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「Age of Empires III: Definitive Edition」リリース記念。蘇った最高に忙しいRTSを今から始めてほしい理由がある
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印刷2020/10/23 12:00

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「Age of Empires III: Definitive Edition」リリース記念。蘇った最高に忙しいRTSを今から始めてほしい理由がある

 2005年に発売された「Age of Empires III」のリマスター版「Age of Empires III: Definitive Edition」(以下,「AoE3:DE」)が,Microsoftから2020年10月15日にリリースされた。最新作「Age of Empires IV」の発売が待たれる中,この機会にRTS(リアルタイムストラテジー)と「Age of Empires」シリーズ,そして本作の魅力を紹介してみたい。

画像集#001のサムネイル/「Age of Empires III: Definitive Edition」リリース記念。蘇った最高に忙しいRTSを今から始めてほしい理由がある

Microsoft Store「Age of Empires III: Definitive Edition」



最も複雑な対戦ゲームとは?


 たとえば,最も複雑な対戦ゲームとは何か,と問いかけてみる。

 それは格闘ゲームだろうか。1フレーム単位で的確にコマンドを入力する操作性は熟練者でも日々の練習が欠かせず,その上で対戦相手の次の手を読み続ける能力も必要だ。格闘ゲームほどストイックなゲームは珍しく,確かに複雑だろう。

 人によってはFPSと答えるかもしれない。マウスやゲームパッドで敵の頭という一点を撃ち抜く正確な操作を要求されるだけでなく,協力プレイでは仲間と連携をとって,攻防をこなしていくチームワークも必要になる。確かにFPSほど複雑でやりごたえのあるゲームはないかもしれない。

 だが筆者は,RTSほど複雑な対戦ゲームはほかにないと考える。もちろん,単純に比較できるようなものではなく,RTSがほかのゲームジャンルと比べて優れていると言いたいわけではない。しかし,RTSのように幅広く多様な技術や知識,決断を同時に問うゲームデザインが組み込まれたゲーム,つまり複雑なゲームはそう多くないと思うのだ。

 RTS,リアルタイムストラテジーとは,文字通りリアルタイムで意思決定を迫る戦略ゲームである。多くの戦略ゲームは,ボードゲームのようにプレイヤーの意思決定を交互に進めていくが,RTSはどこに駒を配置し,侵略や防衛したうえで,最終的にどう相手を倒すかをリアルタイムで決めていく必要がある。

 このジャンルの起源は諸説ある(そもそもRTSというジャンルの定義が諸説あるが)ため,一概にどの作品が原点だとは言えないが,少なくとも今のようなRTSの原型はテクノソフトの「ヘルツォーク・ツヴァイ」(1989年)に見られる。
 リアルタイムで戦況が変化する戦略ゲームであれば,「ボコスカウォーズ」(1983年)も当てはまる。ただ,ごく小さなスペースで戦況を一望するミニマップや,自軍の拠点を維持・管理しつつリソースを増やし,新しいユニットを戦場に適宜投入するシステムなどを有した「ヘルツォーク・ツヴァイ」は,RTSというゲームの総合的な完成度が最も高く仕上がっていた。


 もっとも,RTS文化は日本ではなくアメリカで花開いた。1990年代には「Dune 2」「Warcraft: Orcs & Humans」「Command & Conquer」「StarCraft」,そして「Age of Empires」など,今でもゲーマーにはよく知られるタイトルがリリースされ,ここにRTS黄金期が築かれる。

 なぜ「ヘルツォーク・ツヴァイ」をはじめとする優れた戦略ゲームを輩出してきた日本ではなく,アメリカでRTS文化が発展したのか。これは主要なゲームハードが家庭用ゲーム機に偏りがちだった日本と比べて,アメリカではPCも並行して普及しており,またRTSは極めてPCに最適化されたゲームデザインだったことが要因として考えられる。
 たとえば,家庭用ゲーム機ではユニットを動かすにも1つずつ方向キーで選ぶ必要があったのに対して,PCであればマウスでまとめて一瞬で選べる。また,ユニットのスキルや隊列の管理もホットキーを設定すれば容易になり,戦場を視界によって管理する“戦場の霧”システムもマウスの操作性があるがゆえに導入できたものではないか。
 総じて,広大なマップで無数のユニットを管理するよう進化したRTSにとって,マウスとキーボードを用いた操作と,当時はコンシューマ機よりも高い画像処理ができるPCが適していた。

画像集#002のサムネイル/「Age of Empires III: Definitive Edition」リリース記念。蘇った最高に忙しいRTSを今から始めてほしい理由がある
画像は「StarCraft」

 さて,ここまでRTSについて浅学菲才を覚悟で綴ってきたのは,筆者自身がRTSというゲームジャンルに対して一種の浪漫を感じずにいられないからだ。
 RTSは極めて複雑なルールや仕組みがあり,そのためにPCゲームという特殊な環境で育った。そのRTSの中でも「Age of Empires」シリーズほど複雑で,そして魅力的なゲームはないと思う。開発者たちが理想とするゲームを追い求め,カジュアルとは正反対の方向へ進化していったRTSたちの姿に,浪漫を感じるのである。


史実を再現することで浮かび上がる“内政システム”の妙


 一般的に戦略ゲームとは,戦争の再現である。前線を盾で抑えつつ,後陣に配した弓兵で相手を痛めつけ,敗走した敵を騎兵で追撃する。こうした戦略は,それこそチェスや将棋を含む無数の戦略的な要素のあるゲームであれば,デジタルとアナログを問わず有効だ。騎兵を「StarCraft」のstalkerや「Company of Heroes」のBren Carrierに置き換えてもいいだろう。

 「Age of Empires」シリーズでは,プレイを始めた時点にごくわずかな戦闘ユニット,あとは労働者(worker)系ユニットしか与えられない。そこでまずは,労働者で肉や木材,鉄といったリソースを集め,それらを元に弓兵や騎兵といった軍事ユニットを生産。これらで相手プレイヤーの拠点や労働者を襲い,自軍の強化と敵の弱体化を図っていく。

画像集#003のサムネイル/「Age of Empires III: Definitive Edition」リリース記念。蘇った最高に忙しいRTSを今から始めてほしい理由がある
画像は「Age of Empires II: Definitive Edition」

 この“内政システム”は歴史シミュレーションゲームでも見られるものだが,RTSにおいても重要なエッセンスとなる。
 どのリソースにどれだけの労働者を配置するかを考えたり,施設を建てて労働効率をアップさせたりといった,いかに効率的に利益を増やすかという内政戦略を考えなければならない一方,小規模のゲリラ用部隊で相手の労働者を襲い,内政を妨害するという意地悪な戦略も実行できる。

 そうなると城壁を建てて労働者を守ったり,その城壁を崩すために破城槌やカタパルトを投入する戦略にも派生する。労働者による内政システムはプレイヤーにとってのアキレス腱であり,ただ軍同士をぶつけるだけの戦略でなく,あえて迂回して弱点である生産拠点を攻める/守るという一段上の戦略を考えなければいけないのだ。

 とりわけ,「Age of Empires」は内政システムの奥深さが特徴的だ。SF的な世界観を持つ「StarCraft」や,ファンタジー的な世界観の「Warcraft」とは異なり,「Age of Empires」シリーズは,エジプトやローマ,シュメール,漢といった実在した文明をトークンに見立て,お互いの戦略を競う歴史スペクタクルを内包したゲームである。
 実際に労働者が畑を耕し,騎兵が野を駆ける姿を目にしながらRTSを遊べるというだけでも楽しいが,ここで何より重要なのは単に歴史をシミュレーションするのでなく,あくまで史実に近い世界観をゲーム上で再現することによって,内政(経済)というシステムを本格的にゲームデザインへ組み込んだ点なのである。

 歴史上,大国の趨勢を変えた戦争はいくつかあるが,実質的に国家の中枢を担ったのは食糧を生産し,経済を左右した農民たちが主である。「Age of Empires」シリーズは世界観を史実に近づけることによって,戦争だけでなく経済の重要性をも問うゲームデザインに近づけていて,いかに合理的な経済を発展させてリソースを集めるか,また,いかに能動的に軍を指揮して敵のリソースを奪うかという,二重の基準をゲームデザインに取り入れているのだ。

 余談になるが,この点はシリーズ累計4000万本以上のセールスを記録している,シド・マイヤー氏による名作ストラテジーゲーム「Civilization」に近い発想と言えるだろう。それもそのはず,「Age of Empires」シリーズの主要デザイナーはシド・マイヤー氏のもとで働いた経験のあるブルース・シェリー氏なのだ。

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 11月26日にマイクロソフトより発売される「エイジ オブ エンパイア III:コンプリート コレクション」。AoEといえば,日本でもっとも売れたRTSシリーズ。4Gamer読者の中にも「鬼のようにハマった」という人は多いことと思うが,今回は,そんなAoEシリーズの面白さについて改めて考えてみた。

[2009/10/30 12:00]

 そうした「Age of Empires」シリーズならではの内政システムの極めつけとして,ゲームのタイトルにもある「時代(Age)システム」が挙げられる。これは,莫大なリソースを消費することで“文明全体の技術水準を進化”させるもので,1作目であれば石器時代から道具時代,青銅時代,鉄器時代,帝国の時代といった形で文明が進んでいく。
 もちろん文明が進むほど,強力なユニットや施設を作れるようになるので,リソースが集まり次第進化したいところだが,研究にリソースを使いすぎると領土を守る軍すら維持できないというジレンマが待っている。また,文明の特徴も初期の時代のほうが強い文明,逆に後期にならないとロクに戦えない文明が存在するため,それらの相性を考慮して常に内政と軍事,どちらにリソースを割くかで頭を悩ませることになる。だが,これが抜群に面白い。

画像集#004のサムネイル/「Age of Empires III: Definitive Edition」リリース記念。蘇った最高に忙しいRTSを今から始めてほしい理由がある
画像は「Age of Empires II: Definitive Edition」

 その一方,RTSはマウスとキーボードを駆使して軍隊をリアルタイムで操作し,敵を追ったり逃げるだけでも大変なのに,さらに「Age of Empires」では労働者まで細かく操作して各種リソースを集め,長期的なビルドオーダーを考慮しなければいけない。RTS初心者どころか,経験者でさえ複雑に感じるシステムだ。
 前線の主力,邀撃のゲリラ,陣地の拠点をすべて確認しながら敵軍の動きにも警戒し,何を作っていつ進化するかも考えていく。これを短くても10分,長ければ30分以上続けるため,1試合を終えただけでも脳は糖分やカフェインを要求するだろう。「Age of Empires」は複雑がゆえに何百時間,いや何千時間遊んでも飽きることはないが(実際,タイトルによっては今でもオンライン対戦がマッチングする),最初の100時間はどのゲームより億劫になるほど難解だ。


「AoE3:DE」は15年分のコンテンツがぎっしり詰まった決定版


画像集#005のサムネイル/「Age of Empires III: Definitive Edition」リリース記念。蘇った最高に忙しいRTSを今から始めてほしい理由がある

 さて,前置きが長くなってしまったが,このたびリリースされた「AoE3:DE」は複雑なシステムの奥深さをそのままに,少しでも遊びやすくなるように改良されている。内政と軍事を同時に楽しめる「Age of Empires」シリーズを,今から始めるうえでは最適な作品に仕上がっていると思う。

 ベースとなる「Age of Empires III」は,2005年に発売された「Age of Empires」シリーズの3作目であり,西欧によるアメリカ大陸への入植と,近代をテーマにした初のシリーズ作品だ。前作までのシステムをベースにしつつ,本国から兵や物資を輸送してもらう“ホームタウン”システムをはじめとする新要素の追加が特徴で,より深い戦略を楽しめる内容になっていた。

画像集#006のサムネイル/「Age of Empires III: Definitive Edition」リリース記念。蘇った最高に忙しいRTSを今から始めてほしい理由がある

 リマスター版では本編に加えて,のちに販売されたDLCをすべて収録しており,さらに4Kに対応した映像表現の強化,スウェーデンやインカといった文明の追加,そして新たな1人用モードも用意されている。
 まさに決定版と呼ぶべき内容で,とくに「Age of Empires III」未経験者にとってはパンパンにお菓子が詰め込まれた袋のようになっている。

 なかでも新しく追加されたチュートリアル「孫子の兵法」は特筆ものだ。孫子……ではなく,なぜかクラウゼヴィッツが基礎的な操作方法から,「Age of Empires」シリーズにおける応用テクニックまで幅広く教えてくれるというもので,最低限とはいえ,初心者がwikiやBBSで質問しなくても済むほどの知識や技術を会得できる。

画像集#007のサムネイル/「Age of Empires III: Definitive Edition」リリース記念。蘇った最高に忙しいRTSを今から始めてほしい理由がある

 日本語訳はおおむね完成度が高いものの,チュートリアル内で「Booming」が「景気刺激」と訳されるなど,ゲーム内の造語まで無理やり翻訳されている点はかえって混乱を招くかもしれないと感じた。
 ただ,操作可能な文明として登場する日本のユニットが「タテル(↑)ンダネ」などの,明らかに日本人ではない片言の話し方になっているのをそのままにしたのはナイス判断だと思う。ゲーム内では桜が主食だったり,忍者がクロークモードを搭載している時点で,すでに日本人に偽装した宇宙の文明だと筆者は考えていたので,日本語を流暢に話すと違和感があるからだ。

 対戦ゲームとしての「AoE3:DE」の完成度は間違いなく高い。2005年にリリースされてから15年,2本のアドオンに加え,無数のパッチによりバランスが調整されており,今回もさらなる調整や不具合の修正が行われている。
 とはいえ,ただでさえ複雑なうえ,猛者ばかりのマルチプレイに突入する以上,チュートリアルが追加されているとしても,これから始める初心者に優しい環境とは言いづらいことも確かである。

 ただ本作には,1人で遊べるモードが豊富に用意されている。軍人であるブラック一族の目線を通じて二世紀に及ぶ激戦をくぐり抜けるストーリーモードは,血・氷・鋼の三章に分けられるほどのボリュームで,さながら大河ドラマのようだ。
 また,ネイティブアメリカンたちの反抗を描く「火と影」や,日本や中国,インドでの内戦を描く「アジアの覇王」に加え,新たにオスマン帝国のバルバリア海賊からアメリカ独立までの古戦場を再現した「歴史上の戦い」も用意されている。AIと自由に戦う「スカーミッシュ」もあり,これらをすべて遊ぼうと思えば100時間を優に超えるだろう。1人用モードだけでも,「AoE3:DE」には十分すぎるほどの価値がある。

画像集#008のサムネイル/「Age of Empires III: Definitive Edition」リリース記念。蘇った最高に忙しいRTSを今から始めてほしい理由がある


来たるべき「IV」の前哨戦として


 本稿では「RTS,とくに『Age of Empires』シリーズは最も複雑なゲームだ」と述べてきた。RTSは従来の戦略ゲームに必要な能力に加えて,リアルタイムで的確かつ即座に入力していく操作技術も必要になる。また,各ユニットに対する理解に加え,それと同じことを内政でも実現しながら,人間やAIと戦っていくという複雑なプレイは,誰彼構わずオススメできるようなものではないからだ。
 こうしたレビューでは「簡単だから初心者さんもこっちにおいで」と書くべきかもしれないが,少なくとも筆者の経験上,そうは書けない。実際めちゃくちゃ難しいし,無理に勧めても多くの初心者はよく分からないまま辞めてしまうだろう。

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 「AoE3:DE」がいかに優れた対戦ゲームであっても,まったくの初心者が今から世界中のプレイヤーと対戦して,すぐに楽しむのは難しい。繰り返しになるが,「Age of Empires」シリーズは技術や知識のどこを取ってもハイレベルを問う。それがゲームとしての魅力でもあるが,RTS初心者はとっつきにくさを感じるかもしれない。

 ただ,だからこそ「Age of Empires」シリーズに代表されるRTSには浪漫がある。軍を動かし,労働者に職を与え,敵地を偵察し,施設を整え,次に生産するユニットを予約しつつ,敵の手を読むというゲームの一連の流れは,脳が絞られるような疲労に襲われる。そして同時に,ほかのゲームではまず得られないほどの達成感と充実感が待っているのだ。

 とりわけビデオゲームがメジャーなエンタメとして認められつつあり,それに応じてカジュアルなゲームが増える一方で,RTSのような変哲なゲームは間違いなく減っている。
 実際,1100万本も売り上げた「StarCraft」でさえ,「StarCraft II」(2010年)以降はなかなか新作が発表されず,ほかの人気シリーズも軒並み新規開発を打ち切られていることから,1990年代の黄金期と比べてRTS文化が衰退したことは認めざるを得ない。
 「Age of Empires」シリーズもグッドマン兄弟が設立し,ブルース・シェリー氏もいたEnsemble Studiosが開発していたが,そこも2009年に解散している。

 ところが,2016年に業界を驚かせるニュースがあった。Microsoftの共同設立者であるビル・ゲイツ氏がネット上で「Age of Empires」の新作をほのめかす発言をし,翌2017年には「Age of Empires IV」を発表したのだ。
 これには多くのRTSファンが歓喜の声をあげた。そして2019年には,100体以上の兵士たちが動く,さながら歴史映画の1シーンであるかのようなゲームプレイ映像が公開された。具体的に「Age of Empires IV」がいつ発売されるかは定かではないが,完成の日は遠くないだろう。


 RTSは複雑で奇妙で,ゆえにビデオゲーム文化の隅に追いやられつつあるが,ここでしか味わえないものが確かにある。そして,このジャンルは現在進行形として蘇ろうとしている。
 ぜひこの魅力を従来のファンだけでなく,今のゲーマーにも知ってほしい。「AoE3:DE」は決して簡単なゲームではないが,充実したキャンペーンをプレイしているだけでも焼け付くような熱が得られるし,その熱をそのままに来たるべき「Age of Empires IV」に注いで,世界中に猛者たちと共に知略を尽くして戦ってもらえたら嬉しい。

Microsoft Store「Age of Empires III: Definitive Edition」

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