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  • 発表日:2015/05/06
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PowerColorオリジナルクーラー搭載の「AXR9 380X 4GBD5-PPDHE」を試す。2016年を迎え,R9 380Xの立ち位置は変わったか
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印刷2016/01/06 06:00

レビュー

GPUの発表から約1か月半。R9 380Xの立ち位置をあらためて確認する

PowerColor PCS+ R9 380X Myst. Edition 4GB GDDR5
(AXR9 380X 4GBD5-PPDHE)

Text by 宮崎真一


PowerColor PCS+ R9 380X Myst. Edition 4GB GDDR5(型番&国内製品名:AXR9 380X 4GBD5-PPDHE)
メーカー:Tul
問い合わせ先:CFD販売(販売代理店)サポート案内ページ
実勢価格:3万1000〜3万8000円程度(※2016年1月6日現在)
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 2015年11月に登場した「Radeon R9 380X」(以下,R9 380X)は,Graphics Core Next(以下,GCN)アーキテクチャの最新世代であるGCN 1.2仕様を採用する製品だ。Radeon R9 200シリーズのリフレッシュ(あるいはリネーム,リブランド)ではない,Radeon 300シリーズにおける貴重な「新製品」としても価値が高いが,リリース時点では性能と価格が釣り合っておらず,店頭価格がこなれるのを待つ必要があるというのが,当時における筆者の結論だった。

 あれから約1か月半。2016年を迎えて,その状況に変化はあっただろうか。今回4GamerではTulから「PowerColor AXR9 380X 4GBD5-PPDHE. Edition 4GB GDDR5」(型番&国内製品名:AXR9 380X 4GBD5-PPDHE,以下型番表記)を入手できたので,R9 380Xのクロックアップモデルが持つ実力を見るとともに,R9 380XというGPUの再評価を行ってみたい。


リファレンス比で4〜5%のクロックアップモデル

GPUクーラーは冷却能力&静音性重視


R9 380X GPU。型番は「215-0851313」だった
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 「R9 380Xとは何か」はGPUレビュー記事を参照してもらうとして,まずはAXR9 380X 4GBD5-PPDHEがどのようなグラフィックスカードなのかを見ていこう。
 AXR9 380X 4GBD5-PPDHEは,PowerColorのラインナップにおいて,GPUクーラー性能に注力した「PCS+」シリーズに属する製品だ。すぐ上でメーカーレベルのクロックアップモデルだと述べたが,GPUコアのブースト最大クロックはリファレンスの970MHzから1020MHzで約5%,メモリクロックもリファレンスの5700MHz相当から5900MHzと約4%高くなっている。

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 カード長は実測約268mm(※突起部除く)。これは,「GeForce GTX 980」のリファレンスカードと同じ長さだ。補助電源コネクタはリファレンススペックと同じ6ピン×2となる。
 Tul自慢のGPUクーラーは2スロット仕様で,90mm角相当のファン2基と3本のヒートパイプを搭載するタイプ。PCS+シリーズの上位モデルである「Radeon R9 390」搭載製品で,3基のファンを搭載する「PowerColor PCS+ R9 390 8GB GDDR5」(型番&国内製品名:AXR9 390 8GBD5-PPDHE)だと,GPUにかかる負荷が一定レベルを下回るとファンが止まるようになっているのだが,AXR9 380X 4GBD5-PPDHEでは低負荷環境に置いてもファンの回転は停止しない。この点はやや残念だ。

カード側面には3本のヒートパイプが実測約18mmはみ出るようになっているが,補助電源コネクタも同じ向きなので,補助電源ケーブルを問題なく取り回せるPCケースであれば,このはみ出たヒートパイプが問題になることはないだろう。なお,カード背面には補強板が取り付けられている
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横から覗き込んだところ。カード全体を覆い,複数のネジで留めてある補強板のおかげもあって,基板のたわみとは無縁だ
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ビデオ出力インタフェースはDisplayPort 1.2×1,Dual-Link DVI-D×1,Dual-Link DVI-I×1,HDMI 1.4(Type A)×1という構成だ

GPUクーラーを取り外したところ
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 GPUクーラーの取り外しはメーカー保証外の行為となるが,今回は特別に外してみよう。すると,GPUの発熱は銅製の枕で受けたうえで3本のヒートパイプで放熱フィン部へ運び,それを2連ファンで冷却する仕様になっていることと,5+1フェーズのように見える電源部には専用のアルミ製ヒートシンクを搭載していることが分かる。
 搭載するグラフィックスメモリはエルピーダメモリ(現Micron Technology)のGDDR5で,6.0Gbps品。5900MHz相当というAXR9 380X 4GBD5-PPDHEのメモリクロックは,メモリスペックの範囲内というわけだ。

分解するとよく分かるが、GPU上のヒートシンクはメモリチップに密接しておらず,冷却は2基のファンによるエアフローに拠るところとなる。ヒートパイプは本文で触れたとおり3本
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メモリチップは4Gbit品が8枚でメモリ容量4GBを実現しているが,4枚分の空きパターンが用意されている点が気になる。グラフィックスメモリ容量6GBも想定しているのだろうか?
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MOSFETにはVishay Siliconixの「PowerPAK SO-8」を採用。Tulによると,本MOSFETの採用によって電源供給の安定性が増したという
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搭載するグラフィックスメモリは,Elpidaの刻印が入ったMicron Technology製。型番は「W4032BABG-60-F」だ


Radeon&GeForceの中上位モデルと比較


 今回,AXR9 380X 4GBD5-PPDHEには,上位モデルとなるR9 390のほか,競合製品となる「GeForce GTX 970」「GeForce GTX 960」(以下順に,GTX 970,GTX 960)を用意した。ただし,今回入手したカードはすべてグラフィックスカードメーカーのオリジナルモデル,かつクロックアップモデルなので,いずれもMSI製のオーバークロックツール「Afterburner」(Version 4.2.0)を用いて,リファレンスレベルにまで動作クロックを引き下げている。すべてリファレンスカードを用意できるのが理想だが,このクラスにはそもそもリファレンスカードが用意されないのが普通なので,この点はご了承を。
 現行のGPUはRadeonもGeForceも負荷状況や温度状況に応じてGPUクロックが変わる。そのため,GPUクーラーの冷却能力分だけ,高いスコアが出るはずだが,それはAXR9 380X 4GBD5-PPDHEも同じなので,そういうものだと理解してもらえればと思う。なお,R9 380のリファレンスクロック状態は,AXR9 380X 4GBD5-PPDHEのクロック変更でまかなっている。

 テストに用いたグラフィックスドライバはRadeonが「Radeon Software Crimson Edition 15.12」,GeForceが「GeForce 361.43 Driver」。いずれもテスト開始時の最新版だ。そのほかテスト環境はのとおりとなる。

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 テスト方法はやや変則的で,まず,4Gamerのベンチマークレギュレーション17.0から「3DMark」(Version 1.5.915)と「Far Cry 4」「ファイナルファンタジーXIV:蒼天のイシュガルド ベンチマーク」(以下,FFXIV蒼天のイシュガルド ベンチ)の3つを選択。そのうえで,「Fallout 4」をテストに追加している。
 その方法は,GPU全28製品で一斉検証したときと同じ。「Corvega Assembly Plant」で実際にプレイし,1分間の平均フレームレートを「Fraps」(Version 3.5.99)から計測する。それを3回繰り返して,その平均をスコアとして採用するというものだ。テスト内容の詳細を知りたい場合は,先の記事を確認してもらえればと思う。
 テスト解像度は,AMDがR9 380Xのターゲットとして2560×1440ドットを挙げていることから,同解像度と,16:9のアスペクト比でその一段下にあたる1920×1080ドットの2つを選択した。


R9 380X比で約4%高いスコアを示し,GTX 970とGTX 960の間に入るAXR9 380X 4GBD5-PPDHE


 では,テスト結果を見ていこう。グラフ1は3DMarkの総合スコアをまとめたものだ。
 AXR9 380X 4GBD5-PPDHEは,R9 380X比で約4%高いスコアを示しており,そこからはメーカーレベルのクロックアップ効果を確認できる。動作クロックを考えると,極めて順当な結果だ。ただし,R9 390と比べるとスコアは77〜79%程度で,そのギャップは大きい。
 対GTX 970では85〜86%,対GTX 960だと112〜113%のスコアと,競合製品の間に入り込んだような格好になっているのは興味深い。

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 続いてグラフ2,3がFar Cry 4の結果だが,ここでもAXR9 380X 4GBD5-PPDHEはR9 380Xに対して有意に高いスコアを示している。Ultra設定時に最大約10%と,クロック差を超えた数字が出ているのは,GPUコアとメモリがバランス良く引き上げられた効果と述べていいだろう。ただ,その利はR9 380X比で2倍の512bitメモリインタフェースを持つR9 390も有しており,R9 390と比べるとAXR9 380X 4GBD5-PPDHEは71〜84%に留まる。とくに描画負荷が高いほうから3条件では70%台前半だ。
 Ultra設定の2560×1600ドットでR9 390がレギュレーション規定の合格ラインである平均60fpsを超えるのに対し,AXR9 380X 4GBD5-PPDHEは及第点の平均40fps超えがやっとというのは,インパクトが大きい。

 対GeForceだと,GTX 970比で約83〜95%で,描画負荷が高まれば高まるほどスコア差を詰めている。同様にGTX 960比だと最大で約36%も高いスコアを示した。

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 グラフ4,5はFallout 4の結果だが,AXR9 380X 4GBD5-PPDHEとR9 380Xとのスコア差は3〜6%。R9 390との比較だと74〜81%となった。
 GeForceとの比較で,そのスコアがGTX 970とGTX 960の間に入るというのは,これまでと同じ傾向だ。

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 FFXIV蒼天のイシュガルド ベンチの結果がグラフ6,7だが,Radeon同士の比較だとスコア傾向は変わらず。R9 380Xに対しては3〜4%程度高いスコアを示す一方,R9 390に対しては73〜81%程度に留まる。
 FFXIV蒼天のイシュガルド ベンチはGeForceへの最適化が入っているため,1920×1080ドットでAXR9 380X 4GBD5-PPDHEがGTX 960に逆転を許すのも気になるところだ。ただ,さすがに2560×1440ドットだと,AXR9 380X 4GBD5-PPDHEがメモリバス帯域幅を武器に再逆転を果たした。

※グラフ画像をクリックすると,フレームレートベースのグラフを表示します
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消費電力はR9 380Xから18〜25W増加。GPUクーラーの冷却性能は優秀ながらコイル鳴きが難点


 クロックアップモデルでは消費電力の増加が懸念されるということで,AXR9 380X 4GBD5-PPDHEの消費電力を確認してみよう。今回もログの取得が可能な「Watts up? PRO」を用いてシステム全体の消費電力を測定,比較してみたい。
 テストにあたっては,ゲーム用途を想定し,無操作時にもディスプレイの電源がオフにならないよう指定したうえで,OSの起動後30分放置した時点を「アイドル時」,各アプリケーションベンチマークを実行したとき,最も高い消費電力値を記録した時点を,タイトルごとの実行時としている。

 その結果はグラフ8のとおり。まず,アイドル時は60W前後で横並びになっており,違いはないと言ってよいレベルだ。なお,無操作時にディスプレイ出力が無効化されるように設定したのだが,AXR9 380X 4GBD5-PPDHEのファンの回転はそれでも停止しなかったので,省電力機能「AMD ZeroCore Power Technology」がうまく機能していないようである。実際,ディスプレイ出力無効化時の消費電力は約2Wしか低下しなかった。

 各アプリケーション実行時を見てみると,AXR9 380X 4GBD5-PPDHEはR9 380Xから18〜25Wほど増えており,クロックアップの代償は相応に払っている印象がある。また,第2世代Maxwellアーキテクチャをベースとする競合製品に対してはかなり不利だ。

画像集 No.025のサムネイル画像 / PowerColorオリジナルクーラー搭載の「AXR9 380X 4GBD5-PPDHE」を試す。2016年を迎え,R9 380Xの立ち位置は変わったか

 3DMarkの30分間連続実行時を「高負荷時」として,アイドル時ともども,「GPU-Z」(Version 0.8.6)からGPU温度を追った結果がグラフ9だ。テスト時,システムはPCケースに入れることなく,いわゆるバラックの状態で,室温24℃の環境に置いている。
 各カードは搭載するクーラーが異なり,温度センサーの位置も異なるので,横並びの比較には向かない。その点は注意してほしいが,AXR9 380X 4GBD5-PPDHEのGPU温度がアイドル時に30℃を切り,高負荷時でも60℃に達していないのは目を引く。なお,R9 390でアイドル時の温度がやや高めなのは,前述したようにファンが停止するためだ。

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 最後にAXR9 380X 4GBD5-PPDHEが搭載するGPUクーラーの動作音を確認しておこう。ここでは,マイクをカード(のファン)に正対する形で30cm離れた位置に据えたうえで,PCをアイドル状態で1分間放置した状態から,FFXIV蒼天のイシュガルド ベンチを最高品質の1920×1080ドットで4分間実行したときのシステム動作音を録音したサウンドを下に置いたので,再生して聞いてみてほしい。


SOUND PLAYER:このブラウザは未対応です。PCをご利用ください。
※再生できない場合は,Waveファイルをダウンロードのうえ,手元のメディアプレイヤーで再生してみてください。

 AXR9 380X 4GBD5-PPDHEはアイドル時でも1000rpmほどでファンが回り続けるため,最初の1分間も動作音はそれなりにする。そして,1分後にベンチマークが始まるとファンの回転数が上昇を始め,開始1分後(※サウンドファイル全体では再生開始2分後)あたりでは2100rpmに達して,動作音も大きくなっている。しかし,ファンの動作音は「うるさい」というレベルにはほど遠く,PCケースに組み込めば気にならない程度とも言える。

 むしろ,ここで気になったのは高周波のノイズ,いわゆるコイル鳴きだ,サウンドファイルでもハッキリと確認できるが,ベンチマーク実行後,このコイル鳴きのノイズがファンの動作音よりも大きく聞こえる。もちろん,コイル鳴きは個体差によるものだが,懸念材料となるのは確かだ。


GTX 970とGTX 960の間に立つモデルとしては魅力的なのだが,やはり価格がネック


製品ボックス
画像集 No.027のサムネイル画像 / PowerColorオリジナルクーラー搭載の「AXR9 380X 4GBD5-PPDHE」を試す。2016年を迎え,R9 380Xの立ち位置は変わったか
 AXR9 380X 4GBD5-PPDHEは,リファレンス仕様のR9 380Xと比べて確実に性能が高く,クロックアップモデルらしい“上積み”を期待できる。R9 390にはまったく歯が立たないものの,高いメモリバス帯域幅を背景に,GTX 970とGTX 960の中間的なポジションに入り込めているので,GTX 960ではあと少し性能が足りないというときに,AXR9 380X 4GBD5-PPDHEは魅力的な選択肢になり得るだろう。

 ただし,そういう選択を難しくする要素がある。それは冒頭でもR9 380Xの残念なポイントとして指摘した価格だ。AXR9 380X 4GBD5-PPDHEの実勢価格は3万7000〜3万8000円程度なのに対し,より高い性能を間違いなく持っているGTX 970搭載カードの実勢価格は3万8000〜4万5000円程度なので,安価なGTX 970カードであれば,AXR9 380X 4GBD5-PPDHEとほとんど同じコストで手に入ってしまう。また,GTX 960カードなら安価なものは2万4000円前後から購入できるので,価格対性能比ではまったく勝負にならない。GTX 970とGTX 960の中間的な性能であれば,できれば3万円くらいで買えるといいのだが,理想と現実のギャップは大きいと言わざるを得ない。
 また,上位モデルにある「アイドル時にファンが停止する機能」がないのも,最近の流行から外れているという意味ではマイナスポイントだ。

画像集 No.028のサムネイル画像 / PowerColorオリジナルクーラー搭載の「AXR9 380X 4GBD5-PPDHE」を試す。2016年を迎え,R9 380Xの立ち位置は変わったか
 ここ数年のRadeonらしく,「もう少し価格がこなれればね」という結論になってしまったわけで,その点では,2015年のデビュー当時から,状況があまり変わっていないということになる。GTX 970とGTX 960の間を狙うというAMDのコンセプト自体はとてもいいと思うのだが……。

PowerColorのAXR9 380X 4GBD5-PPDHE製品情報ページ(英語)

  • 関連タイトル:

    Radeon R9 300

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