2020年7月17日に発売が予定されているPlayStation 4専用のオープンワールド型アクションアドベンチャー「
Ghost of Tsushima 」。先日のState of Playにて新しいトレイラーが公開された本作だが,その内容を受けて開発元のSucker Punch Productionsのクリエイティブ・ディレクターである
ネイト・フォックス(Nate Fox)氏 にショートインタビューする機会があったので,そこで聞いた話を交えつつ,もう一度トレイラーの内容をじっくりと紹介してみたい。
探索とアイテム獲得の楽しさ
「Ghost of Tsushima」は,13世紀後半に起きたモンゴル軍の対馬侵攻を描く作品だ。本作の開発にあたって,フォックス氏ら開発メンバーは対馬へ現地取材をしており,対馬を代表する宗氏の末裔という名士と偶然に出会ったり,地元の新聞に取り上げられたりしている。
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2017/12/11 00:00
今回のインタビューでフォックス氏は,
「探索の楽しさを味わってもらいたい」 と語っていた。南北に細長い対馬の「地形」は,ほぼそのままオープンワールド型マップとして採用しつつも,ゲームとして興味深いロケーションを増やすため,山と森だらけの「地勢」は大きくアレンジしているとフォックス氏は言う。
13世紀後半の対馬は,村と村をつなぐ道も獣道に近く,船による海上移動のほうが手っ取り早かったそうだが,そうした険しい部分を減らし,松や竹,桜,モミジといった美しい樹木が生える林や,スイセンやハスの咲く池,さらに馬で駆け抜けるのが楽しそうなススキの野原,さらに人々が開墾した田んぼなどを配置することで,より日本らしい情景にアレンジしているわけだ。
小高い山に登れば,遠くに立ち上る煙が確認できる。煙の上がる場所は基本的に「島民が助けを求めている場所」であるらしい。まだ到達したことのない場所をマップで指定すると,ゲーム画面に白い風
「Guiding Wind」 が吹き,どちらの方向に行くべきかが確認できるようになっている。
このあたりは,これまで多くのゲームがコンパスや矢印などで表示してきたのとは異なり,非常にナチュラルに表現されているのが分かるだろう。事実,探索中のゲーム画面は最小限のUIで構成されており,没入感を重視したゲームデザインになっていることがうかがえる。
ゲーム中では矢印表示の代わりに,「Guiding Wind」という白い風の流れが目的地まで導いてくれる。ちなみに赤い足跡アイコンは,動物を表すものだ※画像はトレイラーからキャプチャーしたものです
またトレイラーでは,主人公の「仁」が道中でさまざまな動物に誘われているのが確認できる。その先には稲荷神社があり,参拝することで
「護符」 スロットをアンロックできるようだ。
この護符は,プレイヤーのアクションに限定的なブーストを与えてくれる要素となっており,戦闘中でもヘルスを徐々に回復する「大国主神の護符」,風鈴が毒ガスをまき散らす「毒蛇の護符」,スモークボムがプレイヤーキャラクターのヘルスも回復する「安息の護符」などがあるそうだ。
※画像はトレイラーからキャプチャーしたものです
おじぎの立て札が少しユニークだが,ゲーム中に点在する神社や祠に向かって手を合わせて祈りを捧げることで,さまざまな加護を受けられるようだ※画像はトレイラーからキャプチャーしたものです
馬に乗って走っていると見落としてしまいそうな,隠れるように佇む祠もあれば,より大きなご利益を与えてくれるであろう大きめの神社も存在し,神社の格式によって護符の効力も変化すると思われる。
「海神神社」のような,対馬に実在するランドマークについてフォックス氏は明言してくれなかったものの,
「あるべきものはその場所にある」 と話していたので,特定の村やスポットについては忠実に再現されるようだ。
過去にリリースされたアートワークより。対馬に五重塔があったという歴史はないが,こうした日本的な風景が隠れるようにアチコチに用意されており,それらを探索してみるのも楽しそうだ
またプレイヤーは弓矢の材料になると思われる「竹」など,さまざな資源の近くを通過し,アイテムをピックアップすることもできる。とくに花は,着物や甲冑の染付を行うのに非常に重要なアイテムになりそうだ。トレイラーから判断する限り,ヨモギ色のような,日本の伝統色に統一された衣装のカラーリングも楽しめるようで,このあたりにも,アーティストたちの日本文化に対するこだわりが感じられる。
マップ中に生えている木材から,廃墟の中にあるアイテムまで,さまざまなものをピックアップしながらゲームを進めていくという資源管理の要素がある※画像はトレイラーからキャプチャーしたものです
主人公“境井 仁”
「Ghost of Tsushima」の主人公である“
ジン・サカイ ”は,漢字表記では「境井 仁」になる。ただ,境井氏という一族が,実際に鎌倉時代の対馬に存在したのかは少し検索してみただけでは分からないし,このあたりを忠実な歴史人物と照らし合わせる意味はそれほどない。
フォックス氏によると,仁は「武士の家督の中で生まれた若武者」だという。そのため,刀や弓は序盤からある程度使いこなせるが,仁は圧倒的な勢力を持つモンゴル軍に対して孤軍奮闘の戦いを続けていくうちに,背後から襲い掛かったり,特殊な武器を使ったりと,サムライらしからぬ戦いを身に着けていくことになる。
このあたりも,フォックス氏は少しはぐらかし気味だったものの,仁の戦いぶりを見た島民のセリフが「お侍さまの戦い方じゃない」と言うのは,このゲームの多くを示唆している。実際,トレイラーのアクションシーンでは,ニンジャが使いそうなクナイや煙玉を使っているのが確認でき,まだニンジャという存在が明確でなかった頃から,その見慣れぬ戦法を使用して,モンゴル軍どころか島民たちからも「ゴースト」(日本語版では冥人 - くろうど)として恐れられるのが仁なのである。
仁が誰からサムライらしからぬ戦い方を学んでいくのは気になるところだが,フォックス氏によると,スキルツリーのようなものも存在するとのことだ。
以前に公開されていたトレイラーでは喧嘩をしていた「マサコ」というキャラクターなど,共に行動するキャラクターもいるようだ※画像はトレイラーからキャプチャーしたものです
仁の愛馬は“
ノブ ”という名前で呼ばれており,ゲーム中でも仁が声をかけたり,撫でたりしている様子が描写されている。名前がセリフにも盛り込まれているので,別の馬に置き換えたり,名前を自由に変更したりすることはできないのだろうか。フォックス氏は,「ノブはいつも仁に寄り添ってくれる親友のような存在だ。困ったときには助けてくれ、死ぬこともない」とコメントしていたので,プレイヤーの良きパートナーになってくれることは間違いなさそうだ。
一撃必殺のしびれるアクション
「Ghost of Tsushima」の魅力の1つといえば,日本の殺陣(たて)を参考にしたアクションである。トレイラーでは,モンゴル兵たちに占領されている漁村に乗り込んだ仁が,真正面から歩み寄って,「一騎打ち」を申し込むシーンがあり,相手が「俺と戦え(Fight me!)」と挑発してくる中,黙々と標的に近付いていく姿はしびれるものがある。しかも,相手の攻撃を見抜くかのように間合いを取り,一撃で3人を同時に仕留めるところは,サムライ映画っぽくてカッコ良い演出だ。
※画像はトレイラーからキャプチャーしたものです
仁にはヘルスのほか,特定のアクションを繰り出すためのスタミナ値もあり,フォックス氏はトレイラー中で,「エネルギー(スタミナ)を無駄にする余裕はなく,すべての攻撃が重要になる」と語っている。このあたりのマネージメントは,かなりシビアなものになるのかもしれない。
相手の弓矢による攻撃をどのように薙ぎ払っているのかは分からないが,刀を頭上で横に構えるディフェンスモードも確認できる。また,ゲーム中では
4つのスタンス (型)を自在に変えられ,槍や剣の攻撃に対しては「石の型」,射手が加わった戦いでは「水の型」へと変更しているのが分かる。こうしたスタンスの変更が,相手の攻撃をいなすのに役立っていると思われる。
今回のトレイラーでは,同じミッションを2回繰り返して,ステルスプレイを重視する
「ゴーストスタイル」 と,通常の剣技アクションを中心にする
「サムライスタイル」 の異なるスタイルが紹介されたが,このモードはミッションごとにロックされるのではなく,任意で変更できるそうだ。
「ゴースト(冥人)」での戦い方は,音の出る「Wind Chime」(鈴)や「Firecracker」(爆竹)で相手の気を別方向に惹きつけ,背後や上方から飛び込んで相手を切り捨てていく,といった感じで進んでいく。「対馬のゴースト」という異名はゲームを続けていくうちにモンゴル軍の間で広まり始めるらしく,甲冑を付けていない下っ端の兵士たちは,仁が近付くだけで逃げ出したり,腰を抜かして殺されるのをただ待つだけの状態になるそうだ。プレイヤーが,自分が強くなっていくことをゲームプレイの中で感じられるかもしれない。
今回紹介されたトレイラーでは,ゲームをノイズ入りの白黒画面にする
「Samurai Cinema」 モードや
フォトモード のほか,日本語のセリフに英語やほかの言語の字幕テキストを挿入するという
「Japanese Voice Track」 という機能も紹介された。
トレイラーの中での仁のセリフは短いが,それでも「ONE PIECEのゾロの声だ!」と,日本語オリジナル言語版の声優である中井和哉さんの参加に気付くファンも少なくないようで,このトレイラーだけでも非常に盛り上がっているのが分かる。
発売まで残すことあと2か月を切った本作。「inFAMOUS」シリーズで知られるSucker Punch Productionsのサムライゲームが,日本のゲーマーにどう受け入れられるのか,今から楽しみだ。