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名もなきその生き物は,森と海と砂漠と雪原が広がる小さな世界に放り出される。
果実をかじり,キノコをついばみ,ときに自分より弱い者を食らい,ときに自分より大きな何かに食われる。
生き延びた者だけが次の姿を選ぶことを許される。さあ,どんな生き物に育てよう。
本日は,スウェーデンのマルメに拠点を置くOdd Dreams Digitalが手掛ける「Everything is Crab」を紹介しよう。
本作は生物の進化をテーマにしたローグライトアクションだ。プレイヤーは青いぷにゅっとした生物を操作し,4つのバイオームから成る生態系のなかで20分ほどの1ランを生き抜いていく。
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本作の特徴は,毎回ゼロから自分だけの生き物をデザインしていく進化システムにある。果物やキノコを採り,ほかの動物を狩って食べることでレベルが上がり,そのたびに進化の選択肢が提示される。
鋭い爪を生やすか,毛皮で寒さに備えるか,翼を得て空を渡るか――選んだものはそのまま見た目にも反映され,画面のなかの自分はどんどん奇怪な姿になっていく。
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攻撃や回避はクールダウン制で,トップダウン視点のアクションとして遊びごたえもしっかりある。道中に立ちはだかるボスたちのなかで,自分の組んだビルドが通用するかを試していくわけだ。
選んだ進化が見た目に反映される楽しさ
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本作の最大の魅力は,125を超える進化と20以上のスペシャライゼーションが,そのまま画面のなかの自分の姿に反映される点にある。眼球を増やせば目玉が増え,脚の数を増やせば節足動物のような見た目で歩き始める。
鼻先の形ひとつ,角の本数ひとつまでがビジュアルに乗り,どれだけ無茶苦茶な組み合わせでもアニメーションが破綻しない。気がつけば自分の操作している生き物は,もう何の動物だったか分からない異形のキメラになっている。
1ランの終わりに自分が育て上げた姿をスクリーンショットやGIFで保存できる機能まで用意されており,開発チームが「このゲームの一番面白いところは何か」をきちんと分かっているのが伝わってくる作りだ。
戦わずに生き延びてもいい
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本作が単なるアクションローグライトと一線を画すのは,「敵を倒すこと」が目的ではない点にある。プレイヤーが追い求めているのはダンジョン制覇ではなく,生態系のなかで自分が生き残るすべを見つけることだ。
腕力に任せて頂点捕食者になってもいいし,他の捕食者が倒した獲物の肉を奪って巣穴に逃げ込むこすっからいスカベンジャーとして生きてもいい。
トゲや毒で身を守りながら果実とキノコだけ食べる草食獣もありだ。さらに面白いのが,ボス戦ですら必ずしも戦う必要がないこと。攻撃を回避し続けて時間を稼げば,業を煮やしたボスが他の生き物を蹂躙しに勝手にどこかへ歩き去っていく。
生存戦略がプレイヤーごとにまったく違ってくるわけで,これがリプレイ性の根っこになっている。
カニ化というおかしな風味
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タイトル「Everything is Crab」の由来は「カルシニゼーション」と呼ばれる現象――カニとは別系統の甲殻類が,なぜかカニそっくりの姿に進化してしまうという,実在の生物学のミームにある。
本作ではこれがジョークとして全編に効いており,カニ的な特徴を持つボスが何体も登場するし,甲羅や鋏といったカニ寄りの進化を選んでいくと「カニ化値」が上がって追加のチャレンジが開放されていく。
あくまでサブクエスト的なオプション要素であって,必ずカニにならねばならないわけではないのだが,どこまでカニに近づけるかという縛りプレイ的な楽しみ方もできる。タイトル通りの結末を自分の手でなぞってみたくなる,憎めない仕掛けだ。
「Everything is Crab」は,「自分だけの生き物を育てて生かしてみたい」という願望を,現代のローグライトの形で軽やかに叶えてくれる作品だ。
20分という手頃な1ランのなかに,進化の選択,ビジュアルが変わっていく視覚的な面白さ,生態系のなかで自分の生き方を選ぶ自由度がしっかり詰まっている。
組み合わせを試したくなるタイプの遊び好きな人,奇妙な生き物図鑑を埋めていく作業に喜びを感じる人には,迷わずすすめたい一作である。

























