プレイレポート
[プレイレポ]「三國志VIII」を強化した「三國志8 REMAKE」の変わらぬ面白さ,新しい面白さ。戦乱の時代をどう生きる?
タイトルからも明らかなように,本作は2001年にコーエー(当時)から発売された「三國志VIII」のリメイク版である。だが,一般的なリマスターやリメイクとは異なり,イベントや武将といったデータ部分の追加はもちろん,人間関係を描くシステムの刷新に至るまで,大幅な変更が見られる。
とはいえ,今回は変更部分を細かくチェックしていくのではなく,「三國志8 REMAKE」がどのようなゲームなのか,ファーストインプレッションをお届けしたい。
「三國志8 REMAKE」公式サイト
変わらぬ面白さ,新しい面白さ
最初に総論を言うならば,「三國志8 REMAKE」のプレイフィールは「『三國志VIII』と大きく変わらず面白い」ということになるだろう。
これは,そう簡単に得られる結果ではない。筆者はかつて「(記事執筆時点における)すべての『三國志』をプレイする」という記事を書いたことがあるが,そこで得た大きな体験のひとつは「人間の記憶はあてにならない」ということだった。
「最高に面白いゲームだったと思っていたけれど,今になって遊ぶといろいろとつらい」ことは,決して少なくなかったのだ(これは逆も真で,「イマイチだと思っていた要素がいま遊んでみたら面白い」こともあった)。思い出補正とは,実に強烈なのだ。
「三國志」ナンバリングタイトル12作を一気にプレイ。最新作の発売を前にシリーズの歴史を振り返る“三國志マラソン”で見えてきたものとは
2016年1月28日に,最新作「三國志13」が発売されるコーエーテクモゲームスの三國志シリーズ。だが,30年にわたる歴史をしっかりと把握している人は多くないだろう。そこで,ナンバリングタイトル12作品を一気にプレイするという企画に挑んでみたところ,あるキーワードが浮かんできた。
この前提に立つと,「三國志8 REMAKE」が「原作の『三國志8』と大きく変わっていない」と感じさせつつ,「現代のゲームに求められる各種の水準を満たした面白さがある」ということの重要性が分かる。UIやエフェクトひとつとっても,23年前のゲームを現代の水準にまでブラッシュアップするというのは,とても大変な仕事だ。
そのうえで「三國志8 REMAKE」には,「三國志VIII」ではあまり強く感じられなかった楽しさも存在する。
つまり,「つまらないとまでは言わないけれど,『三國志8』は肌に合わなかった」というプレイヤーにとっても,「三國志8 REMAKE」は価値のある作品というわけだ。
本稿では「三國志VIII」から変わらず面白いと感じた部分と,「三國志8 REMAKE」ならではの面白さだと感じた部分を1つずつ抜粋して紹介したい。
変わらぬ面白さ:勝利・敗北に縛られない楽しさ
シリーズの多くの作品とは異なり,「三國志VIII」におけるプレイヤーの立場は1人の武将となる。それだけでなく,自分が仕える主君を自分で選ぶこともできれば,在野に下ってそのまま生きることすら可能だ(もちろん「君主」となって,従来の作品同様に国家を率いて中華の統一を目指すことも可能)。
つまり,極論を言えば「三國志VIII」には絶対的な勝利条件はない。「プレイしている武将が死んだら負け」と言うことはできるが,これも絶対の敗北とは言い難い。微妙な能力の君主に忠誠を誓い,忠義に殉じて城を枕に戦死するという最後は「そのような人生を歩んだ」ということであり,勝ちでも負けでもないだろう。
このため,あくまで個人の見解ではあるが,「三國志VIII」では一国の君主となって統一を目指すより,配下の武将となって君主のために戦うという路線のほうがより楽しめた。
やはり君主ともなると,どうしても「国を生き残らせる」ことが重要になってくる。だが,戦乱の世にあって「国を生き残らせる」とは「中華最強の国になる」に等しい。結果,どうしても目指すべき目標が固定されがちになってしまう。
一方,配下の武将であれば,そのあたりの目標設定は自由だ。冒頭で述べたように,なんなら君主を見限って,在野の1人の武将として一生を終えることだってできる。
また,本作はキャラクターと街の結びつきが強いため,「俺の街」的な土地が徐々に作られていくという特徴もある。たとえ主君を持たずとも,街の人々と交流し,人々の悩み事を解決していく人物として暮らしていくことも,十分に可能なのだ。
もちろん,それとは逆に「下々の者など知らぬ」と言い切って高官や要人とだけ交流するしてもいいし,あるいはひたすら己を磨き続けて天下無双を目指してもいい(キャラクターには成長要素があり,経験を積むとパラメータが上昇する)。
この「何を目指し,どのように生きるか」の幅が広く用意されているのが,個人的には「三國志VIII」最大の魅力だった。
その魅力は「三國志8 REMAKE」でも変わっていない。プレイヤーは武に生きる者として戦場の英雄を目指すこともできれば,地元の英雄で満足したっていい。事務処理のプロとして後方を守り続けることだってできるし,外交や秘密工作のプロとして暗躍する人生も選べる。
そのうえで,「どういう立場で,どういうゴールを目指してもいい」ゲームは,なにかとシステムが複雑になりがちだという問題も本作ではほとんど感じられない。
「三國志VIII」は行動力ベースのゲームだ。あらゆる行動は武将個人が持つ「行動力」を消費して実行される。消費量は行動の種類によって異なるが,行動力を使い切ったら,その月にはそれ以上の行動はできない。
影響の大きな行動(開墾する,城壁を補修するといった領地のステータスに影響を与える行動)は行動力を大量に消費するため,それらに集中すると1か月に2回の行動しかできないこともある。
一方,ほかの武将との面会,会話といった行動は消費が低めに設定されており,社交に集中するならば1か月に8回前後の行動も可能だ。
いずれにしても1ターンの間にできることは限りがあり,ターン制のゲームなので時間に急かされることはない。逆に,リアルタイム制のゲームでしばしば発生する「遠くの領地まで旅をするので,キャラクターが移動するのを眺めているだけの時間に突入する」こともない。
また行動そのものも,ある程度まで限定されている。
本作は「1ターン=1か月」の進行だが,士官していると3か月ごとに「評定」が開かれる。他国に攻め込んだり,外交したりするといった国家運営にまつわる大きな行動は,評定のタイミングにしか選択できない。
一方,通常のターン進行において,本作のキャラクターが活動する画面は原則として街に限定されている。このためプレイヤーがするべきことは,「街のロケーションを選び,そこで行動を選択する」というUIに(ほぼ)集約される。
街には多数のロケーションがあるので,最初のうちは「やけにできることが多いな!」と思うだろうが,実際にプレイしていけば「自宅と,それ以外」で分かれていることに気づく。
ほかの武将と交流(一騎打ちの練習といった「キャラクターを鍛える」アクションも含む)したければ自宅,内政仕事をしたければそれ以外なので,理解してしまえば実にシンプルだ。
最初はできることが多いように見えるため,混乱するかもしれないが,徐々に自分なりの「毎月,基本的にはこのアクションを繰り返していけばいい」という定石が見えてくる。チュートリアルも充実しているが,仮に読み飛ばしてしまっても,段々「分かってくる」範囲の複雑さだ。
とはいえ,「プレイヤーにできることが,すぐに把握できる」仕様には,ヘタをすると「プレイヤーのやるべきことが少なく,単純作業を繰り返すだけになる」可能性を秘めている。
この問題に対し,「三國志8 REMAKE」は大きく2つの対策を施している。
1つ目はイベントだ。おそらくはランダムで発生していると思しき君主からの命令はもちろん,一定の条件でアンロックされて進行する「演義伝」など,膨大な数のクエストが「三國志8 REMAKE」には用意されている。
結果,ゲームとしては「ある程度まではルーチンワークをこなしつつも,時折まったく違う方向のアクションも組み立てていかなくてはならない」という展開になる。「三國志8 REMAKE」では歴史イベントも含めて大幅にイベントが拡充されており,プレイしていると十分に変化が感じられた。
このほかにも昇進や戦争によって拠点が変われば,プレイヤーのやるべきことも変わっていき,長く楽しめるというわけだ。
もう1つの対策は「三國志」という歴史コンテンツならではの,史実(あるいは史劇)の面白さだ。
本作には1000人の武将が登場する(つまり1000人をプレイできる)が,それぞれ史実(ないし史劇)ではどのような性格で,どんな人生を歩んだのかが簡単に設定されている。また,三國志ファンであれば,自分なりの「この武将はこういう人物」という思い入れもあるだろう。
「本当はこういう人物だった」という武将のイメージは,本作をプレイするにあたって非常に大きな力を発揮する。例えば史実では裏切りをためらわないタイプ(信頼もされないタイプ)の武将を選び,実際にその方針でプレイしているとき,君主から「お前はとても信頼できる」的な評価を下された際に感じる,なんとも言い難い感情は史実があってこその面白さだ。
新たな面白さ:より濃厚な人間関係
当然ながら,「三國志8 REMAKE」ならではの,新しい楽しさもある。とくにそれを感じたのは,人間関係を表現するルールが多彩になったという点だ。
「三國志8 REMAKE」では武将と武将の間に,さまざまな関係が生じ得る。それこそ男女であれば結婚もあり得るし,性別を問わず義兄弟を誓うこともできる。詳しいシステムの説明は割愛するが,ここでは実際のゲームプレイで起こったことを中心にレポートしよう。
「『三國志8 REMAKE』は人間関係が強化されている」と聞いた筆者が,それならば誰でプレイしようかと考えたとき,真っ先に思いついたのは鄒氏だった。
鄒氏は,まだ曹操が官渡の戦いを迎える前に出会った女性だ。もともと張済の妻だったが,夫の死後,未亡人となっていたところを曹操に見初められ,側室となる。
漫画「蒼天航路」では,曹操にとってのファム・ファタールの1人として描かれ,最終的に曹操が奇襲によって曹昂,曹安民,典韋らに加え,多くの兵士を失う結果を招いた(この過程で鄒氏は殺されている)。その後,曹操の正室だった丁氏は愛想を尽かして離婚しており,曹操の個人史において大きな足跡を(基本的には悪い方向に)残した人物と言える(ただ,鄒氏には曹操を殺そうとする意思があったとは思えないところもあり,「歴史に翻弄された人物」と評価することもできる)。
それで,だ。
鄒氏が武将プレイできるとなれば,考えることは1つ! 「曹操にとっての貂蝉になってみるプレイ」ですよね!
というわけで,さっそく曹操に接近を試みたわけだが,これがなかなかどうして,要領を掴むまではなかなか難しい。鄒氏が董卓配下にいる時代でスタートしたこともあり,初手で下野して曹操のもとに向かったものの,実績をまったく積んでいないこともあってアポが取れない。そりゃそうだ。
かくして地道な下積み時代を繰り返すことしばし,文民としての名声をある程度まで高めた鄒氏は無事,曹操軍の一員となることに成功した。潜入作戦,第一段階の突破である。
さて,問題はここからだ。果たして,鄒氏は曹操の懐に入れるのだろうか?
第二段階では曹操との面会を繰り返し,関係値を高めていくことにした。ついでと言っては何だが,正室の卞氏とも面会を繰り返す。自分が未来の正室を目指すにせよ,あくまで側室に収まるにせよ,当面は事実上のボスとなる相手には取り入っておくに限る。
おおむね下心しかない社交戦は,驚くほどすんなりと鄒氏が願うとおりの結末に突き進んでいった。曹操と鄒氏の相性が良いのか,それとも偶然なのか,素晴らしい速度で曹操との関係性が向上していくのだ。
だが,話はそれに留まらなかった。「とりあえず」で進めていた卞氏との交流も順調に加速し,ついには義姉妹の誓いを結ぶに至ったのである。
いいんですか,卞氏さん。いや鄒氏としてもこれでいいんだろうか。ともあれ,曹操ガチラブ勢として心が通じ合ったらしい。
いや本当にこれ,いいんだろうか。
なお,筆者がまだゲームプレイに不慣れであり,「卞氏を曹操軍から追い出す」「鄒氏が張済と離婚する(開始時期はまだ結婚しているうえ,張済が死ななかった)」といったあたりをうまくやるプレイヤースキルを身に着けていないため,いったん鄒氏プレイはここまでとした。これがParadox Interactiveのゲームならば,「暗殺者を送る」コマンドで一撃なのだが……。
それはさておき,「三國志8 REMAKE」は人間関係のシステムが強化されたことにより,鄒氏がどんどん曹操一家の懐に入っていく様子が,よりリアリティを伴って感じられたのは新しい体験だった。筆者が知る限り,こういう方向性のゲームプレイを緻密に描くグランドストラテジーは,他にあまりないように思える(あえて言えば「Mount&Blade」シリーズが近いだろうか)。
鄒氏でこれだけ楽しめるということは,何太后もかなり面白そうだ。「何太后プレイ」という言葉だけでどんな遊びなのかを想像できる読者向けではあるが,興味を持ったら「三國志8 REMAKE」を入手して試してみてほしい。たぶん楽しい。
ロールプレイが楽しいストラテジー再誕
個人的な見解ではあるが,武将プレイの面白さはロールプレイの面白さだと感じている。上記の鄒氏プレイでも「鄒氏ならこうするだろう」に始まり,「もし曹操配下で忠実な武将になったなら,こんな活躍をする人物になるだろう」という方向性での成長戦略立案など,「鄒氏」というキャラクターあっての,独特の楽しさがそこにある。
このようにロールプレイをすることで楽しさが増す感覚は,「三國志8 REMAKE」が必ずしもルールとして勝利・敗北が(なんならゴールすらも)定められておらず,「三国時代の武将として生きる」ことに注力した成果かと思う。そして,これは「三國志VIII」から変わらない楽しさでもある。
そうした意味で,「三國志8 REMAKE」はUIやグラフィックス,サウンドの強化のみならず,「三國志VIII」ならではの面白さをしっかりと強化した作品と評価できるのではないだろうか。
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(C)2001-2023 コーエーテクモゲームス All rights reserved.
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