第16回「Tales of Maj'Eyal」
プレイヤーは数多の種族と職業の中から自身の分身を生み出し,自動生成されるダンジョンへと足を踏み入れていく。一歩一歩が死と隣り合わせの緊張感の中,思考をめぐらせて次の一手を決断しなければならない。果てしない迷宮の奥底で,あなただけの伝説が今,静かに幕を開けようとしている。
人間界のゲームに心奪われた魔王・赤城朱音(あかしろ あかね)。目つきも口調も悪いが実はお嬢様な龍恩寺凛(りゅうおんじ りん)。ボードゲームとミニチュアが大好きな天然ギャル・新山穂香(にいやま ほのか)。――そこは私立四亀学園。放課後の空き教室には,今日も3人の姿があった。
なぁ、今遊んでるゲームをクリアしたら2人は何する予定?
積んである「Warhammer 40,000」の未塗装品に着手する!
間髪をいれず「テイルズ」を起動するじゃろうな。
へ〜。朱音も「テイルズ オブ」シリーズが好きなんだな。
意外〜! 穂香は「シンフォニア」が好き〜!
アタシは「エターニア」だな。
そこはシリーズの始祖「ファンタジア」じゃろ! って、そっちのテイルズじゃないわーい!
じゃあ、どの「テイルズ」なんだよ?
テイルズはテイルズでも、読み方が分からないローグライクRPGのほうじゃ。
![]() |
えーと、テイルズ オブ マジャ……エール?
「Tales of Maj'Eyal(テイルズ オブ マイイヤル)」。通称「ToME4」じゃよ。
えっ? Jどこいった?
昔ながらの伝統的ローグライクで、分かりやすく言うと「不思議のダンジョン」系じゃな。これが面白すぎてのう、新作を遊びつくすたびに起動してしまうのじゃ。
「トルネコの大冒険」とか「風来のシレン」に似たやつってこと?
血筋は違うが、ジャンル的には同じ括りじゃな。元は「Angband」という老舗ローグライクから派生した作品でもある。
「Angband」ってゲーム画面がASCII(文字)ベースのやつだっけ。こいつも「Rogue」から派生した「Moria」がベースになってるんだよな。
令和のJKのくせして詳しすぎないか……。
「Angband」が元ってことは、「ToME4」もASCIIベースなの?
いや、こやつはちゃんとグラフィックスもBGMもあるし、マウス操作にも対応しておる現代っ子じゃ。
![]() |
現代っ子というわりにグラフィックスはシンプルっていうか……簡素だね。
アタシはそれっぽくて好きだけどな。なんかMOっぽい雰囲気もあるし。
じゃろ? 遊びやすさという意味では、伝統的ローグライクの中でもトップクラスじゃ。なんせ定番要素である食料や消耗品の概念がないからのう。
それってお腹が減らないってこと? 「風来のシレン」だとずっとおにぎりの心配してた気がするけど。
いかにも! 「ToME4」には満腹度がないから、飢え死にを回避するためにフロア探索を急ぐプレッシャーがないのじゃ。
消耗品の概念って、使い切りの回復アイテムも含むよな。どうやって回復するんだ?
回復はハーブとルーンを使うんじゃが、これらはクールタイム制で永久に使えるんじゃよ。非戦闘時なら休息のコマンドで全快できるしのう。
へ〜、探索中に「回復薬を節約しなきゃ」ってケチケチする必要がないんだね。
じゃからプレイ感覚は伝統的ローグライクというより、ハクスラに近いものを感じるかもしれんのう。
それこそ「Diablo」とか?
いかにも。じゃがゲームはターン制じゃし、敵もキャラもマス単位で動く。落ち着いて立ち回りを練りながら戦える、いわば“頭脳系ハクスラ”じゃな。
へぇ、面白そうじゃん。
![]() |
選べる職業は30種以上、種族も10種以上あってのう、組み合わせのバリエーションがとんでもなく多いのも特徴じゃ。
職業の数多すぎ〜(笑)。
同じ職業でもスキルポイントの割り振りやアンロックするスキルラインを変えれば、まったく別キャラに育てられるのもポイントじゃ。
完全にビルド構築ゲーだな。
それだけバリエーションがあると、次から次へとビルドを試したくなっちゃうかも。
しかーし、職業や種族の多くは最初から使えるわけではないぞい?
アンロック式か〜。
いかんせん数が多いから、有志たちの攻略情報がないと全解除が難しいのじゃ。
へ〜、先人の教えありきのゲームなんだね。
古いゲームではあるが,先人たちの知恵がまとめられているぶん,遊びやすい環境が整っておるとも言えるのう。
ほかにもこのゲームならではの特徴ってある?
Steamの実績がやたら多い。
どれどれ、せ……1782個……?
「Crusader Kings III」の188個ですら多いな〜って思ってたのに,上には上がいるねぇ。
かっかっか! ぜーんぜんコンプリートできないのじゃ!
![]() |
そういうのじゃなくてシステムの特徴を教えてよ〜。
そうじゃのう……面倒なとこを削ぎ落としたシンプル設計は特徴かもしれん。現に、一度倒した敵は復活しない仕様じゃ。
つーことは,経験値稼ぎの周回は必要ないってことか。
フロアごとの“掘り尽くし”が大事そうだねぇ。
うむ。それに、拾ったアイテムは自動鑑定かつフロア移動時に売却できるシステムじゃから、インベントリの空き状況を気にせずダンジョンを踏破できる親切設計なんじゃぞ。
鑑定も売買のための帰還も手間だもんな。一括買取してくれるのはありがてぇわ。
手間といえば、このゲームは探索の手間も省けるようになっておるぞ。
どゆこと? フロアの掘り尽くしはどうした?
ふっふっふっ。そこは抜かりない。敵と遭遇するまで、ドロップ品を拾いながらオートでダンジョンを探索してくれるコマンドがデフォで用意されているのじゃ。
バトル以外をオート任せにできるんだ〜。便利そう!
取りこぼしなくアイテムを拾ってくれて優秀じゃぞ〜。ダンジョンに入ったらとりあえずZキーでオート探索、接敵したら手動でバトルを繰り返せばよいだけじゃからな。
なんてゆーか、戦闘でひたすらビルドの答え合わせをしたい人にめっちゃ刺さる仕様だな。
探索に重きを置かず、ビルド構築の楽しさを味わわせる。その一点を突き詰めたゲームといえるのう。
古典的ローグライクの面倒な部分をスッパリ削いで、現代の脳味噌に合わせてチューンアップしたのが「ToME4」ってことなんだな!
![]() |
ところで、死んだらどうなるの〜? やっぱりパーマデス?
基本はパーマデスじゃが、無限復活の“お試し”、残機制の“アドベンチャー”、1デスで全リセットの“ローグライク”からモードを選べる。それなりに難しいゲームじゃから、アドベンチャーがちょうどいいじゃろうな。
穂香にローグライクをやらせたら3秒で発狂するだろうな。
そんなにメンタル弱くないし〜!
そんで朱音は、今何のキャラを使ってるんだ?
うむ、それなんじゃがな。ちょっとこれを見てほしいのじゃ。
ノート? なんだこれ……うわっ、書き込みがビッシリ。
ワシのビルド研究ノートじゃ。
わ〜、すごい。「狂戦士 上級人 Lv.18 Lost」「呪怨戦士 コーナック Lv.30 Lost」「射手 エルフ Lv.5 Lost」……これってもしかして?
かっかっか、歴代のキャラリストじゃよ!
お、おう……何体分あんだよこれ。
いい感じに育てたキャラが墓地で即死したのが最後じゃから、ざっと200体じゃ。あのときはさすがに涙が枯れたわい……。
そんなしんみりするなって。
![]() |
ま、それもこれもビルドの肥やしじゃ。同じミスを繰り返さんよう、死因と一緒に教訓も書き込んでおるのじゃ。
ここまで積み重なると、何が何でも供養したくなるね。
穂香、分かってくれるのか……。
話がデカい方向にいってるけど、結局朱音はどんなキャラで冒険してるんだ?
えーとな、今は……。
今は?
……201体目のキャラを作っておるところじゃ。
は!?
じゃから、キャラ作成画面でスキルの振り方をずっと悩んでおって……。
今のキャラはまだ最初のダンジョンにも辿り着いてないってこと?
……まだ名前すら決まっとらんのじゃ。
いつ冒険すんだよっ!
ぐぬぬ、急かすでない! キャラ作成画面から攻略が始まっておるのじゃ。最初の選択を間違えたら詰みになりかねん。これも立派な戦闘じゃ!
あはは。凛ちゃん、ノートに201体目を書き込む準備しておこっか。
縁起でもないこと言うでないわ!
![]() |























