そんなParadox Interactiveが主催するファンイベント「PDXCON2018」が,2018年5月18日から20日までストックホルムにて開催された。2013年のPDXCONに参加している筆者だが,思い立って5年ぶりに参加してみることにした。5月18日は懇親会のみであったため,本稿では実質的には初日と言える19日の模様をレポートしよう。
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会場はストックホルム郊外,ネッカにある改修された旧工場。正確な参加者数は不明だが,一般参加者の数は約700〜800人といったところ。主催側の関係者を含めると,約1000人が会場に足を運んだのではないかと思われる。
1つの企業のファンイベントとしては大がかりであるものの,人が多すぎて参加者間の密接な交流が阻害されるわけでもない,ちょうどいい規模だったと言える。
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イベントの開幕から,新作2本を含む新情報が発表
PDXCON2018の冒頭を飾るアナウンスメントショーでは新作PCゲーム2本,新作ボードゲーム4本,そして既存タイトルのDLC4本が発表された。新情報の大盤振る舞いだ。
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最初は,Triumph Studiosの新作「Age of Wonders: Planetfall」。Age of Wondersと言えば,知る人ぞ知るターンベースの4Xファンタジーシリーズとして有名。とくに第3作は高い完成度を誇り,評価が高い。
それだけに,ファンタジーからSFへとテーマを変えてきたことに驚いたファンも多かったようだ。この路線変更の決断において,パブリッシャであるParadox Interactiveがどこまで関与しているかは不明だが,同社が「Stellaris」や「Survival Mars」の制作で培ったノウハウが新作に生かされることに期待したい。
続いて発表されたのは,「Hearts of Irons」「Europa Universalis」「Crusader Kings」「Cities: Skylines」のボードゲームだ。筆者は以前,同社が実施した「ボードゲーム化を希望するタイトル」のアンケートに答えたことがあるが,4作品同時発表とは予想外。しかも,そのうち1作がパブリッシングのみとなる「Cities: Skylines」とは,さすがに驚いた。
なお,これらの作品はParadox Interactiveが直接制作するのではなく,ライセンス契約によって委託するボードゲームデザイナー達が担当している。さっそくPDXCON2018のボードゲームコーナーに出展されており,ゲームデザイナーに話を聞いたところ,「Cities:Skylines」以外の作品は「可能であれば,10月にドイツのエッセンで開催されるボードゲーム見本市『SPIEL』に出展したい」とのことだった。
ちなみに「Crusader Kings」のボードゲームは,今回の発表に合わせてKickstarterのクラウドファンディングキャンペーンが行われているが,あっという間に目標金額(約634万円)に到達した(関連記事)。
その後,トピックは再びPCゲームへ。「Crusader Kings 2」の「Holy Fully」,「Europa Universalis IV」の「Dhama」,「Stellaris」の「Distant Stars」,「Hearts of Iron IV」の「Man the Guns」という,既存タイトル4作品の新DLCが発表された。いずれもParadox Development Studioが開発を手がけている。
なお,「Stellaris」の新DLCは5月22日のリリースが確定しており,そのほかの3作品は年内のリリースが予定されているとのこと。
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アナウンスメントショーの最後には,Paradox Development Studioにとって久々の新作となる「Imperator: Rome」が発表された(関連記事)。「Hearts of Iron IV」と「Stellaris」の発売から約2年,そしてクリエイティブディレクターとして同スタジオを統括するJohan Andersson氏が,最後にゲームディレクターを務めた「Europa Universalis IV」から数えると約5年となり,まさにファン待望の新作だ。そのテーマが要望の多かったローマ時代だったこともあり,会場では大きな歓声が上がっていた。
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なお,アナウンスメントショーの模様はParadox Interactiveの公式YouTubeチャンネルにて公開されている。
開発者自らがゲームを語る,興味深い講演の数々
以上のように,PDXCON2018では出だしから多数の新情報が公開された。筆者としては,もうこの段階でお腹いっぱいになり,「ああ,満足した。帰ろうかな」という気分だったほど。だが,ストラテジーファンの宴はもちろん,これで終わらない。
PDXCON2018は物販ブースやフードコートを除くと,4つの区画で構成されていた。主要な企画が行われるメインステージ,小規模な対談が行われるオーディトリアム,ゲームの試遊台が置かれたブースコーナー,そしてボードゲームコーナーだ。
メインステージおよびオーディトリアムで行われた催しのなかで,筆者がとくに興味深いと感じたのが,「Stellaris」のMartin Anward氏,「Crusader Kings 2」のHenrik Fahraeus氏がそれぞれ登壇したステージだった。
Paradox Development Studio初となるSFストラテジーゲーム「Stellaris」の開発を指揮するAnward氏は,「After the Apocalypse(アポカリプスの後)」と題して,「Stellaris」のこれまでを振り返ると共に,来場者の質問を受け付けながら今後の計画を明かした。
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Anward氏がここで強調したのが,2016年のリリース以来,ゲーム中盤の充実を大きな課題として集中的に取り組んできたという点。というのも,「自勢力の探検/開発/拡張,敵勢力の殲滅によって勝利を目指す」,いわゆる4Xゲームに属する本作だが,ゲームの序盤や終盤に比べると,中盤は中だるみしやすく,コンテンツのパワーも弱いからだ。
こうした問題は当初から認識されており,リリース後には政治,外交,戦争,交易などのテーマに特化した大型DLCによってコンテンツの充実が図られた。また,「ストーリーパック」と呼ばれる小型DLCによって,プレイヤーがより深いナラティブな体験を得られるようにロードマップを設定したという。
これにより,一般的な4XゲームからParadox Development Studioが得意とする,重厚なシステムを搭載したグランドストラテジーゲーム(いわゆる“パラドゲー”)へとシフトさせているようだ。
また,Anward氏は今後の代表的な課題として,「より興味深く,多様性のある惑星(開発)」「交易および市場システム」「(「Civilization」シリーズの国連のような)全宇宙規模のコミュニティ」「より充実した連邦システム」「より活き活きとした星系の表現」「(ファンからの要望の多い)諜報」を挙げていた。とくに惑星開発は大きな不満があがっていることから,「ぜひ変えたい」とのこと。
また,現在のシステムは1タイルにつき,1種類の種族,1種類の建物しか建てられないため,多様性に限界があること。そして中盤以降に管理する惑星が増えてくると開発が苦痛になることなどが問題点だと述べていた。
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タイルと住民が連動するシステムは,「Stellaris」の内政の顔だ。それだけに,こうした変更は「超光速移動をハイパーレーンのみに絞って,ゲームバランスを調整したアップデート」並みに思い切った決断と言える。「試作版」として示されたインタフェースは,クリック回数が減ると同時に惑星開発状況の見通しが良くなりそうな予感がする反面,建物の存在が確認できないため,内政要素が大幅に簡略化される可能性がうかがえる。
だが,Anward氏は「今回の変更によって,ゲームが単純になることはない」と述べており,ストリーム配信などを通じて積極的に具体的な説明を行っていくとのことだった。
その後,ファンによる質疑応答では,交易に関連する私掠艦隊システムの充実,珪素生命体の追加,アセンションパークや没落帝国,宗教(イデオロギー)要素の充実など,さまざまな要望が寄せられた。「Stellaris」というゲームがSFファンからの大きな関心を集めていることの証明と言えるだろう。
こうした多彩なリクエストのなかでも,とくにAnward氏が好意的に反応したのが,「Hearts of Iron IV」などに採用されている「ミッション・ディシジョン」システムだった。
一方,「Crusader Kings 2」のゲームディレクターであるHenrik Fahraeus氏のステージでは,同作における物語性の取り扱い方が語られた。
まず,Fahraeus氏はゲームとそれ以外のエンターテイメントを分ける要素として,インタラクティブ性を挙げた。その存在により,繰り返し遊んでも飽きないというゲームならではの強みが生まれる。
インタラクティブ性に大きな影響を与えるのが,ゲーム内で展開するナラティブ(ストーリー)の役割だ。Fahraeus氏は「ナラティブが固定されては,インタラクティブ性が損なわれてしまう」と指摘しながら,さまざまな物語のパターンとそれぞれの長所/短所を紹介した。
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例えば,映画や小説のような直線型のナラティブは見る者をぐっと惹きつけるが,インタラクティブ性に乏しい。また,分岐型のナラティブはインタラクティブ性が向上する代わりに,それらの分岐を準備しなければならないため,制作側の負担が増大する。かといって,即興型にすると今度はプレイヤー側の負担が増える。
そこで注目される切り口というのが,ランダム性を取り入れた(Fahraeus氏は「Emergent」(応急的な)と表現した)ナラティブだ。
とはいえ,展開を完全にランダムにしてしまうと,プレイヤーがのめり込めるような物語にはならない。そのため,「Crusader Kings 2」の制作にあたっては「このキャラクターならば,こういうストーリー展開になっても仕方がない」と思わせるシステムを構築した。Fahraeus氏によると「偶然と必然のバランスを取ること」と「効果的な(必ずしも「賢い」と同義ではない)AIを設定すること」という2点に留意したそうだ。
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Fahraeus氏いわく,「『Crusader Kings』シリーズはジョージ・R・R・マーティン著の『氷と炎の歌』シリーズと『Sims』シリーズを足したようなゲーム」とのことだが,「Crusader Kings 2」をデザインするにあたり,第1作の国家経営要素を軽減して,キャラクターのウェイトを高めて家族に焦点を当てる。それと共にキャラクター間の好感度やそれぞれの個性を重視し,それによって無数の対立が引き起こされるゲームを目指したという。
また,AIはキャラクターに設定されたパラメータに基づいて行動するように設定し,さらに一定のランダム性を加えている。これによって,現実世界でも起こり得るようなリアリティのある因果関係と頻度のストーリーを生み出すことに成功したとのことだ。
終盤の質疑応答では,「Crusader Kings 2」は対戦型より協力型のマルチプレイに向いていること,一部のイベントには短期間で反復して発生する不自然さが残っているため,改善の余地があることなど,同作のファンにとって非常に気になる内容の話題が続いた。
こうしたステージの模様はTwitchでもライブ配信が行われていたが,実際に現場で体験できたというのは,やはり何物にも代えがたい経験だった。
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ストラテジーファンを楽しませる工夫に満ちていた
PDXCON2018は「講演ばかりでは退屈だ」という根っからのゲーマーのことも考えられている。
メインステージに隣接するブースコーナーでは,多数の試遊台が用意されており,気になるゲームを心ゆくまでプレイすることができた。なかには「Hearts of Iron IV」のポーランドや「Europa Universalis IV」のウルムなど,「(なぜか)人気のある中小国」を指揮するスコアアタック企画も行われており,腕に覚えのあるプレイヤー達が順位を競っていた。
また,この機会に初めてのゲームに触れているプレイヤーも頻繁に見られ,開発スタッフから直接アドバイスを受けていたようだ。
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ボードゲームコーナーでは,アナウンスメントショーで発表された4作品のほか,「カタンの開拓者たち」などの定番ゲームも置かれており,気軽に遊べるようになっていた
![]() 「Europa Universalis」のボードゲームは明らかに「重たそう」という感じ |
![]() 「Hearts of Iron」の舞台は,残念ながら欧州戦線のみとのこと |
![]() 「Cities: Skylines」はタイル上に建物コンポーネントを置いていくスタイルだ |
![]() 「Crusader Kings」は原作同様,一族の繁栄や謀略が鍵となるようだ |
ちなみに,ボードゲームコーナーの壁面には来場者が自国の国旗のところにシールを貼ったり,好きなゲームの感想を書いたりできるようになっていた。筆者が数えたところ,19日の時点で5大陸,40か国からファンが集ったようだ。北欧諸国をはじめ,イギリスやアメリカ,オーストラリアなどの英語圏が多かった印象だが,もちろんアンケートに回答していない人も多く,実際の参加国はもっと多いと考えられる。
![]() 「Europa Universalis IV」を長時間プレイしたファン達の武勲(?)が並ぶ |
![]() 奇しくもオーストラリアとオーストリアの参加者は同数 |
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ストラテジーゲーム体験を深め,共有できるイベント
以上がPDXCON2018初日の模様だ。筆者個人の感想を述べるなら,たとえ英語が分からなくても,Paradox Interactiveのストラテジーゲームをある程度遊んだことのあるならば,その体験を活かして十分楽しめるイベントだと思う。
また,英語ができれば,自分の体験を元に開発者や参加者と交流を図って,いっそうコアなストラテジーゲーマーへと進化できることは間違いない。
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今回のPDXCON2018は,筆者が以前に参加した2013年のそれと比べても大幅に拡充されており,この5年間でParadox Interactiveが成長を遂げたことを確認できたことも嬉しい。かつての緩い雰囲気が少なくなり,隙のない企業へと変貌しつつある点に一抹の寂しさがないわけではないが,「ストラテジーゲームにこだわり続ける同社のファンでいよう」とあらためて心に誓った。
もし筆者ほどのめり込んでいなくても,PDXCONは間違いなくストラテジーゲーマーの夢の祭典だ。来年以降も定期的に開催されるとのことなので,日本のゲーマーも思い切って参加してほしい。













































