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  • セガ
  • 発売日:2021/09/09
  • 価格:4389円(税込)
    Steam版が2023年2月7日配信
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ソニック30周年記念,飯塚 隆プロデューサーにインタビュー。“Sonic Everywhere”――常にソニックが存在する未来を目指して
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印刷2021/07/22 00:00

インタビュー

ソニック30周年記念,飯塚 隆プロデューサーにインタビュー。“Sonic Everywhere”――常にソニックが存在する未来を目指して

画像集#001のサムネイル/ソニック30周年記念,飯塚 隆プロデューサーにインタビュー。“Sonic Everywhere”――常にソニックが存在する未来を目指して
 2021年6月23日,セガの「ソニック・ザ・ヘッジホッグ」シリーズが30周年を迎えた
 4Gamerでは現在配信中のシリーズタイトルを紹介しつつ,名作を振り返っているが,今回はソニックシリーズの総合プロデューサーを務める飯塚 隆氏へのオンラインインタビューをお届けしよう。アニバーサリーイヤーに合わせて発売が予定されている新作タイトルをはじめ,ソニックと共に駆け抜けた年月,そして30周年への抱負を語ってもらっている。

ソニックチャンネル



ハリウッド映画化で広がったファン層に向けて,多角的に展開


飯塚 隆氏。1992年,セガに入社し,1994年発売のメガドライブ用ソフト「ソニック・ザ・ヘッジホッグ3」より本格的にプロジェクトに参加。以降,ソニックシリーズの開発にゲームデザイナー,ディレクター,プロデューサーといった立ち位置で携わる。現在はセガ・オブ・アメリカのソニック統括部門「ソニックピラー」にて,クリエイティブオフィサーとして手腕をふるう
画像集#017のサムネイル/ソニック30周年記念,飯塚 隆プロデューサーにインタビュー。“Sonic Everywhere”――常にソニックが存在する未来を目指して
4Gamer:
 本日はよろしくお願いします。まずはソニック30周年,おめでとうございます。30年間のうち,ほとんどをソニックと共に過ごしてきた飯塚さんの気持ちを聞かせてください。

飯塚氏:
 私がソニックシリーズに初めて携わったのが1993年ですが,その頃は1タイトルごとに「いいものを作ろう」と必死になっていました。毎年,次のタイトルのことを考えていたので,「気がついたら,もう30周年」という感じです。あっという間でしたね。
 それを30年近く続けることができたのは,ひとえにソニックを支えてくれるファンの方のおかげです。こうした節目を迎えるたびに,感謝の気持ちでいっぱいになりますね。

4Gamer:
 30周年ということは,デビュー当時のファンはそれ以上の年齢ということですから,すごく時代を感じます。

飯塚氏:
 20周年に合わせて「ソニック ジェネレーションズ」(2011年)をリリースしたときに,「子供と大人,両世代のためのタイトルがようやくできた」という話をしているのですが,そこからさらに10年経ち,当時のお子さんはティーンエイジャーに成長しているんですね。
 2017年の「ソニックマニア」では,ソニックファンの方々と一緒にゲームを作るということも経験しましたし,あらためて世代の移り変わりを実感しました。

4Gamer:
 30周年に合わせて,ソニックシリーズの新作を発表されました。順に伺っていきたいのですが,まずは「ソニックカラーズ アルティメット」PC / PS4 / Nintendo SwitchXbox Series X / Xbox One版は国内発売未定)について教えてください。

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 セガは本日,5月28日に配信されたソニック30周年記念番組「Sonic Central」で発表となった,新作情報やコラボ情報などのまとめを公開した。番組では,新作タイトル「ソニックカラーズ アルティメット」の発表をはじめ,さまざまな30周年施策についてのアナウンスが行われた。

[2021/05/31 14:45]

飯塚氏:
 2010年に発売したWii用ソフト「ソニック カラーズ」のリマスター版です。近年,ハリウッド映画がヒットした影響もあり,ソニックのブランドが加速度的に広がっていて,ファミリー層にも急速に浸透しています。そこで「ソニックとはこういうゲームなんだ」というタイトルを届けたいと思い,ファンの評価が高く,現行のハードでは遊べない「ソニック カラーズ」を選びました。

「ソニックカラーズ アルティメット」
画像集#002のサムネイル/ソニック30周年記念,飯塚 隆プロデューサーにインタビュー。“Sonic Everywhere”――常にソニックが存在する未来を目指して

4Gamer:
 オジリナル版とリマスター版にはどのような違いがありますか。

飯塚氏:
 近年のソニックシリーズでは最もスタンダードなハイスピードアクションに加えて,ウィスプの力を借りる「カラーパワー」を使って進んでいく――という内容を維持しながら,グラフィックスをHD化しています。
 また,新たに「ジェイド・ゴースト」の能力を持つウィスプを追加しました。透明化できる能力を使ってオリジナル版では行けなかった場所にあるアイテムなどを取れるようになるので,Wii版をプレイした方も新鮮な気持ちで遊べます。

ジェイド・ゴースト
画像集#004のサムネイル/ソニック30周年記念,飯塚 隆プロデューサーにインタビュー。“Sonic Everywhere”――常にソニックが存在する未来を目指して 画像集#003のサムネイル/ソニック30周年記念,飯塚 隆プロデューサーにインタビュー。“Sonic Everywhere”――常にソニックが存在する未来を目指して

4Gamer:
 オリジナル版をやり込んだ人でも楽しめるのでしょうか。

飯塚氏:
 はい。いろいろなところにジェイド・ゴーストを配置していますので,新しいルートを開拓してください。
 それから,ソニックのようなプラットフォームアクションが苦手な方のために,「ソニックカラーズ アルティメット」では残機制を廃止して,失敗したところから何度でもやり直せるようにしました。また,新要素の「テイルスセーブ」でステージから落ちてもテイルスがその場で救出してくれますし,ゲーム初心者やアクションが苦手な方にも配慮しています。

4Gamer:
 続いて,「SONIC ORIGINS」についてお聞きします。メガドライブ版のシリーズ作品が収録されるそうですが,どういった経緯で生まれたのでしょうか。

飯塚氏:
 「ソニックカラーズ アルティメット」と同様,ソニックを最近知った方に向けて「ソニックの原点」を知っていただくために企画したものです。メガドライブ向けに発売された5タイトルを現行機で遊べるようにしたものですが,収録タイトルはエミュレータベースではなく,現行ハード向けにきちんと移植しています。これにより,すべて16:9の画面でプレイできるようになります。

画像集#005のサムネイル/ソニック30周年記念,飯塚 隆プロデューサーにインタビュー。“Sonic Everywhere”――常にソニックが存在する未来を目指して

4Gamer:
 エミュレータを使わず移植することにしたのはなぜでしょう。

飯塚氏:
 一般的にはエミュレータベースの移植のほうがやりやすいのですが,30年間ずっと遊んでもらっているタイトルですから,この機会に現行ハード上であらためて蘇らせたいと……。そんな気持ちを込めて,あえて移植に挑戦してみました。
 プロジェクトの初期段階なので具体的にお話できることは少ないのですが,エミュレータではないので,ゲーム自体に手を加えることができます。オリジナルを忠実に再現しつつ,「ソニックカラーズ アルティメット」のようにゲーム初心者が遊びやすくなる要素を考えていきたいですね。

4Gamer:
 もう1本は「完全新作」とのことですが……。

飯塚氏:
 「ソニックフォース」以来,アクションゲームのソニックシリーズとしては完全新作をアナウンスしていなかったので,ファンの方に心配をおかけしていました。まだ時期尚早ではありますが,30周年を機に「完全新作を開発中」ということだけでもお知らせしたいと思ったんです。

4Gamer:
 謎めいたマークが公開されましたが,どのような意味があるのでしょうか。

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飯塚氏:
 ゲーム内に登場する象徴的な記号ですが,その意味はまだ秘密です。ただ,推理をして分かるような意味があるものではないということはお答えできます。詳細はいずれお話しできると思いますので,もう少しお待ちください。

4Gamer:
 わかりました……。30周年に合わせて,ゲーム内外のコラボレーションや新作アニメ「SONIC PRIME」の制作といったプロジェクトも発表されています。

飯塚氏:
 先ほどもお話ししたように,ソニックのファン層がとても広がっているので,ファンの方に向けてプロダクトを提供するだけでなく,いろいろな角度からソニックに触れてもらう機会を作りたいと考えています。
 こうしたアニバーサリー企画は,私達からファンの皆さんに感謝の気持ちをお届けする機会だと思っています。ただ今回は,まだソニックに触れていない方にもそれを届けたいという思いを込めて,いろいろなところに声をかけて,コラボレーションの実現に至りました。

4Gamer:
 コラボ企画はソニックチームから提案したものですか。

飯塚氏:
 ほとんどは私達からですが,先方から提案があったものもあります。例えば「東京2020オリンピック The Official Video Game」に登場するソニックの着ぐるみは,開発チームがお遊びで作ったものだそうです。せっかくなので,「この機会に出しましょう」という話になったんです(笑)。

4Gamer:
 そんな経緯ですか(笑)。あのソニックは妙にリアルですよね。

飯塚氏:
 等身がリアルですからね(笑)。

「東京2020オリンピック The Official Video Game」
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4Gamer:
 新作アニメの制作発表にも驚きました。「SONIC PRIME」はどのような内容になるのでしょうか。

飯塚氏:
 2022年にNetflixでの配信を予定しています。「SONIC BOOM」(2014年。邦題:ソニックトゥーン)はアニメ独自の設定でしたが,今回はゲームと同じモダンソニックをベースとした内容になります。アメリカのアニメ制作経験が豊富なMan of Actionの方々を中心に,今まさに鋭意制作中です。

4Gamer:
 Netflixなら,日本での配信も期待できますね。

飯塚氏:
 はい。全世界配信の予定で進めていますので,おそらく日本語ローカライズも行われるのではないでしょうか。

4Gamer:
 「SONIC BOOM」のようにゲーム化される可能性はあるのでしょうか。

飯塚氏:
 今のところ,その予定はありません。そもそも「SONIC PRIME」がゲームと同じ設定,モダンソニックがベースなので,今はそれをする必要がないと考えています。

4Gamer:
 なるほど。
 しかし,今年から来年にかけては,ソニックファンにとって大いに盛り上がりそうです。

飯塚氏:
 新作ゲームやアニメーション,さらに「ソニック・ザ・ムービー」の続編も予定しているので,我々としても盛りだくさんで大忙しです。これまでサボっていたわけではないんですよ(笑)。30周年というタイミングで,水面下で動いていたことをようやく発表することができました。
 予期せぬコロナ禍の影響を受けて,恒例のイベントを中止せざるを得ないということもありましたが,その代わりにオンラインで楽しめる企画を用意しつつ,2022年まで盛り上げていきたいですね。


思い出深い作品は「ソニックアドベンチャー」シリーズ


4Gamer:
 ここからは飯塚さんとソニックの関わりについて,あらためて振り返っていただきたいと思います。現在はアメリカを拠点にお仕事をされているんですよね。

飯塚氏:
 はい。2016年からロサンゼルスのセガ・オブ・アメリカで,ソニックのビジネスを動かすチーム「ソニックピラー」に在籍しています。クリエイティブオフィサーとして,ゲーム開発はもちろん,アニメーションやマーチャンダイズなど,ソニックに関わる全てのクリエイティブやプロダクトを監督する立場ですね。

4Gamer:
 現在,ソニックに関わる全てを統括されている飯塚さんですが,ソニックとの最初の出会いはいつだったのでしょうか。

飯塚氏:
 私がセガに入社したのは1992年,ちょうどその頃は「ソニック・ザ・ヘッジホッグ2」がアメリカで作られていて,新人研修の一環としてそのデバッグ作業を経験しました。それが最初の出会いですね。
 「ソニック2」は私の中では今でもベスト5に入る1本だと思っていて,キャラクターやビジュアル,サウンドに圧倒されました。その完成度の高さにほれぼれしているときに,上司から「『ソニック・ザ・ヘッジホッグ3』を作ってくれないか」と声をかけられたんです。もちろん,そのときは二つ返事でオーケーしました。

「ソニック・ザ・ヘッジホッグ3」
画像集#010のサムネイル/ソニック30周年記念,飯塚 隆プロデューサーにインタビュー。“Sonic Everywhere”――常にソニックが存在する未来を目指して
4Gamer:
 確か「ソニック3」もアメリカで作られていますよね。いきなり渡米だったんですか?

飯塚氏:
 返事の直後に「やってくれるか! じゃあパスポートを取りに行け」と言われました(笑)。それまで海外に出たことがなくて,海外旅行にも興味がなかったんですが,「ソニック3」を作るために初めてのアメリカ生活を体験することになりました。

4Gamer:
 入社早々,海外赴任……なかなかハードですね!

飯塚氏:
 それまでの人生が180度変わりましたね。文化や言語の違いに不安はありましたが,それでもセガを代表するビッグタイトルの開発に携われるということで,21歳からのニュースタートという気持ちでしたね。

4Gamer:
 開発環境はいかがでしたか。

飯塚氏:
 企画スタッフは私を含めて3人だったんですが,先輩のテクニックを見様見真似で盗みつつ,開発にはすごく集中できて,楽しく作ることができました。当時はステージマップの構成を紙に書いて作っていたんですが,「ソニック3」はマップがめちゃくちゃ大きくて……。畳一畳分より大きな紙をグラフィックデザイナーに渡したこともありました。

4Gamer:
 当時からレベルデザインを担当されていたんですね。

飯塚氏:
 ええ,レベルデザインの仕事は好きでした。私が担当したステージは「メガドライブの性能を限界まで使う」という意気込みで,2面しかないBG(背景画像の表示枠)をそれ以上に見せるために,先輩に相談しながら工夫したりしました。

4Gamer:
 そんな「ソニック3」以降,メインシリーズのほぼ全てに関わることになるわけですが,とくに思い出深いタイトルを挙げてもらえますか。

飯塚氏:
 「ソニックアドベンチャー」と続編「ソニックアドベンチャー2」は,かなり思い出深いですね。前者は生みの苦しみが大きかったこと,後者はとにかく開発が楽しかったことが印象に残っています。

4Gamer:
 「ソニックアドベンチャー」はシリーズ初の3Dソニックとして,ドリームキャストの初期にリリースされました。1998年でしたね。

飯塚氏:
 開発中はそれまで2Dだったソニックを「どうすれば3Dにできるのか」というハードルがとにかく高くて,周りからも「本当に面白くなるのか」と懐疑的に見られる状況が続きました。それがスピードハイウェイのループをぐるっと回る画ができた瞬間,みんなに「これだ!」と賞賛されて……本当に嬉しかったことを覚えています。
 ただ,ゲームのボリュームがすごくて,そこからも作るべきものが山ほどあり,ひたすら物量との戦いでした。

4Gamer:
 「ソニックアドベンチャー」での担当は?

飯塚氏:
 ディレクター兼リードデザイナーとして,ゲームの方針も全て自分が決める立場でした。従来は多くても20人前後のプロジェクトだったものが,「ソニックアドベンチャー」ではいきなり50人以上の体制になったこともあり,てんやわんやの状況が続いていましたね。

「ソニックアドベンチャー」(※画像はPS3版)
画像集#019のサムネイル/ソニック30周年記念,飯塚 隆プロデューサーにインタビュー。“Sonic Everywhere”――常にソニックが存在する未来を目指して

4Gamer:
 その3年後,「ソニックアドベンチャー2」がリリースされました。こちらの開発は楽しかったということですが。

飯塚氏:
 「ソニックアドベンチャー2」では再びアメリカに行くことになったのですが,最初はたった11人での渡米でした。その前が50人以上の体制だったのに,続編を11人で作るという無謀にも思えるようなプロジェクトですね(笑)。ある意味,少数精鋭とも言えますが,アメリカでの開発はとにかく楽しかったんですよ。苦しいと思った記憶がないぐらいで。

4Gamer:
 ゲームも,前作からシェイプアップされた印象があります。

飯塚氏:
 前作はとにかく,いろいろな要素を詰め込んで,目標を高いところに設定したのですが,「2」はスタッフが11人という状況下で「どうやって前作を超えるか」という課題があったので,思い切って不要な要素をできるだけ削りました。6人のプレイアブルキャラクターという要素は残しましたが,ストーリーは2本(ヒーローとダーク)に絞り,作業効率も踏まえたゲームデザインを選んだんです。その結果,全体的にまとまりのある内容になったと思います。ソニックの新しいライバル,シャドウ・ザ・ヘッジホッグが生まれたこともあって,思い出深い作品になりました。



シリーズを俯瞰的に見て,ファンに受け入れてもらえるタイトルを作るのがプロデューサーの役割


4Gamer:
 シリーズプロデューサーの役割に就いたのは,いつからということになるんでしょう。

飯塚氏:
 2010年の「ソニック カラーズ」以降です。「ソニックアドベンチャー2」をリリースした後もアメリカで開発を続けていましたが,並行して日本でもソニックシリーズを作り始めました。「ソニックライダーズ」「ソニックと秘密のリング」などが日本発のタイトルですね。アメリカと日本に開発ラインができたことで,それぞれのディレクターが思い描くソニック像に多少違いが出てきて,一貫性が薄れてくる傾向がありました。
 そこで私が日本に戻り,プロデューサーとしてチーム全体を見ることになったのが「ソニック カラーズ」でした。

4Gamer:
 ゲームデザイナー,ディレクター,プロデューサーと肩書きが変わっていったわけですね。

飯塚氏:
 ゲームデザイナーのときは,それぞれの作品の持つ目的や作風などを理解したうえで,ゲーム作りを楽しんでいた感覚があります。ゲーム全体のことより,「自分が担当しているパートを絶対に面白くしてやる」という気持ちが強かったんです。
 それがディレクターになると,ゲーム全体のクオリティを考える立ち位置に変わるので,責任感のほうが強くなります。スタッフを統率して,各々がやりたいことをできるだけ実現する仕様を決めて,高いクオリティを目指す司令塔を意識しました。

 そしてプロデューサーになると,ディレクター時代は1本のタイトルに集中していたのに対し,今度はゲームの細かい部分はディレクターに任せられるので,複数タイトルを並行して動かすことができるというのが大きな違いですね。
 会社にとって大事な存在であるソニックの将来に関わる仕事ですから,プレッシャーはありますよ。

4Gamer:
 ソニックシリーズのプロデューサーとして,大切にしているポイントを教えてください。

飯塚氏:
 新しいゲームの開発時には,これまでソニックのキャラクターやブランドを支えてきてくれたファンの方が,「新しいソニック像を受け入れてくれるのか」という点に最も気を配ります。ソニックの性格やスピード感といったポイントは,ファンの方が求める形でゲームの中になければならないものだと思っています。

4Gamer:
 そうしたポリシーは守りつつも,多岐にわたって展開される近年の作品にも,柔軟に対応されている印象です。

飯塚氏:
 そうですね。作品ごとのディレクターやチームのアイデアがありますから,ソニックタイトルとして求められるものかどうかを俯瞰的に判断して,活かせるものは活かしたいと考えています。
 個人的には,ディレクターとして1本の作品に専念するほうが向いていると思っているんですが,そうすると先ほどお話ししたように特定のタイトルしか見られません。シリーズ全体を俯瞰的に見ていく役割は,私の使命だろうと思っています。

4Gamer:
 「自分がディレクターだったらこうする」といったことを考えることもありますか。

飯塚氏:
 もちろん,ありますよ。ただ,ゲーム開発はチームプレイですから,ディレクターやチームの意見をできるだけ尊重します。ゲーム作りは完成したときのゴールが唯一の正解ではなく,途中でどんな選択をしようとも正解にたどり着く可能性があります。常にチームの意見を聞いて,正しい方向へと導くことを続けていきたいです。

4Gamer:
 長年,ソニックシリーズにプロデューサーとして携わってきて,ゲーム以外の印象深い出来事はなんでしょうか。

画像集#013のサムネイル/ソニック30周年記念,飯塚 隆プロデューサーにインタビュー。“Sonic Everywhere”――常にソニックが存在する未来を目指して
飯塚氏:
 やはり,ハリウッド映画ですね。映画化は本当に大きなマイルストーンでした。制作期間はそれほど長くないんですが,セガ社内でソニックのハリウッド映画化を目指すプロジェクトがスタートしたのは,実に10年以上前だったんです。
 長い年月をかけてパートナーを探して,パラマウントやジェフ・ファウラー監督とめぐり会えて,ようやく実現したプロジェクトは,我々にとって10年越しの喜びだったんですよね。それはゲームが完成するときとは,また違うものでした。

4Gamer:
 そして,世界中で大ヒットを記録しました。

飯塚氏:
 実写とCGのハイブリッド撮影ということで,ファンの方からどんな反応があるのかを心配していたのは事実です。ただ,結果的に面白い作品になって,ソニックの魅力を十二分に表現していただけたので,本当にやってよかったと思いました。

4Gamer:
 予告編で披露されたソニックのキャラクターデザインが変更になる,という出来事もありましたね。

飯塚氏:
 あれこそファンの声が動かしたものです。パラマウントはとにかくソニックを新しいお客さんに向けて,広げることを目標に映画を制作していました。私達はあくまでソニックをソニックらしくキープするための,スーパーバイザーの立場から作品を見ていたのですが,予告編が公開されたときに想定以上の反響があったんです。
 パラマウントの新規タイトルとしては記録的な再生数になって,その影響の大きさがキャラクターデザインを再検討することにつながっていきました。ソニックファンの力をあらためて実感した出来事でしたね。

画像集#012のサムネイル/ソニック30周年記念,飯塚 隆プロデューサーにインタビュー。“Sonic Everywhere”――常にソニックが存在する未来を目指して

4Gamer:
 日本国内では新型コロナウイルスの影響で,公開が遅れてしまいました。

飯塚氏:
 世界各国の公開は2月だったので,その影響は最小限で済んだのですが,日本は春休みに公開日を設定していたため,大きな影響を受けてしまいました。どうしようもないことなのですが,そこは本当に残念です。


28年間,常に一緒に走り続けてきたパートナーのような存在


4Gamer:
 現在,ソニックタイトルはどのようにして開発されているのでしょうか。

飯塚氏:
 タイトルによって微妙に違ったりもしますが,基本的には我々ソニックピラーがタイトルのロードマップを考え,それに合わせて各タイトルの企画を練っています。そこから開発チームを選定し,スケジュールに合わせて制作するというのが,基本的なケースですね。

4Gamer:
 飯塚さんはソニックピラーのクリエイティブオフィサーとして3度目の渡米をされていることになります。現在の状況はいかがですか。

飯塚氏:
 3度目の渡米は,ソニックのビジネスの中心が欧米にあるということで,ブランドの成長のためには「私がアメリカにいる必要がある」と自覚したからです。
 現在のソニックピラーではゲーム開発だけではなく,さまざまなメンバーとも一緒に仕事ができるメリットを強く感じています。チーフブランドオフィサーであるイヴォ・ゲルスコビッチが,マーケティングやライセンスといったビジネス面を統括してくれるおかげで,私自身はクリエイティブ面に集中できるのが大きいですね。

4Gamer:
 そういえば,飯塚さんが最も好きなソニックシリーズのキャラクターとは?

飯塚氏:
 好きなキャラクターはたくさんいますが,最も好きなタイトルと聞かれて最初に浮かぶのが「ソニックアドベンチャー2」なので,好きなシリーズキャラクターもシャドウということになりますね。
 シャドウはソニックに対抗できる魅力的なキャラクターとして,みんなで考えてデザインしました。チームメンバー全員が生みの親だと言ってもいいキャラクターなんです。思い入れは強いですね。

4Gamer:
 ヴィランのような存在ですよね。「ただ悪いキャラクター」ではなく,各々の信念や正義に従って行動するというところがあります。

画像集#015のサムネイル/ソニック30周年記念,飯塚 隆プロデューサーにインタビュー。“Sonic Everywhere”――常にソニックが存在する未来を目指して

飯塚氏:
 アメリカにいると,ダークヒーローの人気がすごく高いことを実感します。メタルソニックもそうですよね。悪のキャラクターもその作品だけでなく,以降のシリーズでも活躍ができるような魅力を持った存在にしたいと思っています。
 そして,もちろんソニックは特別な存在です。セガに入社してから28年,ずっと彼と一緒に駆け抜けてきたので,人生の一部になっています。喜怒哀楽を共にする人生のパートナーであり,家族と同じ愛情を持っています。

4Gamer:
 30周年のアニバーサリーイヤーが始まりましたが,今後の展望についてあらためて教えてください。

飯塚氏:
 今年から来年にかけて,新作タイトルやコラボのラッシュです。“ソニックの年”と呼べるような盛り上がりを見せていきます。ソニックピラーが掲げる「Sonic Everywhere」というスローガンのもと,常にソニックが存在して,ソニックを目にしない日はないという未来像を目指して取り組んでいきますので,ぜひ注目してもらえると嬉しいです。

4Gamer:
 ありがとうございます。最後にファンにメッセージをいただけますか。

飯塚氏:
 ここまでソニックシリーズを続けてこられたのは,支えていただいたファンの皆さんのおかげだと心から感じています。とくに日本の皆さんは本当に暖かくて,いつも優しく見守ってくれていることを実感しています。
 我々ソニックピラーのメンバー,そして日本のソニックチームも,皆さんの期待に応えるために頑張っていきます。この30周年という年を,ぜひ一緒に楽しみましょう。

4Gamer:
 ソニックシリーズの将来が楽しみです。本日はありがとうございました。

――2021年6月中旬収録

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