのいずれも,合格ラインをクリアしてきた。据え置き型ゲーム機以下の解像度を許容できるのであれば,プレイできるレベルのフレームレートは確保できるわけだ。
 なお,ここまで解像度を下げると「CPU性能がスコアを左右する傾向」が強まってくるが,あえて比べると,Ryzen 5 2400G(2933)の平均フレームレートは,i5-8400+GT 1030の約84%となった。メモリアクセス設定の違いに注目すると,Ryzen 5 2400G(2933)に対してRyzen 5 2400G(3200)は平均フレームレートで約2%,Ryzen 3 2200G(2933)に対してRyzen 3 2200G(3200)は平均フレームレートで約4%高いスコアを示した。3DMarkほどではないにせよ,相応のスコア向上を得られることが分かる。


 Overwatchの「NORMAL」設定のフレームレートをまとめたものがグラフ10〜12だ。
 ベンチマークレギュレーション21.0では,平均60fps,最小40fpsを「普通にプレイできる」最低ラインとし,平均80fps,最小60fpsあればさらに快適にプレイできるとしているが,Ryzen 5 2400Gはメモリアクセス設定に関わらず後者の基準をクリアした。Ryzen 3 2200Gもあと一歩だ。
 2560×1440ドット条件でまずまず見られるスコアになっている点にも注目しておきたい。

 比較対象のi5-8400+GT 1030と比較すると,1920×1080ドット条件で,Ryzen 5 2400G(2933)の平均フレームレートは約90%,Ryzen 5 2400G(3200)だと約93%だ。おおむね妥当な力関係と言っていいだろう。
 メモリアクセス設定の違いに着目すると,Ryzen 5 2400G(2933)に対しRyzen 5 2400G(3200)は平均フレームレートで3〜4%程度,Ryzen 3 2200G(2933)に対してRyzen 3 2200G(3200)はやはり平均フレームレートで2〜8%程度高いスコアを示している。


 次にグラフ13〜15はPUBGにおける「低」設定のフレームレートをまとめたものだが,先に結論から述べると,今回テストしたすべての条件で,レギュレーション21.0が規定する最小60fps,平均fpsのラインには遠く及ばなかった。テストしていてもガクガクとぎこちなく,快適にはほど遠い状況で,エントリークラス以下のGPUでマトモにプレイするのは不可能と考えたほうがいいだろう。
 念のため平均フレームレートで数字の比較を行っておくと,i5-8400+GT 1030に対し,Ryzen 5 2400G(2933)で93〜94%程度,Ryzen 5 2400G(3200)で99〜101%程度,Ryzen 3 2200G(2933)で約73%,Ryzen 3 2200G(3200)で76〜83%程度というスコアになっている。Ryzen 5 2400Gはかなり健闘していると言っていい。

 メモリクロックと平均フレームレートの関係を見てみると,Ryzen 5 2400G(2933)に対しRyzen 5 2400G(3200)は6〜9%程度,Ryzen 3 2200G(2933)に対しRyzen 3 2200G(3200)は3〜14%程度,それぞれ高くなっている。Ryzen 3 2200Gではとくに1920×1080ドット時のスコア差が多く,目を惹くが,「もともとフレームレートが低いのでブレが大きいだけ」という可能性はある。


 グラフ16〜18はShadow of Warのスコアをまとめたものである。
 レギュレーション21.0では,Shadow of Warで快適にプレイできる目安を最小30fps以上としているが,今回のテスト対象でそれを超えるものはなかった。

 ただ,数字の上ではデスクトップPC版Raven Ridgeのスコアに目を見張るものがあった。平均フレームレートでi5-8400+GT 1030と比べると,Ryzen 5 2400G(2933)の平均フレームレートは101%〜107%と上回っている。また,Ryzen 3 2400G(2933)でも同94〜100%と,ほぼ肩を並べることができた。

 その理由だが,Shadow of Warはテクスチャが“重い”ゲームだからだろう。2GBしかグラフィックスメモリを持たないGT 1030にはつらく,グラフィックスメモリとメインメモリを共有し,適宜割り充てられる統合型のほうがむしろ有利になるはずで,i5-8400のスコアがここまでの成績を考えるに悪くないことが,それを裏付けている。


 上に示したスコアで気になるのは,Ryzen 5 2400Gが2560×1440ドット条件で最小フレームレートを大きく落とし,また1280×720ドット条件でもRaven Ridge中最低のスコアを記録したことだ。ただこれは再テストしても変わらなかったので,テクスチャの負荷が大きく,最小フレームレートのブレが大きくなった結果だと考えられよう。

 また,2560×1440ドット条件に限り,Ryzen 5 2400G(2933)に対してRyzen 5 2400G(3200)の平均フレームレートが低くなっている点も懸念点と言えるが,Ryzen 3 2200Gでもメモリアクセス設定の違いが2560×1440ドットでだけほとんど出ていないことからして,これは測定ミスではなく,3DMarkのCPUテストと同様に,CPU側が何らかの形で足を引っ張っているのではないかと考えている。

 グラフ19はFFXIV紅蓮のリベレーター ベンチの総合スコアだ。
 ここではっきり分かるのは,i5-8400+GT 1030が突出していること。1920×1080ドット条件で,i5-8400+GT 1030のみ,スクウェア・エニックスの示す最上位指標「非常に快適」のラインであるスコア7000を超えている点にも注目しておきたい。

 デスクトップPC版Raven Ridgeはそれと比べると振るわず。1920×1080ドット条件のスコアは,最も高いRyzen 5 2400G(3200)でもi5-8400+GT 1030比で約72%に留まる。指標で言えば上から2つめの「とても快適」に収まるので,プレイできないわけではないが,やや苦しいのは確かだ。

 メモリアクセス設定に着目すると,Ryzen 5 2400G(2933)に対しRyzen 5 2400G(3200)は約6%,Ryzen 3 2200G(2933)に対してRyzen 3 2200G(3200)は約5%,それぞれ高いスコアになっていた。FFXIV紅蓮のリベレーター ベンチはメモリクロックに対して良く反応するということだろう。


 参考までに,FFXIV紅蓮のリベレーター ベンチにおける平均フレームレートと最小フレームレートをグラフ20〜22にまとめておくが,総合スコアの結果を踏襲するものと言っていい。


 ゲームベンチマークの最後は,Forza 7である。スコアはグラフ23〜25のとおりで,一見して分かるように,デスクトップPC版Raven Ridgeが強豪に対して圧倒的な成績を収めている。
 1920×1080ドット条件で平均フレームレートを比較すると,i5-8400+GT 1030に対し,Ryzen 5 2400G(2933)は約179%,Ryzen 5 2400G(3200)は約181%というスコアだ。Ryzen 3 2200Gも,そんなRyzen 5 2400Gとほぼ変わらない成績を残した。
 この理由は1にも2にも,Forza 7がDirectX 12ベースのタイトルだから,ということで間違いないと思われる。DirectX 12時代が今後到来するなら,その時代に向けた将来性はGT 1030よりもデスクトップPC版Raven Ridgeのほうから強く感じる印象だ。

 ここで一点気になったのは,Ryzen 5 2400Gで1920×1080ドット以上の条件において,最小フレームレートが有意に落ち込んでいること。下位モデルと比べてもややブレが大きいという,ここまでのテストにも見られた傾向が確認できたわけだ。
 原因は何とも言えないが,レビュワー向けドライバに完全な信頼は置けないことを考えると,ドライバに原因がある可能性はありそうに思う。



GPUアクセラレーションが有効な局面で優位性を見せるRaven Ridge


 後述するとした「ゲーム以外」の性能評価も行っていきたい。まずは「PCMark 10」(Version 1.0.1457)を使い,Ryzen with Vegaが日常作業用のPCとしてどれくらい期待できるのかを調べてみることにした。

 グラフ26は,PCMark 10 Extendedテストの総合スコアをまとめたものだが,見どころは,Ryzen 5 2400Gどころか,Ryzen 3 2200Gでさえも,i5-8400より高いスコアを示したことだろう。i5-8400と比べると,Ryzen 5 2400G(2933)は約30%,Ryzen 3 2200G(2933)は約24%高い。
 ただ,i5-8400にGT 1030を加えると,その関係は逆転する。i5-8400+GT 1030に対してRyzen 5 2400G(2933)のスコアは約94%となり,Ryzen 5 2400G(3200)で約99%と,なんとか互角に持ち込んだ。Ryzen 3 2200(2933)だと約90%,Ryzen 3 2200G(3200)だと約91%というスコアである。

 メモリアクセス設定の違いに着目すると,Ryzen 5 2400G(2933)に対しRyzen 5 2400G(3200)のスコアは約5%高いのに対し,Ryzen 3 2200GのほうはDDR4-2933とDDR4-3200で約1%の違いしかなく,ここではRyzen 5 2400Gのほうでのみ,メモリクロックに応じたスコアアップが見られる格好になった。


 PCMark 10 Extendedテストの個別スコアはグラフ27にまとめている。これを見ると,アプリケーションの起動速度やWebブラウジング性能といったごくごく基本的なPCの挙動を見る「Essentials」,そして,ビジネスアプリケーションの処理速度を見る「Productivity」でやや分が悪い。それに対し,写真や動画の加工,あるいは3Dレンダリングの性能を見る「Digital Content Creation」と,3DMarkにおける「Fire Strike」相当のテストを実行する「Gaming」でi5-8400のスコアを上回った。
 Gamingのスコアが高いことが総合スコアで強豪を圧倒した主要因であることは間違いないが,「それだけ」ではなく,Digital Content Creationでも,GPUアクセラレーションが有効な局面で競合製品より高速というわけだ。

 メモリクロックによるスコアの違いを見ると,Ryzen 5 2400Gの場合,DDR4-2933メモリアクセス設定に対してDDR4-3200メモリアクセス設定は4〜7%程度高いスコアを示した。Ryzen 3 2200Gだとほぼ横並びだ。メモリクロックの効果自体にはばらつきがあるようだが,少なくともRyzen 5 2400Gの場合は,一般アプリケーションでもメモリクロックが高いほうがより快適に利用できそうである。


 続いては,思いっきりCPU寄りの処理となる,ソフトウェアベースの動画トランスコードだ。
 ここでは,FFXIV紅蓮のリベレーターで実際にゲームをプレイした7分25秒,ビットレート437MbpsのMotion JPEG形式,解像度1920×1080ドットの録画データをソースとして,これを「ffmpeg」(Nightly Build Version N-86691-gc885356)から,「libx264」を用いてH.264/AVC形式に変換するのに要する時間と,「libx265」を用いてH.265/HEVC形式に変換するのに要する時間をそれぞれ調べてみた。使用したバッチファイルは以下のとおりだ。

del avc.mp4
del hevc.mp4
powershell -c measure-command {.\ffmpeg -i Diademe.avi -c:v libx264 -b:v 8000k -preset slow -tune animation -crf 18 -threads 0 avc.mp4} >MPEG4_score.txt
powershell -c measure-command {.\ffmpeg -i Diademe.avi -c:v libx265 -b:v 8000k -preset slow -crf 20 hevc.mp4} >HEVC_score.txt

 結果はグラフ28のとおり。このテストでは物理6コアのi5-8400が優勢なのは当たり前として,デスクトップPC版Raven Ridgeがどこまで迫れるかを見るべきだと思うが,Ryzen 5 2400G(2933)はH.264のへの変換に約1.4倍,H.265では約1.6倍の時間がかかった。H.265でより時間がかかるのは,libx265が用いている命令セットの違いによるものだろう。
 コア数比1.5倍,しかも動作クロックが高いi5-8400に対して1.4〜1.6倍の時間でトランスコードを終えたという成績は良好であり,SMTがよく機能していることが分かる。

 一方のRyzen 3 2200Gはさすがに分が悪く,DDR4-2933設定時にH.264で約1.8倍,H.265では1.9倍の時間がかかった。CPU寄りの処理もガンガン行いたいというのであれば,Ryzen 3 2200Gはちょっと厳しいかもしれない。

 メモリクロックの高速化によるメリットは,Ryzen 5 2400GではH.264で多少確認できるものの,H.265ではむしろ遅くなってしまった。一方のRyzen 3 2200GではDDR4-3200のほうがH.264,H.265ともに遅くなってしまう。少なくとも,トランスコードにおいて,メモリクロックの高速化による効果はあまり期待できなさそうである。



デスクトップPC向けRaven Ridgeの消費電力はまずまず


 最後に,ゲームベンチマーク実行中の消費電力計測結果をまとめてみたい。
 今回は,ログの取得が可能なワットチェッカー「Watts up? PRO」を用いて,システム全体の最大消費電力を測りつつ,レギュレーション20世代以降で採用した「EPS12Vの消費電力からAPUおよびCPUの消費電力を推し測る」という,2つの方法で計測を行うことにした。両方を比較することで,より詳細に電力性能が見えてくるはず,と考えた次第である。

 まずはシステム全体の最大消費電力を見ていこう。テストにあたっては,ゲーム用途を想定し,無操作時にもディスプレイ出力が無効化されないよう指定したうえで,OSの起動後30分放置した時点を「アイドル時」,各アプリケーションベンチマークを実行したとき,最も高い消費電力値を記録した時点を,タイトルごとの実行時とした。

 結果はグラフ29のとおりだ。Ryzen 5 2400G(2933)でピークを記録したのはOverwatchで,123Wに達した。だが,それ以外のタイトルは95〜113W程度に収まっている。おおむね同等の性能を持つi5-8400+GT 1030が95〜114W程度なので,Ryzen 5 2400G(2933)の消費電力はおおむね妥当なピーク消費電力に収まっていると言っていいのではなかろうか。
 なお,メモリクロックをDDR4-3200設定にしても最大消費電力は変わらなかったが,アイドル時は約2W高くなった。DDR4-3200設定にすると確実に性能は上がってくるので,アイドリング時の2W程度の上昇は許容できる範囲ではないかと思える。

 一方,Ryzen 3 2200GのピークはPUBGにおける約108W。DDR4-3200設定のほうがピークはやや低い傾向で,アイドル時の最大消費電力は約25Wと,DDR4-2933設定時から変わらなかった。


 続いては,EPS12Vを使ったCPUの最大消費電力と,その中央値をプロットしたものを示してみよう。
 ここでは,「統合型GPUが無効になる条件はフェアではない」という理由から,i5-8500+GT 1030をテスト対象から省いている。

 さて,Ryzen 5 2400Gでピークを記録したのはやはりOverwatchで,DDR4-2933設定時に約84.7W,DDR4-3200設定時に約85.8Wとなった(グラフ30)。Ryzen 3 2200GだとFFXIV:紅蓮のリベレーター ベンチ実行時が最も高く,DDR4-2933設定時に約92.2W,DDR4-3200設定時に約94.8Wと,Ryzen 5 2400Gを上回るピーク値を記録している。


 65WというTDPからすると高く感じるが,中央値はすべて65W以内に収まっていることが,グラフ31を見ると分かる。「投入した電力より大きな発熱はありえない」という原則からすれば,65WというTDPに対してまず妥当なCPU消費電力が測定されているということは疑いない。

 もっとも,i5-8400の電力制御はかなり優秀で,負荷に応じて急激に消費電力が変化する。ピークが相応に高いのに,中央値を取るとおおむね30W前後で収まるのはそのためである。
 AMDも頑張ってはいるが,電力制御ではまだまだIntelに一日の長があるようだ。



期待される性能をきっちり出してきたデスクトップPC向けRaven Ridge。懸念材料はメモリモジュールの価格か


Ryzen
 以上,Ryzen 5 2400GとRyzen 3 2200Gのゲーム,そして日常作業における快適さを調べてきたが,ざっくりとまとめるなら,スペックから期待されるとおりの性能をきっちり出してきた,ということになるだろう。
 PUBGやShadow of Warのように,「そもそもエントリークラス以下のGPUではどうにもならない」タイトルなら話は別だが,エントリークラス以下のGPUでもある程度快適にプレイできるようチューンされたゲームなら,デスクトップPC版Raven Ridgeでこなせてしまう可能性が高い。

Ryzen
 今回のテストでとくに驚かされたのは,Forza 7におけるデスクトップPC版Raven Ridgeの性能の高さである。Forza 7でのテスト時における描画はとてもスムーズで,統合型GPUで動かしているとはとても思えないものだった。ネイティブのDirectX 12タイトルを前にしたときの,デスクトップPC版Raven Ridgeが持つ未来はとても明るい。
 ただ,Ryzen 3 2200Gは,ゲーム用途をメインにするには,性能面でやや不安が残った。Ryzen 3 2200Gは,日常的な利用が中心で,まれにゲームをプレイすることもある,くらいのシステム向けと考えるのが妥当だろう。

Ryzen
 もう1つ,性能面に関して言うと,組み合わせるメモリモジュールには妥協しないほうがいい,というのが挙げられる。最近,クロックアップ版メモリモジュールはなかなか高価だが,それでも,定格のDDR4-2933メモリアクセスに対応したPC4-23400モジュールは用意したいところだ。可能であれば,DDR4-3200メモリアクセスに対応するPC4-25600モジュールを用意できると,なおいい。
 繰り返すが,Zenマイクロアーキテクチャに基づくプロセッサは,メモリ性能に応じてプロセッサ性能の向上が図れるので,メモリへの投資は無駄にならない。

 難しいのは,そのメモリモジュールのコストをどう捉えるかだ。
 実勢価格は税込,かつ2018年2月12日現在と断ってから続けると,メモリモジュールは容量8GBの2枚組として,評価キットに付属のPC4-25600モジュールだと実勢価格は3万4000円前後。Ryzen 5 2400Gの国内価格は税込2万1384円なので,合計で5万5000円強になる。一方のi5-8400は税込2万2000〜2万3000円程度で,DDR4-2666アクセスに対応するPC4-21300モジュール2万2000〜2万5000円程度,GT 1030カードは9200〜1万1500円程度だ。つまり合計では5万3200〜59500円程度となり,AMDが強くアピールしている「価格対性能比の高さ」は,メモリモジュールを奢ったとたん,競合とほとんど変わらなくなってしまう。
 価格と性能のバランスを求めてメモリモジュールを探せば,それだけコストは下がるので,発売当初は,そういう作業が苦にならない人向けといったところだろうか。

 今後,メモリモジュールのベターな組み合わせ情報が出てくると,一般ゲーマー層の選択肢としてRyzen 5 2400Gは広がっていくはずだ。それまでの間にドライバの最適化が進むことを期待したい。

Ryzen

Raven Ridge「Ryzen 5 2400G」「Ryzen 3 2200G」の統合型GPUでOverwatchとWoWs,PUBGは満足にプレイできるのか。実際に確かめてみた


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