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位置情報ゲーム「マップラス+カノジョ」のある生活――波多紘幸氏に教えてもらった,リアルライフとバーチャルライフのエバーグリーン
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印刷2018/06/27 12:00

インタビュー

位置情報ゲーム「マップラス+カノジョ」のある生活――波多紘幸氏に教えてもらった,リアルライフとバーチャルライフのエバーグリーン

 約11年半前の2006年12月14日に発売され,「PSPがあれば日本全国をナビゲーションできちゃう!」といった夢を抱かせ,一般ユーザーから職業者の方々,さらにはコアゲーマーの心をも掴んだ「MAPLUS ポータブルナビ」シリーズ。

 4Gamer編集部にも同作を使い回し,日本中で新時代の幕開けを満喫していた懐古おじさんが数人おり,「GPSアンテナを改造してたわ」「10円玉を貼り付けてたね」「あとアルミホイルな」「頼りすぎて取材遅れた」などと拗れた供述をし,今回のシリーズ新作の発表時には若手の「(なに言ってんだこの人ら)」という心の声を封殺する勢いで盛り上がっていたのを今でも思い出してしまう。MAPLUSがもたらした当時の新体験は,未だに根付いていたようだ。


 そして件の新作というのが,同シリーズの発売元であるエディアが2018年内に配信を予定しており,事前登録も受付中のスマホ向け位置情報ゲーム「マップラス+カノジョ」iOS / Android)である。

 同社は現在,徒歩・カーナビアプリ「MAPLUS+声優ナビ」を提供しているが,新作はなんでも“位置情報システムをゲームに導入”したものになるらしい。つまり,これまで機能でしかなかったMAPLUSを“ゲーム”に仕立てたのだ。

マップラス+カノジョ

 そこで今回,配信延期も挟まったこれまでの経緯からはじまり,可愛らしいカノジョ達とその世界観,既存の位置情報システムにはなかった新しい遊びなどを,エディア ライフエンターテインメントサービス事業 執行役員兼プロデューサーの波多紘幸氏に教えてもらってきた。

 波多氏には昨年,中国市場に関するインタビューで業界事情を明け透けに話してもらったが,エディアでも中々に波乱万丈な渦中にあったようで――。

「マップラス+カノジョ」でプロデューサーを務める波多紘幸氏

参考記事:日本のスマホゲームは運営に人を使いすぎ。もっと効率化するために,中国の“ゲームエンジン”を使うべきではないのか―――飽和状態の日本のスマホゲームマーケットに,中国のデベロッパが提唱?


「マップラス+カノジョ」公式サイト



リアルライフとバーチャルライフのエバーグリーン


4Gamer:
 昨年は別の担当者に刺激的な業界事情を語っていただきましたが,今回はエディアのプロデューサーとして「マップラス+カノジョ」のお話しを聞かせてください。

波多紘幸氏(以下,波多氏):
 分かりました。存分に聞いてください。

4Gamer:
 まずは私もそうですし,読者も混乱するかと思いますので,現在の波多さんの所属や立場をあらためて説明してもらっていいですか。

波多氏:
 今の僕の肩書はエディア ライフエンターテインメントサービス事業 執行役員,ならびにプロデューサーとなります。昨年の2017年7月に取材を受けたときは,GameMoon Japan シニアプロデューサーとして日本のデベロッパに“ゲームエンジン”を提案する仕事をしていましたが,9月上旬になってエディアにジョインし,11月からは「マップラス+カノジョ」の開発に参加しています。

4Gamer:
 波多さんの所属する「ライフエンターテインメントサービス事業」というのは字面のとおり,生活に基づく娯楽を包括した部署と捉えていいのでしょうか。それこそ(Apple Store基準で言う)ゲームやエンターテインメントやライフサービスといった諸々を含んでいる,みたいな。

波多氏:
 はい,位置情報を使ったナビゲーションやアラームや占いなど,ゲームも非ゲームも含めて生活に関連するサービスをひっくるめて運用しています。究極的には「最新技術を使ったどうでもいいモノ・コトで人生を楽しくする」のを目標とした事業ですね。エンターテインメントの本質とは本来“どうでもいいもの”ですから。

4Gamer:
 事情を存じないのでありていに聞きますが,会社を移った経緯は「辞めた入った」の話なんでしょうか。

波多氏:
 いや,あまりシリアスな話ではないですよ。僕はGameMoon Japanに社員として所属していたわけではない,一匹狼のプロデューサーみたいな立場でしたし。そこでエディアと中国製ゲームエンジンの結び付けを探っていたとき,この会社なら新しい価値を生み出せるかもしれないと思い至って,エディアに移ってきたんです。本家GameMoonの代表である刘曼菁(Cathy)と袂を分かったわけでもないので,彼女の考え方には今も変わらず賛同できます。

4Gamer:
 となると,現在はエディアでのお仕事に注力していると。

波多氏:
 ええ,ほかにもいくつか活動はしていますし,社内でも音楽ゲーム「SHOW BY ROCK!!」iOS / Android)の動向に関わり,KPIの流れを毎朝チェックしているような立場ですが,現状は「マップラス+カノジョ」に注力していると言えます。

4Gamer:
 整理すると波多さんは「マップラス+カノジョ」の……すみません,略称を聞いてもいいですか? マッカノかマッジョと予想していますが。

波多氏:
 いや,プラカノですね。

4Gamer:
 残念,プラカノでしたか。話を戻すと,波多さんはプラカノの立ち上げには関わっておらず,率直に言って「昨年11月からまだ半年の付き合い」なんですか。

波多氏:
 そうなります。しかも,当初のスケジュールでは2017年12月にリリースされるはずのゲームでしたから,ストレートに事が進んでいれば,僕は本件とはまったく無関係のまま「当時構想していた新規プロダクトの立ち上げ」に携わっているはずでしたね。

4Gamer:
 ツッコミどころがいくつかありますが,まず当時構想していた新規プロダクトとは? 当初は波多さんの入社とプラカノは無関係だったのですか。

波多氏:
 エディアに入る前のことですが,原尾さん(同社代表取締役社長CEO 原尾正紀氏)とはそのとき「新しいゲームを一本やりましょう」と話し合っていたんですよ。僕自身,入社前からやりたいことをしっかりと固めていましたから。

4Gamer:
 なんと。

波多氏:
 でも,入社直後に社内で,「位置情報を使った新作ゲームをもっと多くの人に楽しんでもらいたいんだけど……」と相談を受けたんです。そこでプラカノの状況を確認してみたところ,自分の中で「まずはこのゲームをどうにかしたい」との気持ちが湧いてきてしまったため,それから全身全霊で担当させてもらっているわけです。

4Gamer:
 それではもう片方の疑問ですが,12月の配信予定はなぜズレたのでしょう。

波多氏:
 簡単に言うと「素晴らしい素材が揃っていたので,もっと煮込んで美味しくしたい」と考えついてしまったため,開発期間を延長しようと僕が提案したからです。当然,社内での反対の声は強かったです。「どうして延期するんだ!」「じゃあいつ出すんだ!」と針の筵でしたね。今でも毎日の心労が半端じゃないです(笑)。

4Gamer:
 いかに業界の古強者と言えど,入社2か月足らずでそのような大きな決断を叩きつけるリスクを考えると……日和見して流してしまってもよかったのでは?

波多氏:
 それもひとつの手でしたが,「毎日を面白くするものを届けたい」と掲げている会社ですから,早くも見て見ぬ振りができませんでした。配信を待っていたユーザーをはじめ,経営や出資に関わっている人達にとっても肩透かしな決断だったかと思いますが,最終的に“より良いゲーム”を届けるために必要な判断だったと考えています。まあ,こう言っているとまたプレッシャーが(笑)。

4Gamer:
 申し訳ないことに,私の経験では想像すらできない心境です。

波多氏:
 僕だけじゃなく,開発陣も相当のプレッシャーを抱えています。だから,今の我々の気持ちをゲーム作りの良い方向に注いでいきたいと考えているところです。昨年12月の製品状態と比較すると,ゲームの完成度も着実に深まっていますし。

4Gamer:
 全身全霊。自分なりの新作を手掛けたいのなら「2か月足らずの決断」をするべきではなかったはずなので,説得力がありますね。

波多氏:
 そう言っていただけるとありがたいです。


4Gamer:
 プラカノの成り立ちに迫ると,案件自体は何年前に立ち上がっていたのですか。

波多氏:
 構想も含めると,かれこれ2年前に遡ります。内部で少しづつ制作を進めてきて,並行して「MAPLUS+声優ナビ」なども開発しつつ,昨年前期にようやく完成形が見えてきたという流れでした。

4Gamer:
 ズバッと聞きますが,「みんなで2年かけて作っていたところに急に入ってきた波多紘幸」という構図は他意を生みかねないのでは? 一般論的に“新しい上司”の存在は社会的な枠組みからすると常識で,それ自体が反感につながるものではありませんが,モノ作りの現場となるとなんかこう,受け取られ方がいまいち違うような気がしてしまって。

波多氏:
 僕がエディアに執行役員として入社した時点で「なんだこいつは」の意識は大なり小なり持たれていたはずですよ。でも,「良いものを作りたい」と思う気持ちはみんなと一致したのだと思います

4Gamer:
 なるほど。ついでにプロダクトの着想としては“どのようなゲームを作ろう”と考えられていたのでしょう。

波多氏:
 根幹にあったのは「位置情報を使用する」「美少女を登場させる」「美少女との会話を楽しんでもらう」です。このアイデア自体は悪いことなく,昨年の時点でコンセプトどおりのゲーム内容に仕上がっていました。ただし,表面的には“よくあるスマホゲーム”に留まっていたので,良い部分をもっと引き伸ばしてあげたいと思ったわけです。

4Gamer:
 ひとつ気になるのは,波多さんがどのタイミングでプラカノの課題を認識できたのかです。時間はそれほどなかったようですが。

波多氏:
 僕の悪い癖なんですが,ゲームを見るとつい妄想しちゃうんですよ。「このゲームはどうなったら,もっと面白くなるのか」を。でも,そこで僕が思いついた“もっと面白いプラカノの姿”は,元からプラカノを作っていた人達も間違いなく持っていました。

4Gamer:
 それなのに,理想の姿にはたどり着いていていなかったと。

波多氏:
 ええ,そこまで突き進んでいいのかを判断しきれず,無難な位置で立ち止まっていたように見えました。そこに僕が遠慮なしのフルスロットルで突っ込んだので,みんなのリミッターも外れ,今に至るわけです。だから,僕の斬新なアイデアが革命を起こしたという流れではないですね。僕はまだ2か月ですが,彼らはもう2年も考えていましたから。

4Gamer:
 素晴らしい。では気合十分な身の上話も揃ったところで,そろそろプラカノに迫っていきましょうか。今回は「まだなにも情報を出してないので全部話します!」(インタビュー実施日は2018年5月29日)という体裁ですから,ゲームの基本的な概要からお聞かせください。

波多氏:
 分かりました。プラカノは位置情報システムを利用したスマホゲームです。

 現実でプレイヤーが移動した情報が画面内に反映され,それに応じたアクティビティを楽しんでもらいます。

 また,現在普及している位置情報ゲームは「コレクション」を核とした作品が主流ですが,本作はその要素を含みつつも本命は別のところとしています。

4Gamer:
 別にある本命ですか。一言で済みますか。

波多氏:
 一言では済みませんね(笑)。これまでゲーム開発の本質は「箱庭作り」にありました。RPGもFPSもMOBAもどんなジャンルも原則,箱庭の中にキャラクター,ストーリー,システム,マップなどを投じて,ひとつの作品としての世界観を仕上げます。これはドットゲームから3Dゲームまで進化しても変わらない,大前提のルールです。しかし,プラカノはその前提が取っ払われました。なぜなら,現実世界を舞台としているからです。

4Gamer:
 おー。見識のなさを晒しますが,私は「箱庭」と聞くと箱庭系SLGだったり,サンドボックスの類だったりをイメージしていましたが,そうですよね。ゲームというもの自体,区切られた一定の空間に素材を並べて世界を表現するのだから,言い換えの範疇だとしても箱庭作りと言えるんですよね――と感銘したのにプラカノは“そうじゃない”と。

波多氏:
 そうです。プラカノは箱庭の装飾に注力していません。力を入れていないというより,大事なのは“現実世界そのものが箱庭”ということです。素材を考えなくていいから簡単に作れるという話でもありません。リアルワールドと連動した世界観を構築するのは,従来のゲーム作りのルールとは別物なんです。少なくとも,そう考えるべきなんです。

4Gamer:
 そのような考えが込められていたんですね。波多さんからいただいたメールには「リアルライフとバーチャルライフのエバーグリーンでリアルなミクスチャーって感じのゲームです(メール文まま)」と書いてあるだけだったので,ヘッドエイクがペインフルでした。

波多氏:
 すみません(笑)。そして現実世界と位置情報を用いたゲームを作るとなると,クリエイターによっては不特定多数のプレイヤーによるバトルゲームを作ったり,有名IPを使ってキャラクターをコレクションさせたりしようと考えるかと思います。事実,既存の位置情報ゲームの大半はそれらの範疇にあります。

4Gamer:
 まあ,たしかに。

波多氏:
 ですが,プラカノが本命としているのは“リアルな世界とカノジョの体験”です。ゲームの舞台が現実に即していて,そこでプレイヤーに等身大の体験をしてもらいたいと考えたのなら,登場人物はファンタジーな勇者でも,戦国時代の勇猛な武将でも,SFチックなヒーローでもなく,「彼女」が適任なんですよ。

4Gamer:
 彼女がですか? ピンとこない。

波多氏:
 男性が最も普遍的に意識しやすい存在は,現実であろうと仮想であろうと“彼女という特別な異性”にほかなりません。

 そして本作のようなコンセプトを掲げる以上,体験の深さにつながるのは「カノジョの存在価値をどれだけプレイヤーに伝えられるか」となります。

 だから僕は昨年,表面上の要素をなぞるだけのゲームに留めず,「もっとカノジョのリアリティを深めるべきだ!」と意見したわけです。

4Gamer:
 ピンときた。カノジョの一語にコンセプトが集約されていたんですね。思っていた以上に深い。

波多氏:
 最初にプラカノを見たとき,「カノジョと交際し,結婚し,離婚できたらこのゲームはどうなるだろう」と妄想したら僕の世界は広がりました。だから,それに耐えうるくらいのリアリティが欲しくなってしまったんですよ。本作の人間関係は,半分が現実で半分が仮想です。カノジョとのコミュニケーションは完全なリアルとはなり得ませんが,妙なバランス感ゆえにプラトニックな関係性が強調され,ゲーム特有の心の結びつきも生まれます。

4Gamer:
 読者の中には「なに言ってるんだ」と思う人がいるかもしれませんが,一方で「よく分かってるな」と思う人も多いはずです。ゲーム業界的に分かりやすい例は「ラブプラス」シリーズの愛され方でしょうか。

波多氏:
 近しいものはありますね。さらにそこにスマートフォンや現実世界や位置情報やリアル連動施策が絡み合うんですよ。プラカノの発案者は素晴らしい観点を持っていたと思います。流行の最前線にあるシステムを真似ようとする人や,人気ゲームをスマホで再現しようとしか考えていない人に,こういう新しいゲーム体験はきっと思いつきません。

4Gamer:
 なにかへの毒を感じますね(笑)。

波多氏:
 前回,随分と言ってしまいましたし(笑)。


生き残る術は楠木正成に習った


4Gamer:
 こちら側に話が逸れると長くなりそうですが,避ける手はないので聞いておきましょう。波多さんはこれまで8年ほど中国のゲーム市場で活動していたようなので,昨今のHOTな話題である“中国のスマホゲーム市場”について概観を語ってもらってもいいですか。できれば,前回とはちょっと違った観点で。

波多氏:
 いいですよ。最近のスマホゲーム業界では「日本と中国の開発技術の違い」が比較対象として取り上げられがちですが,個人的にはもっと根本的な部分に差がついていると感じています。例えば僕が日本にいた2010年ごろは,開発者同士がゲームの在り方について激論を交わしていました。真剣なゲームバカ達が「まだできる!」のアイデアをぶつけ合っていたんです。

4Gamer:
 うーん,でも,そういう開発者は今も多いのでは?

波多氏:
 今も各所でそういったぶつかり合いは間違いなくあると思いますが,本題はそこではなく,中国は現在“ゲーム業界全体がその黄金期に突入している状態”なんです。どの会社が,どのゲームがではなく,全方面でエネルギーが衝突し合っています。僕は毎年,中国最大のゲームショウ「ChinaJoy」でさまざまなクリエイターの方々と話しますが,彼らは口を揃えて「まだできる」「もっとできる」と言います。スマホゲームでできることを,個々人が貪欲に追求しているんですよ。

4Gamer:
 現地の方々と話したことはありませんが,私も昨今は「そういう感じなんだろうな」というイメージが先行してるかも。

波多氏:
 あと「ゲームに対する強いリスペクト」を持つ人が多いです。彼らは集団となっても尊敬はそのままに計画を立て,シンプルにゴールを目指します。3Dグラフィックスやテクスチャの品質の差などはあくまで結果であって,要因のすべては“クリエイティブに対する意識の差”にあるのでしょう。仮に「人気PCゲームの面白さをスマホゲームに落とし込む」という課題があるとしたら,中国のゲームクリエイターは我々には想像できないスピード感で解決策を見い出してしまうはずですよ。


4Gamer:
 一例で構いませんが,「中国でスマホゲームがなぜ人気になったのか」を聞いてもいいですか。

波多氏:
 中国のゲーム市場の強みは「(日本ほど)娯楽がないから」だと考えています。日本は結局,ゲーム以外のエンターテインメントが溢れているんです。ゲームをやらずとも右に左に面白そうなものがあるので,いくらだって楽しいことを体験できますし。

4Gamer:
 能動的に遊ぶコンテンツであるゲームが「面倒になった」とよく聞きますね。

波多氏:
 しかし,日本と違って中国は国土が広大です。ちょっとでも地方に行けば,体験できるエンターテインメントの数が激減します。「日本の田舎から新幹線で東京ドームに行く」のは大きな手間に映るかもしれませんが,中国を例に置き換えると「そもそもの移動からして困難」ですから。その結果,気軽にどこでも体験できるエンターテインメントの最適解としてゲームに人が集まったのでしょう。

4Gamer:
 「技術の発達は人口の増加,機器の普及に比例する」といった話もよく聞きますが,今の中国は社会全体がかみ合っている状態なんですかね。インターネットを介せばどこでも遊べるPCオンラインゲームが人気であるとは昔から騒がれていましたが,今では代替以上の存在価値をスマホゲームが獲得したと。

波多氏:
 そうなります。日本もゲーム文化がもっと華やかに見えて,大々的に受け入れられていて,技術の最先端として投資も集中した時代がありました。でもそれって結局,ゲーム以外のエンターテインメント産業が発達しきっていなかったからです。現代では市場の成熟,娯楽の乱立によって手放しで儲かることはありません。ゲーム会社は「投資するリターン」をシビアに要求されるようになったため,それを受け止める現場も「今期の予算を達成しなければならない」という観念に背中を突かれてしまうのです。

4Gamer:
 トゲになる前に聞いておきますが,「日本のクリエイティブの品質が(相対的に)落ちた」のも結果であって,要因があってのことなんですよね?

波多氏:
 ええ,結論はそこに行きつきます。日本でゲームを作るとなると,ゲームに対するリスペクトにだけ集中して完成を目指すのはまず不可能でしょう。業界全体が「やりたいけどできない」という,見えない鎖で縛られてしまっているからです。クリエイターの意識だけなら日本も中国もあるいは同等かもしれませんが,環境がそれを許しません。

4Gamer:
 世知辛い。

波多氏:
 日本でゲーム開発に携わる人達は,全員が全員そうではないにせよ,会社側に提示される即物的な要求に影響されていない人はまず少ないでしょう。それも,組織の上にいけばいくほど。僕も開発の根幹であるゲームエンジンに携わっていた身ですので,「制作に2年分の予算をかけられないから,簡単に使える社内の有り物のゲームエンジンを使う」といった裏話には事欠きませんでした。

4Gamer:
 似たようなゲームが出てくるときの原因はそれなんですかね。

波多氏:
 そうですね。まあ,ゲームエンジンに関して個人的に「究極的な解決策」を考えている最中なんですけどね。

4Gamer:
 究極ですか。どんな解決策なんでしょう。

波多氏:
 年間でクローズしたゲーム,あるいは開発途中で頓挫したプロダクトのゲームエンジンを集めて平準化すれば,“日本のゲーム作りにおける初期開発の課題”はほぼ解決できるはずです。こういったスクラップは社内で眠る宝の山ですから。運営資産やそれ未満のリソースまで含めて共有できれば,クオリティの平均値はグンと上昇しますよ。

4Gamer:
 夢の広がりそうな話ですが,めちゃくちゃ難しそうですね(笑)。

波多氏:
 でしょうね(笑)。資産も権利も問題ばかりが山積みです。でも,それらの問題を払拭できる枠組みさえ用意できれば,業界が抱える負担を一気に軽減できる気がします。

4Gamer:
 なんかこう,その構想のままにリユース会社が作れてしまいそう。というか,波多さんが作ってしまいそう。

波多氏:
 まだ考えているだけですよ(笑)。話を元に戻すと,日本のゲーム業界が予算のために動かざるを得ない理由も分かります。スマホゲーム市場の成熟により,ゲーム業界全体が強制的に“以前のような長閑な姿勢ではいられない”ようになりましたから。商業としてのリアルさが,クリエイターの矜持を許さないんです。

4Gamer:
 笑えない額を投じたあとに勝ち負けが決りますもんね。

波多氏:
 そうです。実力のある誰かが「スマホで3Dでバリバリ動く新世代のUnreal Tournamentみたいなゲームを作りたい」と言ったところで,まず予算的に作らせてもらえない,もしくは絞られた予算で理想とは程遠いゲームができます。これを成すためにはクリエイターとしての実績を担保するよりも,社内政治を勝ち抜いて会社の実権を掌握するほうがよっぽど近道でしょうね。

4Gamer:
 まあ,リアルコミュニケーションゲームのクリエイティブも大切ですし……。

波多氏:
 さらに無事に大作ゲームが完成したとしても,プロモーションをうまくやらねばユーザーに遊んでもらえないので,最終的にプロダクト全体にかかる費用は数十億円まで膨れ上がっていきます。ここまでいくと,一部の大手企業でもそうそう許されない規模です。

4Gamer:
 もはや実感できない額だ。さらに加えて,波多さんは日本のスマホゲームのストアランキングに思うことはありますか。

波多氏:
 それこそ,中国のスマホゲームの影響力が色濃く出てきた部分だと思います。これまで日本のストアランキングは国内の人気タイトルによる寡占状態にありましたが,最近は中国発のスマホゲームがいくつも上位に食い込んでいます。もはや周知の事実でしょう。ただ,この結果をもたらしているのはあくまで「ユーザーの選択」なんですよ。

4Gamer:
 と言われますと。

波多氏:
 日本のスマホゲームにも面白い作品はたくさんありますが,“本気でゲームを遊びたい”という気持ちに応えられる作品となると数が限られます。その結果,クオリティに優れた中国のスマホゲームがユーザーによって無意識に選ばれたんです。

4Gamer:
 私が言うのもなんですが,純粋な広告とは違う力での波及は確かに感じました。友人間での口コミや実況プレイによる布教など,タイトルパワーあってのインフルエンスを。

波多氏:
 開発技術がどうだ,作った国がどうだ,そんなのは意識の外です。後付けの分析でしかありませんからね。

4Gamer:
 遊ぶ人には関係ないですもんね。

波多氏:
 しかも「荒野行動」も「アズールレーン」もユーザー側でも分かるくらい“それをやったら強い作品”じゃないですか? なのに日本ではやれないんですよ。アイデアの練り方に違いはあるにせよ,前述した理由で。やれたとしても,IPのガワだけに留まったキャラゲーがオチでしょう。だからストアランキングはこうなって然るべきと思っています。

4Gamer:
 人気に火をつける方法が分かっていても,人気のゲームデザインに求められる技術がすでに向上しすぎていて,簡単に作ることもできなさそうですし。やはり,簡単に儲けられる時代はとっくの昔ですか。

波多氏:
 概算ではありますが,ストアランキング下位で月収1億円の売り上げといったところです。しかも,1億円と聞いたら大きく思えますが,そこから版権の手数料やランニングコストなどを差し引くと半分以下になっていることもザラです。そのうえ,リリース前までの開発費を取り戻すには年単位のサービス継続と相応の収益が求められます。まあ,数字のロジックは会社ごとに違いますが。

4Gamer:
 まるで給料からローンや保険料が引かれているときの気分。

波多氏:
 そして日本のストアランキングって,まったく流動的じゃないですよね?

4Gamer:
 固定タイトルが順列を入れ替わっているだけ,みたいな見方はできます。

波多氏:
 そういう市場では屍しか生まれません。そこに数億円もの予算をつぎ込んで勝ちにいこうとしても,会社が「NO」と言うのは合理的な経営判断と言えるでしょう。勝つための方程式を持っていなければただの博打ですし,そのリスクを最大限減らそうとするなら,現場を予算のやりくりで縛るのも分かる気がします。

4Gamer:
 それでもなお,どの会社もスマホゲームで挑みます。それはスマホゲームが現代の“主流”と見ているからですよね。

波多氏:
 各社でいろいろな議論が渦巻いているとは思います。スマホでもできるHTML5ゲーム,次世代のVRゲーム,新世代ハードのSwitchで挑むなど,取れる手段は豊富にありますから。ただ主流と仰られたとおり,現在のゲーム市場においてスマホゲームはまさしく本命です。「逃げている」「避けている」と言うと語弊になってしまいますが,スマホゲームが大混戦だからと,確たる狙いを持たずに違うハードで挑んでも良い結果は生まれません。僕もどうせなら本命にぶつかるべきと考えています。

4Gamer:
 挑む先が地獄絵図でもですか。

波多氏:
 体力のぶつけ合いでビッグタイトルに打ち勝つ正攻法はおいそれとできるものではありませんし,言葉だけだと八方ふさがりですけどね。でも「戦うところはそこじゃない」ので,異なる手段はいくつも考えられます。それはこれまで屍と化してきた作品達にも込められてきた想いです。楠木正成商法と言いますか,プラカノのような一点突破の戦術は無数にあるんです。

4Gamer:
 まさにゲリラ戦術ですね。

波多氏:
 あまりに正道とかけ離れていると「なんだこれ」と思われてしまうため,コンセプトには芯が求められますけどね。


4Gamer:
 日和った意見に聞こえるかもしれませんが,PCゲームでもコンシューマゲームでも「洋ゲー」という枠が認知されているのに,スマホゲームは国産にこだわりがちですよね。理屈は分かるんです。「海外から黒船が来襲してきた」とムキムキするのは。どの業界でも「どこの国に勝った負けた」は刺激的な抵抗感があって,気持ちも煽りやすいので。

波多氏:
 ええ,そうですね。

4Gamer:
 しかし,グローバルもグローバルなスマホゲーム市場においては,洋スマホゲーが正しく参入しているほうが自然な在り方なのではと。日本のストアランキングの毛色の違いは幾度も言及されてきたほどですが,日本のスマホゲーム市場はいわばガラパゴスの名のもとに幼年期が続いていただけで,これから中国の真っ向勝負なスマホゲームが入り乱れることで,ようやく「幼年期の終り」を迎えられるんじゃないか,みたいな。

波多氏:
 「淘汰」ですね。ある意味,自然な流れです。ここ数年で中国のスマホゲームが台頭してきたように,海外発の作品のパブリッシング事業もより大きな“当たり目”となってきましたし。弊社でも香港発の「War Locks」というゲームを日本でパブリッシング予定ですね。

4Gamer:
 ですよね。難題には変わりありませんが,「敵が来た」とばかり構えていると無駄に逼迫し,疲弊するだけではと思うようになってきました。当然,危機感を疎かにし,牙が抜け落ちていたら骨抜きになってしまっているのでしょうが,日本のゲームクリエイターもゲームファンも決してそうではないでしょう。波多さんのようなゲームを作る側にとっては,いかがですか。

波多氏:
 僕のような開発側の人間は,今まさに分岐路に立っていると思います。「次代の新しいものを目指す人」と「既存のありものに迎合する人」のどちらに行けるのかの。

4Gamer:
 プライド的には前者でありたい。

波多氏:
 可能性の話ではありますが,これからランキング30位圏内に中国のスマホゲームが食い込む割合は「30%」くらいまで及ぶだろうと予測しています。その先,40%まで踏み込まれるのか,20%に踏みとどまらせられるのか,そこが我々クリエイターの仕事次第となるのでしょう。

4Gamer:
 グローバルになるのではと言っておいてなんですが,割合10%を目指すことは。

波多氏:
 日本でゲーム開発に携わっている人なら,そうすることを目指すでしょう。

4Gamer:
 私も識者ぶるより「にほんのげーむはつよいんだぞ!」と言って暮らしたいです。ちなみにプラカノにはなにか,波多さんの「中国ゲーム市場を見返す」「日本市場に一石を投じる」といった想いも込められているのでしょうか。

波多氏:
 いえいえ,現場の状況でも分かってもらえると思いますが,そんな身勝手な想いは託していません。無意識に影響させてしまっている部分はあるのかもしれませんが,今のプラカノに込められているのは,誰に向けたものでもない,僕や開発陣の「こんなゲームを作れるのは俺達だけだ!」という気持ちだけです。

4Gamer:
 じゃあ「中国で学んだゲーム開発のノウハウ」的なものを導入されたりは。

波多氏:
 まったくないです。

4Gamer:
 まったくないんですか。

波多氏:
 技術介入や体制変更といったドラスティックな方策は採っていません。あくまで,既存の環境における効率・能率といったものを最大化する手助けに留めています。プラカノの根幹は“エディアのオリジナル”であるべきですから。

4Gamer:
 昨年のインタビューでは「日本のスマホゲームの運営は力技でぶん回している」と指摘されていましたが,それだとプラカノもリリース後は同枠に収まってしまうのでは。

波多氏:
 僕もいくつか方法論は持っていますが,それらを適用したところで運営が完全に変わるわけではないんですよね。

 結局のところ,運営型ゲームは“力技でぶん回さざるを得ない根本的な事情”があるもので。

4Gamer:
 根本的な事情ですか。

波多氏:
 開発が「運営のことを考えないゲーム作り」で進められるからです。

4Gamer:
 ああ,そういう。

波多氏:
 運営型ゲームは,開発チームが後々の運営までをもワンストップサービスとして捉えていないと,運営チームが運用するにあたって最適化されないケースがよくあります。納期や構造など要因はさまざまですが,たとえ完全内製であろうと両チームでうまくすり合わせていなければ同じ穴に落ちます。これまでのスマホゲームの失敗例も多くは「開発はうまくいったのに運営でコケちゃった」でしょうから。

4Gamer:
 そう言われると,ゲームのみならずいろいろと思い浮かびますね。

波多氏:
 具体例を挙げると,運営に必要なリソースをアセットバンドルで反映させるとき,プランナーの手で作業できるようなツールが用意されていなければ,作業をするためにプログラマーの手を借りなければならないんです。

4Gamer:
 単体の作業としてはそうでもないのに,物理的にも精神的にも「できるけど面倒」と思ってしまいがちなやつですね。

波多氏:
 「数人の運営スタッフだけでうまく回せる仕組み」はあらかじめ構築していなければ,小さなものから大きなものまで手間が積み重なり,現実問題として力技でやらなければなくなっていきます。運営に入ってから仕組みを作るのも簡単な話ではないです。本来は開発段階でそれらを考慮しておくべきなんですが。

4Gamer:
 ままならないと。

波多氏:
 そういうことです。これは日本のゲーム開発・運営の環境がそうなっている,そうさせているものなので,どうしようもないケースは多々あります。プラカノも最終的にどれだけ力技になるのかはまだ確定していませんが,効率化できるものはすべて効率化していきたいと各所に伝え,反映してもらっている最中です。またその一環として,すでに現場に運営専門のディレクターを配属してもらっています。

4Gamer:
 サービス前から運営ディレクターがいるわけですか。そのメリットは。

波多氏:
 運営型ゲームでは,「開発ディレクターがサービス後に運営ディレクターを引き継ぐ」「開発と運営のディレクターがそれぞれまったく違う現場にいる」といったケースを採りがちです。これらは決して悪例ではありませんが,専門分野やシナジーを考えると最適ではないです。だから,プラカノでは運営経験に長けたディレクターを別で用意し,今から稼働してもらうことで,後のサービスを円滑にする案を考えてもらっているんです。

4Gamer:
 現場はどんな雰囲気になっているのでしょう。

波多氏:
 言わずもがなですが,もう大激論ですよ(笑)。

4Gamer:
 ですよね(笑)。

波多氏:
 双方の「こっちのほうがいい」「そっちにするべきだ」がぶつかりますから。しかし,確実により良い方向に進めています。

4Gamer:
 そもそも「運営のことを考えないゲーム作り」は事例として多いのでしょうか。最近はどこもノウハウが溜まっていそうなもんですが。

波多氏:
 一昔前に比べれば考えられていると思います。とくに大手企業が力を入れているゲームはここを考えずに作っている例は少ない,と思いたいです。

4Gamer:
 成功例にも「たまたま相性がよかった」が入り混じってそう。

波多氏:
 喧伝されることはありませんが,往々にしてあるでしょうね。

4Gamer:
 「もしかしたら上手くいくかもしれない」という魔法の言葉に騙されるのでしょう,現場は。編集業でも身震いする例が多々あります。さてと,さすがに,もう本題に入りましょうか……(笑)。

波多氏:
 そうですね(笑)。

4Gamer:
 そういえばプラカノって“どうマネタイズするのか”が見えてこないのですが。

波多氏:
 簡単に説明することはできますが,まずはマネタイズをしてもらうための前提からお話させてください。プラカノの課題は「プレイヤーをいかに感情移入させ,ゲーム内容に寄り添ってもらうか」ですし,そのために見直した世界観ですから。

4Gamer:
 分かりました。それでは世界観からうかがっていきましょうか。

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    マップラス+カノジョ

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