インタビュー
江崎グリコのPockyが「CAPCOM CUP 2019」を機にeスポーツに参入。発起人となった玉井博久氏に経緯と展望を語ってもらった
Pockyの江崎グリコがeスポーツ本格参入を発表。「ストリートファイターV」とグローバルコラボした「Pocky K.O. Challenge」が開始
江崎グリコは本日,カプコンの「ストリートファイターV アーケードエディション」とのグローバルコラボによる「Pocky K.O. Challenge」を開始した。また,12月13日よりロサンゼルスで開催される「CAPCOM CUP 2019」と連動し,Pockyがeスポーツに本格参入することを発表した。
今回のコラボレーション企画では,「ストリートファイターV」の対戦中,自身の体力ゲージが「Pockyの比率(チョコレートとプレッツェルの比率)」の状態で相手をK.O.することを「Pocky K.O.」,Pocky K.O.に挑戦することを「Pocky K.O. Challenge」,Pocky K.O.が成功しそうな状態を「Pocky K.O. Chance」と名付けている。
「CAPCOM CUP 2019」の会期中,会場には「Pocky K.O.」専用のUIを実装した「Street Fighter V Pocky Edition」(以下,Pocky Edition)がプレイアブル出展されるほか,強豪プレイヤー達が「Pocky K.O.」を競い合うスペシャルマッチも開催される。
またそれに先駆け,11月18日からグローバルコラボレーションキャンペーン「Pocky K.O. Challenge」を実施。「Pocky Edition」がなくとも対戦時にキャプチャした静止画を用いてWeb上で「Pocky K.O.」に成功しているかどうかを判定する「Pocky K.O. Checker」が公開されている。
昨今,食品メーカーや飲料メーカーがeスポーツに参入し,チームや大会のスポンサーになるニュースも多く報じられているが,「Pocky Edition」のように企業の商品が競技となるゲームのシステムに入り込み,専用UIまで開発されることは極めて珍しいケースだ。
そこで4Gamerでは,「Pocky K.O.」企画の発起人である江崎グリコのアシスタントグローバルブランドマネージャー 玉井博久氏にコラボの経緯や展望を聞いてみた。
格闘ゲームは個人戦であるが,多くの人とつながれるeスポーツ
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。まず始めにPockyがeスポーツに参入することになった経緯を教えてもらえますか。
玉井博久氏(以下,玉井氏):
現在,eスポーツは世界的に成長が著しく,とくにアメリカと中国でものすごい盛り上がりを見せています。どちらの地域もPockyブランドの海外展開における主要地域であり,そこで盛り上がっているものを見逃すわけにはいかないということがまずありました。また,Pockyブランドにとって,eスポーツは既存のスポーツと異なる特徴があるんです。
4Gamer:
異なる特徴とは一体何でしょうか。
玉井氏:
既存のスポーツでは試合中に水分を取ることは多いと思いますが,お菓子を食べるということはまずありません。その一方でeスポーツは,室内で行われることや,選手が座っている状態であることなどから,食べる機会を作ることもできるんです。
4Gamer:
確かにPockyは手軽に食べやすいお菓子ですよね。
玉井氏:
まとめると成長している分野であり,我々の主要マーケットで盛り上がっており,さらにPockyブランドとも相性がいいという要素が参入の決め手になったわけです。
4Gamer:
昨今のeスポーツの競技シーンを見ると,試合のインターバルに飴などを摂取して,糖分補給している選手も少なくありません。そんな中,Pockyのようなお菓子がeスポーツに参入してくるというのは,いいタイミングだと思います。
玉井氏:
私も選手達が糖分を必要としている話はよく聞いていますので,参入しがいがあるなと感じています。
4Gamer:
eスポーツと言ってもさまざまなジャンル,タイトルのゲームがあります。その中で対戦格闘ゲームというジャンルで参入しようと考えた理由を教えてもらえますか。
玉井氏:
Pockyは,「Share happiness!」(幸せを分かち合う)をブランドメッセージに掲げています。そのメッセージを踏まえたうえで,我々はeスポーツに参入するにあたって,さまざまなジャンルについて調べました。
一番最初に候補に挙がったのは,チームでプレイするジャンルです。しかしこれらのジャンルは,チームの中で結束は生まれますが,逆に言えば結束がチームで止まってしまうことが多いんです。
4Gamer:
チームという結束が強いからこそ,それ以上は広がりにくいと。
玉井氏:
それであれば,個人でプレイできるジャンルのほうが,知ってる人,知らない人を巻き込んで,より大きく広がっていくのではないかと考えました。また,試合時間についても,ある程度短く,同じ時間で繰り返しプレイできるほうが他人と楽しみを分かち合う機会が増えるだろうと。
実は社内でも格闘ゲームと「Share happiness!」がどうつながるのかと,よく質問を受けたのですが,これら2つの理由で説明を行っていました。イメージとしては,確かにチームプレイを行うゲームのほうがマッチしそうですが,格闘ゲームならもっと大きな広がりを期待できる。Pockyは既存の友達とだけ仲良くなってほしいブランドではなく,もっと多くのいろいろな人達とつながりを持ってほしいというブランドなので,チームという壁がなく,さらに同じ時間内でより多くの試合ができる格闘ゲームがふさわしいという結論に至ったわけです。
4Gamer:
確かに格闘ゲームの強豪選手は,ライバルでありつつも攻略を共有して一緒に練習をするなど,仲がいいプレイヤーが多いですよね。eスポーツの中でも珍しい類いに感じます。
玉井氏:
そうなんですよ。格闘技を扱ったゲームと言うと「相手を倒す」というイメージを抱く人は少なくないですが,試合をして勝敗を決めるという点ではサッカーやアメフト,野球などほかのスポーツと何も変わらないんです。リアルでどちらかが倒れるまで殴り合ったら確かに大問題ですが,格闘ゲームはきちんとルールのあるスポーツと同じであることを説明しました。
カプコンもノリノリで開発を進めた「Street Fighter V Pocky Edition」
4Gamer:
数ある格闘ゲームの中で,「ストリートファイターV」をコラボの候補に選出した理由を聞かせてください。
玉井氏:
ジャンルが格闘ゲームに決まったときに真っ先に頭に浮かんだタイトルが「ストリートファイターV」でした。もちろんそれだけで決まるわけではなくて,市場調査の結果,格闘ゲームの中でも世界有数のプレイヤー数を誇るなど,世界中で人気・認知度が高いということを数字で確認できました。
4Gamer:
第一印象で浮かんだ候補で,裏付けを取ってみたところ,やっぱり「ストリートファイターV」だったというわけですね。
玉井氏:
そのとおりです。そして,eスポーツに参入するにあたって,多くの人が「実際にやってみたい」と思える企画を打ち出すことを考えました。よくあるeスポーツ参入の形としては,「Pocky Cup」といったように大会をスポンサードしたり,商品を提供して選手のユニフォームにロゴを入れたりといったものがあります。しかし,それらは予算さえあればできてしまうことですよね。
私達も含めてグローバル企業同士がお金で勝負し始めると,将来的に良いことはありません。最近ですとスタジアムの名前がコロコロ変わったりしていますが,あれはそういったお金の勝負になってしまっている例になります。
4Gamer:
よりお金を出せる企業の冠が付くわけですね。
玉井氏:
そうではなく,プレイヤーや視聴してくれる人が「Pocky,おもろいことやってくれるじゃん」と思ってくれる企画を打ち出したかったんです。
「Pocky K.O.」は,ある瞬間の体力ゲージがPockyに見えたときに思いついたアイディアで,ゲージがPockyの比率になったときに,何か気持ちがいいことが起きたらPockyを知らない人も「やってみたい」と思ってもらえるのではないか,ひいてはPockyの認知度も上がるのではないか,好意的な印象を抱いてもらえるのではないか,と考えたわけです。
4Gamer:
実際に「Pocky K.O.」を提案したときのカプコンの反応はどうだったのでしょうか。
玉井氏:
ありがたいことに,すごく好意的に受け取っていただけて,話もトントン拍子に進んでいきました。私自身はゲーム開発の経験がないので,コラボを盛り上げるために何をどこまでお願いできるのかというところからご相談したんですが,「Pocky Edition」の実現はもちろん,企画をよりよくするための提案や「CAPCOM CUP 2019」に間に合わせられるかどうかの検討までしていただけたんです。
4Gamer:
「CAPCOM CUP 2019」での「Pocky Edition」のデビューに先駆け,11月18日から「Pocky K.O. Challenge」キャンペーンもスタートしています。反響や手応えはいかがですか。
玉井氏:
数字は公表していないのですが,我々の事前予想よりも多くの反響を集めています。実を言うとこのキャンペーンは,もともと「CAPCOM CUP 2019」の会場に足を運べない皆さんのために,「Pocky Edition」の疑似体験を提供しようと考えて企画したものなんです。「Pocky K.O.」を実感するのに一手間かかってしまうので,どれだけのプレイヤーが遊んでくれるか少し心配でしたが,たくさんの方に試していただけているようで,とても驚きました。
また,「CAPCOM CUP 2019」で「Pocky Edition」の実機が遊べますが,現地に行くという人はぜひ遊んでほしいですし,配信を視聴するという人も強豪選手達によるスペシャルマッチをぜひ楽しみにしていてもらえればと思います。
4Gamer:
キャンペーンの反響が一番大きかった国や地域はどこになりますか。
玉井氏:
圧倒的にアメリカです。また,国内の皆さんも参加してくださっていますね。あとSNSではタイ語やスペイン語の投稿も見受けられます。
4Gamer:
圧倒的にアメリカが多いとのことですが,そもそもアメリカにおけるPockyの認知度はどのくらいあるのでしょうか。
玉井氏:
認知度自体はまだまだといったところです。Pockyは日本では非常に多くの方に認知していただけていますが,アメリカではまだまだ成長の余地があります。
4Gamer:
最後に今後Pockyがどのような形でeスポーツに取り組んでいくのか,展望をお聞かせください。
玉井氏:
今回の取り組みでは,Pockyに対してどういった反響があるのかを確認したいと考えています。確認対象はいわゆる認知やイメージ,それから一番大事な売上ですね。とくに売上に関しては,12月13日より限定コラボパッケージを販売しますから,12月から2020年1月の間にどのくらいインパクトがあったのか。それらを鑑みて効果を確認できたら,もっとほかの国や地域に展開していく,あるいはまた2020年にアメリカで何かできないか,もしくはカプコンさんとまた違った取り組みができないかといったことを検討できたらと思います。
社内関係者に「これはいい施策だ」と納得してもらえる材料を手に入れることが次につなげるための第1歩だと考えています。
4Gamer:
本日はありがとうございました。
ポッキー【Pocky】江崎グリコ公式サイト
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ストリートファイターV アーケードエディション
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