![]() |
そんな「コーヒートーク」シリーズの最新作「コーヒートーク トーキョー」(PC / Switch2 / PS5 / Xbox Series X|S / Switch / Xbox One)が,2026年5月21日にリリースされた。「コーヒートーク トーキョー」の開発をリードしたのは,シリーズを生み出したToge Productionsではなく,日本を拠点とするコーラス・ワールドワイドだ。
自分たちの手を離れ,別のスタジオへ――大切に育ててきたIPを委ねる決断を,CEOのKris Antoni氏はなぜ下せたのか。
京都で開催されたインディーゲームイベント「BitSummit PUNCH」のToge Productionsブースで,Antoni氏に直接聞いた。
![]() |
4Gamer:
「コーヒートーク トーキョー」の発売,おめでとうございます。反応はいかがですか。
Kris Antoni氏:
ありがとうございます。発売されたばかりでまだ実感が追いついていないところもありますが,日本のファンからの反応がとてもポジティブで,それが何よりうれしいです。
「コーヒートーク」は日本に多くのファンがいるシリーズなので,その舞台が今回ついに東京になったことを,みんな喜んでくれているように感じています。
4Gamer:
その舞台ですが,なぜ今回,東京を選んだのでしょうか。
Kris Antoni氏:
理由はいくつかあります。まず単純に,日本には「コーヒートーク」のファンがとても多いことです。それから,コーヒーやお茶をめぐる日本の文化が,私たちから見てとてもユニークだったことも理由の1つです。
喫茶店の文化もそうですし,お茶の作法もそう。そういう独自の文化が「コーヒートーク」という作品と相性がいいと思ったんです。
そしてもう1つ大きかったのが,開発を担うコーラス・ワールドワイドが日本のチームだということです。彼らは東京を拠点にしているので,「東京でコーヒーショップの物語が起きる」という絵が,最初からはっきりと想像できたんです。
シティポップが流れ,ネオンが灯る都会の夜――その喧騒の奥にある居心地のよさは,「コーヒートーク」の世界観と完璧にマッチすると思いました。
4Gamer:
東京を描くにあたって,リサーチはどのように進めたのでしょうか。
Kris Antoni氏:
その点では,開発チーム自身が日本を拠点にしているという強みが大きかったですね。東京に住んでいるシナリオライターもいましたし,東京出身のスタッフもいました。なので外から取材して描くというより,自分たちの生活圏の延長として東京を描けたんです。そこは今作のリアリティに直結していると思いますよ。
4Gamer:
今作はコーラス・ワールドワイドが開発をリードしています。Toge Productionsが一歩引くというのは,大きな決断だったのではないでしょうか。
Kris Antoni氏:
ええ。今回,コーラス・ワールドワイドにフルでリードしてもらいました。Toge Productionsが担ったのは,IPとガイドラインの監修役です。「コーヒートーク」というシリーズが持つ魂のようなもの――その雰囲気や,大切にしてきた価値観が損なわれないように見守る。私たちはそういう役割に徹しました。
4Gamer:
手放す,というと大げさかもしれませんが,不安はありませんでしたか。
Kris Antoni氏:
もちろん「コーヒートーク」は特別な作品なので,慎重になりました。しかし,コーラス・ワールドワイドとは10年近い付き合いがあって,彼らがこのIPの魂を理解してくれていると信じられました。だから委ねることができたんです。
日本のチームが東京を舞台に描くというのは,私たち自身が作るよりも自然なことだったとも思っています。
4Gamer:
コーラス・ワールドワイドとは約10年の関係ということですが,Toge Productionsがパートナーを選ぶとき,何を基準にしているのでしょうか。
Kris Antoni氏:
私にとって一番大事なのは,個人的な友人になれる相手かどうか,です。一緒に働くことを楽しめて,お互いにきちんと信頼関係を築けるかどうかを重要視しています。
コーラス・ワールドワイドには,まさにそ“つながり”を感じたんです。英語だと「vibe」という言い方をしますが,相性や信頼感みたいなものですね。
10年付き合ってきて,彼らとは仕事を超えた関係になっています。だからこそ,「コーヒートーク」という大切なIPを託せたわけです。
4Gamer:
その“vibe”という感覚は,パブリッシングの相手を選ぶときにも共通しているのでしょうか。
Kris Antoni氏:
共通しています。私たちが新しいタイトルをパブリッシングするかどうかを決めるときにも,“vibe check”はとても重要な要素になっています。技術やビジネスの条件だけでは決めません。一緒にやっていける相手かどうか。それは「コーヒートーク トーキョー」のような大きなプロジェクトでも,小さな新作でも変わらないです。
![]() |
4Gamer:
話は変わりますが,Toge Productionsは創業時,2人だったとうかがいました。現在の規模を教えてください。
Kris Antoni氏:
そう,スタートしたときは私と友人の2人だけでしたね。それが今や,50人規模にまで育っています。会社としてはずいぶん大きくなったと思います。
4Gamer:
それだけの規模になると,組織としての構造化も必要になりますね。一方で,インディーらしさを失う危険もあると思いますが,いかがでしょう?
Kris Antoni氏:
まさにそこが難しいところです。会社が大きくなれば,どうしても組織を構造化していく必要があります。役割を整理して,仕組みを作って,という作業自体は進めています。
でも同時に,私たちは各プロジェクトのチームを,あえて10人未満の小さな単位に保つようにしているんです。プロジェクトごとに小さなチームを組んで,そのなかでスピード感をもって動く。会社全体は大きくなっても,作っている現場の感覚はインディーのままでいられるわけです。そうやって「インディースピリット」を守っています。
4Gamer:
その「インディースピリット」という言葉ですが,Antoniさんにとってはどういう意味を持つのでしょうか。
Kris Antoni氏:
私にとってインディースピリットとは,上位の管理構造にコントロールされず,自分のビジョンを追える自由のことです。誰か上の人間が「これは売れないからやめろ」「今はこのトレンドだからこれを作れ」と決めるのではなく,作り手自身が信じるものを作れる。それがインディーの本質だと思います。
4Gamer:
商業性やトレンドよりも,作り手の信念を優先する,と。
Kris Antoni氏:
ええ。もちろんビジネスである以上,商業的な部分を完全に無視はできません。でも出発点はそこではないです。開発者たちが本気でそのビジョンを信じているからこそ作る――その本気こそが,作品の魂であり情熱なんです。それがなければ,たとえトレンドに乗っていても,人の心を動かすものにはならないでしょう。
4Gamer:
そのスピリットを維持するためにやっている施策はありますか。
Kris Antoni氏:
社内ゲームジャムは,その1つだと思います。直近では昨年の11月から12月頃に開催しました。そこで生まれた作品は,itch.ioで8本公開しましたね。
短い期間で作る実験的な作品ばかりだけれど,こういう場があることが,インディースピリットを保つことにもつながっていると思います。
4Gamer:
そこから商業化につながった作品もありますか。
Kris Antoni氏:
もちろんです。「Test Test Test」というゲームジャム作品がとても評判が良くて,これを発展させて,「Work Work Work」という商業作品に仕立てているところです。ゲームジャムという遊びの場から本格的なタイトルが生まれるというのは,私たちにとって理想的な流れです。
4Gamer:
ゲームジャムが単なる息抜きではなく,パイプラインの源泉になっているわけですね。
Kris Antoni氏:
その通りです。自由に作る場があるからこそ,思いがけないアイデアが出てくる。それを見極めて,可能性のあるものは商業作品へと育てていく。今のToge Productionsには,少なくとも5本のタイトルがパイプラインにあり,そのなかには未発表タイトルもあります。
4Gamer:
5本同時に開発するというのは,会社の規模を考えるとかなりの本数ですね。
Kris Antoni氏:
一つひとつのプロジェクトを10人未満の小チームで回しているから,複数のタイトルを同時に進められるんです。大きなチームが1つあるだけではこうはいかないでしょう。小さく分けているからこそ,並行して動けるんです。
4Gamer:
Toge Productionsはパブリッシャとしても活動しています。パブリッシングするタイトルは,どうやって決めているのでしょうか。
Kris Antoni氏:
基準は大きく3つあります。1つめは,社内のメンバーが惚れ込めるフックやコンセプトがあるかどうか。「これは面白い」と私たち自身が心から思えること。これがないと始まらないです。
4Gamer:
2つめは?
Kris Antoni氏:
さっきも触れた“vibe check”ですね。つまり,開発者との相性です。一緒に長く仕事をしていける相手か,信頼できる相手かどうか。ゲーム作りは長い旅になるので,途中で関係が壊れてしまっては元も子もありません。ですから,人として組めるかどうかを,私たちはとても大切にしているんです。
4Gamer:
なるほど。では3つめはなんでしょう?
Kris Antoni氏:
完成度と面白さですね。コンセプトが良くて,相性も良くても,最終的にプレイして面白くなければ意味がないです。ちゃんと遊べるものとして仕上がっているか,そして実際に楽しいか。この3つが揃って初めて,私たちはパブリッシングを決めるんです。
![]() |
![]() |
![]() |
4Gamer:
時間もなくなってきたので,最後に読者へメッセージをお願いします。「コーヒートーク」シリーズを長く追いかけてきたファンも多いと思います。
Kris Antoni氏:
まずは長年「コーヒートーク」を支えてくれている日本のファンに,心から感謝したいです。みなさんがいてくれたからこそ,今回「コーヒートーク トーキョー」という形で東京を舞台にした作品を届けることができました。リリース後から寄せられている温かい反応を見て,本当にやってよかったと思っています。
4Gamer:
まだシリーズに触れたことのない読者にも一言いただけますか。
Kris Antoni氏:
「コーヒートーク」は,深夜のカフェで,いろいろな客の話に耳を傾けながらコーヒーを淹れる――そういう静かで温かい体験のゲームです。派手なアクションがあるわけではないですが,誰かの物語にそっと寄り添う時間がそこにあります。
今回の「コーヒートーク トーキョー」は,その舞台が東京になっています。日本人にとっては,一番入りやすい作品になっていると思います。ぜひ深夜の東京のカフェに立ち寄ってください。
4Gamer:
本日はありがとうございました。
創業から長い年月が経った今も,Toge Productionsは「自分たちが面白いと思えるか」を出発点に置き続けている。
50人規模に成長した組織でも10人未満の小チームにこだわり,ゲームジャムで遊び続け,パートナーを選ぶ基準をビジネス条件ではなく“vibe”に置く。
それは非効率に見えるかもしれないが,「コーヒートーク」という作品が世界中に愛され,「コーヒートーク トーキョー」として東京という新しい舞台へと広がっていったことを考えれば,その判断は正しかったといえそうだ。
「インディーゲーム」という言葉の定義が揺らぎ続ける現在,Toge Productionsの在り方は1つの答えを示しているようにも映る。規模の大小ではなく,信念を持って作れているかどうか――その問いを自分たちに向け続けることが,インディースピリットの正体なのかもしれない。



















![画像ギャラリー No.006のサムネイル画像 / [インタビュー]「コーヒートーク トーキョー」はなぜ別会社が作ったか。Toge ProductionsのCEOが語るインディースピリット[BitSummit]](/games/832/G083285/20260524010/TN/006.jpg)
![画像ギャラリー No.003のサムネイル画像 / [インタビュー]「コーヒートーク トーキョー」はなぜ別会社が作ったか。Toge ProductionsのCEOが語るインディースピリット[BitSummit]](/games/832/G083285/20260524010/TN/003.jpg)
![画像ギャラリー No.004のサムネイル画像 / [インタビュー]「コーヒートーク トーキョー」はなぜ別会社が作ったか。Toge ProductionsのCEOが語るインディースピリット[BitSummit]](/games/832/G083285/20260524010/TN/004.jpg)
![画像ギャラリー No.002のサムネイル画像 / [インタビュー]「コーヒートーク トーキョー」はなぜ別会社が作ったか。Toge ProductionsのCEOが語るインディースピリット[BitSummit]](/games/832/G083285/20260524010/TN/002.jpg)
![画像ギャラリー No.005のサムネイル画像 / [インタビュー]「コーヒートーク トーキョー」はなぜ別会社が作ったか。Toge ProductionsのCEOが語るインディースピリット[BitSummit]](/games/832/G083285/20260524010/TN/005.jpg)
![画像ギャラリー No.007のサムネイル画像 / [インタビュー]「コーヒートーク トーキョー」はなぜ別会社が作ったか。Toge ProductionsのCEOが語るインディースピリット[BitSummit]](/games/832/G083285/20260524010/TN/007.jpg)