オススメ機能
Twitter
お気に入り
記事履歴
ランキング
お気に入りタイトル/ワード

タイトル/ワード名(記事数)

最近記事を読んだタイトル/ワード

タイトル/ワード名(記事数)

LINEで4Gamerアカウントを登録
[COMPUTEX]一強時代の終わりを迎えたQualcommはどう戦うのか? 高速無線LAN技術とSoCの優位性をアピールした発表会レポート
特集記事一覧
注目のレビュー
注目のムービー

メディアパートナー

印刷2015/06/04 00:00

イベント

[COMPUTEX]一強時代の終わりを迎えたQualcommはどう戦うのか? 高速無線LAN技術とSoCの優位性をアピールした発表会レポート

Snapdragonシリーズの説明を担当したPeter Carson氏(Senior Director,Product Marketing,Qualcomm)
画像集 No.004のサムネイル画像 / [COMPUTEX]一強時代の終わりを迎えたQualcommはどう戦うのか? 高速無線LAN技術とSoCの優位性をアピールした発表会レポート
 COMPUTEX TAIPEI 2015初日の2015年6月2日,Qualcommは,報道関係者向けの説明会を開催し,同社が取り組む無線通信技術やSoC(System-on-a-Chip)のSnapdragonシリーズが持つ優位性を説明した。
 新製品の発表といった派手な話題はなかったが,無線LANの高速化や他社製SoCとの比較といった興味深い話題が語られたので,発表会の概要を簡単にまとめてみたい。


無線LANのさらなる高速化&使い勝手向上を目指す

IEEE 802.11ac Wave-2


画像集 No.002のサムネイル画像 / [COMPUTEX]一強時代の終わりを迎えたQualcommはどう戦うのか? 高速無線LAN技術とSoCの優位性をアピールした発表会レポート
 説明会で1つめの大きな話題となったのが,無線LAN技術「IEEE 802.11ac Wave-2」(以下,Wave-2)だ。Wave-2とは,既存の無線LAN規格であるIEEE 802.11ac(以下,11ac)を強化するもので,大きく分けて,2つの仕様が含まれている。

  • 5GHz帯のマルチユーザーMIMO(Multi User MIMO,以下,MU-MIMO)
  • 160MHz幅への通信帯域幅拡張

 まずはMU-MIMOから説明していこう。現在の11acで使われているMIMO(Multi Input Multi Output)技術というのは,複数の無線通信モジュールを同時に通信させることで,通信速度を高速化するものだ。しかし,現在の方式は,アクセスポイント(以下,AP)と無線LANデバイスが1対1で通信を行うために,同時に通信できるのは1台だけに限られてしまい,複数のデバイスが同時に通信できない。一見すると,同時に通信できているように見えるのは,実際は細かく時間を区切って,個別に通信を行っているのだ。そのため,現在の方式は,シングルユーザーMIMOと呼ばれることもある。
 それに対して,MU-MIMOでは,APと複数のデバイスが同時通信できるようになるので,ユーザー全体の通信速度が向上するのだとQualcommでは説明していた。

シングルユーザーMIMOでは,同時に通信できるデバイスは1台のみ。しかしMU-MIMOなら,複数のデバイスがAPと同時に通信できるように
画像集 No.003のサムネイル画像 / [COMPUTEX]一強時代の終わりを迎えたQualcommはどう戦うのか? 高速無線LAN技術とSoCの優位性をアピールした発表会レポート

 2020年になると,米国では1世帯あたり平均20台のインターネット接続デバイスが存在するようになると,Qualcommでは予測しているという。5年先といわずとも,今日(こんにち)すでに,スマートフォンや携帯ゲーム機,ノートPCなど,家庭の中で複数の無線LANデバイスが動作しているという人は珍しくないだろう。そのうえ,さまざまな機器が個別にインターネットへとつながるようになる「Internet of Things」(以下,IoT)の時代になれば,無線LANデバイスの数が急増するはずで,現状のままでは,快適な無線LAN環境は望めなくなってしまう。これを解決するのがMU-MIMOというわけだ。
 Qualcommによれば,MU-MIMOの導入によって,既存の11acと比べておおむね「1.8〜2倍の速度向上が可能」になるという。実際の通信速度がどの程度になるのかは検証を待ちたいが,期待を持てる数字ではないだろうか。

 さて,もう1つのポイントである160MHz幅への通信帯域幅拡張とは,現在の11acで使える80MHz幅を2倍に拡張するというものだ。これはもう単純で,通信帯域幅が広がった分だけ,通信速度が向上すると考えていい。

 これらの仕様を備えたWave-2対応の機器が普及すれば,家庭内にある複数の機器が同時に通信を行っても,遅延の少ない高速な通信が安定して行えるようになる。ただ,Wave-2は,11acの標準仕様として策定されているものの,現時点ではQualcomm製品以外の対応チップが存在しないため,相互認証テストが行えない状況にあり,Wave-2部分のWi-Fi認証は取得できていないそうだ。

 Qualcomm製のMU-MIMO対応無線LANチップを搭載する製品は,すでに販売されている。まず無線LANルーターは,ASUSTeK ComputerやNECなどから発売されており,今後もさまざまなメーカーから,対応製品が登場してくる予定とのことだった。

MU-MIMOに対応したQualcomm製無線LANチップを搭載する製品。NECやバッファローのAPのほか,スマートフォンでもすでに対応しているものがあるとのこと
画像集 No.005のサムネイル画像 / [COMPUTEX]一強時代の終わりを迎えたQualcommはどう戦うのか? 高速無線LAN技術とSoCの優位性をアピールした発表会レポート

 さらに今回,MU-MIMOだけでなく160MHz幅での通信にも対応した無線LANチップとして,ルーター/ゲートウェイ向けの「QCA9984」と,エンタープライズAP向けの「QCA9994」という2製品も発表されている。

160MHz幅の通信帯域幅に対応した新しい無線LANチップ
画像集 No.006のサムネイル画像 / [COMPUTEX]一強時代の終わりを迎えたQualcommはどう戦うのか? 高速無線LAN技術とSoCの優位性をアピールした発表会レポート

 無線LANデバイス側では,Qualcomm製無線LANチップの一部がすでにMU-MIMOの機能を備えているとのことで,これを採用しているスマートフォンやタブレットであれば,ソフトウェアアップデートでMU-MIMOに対応可能となるそうだ。
 Wave-2への対応によって,無線LANがより使いやすくなる日は,そう遠い話ではないだろう。


Qualcommには珍しく,競合製品との比較で優位性をアピール


 さて,Qualcommといえば,スマートフォンやタブレット用SoCの最大手であり,この分野では圧倒的な強みを発揮している企業といったイメージが強い。しかし,モバイル機器向けSoC分野は競争が激化しており,IntelやSamsung Electronics(以下,Samsung),台湾のMediaTekといった競合企業の製品も,性能や価格面でQualcommを追い上げている状況だ。
 競合の追い上げに対してQualcommは,Snapdragonシリーズをさまざまな新技術に対応させることによって,優位性を確保していくようだ。今回の記者説明会では,前述の競合3社が展開するSoCとQualcomm製品の機能や性能を比較するという形で,その優位性をアピールしていた。

Snapdragon 810」と他社製品との比較スライド。競合の社名はもちろん明かされていないのだが,Competitor A(以下,競合A社)がMediaTekで,Competitor B(同,競合B社)がIntel,Competitor C(同,競合C社)がSamsungと思われる
画像集 No.007のサムネイル画像 / [COMPUTEX]一強時代の終わりを迎えたQualcommはどう戦うのか? 高速無線LAN技術とSoCの優位性をアピールした発表会レポート

 とくに優位にあるとされたのが通信機能だ。Snapdragon 810は,下り通信速度が最大450MbpsになるLTEの「Cat.9」(カテゴリ9)をサポートしているのに加えて,日本で主に使われているLTE規格の「FDD LTE」,WiMAX 2+の通信規格である「TD-LTE」の両方式での通信が可能である。また,LTE上で音声通話を行う「VoLTE」,11acのMU-MIMO,さらにミリ波と呼ばれる60GHz帯の電波を使う無線LAN規格「IEEE 802.11ad」にも対応するなど,豊富な機能を備えるという。それに対して,競合製品でこれらすべてをサポートするものはないので,通信機能ではSnapdragon 810が優位であると,説明を担当したPeter Carson氏は主張していた。

 それ以外の項目でも,競合製品に対してQualcomm製品が勝っていると,Carson氏はアピールしていたが,比較対象によって項目の中身が微妙に変わっていたりもするので,全体を見てどれが一番,というのは言いにくいというのが正直なところか。

競合A社との比較。LTEの下りやHSPA+のスループット,音声通話の失敗率の低さ,省電力性などでQualcomm製LTEモデムが優位にあるという
画像集 No.008のサムネイル画像 / [COMPUTEX]一強時代の終わりを迎えたQualcommはどう戦うのか? 高速無線LAN技術とSoCの優位性をアピールした発表会レポート

こちらは競合B社との比較。一見すると同じように見えるが,一部の比較項目が異なっている
画像集 No.009のサムネイル画像 / [COMPUTEX]一強時代の終わりを迎えたQualcommはどう戦うのか? 高速無線LAN技術とSoCの優位性をアピールした発表会レポート

同じく競合C社との比較。他との比較では存在したLTEデータ通信時の消費電力比較がないので,うがった見方をすれば,その点ではC社の方が優れていたのでは,とも考えられる
画像集 No.010のサムネイル画像 / [COMPUTEX]一強時代の終わりを迎えたQualcommはどう戦うのか? 高速無線LAN技術とSoCの優位性をアピールした発表会レポート

 SoCメーカーによっては,機能よりも価格を重視することもあるわけで,戦略の異なる企業同士の製品を一概に比較できるものではない。とはいえ,現行のモバイル向けSoCの中でも,とりわけ幅広い機能を網羅しているのがQualcomm製品である,とはいえそうだ。

競合A社とカメラ機能を比較したもの。HDR撮影を行ったときに,動きのある被写体の合成が適切に行えるかどうかを比較したもので,「Snapdragon 801」のほうがきれいな写真を作れると主張しているわけだ
画像集 No.011のサムネイル画像 / [COMPUTEX]一強時代の終わりを迎えたQualcommはどう戦うのか? 高速無線LAN技術とSoCの優位性をアピールした発表会レポート

 説明会場ではスライドだけでなく,スマートフォンの実機を使った比較デモも行われていた。3Dグラフィックスや4Kビデオのストリーミング再生といった比較は,確かに違いが分かりやすい。ただ,SoCの処理性能をどこまで引き出すかは消費電力とのトレードオフになるので,同じSoCを積むスマートフォンの性能が,どれも同じになるとは限らないという点には注意しておく必要がある。

Samsung製SoCを搭載した「Galaxy S6」と思われるスマートフォンと,Snapdragon 810を搭載するLG Electronicsの「G Flex 2」の3Dグラフィックス性能を比較したデモ映像。比較に使っているアプリケーションは「GFXBench」のようで,Galaxy S6はフレームレートが足りずに,カクカクとした表示になっていた
画像集 No.013のサムネイル画像 / [COMPUTEX]一強時代の終わりを迎えたQualcommはどう戦うのか? 高速無線LAN技術とSoCの優位性をアピールした発表会レポート

こちらは4Kビデオをストリーミング再生して,LTEのスループットを比較している実機デモ。左のSnapdragonと比べると,右の競合A社は,スムーズに再生されなかった
画像集 No.012のサムネイル画像 / [COMPUTEX]一強時代の終わりを迎えたQualcommはどう戦うのか? 高速無線LAN技術とSoCの優位性をアピールした発表会レポート

箱を開けると,Qualcomm側にはG Flex 2らしき端末(左),競合A社側には中国Elephone製のスマートフォン「Elephone P6000」らしき端末が入っていた(右)。ちなみに,Elephone P6000が搭載するSoCは,MediaTek製の「MT6732」である
画像集 No.014のサムネイル画像 / [COMPUTEX]一強時代の終わりを迎えたQualcommはどう戦うのか? 高速無線LAN技術とSoCの優位性をアピールした発表会レポート 画像集 No.015のサムネイル画像 / [COMPUTEX]一強時代の終わりを迎えたQualcommはどう戦うのか? 高速無線LAN技術とSoCの優位性をアピールした発表会レポート

 Qualcommが比較のために競合他社製品を並べてくるというのは珍しいことで,とくに実機による比較デモを披露するというのは滅多にないことだ。同社の説明会には何度も出席している筆者だが,いささか驚かされた。トップシェアのSoCメーカーとして競合他社から比較されることも多いQualcommだが,競争が激しくなってきたことで,うかうかとはしていられないと判断したのかもしれない。
 しかし,競争が激しくなることによって性能向上や電力消費の低減も進むと考えれば,Snapdragonが一強を独占する時代が崩れること自体は,消費者にとって歓迎できるものではないだろうか。

2015年のSnapdragonロードマップ。いずれも発表済みのSoCばかりで,新しい情報はない
画像集 No.016のサムネイル画像 / [COMPUTEX]一強時代の終わりを迎えたQualcommはどう戦うのか? 高速無線LAN技術とSoCの優位性をアピールした発表会レポート

Qualcomm 公式Webサイト

COMPUTEX TAIPEI 2015取材記事一覧


  • 関連タイトル:

    Snapdragon

  • この記事のURL:
4Gamer.net最新情報
プラットフォーム別新着記事
総合新着記事
企画記事
スペシャルコンテンツ
注目記事ランキング
集計:04月18日〜04月19日