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[GDC 2012]史上最強の開発チームが苦悩の果てに生み出した,知られざる名作RPG「Fallout」ができるまで
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印刷2012/03/09 19:53

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[GDC 2012]史上最強の開発チームが苦悩の果てに生み出した,知られざる名作RPG「Fallout」ができるまで

 前回ほどのインパクトがあるわけではないが,GDC 2012でも昨年に引き続き開催されているのが,過去の名作タイトルの開発過程をオリジナルクリエイター達が紹介していくというセッション「ゲーム開発回顧録」シリーズだ。

Timothy Cain氏
 米国時間2012年3月8日の早朝セッションでは,1997年にリリースされたRPG「Fallout」の制作指揮を執ったTimothy Cain(ティモシー・ケイン)氏が壇上に上がり,同作が開発中止の危機を2度乗り越え,発売に辿り着くまでの経緯を紹介した。

 Falloutといえば,最近では「Fallout 3」「Fallout: New Vegas」など,Bethesda Softworksの大作RPGとして知られるが,1997年にリリースされたFalloutは,Interplay Productionsというパブリッシャがリリースしたものだ。Interplay Productionsが倒産して財産処分が行われ,Falloutの版権がBethesda Softworksへと移ったわけである。Falloutのゲーム内容については,過去の掲載記事「誰もがRPGを愛していた 第13回 Fallout」で詳しく紹介しているので,そちらを参照してほしい。

 ちなみに,Cain氏は,1998年にInterplay Productionsを退社し,Troika Gamesを設立。スチームパンク系の世界観がユニークだった「Arcanum」や,日本でも知られる「Vampire:The Masquerade - Bloodlines」を手掛けた。その後,巡り巡って2011年10月に,Fallout: New Vegasリリース後のObsidian Entertainmentへシニアプログラマーとして就職し,同社の新作開発に携わっている。

Fallout
 さて,話を戻そう。Falloutで面白いのは,開発スタート時にジャンルや設定などが何も決まっていなかったことだ。1993年にリリースされた3Dアクションゲーム「Stonekeep」を作り終えたCain氏が,「X-Com」風のターン制ゲームを念頭に置いて,1人で半年ほどプログラムを書いていたのがFalloutの始まりである。その後,スクリプトプログラマーとアーティストが加わったが,まだ世界観は決まっておらず,色彩の決定もままならない状態で,そこからさらに半年ほどは樹木や岩など無難なものを作らせていたという。最終的に世紀末的な世界観が採用されることになったため,その頃作られた樹木のスプライトアートは,ほとんど使われなかったというから皮肉な話だ。

 Interplay ProductionsがSteve Jackson Gamesから「GURPS」のルールセットのライセンスを受けていたこともあって,FalloutはRPGになると決定したものの,当初は「タイムマシンで過去に戻って恐竜と戦い,魔法の力で現代に戻って彼女と結婚する」といった,小学生が書いたようなファンタジーストーリーのゲームになる予定だったそうだ。しかし,この案は,Interplay Productions社長のBrian Fargo(ブライアン・ファーゴ)氏とマーケティング担当者に却下されてしまい,1988年にFargo氏が開発した「Wasteland」のオマージュとして,核戦争で荒廃したという世界観が採用されることになった。

Fallout

 続いて決まったのはカメラの視点。1994年にOriginがリリースした「Crusader」のクオータービューと,当時としては斬新だった640×480ドット解像度に対応するグラフィックスに憧れて決定したのだという。ようやくゲームの基本的な構造ができたことにより,開発2年目には開発チームが15人に,そして3年目には30人ほどになったそうだ。
 リードデザイナーだったChris Taylor(クリス・テイラー)氏によって作られていた,「このゲームの暴力性は最高度のものだ」で始まる10か条のステートメント以外には,結局最後まで企画書やデザインガイドのようなものがなかったというから,何とも大らかな時代である。

 ところが,1994年末にInterplay Productionsが「Dungeons & Dragons」のライセンスを締結し,「Forgotten Realms」「Planescape」といった2つのRPGが開発されることになり,マーケティング担当者達は同ジャンルだったFalloutの開発中止を議論し始める。Cain氏は,予算の少ないプロジェクトであることなどを理由に,開発の継続をFargo氏へ懇願し,最初の開発中止の危機を乗り越えたのだそうだ。

Fallout
 そんな瀬戸際プロジェクトのFalloutだが,企画書がないことが幸いしてか,各メンバーが読んだSF小説のほか,映画やゲームなどの良い部分が採用されていくことになる。コンパニオン(フォロワー)のドッグミートには映画「Mad Max」に登場した犬を採用したり,SF好きなメンバーのアイデアから科学者を登場させたりと,お世辞にも共通した世界観があるようには思えないものだったそうだ。
 外部の人には分からないような内輪ネタのジョークも多く,デザイナーだけでは脚本を書き切れなかったため,時間の余ったアーティスト達がセリフを担当するといった,今では考えられない状況だったという。

 だらしのないというか,大らかというか,そんな感じでFalloutの開発は続けられていくが,1996年末にはBlizzard Entertainmentの「Diablo」がいよいよ登場することになる。
 同ジャンルかつ,同じカメラ視点のゲームであったために,Interplay Productionsのビジネスサイドは騒然となり,FalloutにもDiablo風マルチプレイヤーモードの追加が求められることになる。

1日12〜14時間労働は当たり前。土曜日も出勤し,テスター達は完全無給という,労働基準法をバリバリ破った仕事内容。ただし,強制ではなく,それぞれが自主的にやっていたのだとCain氏は強調する
Fallout
 もちろん,その時点でゲームシステムを作り直すことは不可能だったが,メモリ制御などでスムーズにターンが進むよう変更された。これに伴い,多くのコードを書き換える作業が発生したものの,開発陣はそれを,たった数か月でやり遂げている。
 そういったゲームの改良やプロダクションの不備により,開発は遅れていき,採用することだけは決まっていたコンパニオンのAIプログラミングを行う時間が取れず,スクリプトで対処するという離れ業をやってのける。おかげで時間の節約はできたが,パスファインディングの欠如からバグが多発する結果になってしまったとCain氏は言う。

 Falloutに採用されているゲームエンジンは,Windows 95だけでなく,Windows NTにも対応する汎用性が高いものだった。しかし,当時のMicrosoftがどちらかだけのOS対応にさせなければ認証シールを許可しなかったので,Windows NTと認識した時点でインストールを強制的に中止させるコードを加えたそうだ。
 ほかにも,Windows版とMac版とでフロッピーディスク内のセーブデータを認識できるよう,たった一人しかいないMac版担当のプログラマーに作らせるなど,細かな調整が続いたようだ。

公式サイトも,他社に先駆けて作成したという。広報費が捻出されなかったので,開発陣が自分達で作ったという愛情のこもったものだ
Fallout
 実のところ,元々のタイトル名はFalloutではなく,「Vault 13: A GURPS Postnuclear Adventure」というぱっとしない名前が付けられており,Cain氏は自分のセンスのなさを笑い飛ばしていた。発売5か月前の時点で,テスト版をプレイしたFargo氏の提案によって,Falloutという名称に変更されたのだ。
 テーマソングとなった「Maybe」は,開発予算の少なさから,仕方なく選んだものだというのも興味深い話である。当初はThe Inkspotという1940〜50年代に活躍したブルースグループの「I Don't Want to Set the World On Fire」を採用しようとしていたが,版権を持っていた音楽会社に吹っかけられたため,格安ライセンスリストに載っていた同グループのMaybeを選んだそうだ。
 ちなみに,I Don't Want to Set the World On Fireは,Fallout 3で正式採用されているのでリベンジを果たしたということになる。

チームGURPSと名付けられた,Falloutの開発メンバー。ちなみに,本稿で登場するChris Taylor氏は,「Dungeons Siege」シリーズのChris Taylor氏とは同姓同名の別人だ
Fallout
 そんなFallout開発チームの結束は非常に固く,Interplay Productionsの中でも「良いゲームが作りたい」といった信念で動くような人達ばかりが集まっていたそうで,ほとんどが土曜日は無給で働いていたという。
 さらに,最後の半年はオフィスに寝泊りするようになり,その期間中はテレビを見ることもなければ,食料品店に行くこともなく,デリバリーのピザを食い漁り,Tシャツでさえクリーニング店に取りに来てもらうなど,信じられないような環境下で作業を終わらせたとCain氏は笑いながら語る。「今でこそジョークとして話せるが,それも皆が自立的にゲーム開発をしていたおかげ。もし,皆さんがそんなチームと出会うことができたら,手放しちゃいけないよ」と,会場に集まった人々に忠告していた。

Vault-Boyの絵柄や,バイオレンスさが似つかわしくないと,GURPSのライセンシング延長は見直されてしまったのだという
Fallout
 その後も,GURPSのライセンスが切れる前にFalloutを完成させることができず,2週間で独自のルールセットを編み出したり,Fargo氏に「何か物足りない」と注文を付けられたために,Taylor氏が1日でPerksという新概念を追加したりしている。このときに考え出されたPerksは,やがてBethesda Softworksの「The Elder Scrolls IV: Oblivion」やBlizzardの「World of Warcraft」に採用されただけでなく,「Dungeons & Dragons ルールセット第3版」や,「Call of Duty」のようなアクションゲームにまで取り入れられるなど,ゲーム業界に大きなインパクトを与えている。

 「アメージングな開発チームの仲間達に敬意を払い,このセッションで全員の名前を出せるようにしたい」と話していたCain氏。Falloutはアバウトで中途半端な開発手法が許された,古き良き時代の最後のソフトだったかもしれない。バグも多く,子供殺しから売春婦のヒモになるまで,何でもできたバイオレントなゲームであり,Cain氏らにとっては,厳しさと楽しさが両立した稀有なゲーム制作だったに違いない。

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