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取材に訪れた筆者を迎えてくれたのは,ディレクターの木村祥朗氏本人。しかも「(筆者と)会ってみたかった」という驚きの言葉とともにである。聞けば,筆者がSwitch版のリリース時に書いたプレイレポを読んでくれていたのだという。しかも折に触れて,何度も。
[プレイレポ]伝説的アンチRPG「moon」の遺伝子を継ぐ「ストレイチルドレン」は,ことばで戦う“しんどさ”を自分で選べるかが肝要だ
Onion Gamesから2024年12月26日にリリースされた「ストレイチルドレン」は,定番RPGに対する“アンチRPG”として知られる伝説の作品「moon」の開発スタッフの手による新作だ。事前に評価用バージョンをプレイする機会を得たのでレポートする。
そして,設定原画展に訪れた人たちと同じように,展示された資料のひとつひとつを木村氏自らが解説してくれるという,なんとも贅沢な状況に。
本稿では,それら原画の解説とともに,木村氏へのインタビューをお届けする。バグ修正とバランス調整を重ねて「最高オブ最高」(木村氏)の状態になったという本作に込めたもの,そして本日(7月24日)の“とある発表”のことまで,たっぷりと語ってもらった。
なお,本稿の後半(2ページ目以降)には,物語終盤の重大なネタバレを含む部分があるので,未クリアの人は注意してほしい。
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4×4のスケッチがゲームの舞台になるまで
スタジオに足を踏み入れてまず驚かされたのが,展示された“紙”の物量だ。まずは作品のアートボードや設定画の前で,木村氏の解説が始まった。
木村祥朗氏(以下,木村氏):
メインメンバーは7人で開発しているんですけど,社外でデザイン画を描いてくれる勝田 聡さんのような仲間がいて,それを社内でゲームの中に落とし込むという体制なんです。
基本的には,まだみんなが作業していない段階から,僕と倉島さん(キャラクターデザインの倉島一幸氏)がずっと雑談しつつ,絵を描いていくんです。だから,ゲームに全然出てきていない絵がいっぱい残っているんですよ。これらはみんな,僕らの脳みその肥やしとなって消えていったものたちなんです。
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4Gamer:
このあたりは,電池のような絵が並んでいますね。こちらの白黒の絵にも機械や電池があります。
木村氏:
「機械の国」を考えていたころのものですね。ゲームには「カミサマの城」として電池の部分が残りましたが,多くが没になりました。こういう昔のアイデアの名残みたいなものも,今回は見せてみようかなと。
4Gamer:
こちらの絵のキャラは,キノコの国と雪の国の両方に生かされている気がしますね。
木村氏:
そうですね,眠りの国(キノコの風景の国)になったもので,いろいろなものが混ざって今の形になりました。最終的にはちゃんと清書しているんですけど,最初は倉島さんの手書きで始まります。
僕の出したアイデアとラフ画を参考に,倉島さんが「じゃあこういうこと?」と描いてくれるんです。「飲んだくれている,おかしい雰囲気の女性にしてほしい。ずっと誰も来ないRPGの世界にいて,狂いかけている」なんて伝えると,狂った人をいっぱい描いてくれて(笑)。そこから僕が「これを本番に出そう」と決めていく。中でも勇者はすごく大変でしたね。「moon」の残滓を残しながらも,完全に別のものにしたかったので。
4Gamer:
ゲーム内のあの独特なドット絵は,どうやって生まれているのでしょうか。
木村氏:
倉島さんはスクウェアにいたころからドット絵のプロなので,最初はいきなりドットで描いていたんですが,うまくいかなくて。それで,先に絵に描いてからスキャンするという,「moon」のときと同じ手法にしたんです。
アルファチャンネルがつかない「ニアレストネイバー」という,ドットが荒くなる縮小のしかたで縮めて,画面に出して色を塗り,修正すると,PS時代のドットにすごく近くなったんです。
この手法に決まるまで,すごく時間がかかっていたので,今回は紙の資料がたくさん残っているんです。開発者仲間が見に来ると「今どき,なんでこんなに紙があるの?」って驚かれます(笑)。
4Gamer:
制作のデジタル化で,直接修正してしまうことも増えましたよね。その分,中間の絵が残らなくなっている……こちらは木村さんご自身の絵ですか。A4の紙が4×4,16マスで区切られていますね。
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木村氏:
僕自身もけっこう絵を描くんですよ。ゲームの仕様書やストーリー,テキストだけでなく,自分でもある程度描いちゃう。すると自分の記憶の中にしっかり留まるんです。この4×4の絵が,僕のネタ帳のようなもので,今回の20時間ぐらいのゲームの中の,すべてなんです。これをまず最初に,すごく長い時間をかけて何回も描き直します。
ゲーム世界にあるものの代表を描き切ったら,次は世界地図に落とし込んで,「世界はこうなっているはず」というのを描いて。それが完成して,やっと先ほどのデザイン画を発注するところに進むんです。
4Gamer:
区切るマス目はなぜ4×4なんでしょうか。
木村氏:
そうですね……まずA4の紙に絵と文字を描くときに,大きすぎず小さすぎない,丁度いい大きさです。あとこれまでの経験上,この4×4ぐらいの要素が,僕が管理しきれる総量みたいな感覚があるんです。
描いては捨ててを繰り返し,最後に清書した1枚をファイルに残しておく。制作中に困ったときにこれを見て,「ちゃんとできてるか」「いやまだか」とかジャッジするんです。まあこの4×4に描いているのに,ボツになった国もあるんですけどね。
4Gamer:
どのマスとどのマスが統合されたかを考察しながら見るのも面白そうですね。世界地図以外にも,実際のマップの絵も展示されています。よく見ると,四角い枠が描き込まれています。
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木村氏:
矩形の枠みたいなものをアナログで作って,ゲーム中歩いているときに見える物を想定しながら描いているんですよ。「ここら辺にいるときは隣の家も見える」「この隣の家を過ぎて広場に来ると,上下左右にこういうものが見える」と,歩いていく画面を確認しながら描くんです。
この状態でUnityの背景デザインの人に見せて,とにかく作ってもらって,歩けるようにします。
4Gamer:
画面に映る範囲まで,木村さんが設計されているんですね。
木村氏:
壁の向こうにチラ見えしているものがあると,「そっちに行きたいな。でもどうやって行くのかな」みたいな楽しさが出てくるじゃないですか。そういう普通のことをちゃんと自分でやろうと思っていて。ほとんどの時間は歩いているゲームなので,それが楽しくなるように心がけていました。
4Gamer:
ちなみに今回はどれくらいの期間,背景を作られていたんですか。
木村氏:
展覧会に来た人たちには「6か月くらいかな」と言っていたんですが,ちゃんと調べてみたら1年間かかってました。オトナのデザインと並行しながら,1年間,週1で勝田氏,倉島氏と「どんなデザインにしようか」というのを進めていました。
「BLACK BIRD」のときは,勝田氏にデザインをお願いしていたのはボスだけなんです。今回は,すべての風景,すべての場所に名所があるので,たくさんデザインしてもらう必要があり,なかなか大変でしたよ。
バグは直すが,あえて気持ちよくなくしているところは直さない
4Gamer:
さて,開発の詳細は解説と一緒にうかがえたので,次はゲームの仕様について聞かせてください。リリース当時の所感としては,あえて“手触りよく作らない”ところに,木村さんの「プレイヤーへの深い信頼感」が表れているように感じたのですが,このあたりはどこまで意図的に作っていたのでしょうか。
木村氏:
この話は……どこから話そうかな(笑)。まず,最初のバージョンを遊んでくれた人には,本当に申し訳ありませんでしたと言いたいです。
というのも最初のバージョンは,すごくバグが多かったと思うんですよ。4Gamerさんのレビューを読んでいて,よく覚えているのが,いろいろな箇所をしっかり評価していただいた上で「バグが気になる」と書いてあったことなんです。開発者としては黙っててほしいという人も多いと思いますけど,私はしっかり遊んだうえで,バグを正直に書いてくれていたのは納得もし,ご指摘に対して感謝もありました。
4Gamer:
そうだったんですね。
木村氏:
その後ファンの皆さんからもバグ報告をいただきました。それからは謝ってる場合じゃなくて,さっさと直さないとと思い,すごい勢いでバグを直したんですね。
ただ,バグがある状態でも,「このゲームが一体何をしようとしているのか」を分かってくれようとしている人たちがいて。その人たちの感性はすごく当たっているというか,「まさにその通り」という受け取り方をしてくれていました。
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4Gamer:
感想などは率直に書いてほしいスタンスだと。
木村氏:
私はビシバシ言ってくださいと思っています。お客さんにも仲間にも「とにかく嘘をつかないでください」という思いがあります。
Steamのレビューに「このゲームを好きになりたかったんだよ。だけど嫌いです。なぜなら……」などと書いてくれた人がいました。こちらとしては狙い通りに作った部分ではあったんですが,その人が不快になったのも本当だし,間違いじゃない。そういうのを受け止めるつもりで作ったゲームですから。
じっくり遊んだ人の長文レビューは,僕たちとの対決です。ああいう文化が残っている場は数少ないと思うので,ぜひ4Gamerさんも今後とも対決していただければと思います(笑)。
4Gamer:
あえてお聞きしますが,本作は何を描こうとしていたのでしょうか。
木村氏:
今のゲームって,とにかく“のど越し”がいいんですよ。爽快感があって,ひらめきも味わえる。それ自体はゲームとしてとても正しいことなんですけど,そういう体験ばかりになってしまっている。
僕らが昔「ウルティマ」や「ウィザードリィ」をプレイして味わった「なんだか苦しいんだけど,興味深いからやってしまう」という感覚,困難なものに立ち向かっていた気持ちって,どこに行っちゃったのかなと思ったんです。「ストレイチルドレン」は,それを表現するために作っています。過去のゲームをオマージュしているのも全部,「ゲームには,気持ちよくないところもあるんだぞ」というのを伝えたかったんです。
4Gamer:
その愛憎はひしひしと伝わってきました。
木村氏:
ただ,同時にバグも多かったので,意図したもの,意図してないものがゴチャゴチャしていました。なので「バグは直しますが,あえて気持ちよくしていないものは直さない」という姿勢でアップデートを続けていました。最近ようやくバグ修正が終わり,バランスも整ったので,意図したものがくっきり見える状態になったと思います。自分にとっては“最高オブ最高”になりました。
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完璧にプレイしなくていいゲームデザイン
4Gamer:
いちプレイヤーとして告白すると,私は終盤近くまですべてのオトナを成仏させて遊んでいましたが,「魔女のキキキ」でついに断念してしまったんです(※)。発売前のプレイだったので情報もなく,「ここで引っかかっていたら辛いだけだな」と,割り切った瞬間がありました。
木村氏:
キキキですか。あれはそうなっても不思議はないです。
魔女のキキキを成仏させるには,とあるアイテムが必要となる。かなり初期の段階で手に入るもので,まず思い出しにくく,また気づいたとしても入手する方法がない
4Gamer:
成仏させたオトナが図鑑に記録として残っていくので,最初のうちは図鑑をすべて埋めるデザインだと受け取りそうにもなりましたが,進めていくうちにそうでもなさそうだなと感じました。
木村氏:
はい,執着させないように作っています。ゲームをやってるときの「完全にクリアしたい」というプレイヤーの気持ちって,すごく強いじゃないですか。
例えば,成仏させたオトナの図鑑のサムネイルに丸がついて,コンプしてるかどうかが一発で分かる仕様とか,よくありますよね。ただ,ストレイチルドレンではコンプを誘導するような圧は,意識して取り除いているんです。
4Gamer:
コンプリートの報酬も示されていませんでした。
木村氏:
もっと言えば,オトナを成仏させた方がいいとも1ミリも言及していないんですよ。ストーリーを進めるのに一番効率がいいのは,オトナを殺しまくって経験値を稼ぐことなんですが,全部成仏させて,誰も殺さないプレイをする人が多いだろうなと。そこは思った通りでした。
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4Gamer:
倒すのも成仏させるのも,どちらも正解として置かれていないのかなと感じました。
木村氏:
そうですね。最終的に「完璧にプレイしなくていいんだよ」ということが言いたかったんです。なので,「100%完璧に生きないといけない」みたいな感覚をなくしたい理想で作っています。そこはちょっと,理想の押し付けというか,説教じみてるんですけど(笑)。
最近の世の中は,「キチッと生きていけばどうにかなるはずなのに,ちゃんと生きても不幸になるじゃないか」みたいな言説が増えていますよね。でも,幸せって「100%しっかりクリアしたら幸せになる」みたいな簡単なことでもないと思うんです。
不完全ながらも生きていくと,その先にいいことや悪いことがあったりする。そういったことがゲームで表現できないかなと思ったんです。なので,セーブデータもひとつだけで,過去には戻れないんです。
4Gamer:
逆に言えば,世の人の感覚のほうが,物語やゲーム的な「100点」に引っ張られているのかもしれませんね。
木村氏:
人間はいろいろなものに影響されるので,ゲーム以外のエンタメの影響もあるし,学校とか受験勉強のせいかもしれないし,世の中のムーブメントのせいかもしれない。ちょっと変なことをしたらSNSで騒がれて叩かれたりして,不真面目さを許さない世界だったりします。
一方で,不真面目を許さないのに「多様でありましょう」みたいなことにもなっている。分断は許さないのに多様でありましょうって,それは一体何なのか? みたいな。
4Gamer:
何重にもバインドされてますよね。
木村氏:
僕が生きてきた感触で言うと,ボコボコになってしんどいことをやって,泥だらけな生き方をしていても幸せと感じる瞬間はあって,それこそが「生きててよかった」みたいな感覚でした。全部100点を取ろうと頑張らなくていいのにって思ってるんですよ。
4Gamer:
対人ゲームは別としても「頑張ってもダメだった」というゲームは本当に少なくなりましたよね。頑張ったら報われるものが圧倒的に多いです。
木村氏:
そう,特にRPGは頑張ったら報われるようになっています。ただ,人生って頑張っても報われないことのほうが圧倒的に多いと思うんです。報われなくても生きていく,そうすれば,その先にちょっといいことがあるかもしれないというものなんじゃないかな……と,真面目に話しすぎましたかね。ちょっと恥ずかしいですね(笑)。
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4Gamer:
今日はぜひその方向でお願いします(笑)。そういえば海外での「ストレイチルドレン」のリリース以降,木村さんのインタビューでの語り口が変わった気がします。ゲームに込められた思いはゲームで語る印象があったのですが,何か心境に変化があったのでしょうか。
木村氏:
英語版を発売した後,あちらのメディアにインタビューをたくさん申し込まれたんですが,英語圏の人たちって忖度なくストレートに聞いてくるんですよ。僕も英語で嘘はつけないし,笑いに逃げることもできないので,真面目に書くしかなかったんです。いつの間にか,「ちゃんとしゃべったほうがいいのかな」みたいな気持ちになっていたんだと思います。
4Gamer:
英語版といえば,オトナを「成仏させる」をはじめ,本作は日本的な概念だらけですよね。翻訳はどのように進めたのでしょうか。
木村氏:
概念を英語で表現するパズルみたいな作業はいろいろありました。日本語にしかない感覚は,訳す段階で「その概念はない」って言われちゃうんです。アメリカ,イギリス,イタリア,スペインとか,いろんな国の人に英訳を見てもらう体制で作っていて,直訳をやめて「普通に読んで面白ければいい」としたところもあります。
逆に,頑張って再現したところもあります。例えば,みんなが謎かけみたいに違う単語を言っていくシーンがあるんですけど,頭の一文字だけ取ると「僕たちは電池になる」と読める仕組みを入れているんです。
英語作家さんに「英単語でも同じことをやりたい」と伝えると,「Become Batteryでいけるのでは?」みたいなパズルが向こうで始まるわけですよ。大変でしたが,面白い作業でした。
ChatGPTより僕自身のほうが早くアイデアを出せるんです
4Gamer:
オトナたちのデザイン資料で興味深かったのが,「元の人間を考えないで作る」という制作の順番です。普通は逆のイメージがあるのですが,どのように作られていったのでしょうか。
木村氏:
もちろん,どんなモンスターがいて,それは元々どんな人間だったか,という設定リスト自体はあるんです。ただバトル設計の都合があるので,人間の姿はバトルを作りきった後に考えようと思ったんです。
まず敵の攻撃パターンを全部作ってから,図鑑に出す人間を後からデザインしたという順番で作りました。
4Gamer:
怪物の姿と弾幕がまずあって,そこから逆算していくと。
木村氏:
人の姿から描いちゃうと,おそらくバトルがしっくりこなくなると思ったんです。まあ,最後の最後に「成仏させた人間をたくさん出すシーンを作るから,口パクの絵を作ってほしい」と倉島さんに伝えたら,「え,今から!?」と言われてしまったんですが(笑)。
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4Gamer:
そもそも「オトナが怪物として襲ってくる」という着想は,どこから来ているのでしょう。ご自身や周囲の人の若いころからの変化や,矛盾などが反映されているのでしょうか。
木村氏:
具体的なモチーフはいませんが,そこはすごく反映されてます。意味不明な理屈で抑え込む大人に否定されたことって,多くの人が子供のころに経験したことがあるんじゃないかなと思うんです。
もちろん,ちゃんと意味の分かる理屈でしゃべる大人もいましたが,ああいう「暴力的で,怪物じみている」感覚は,きっと昨今の子供も大人たちに感じているだろうと思います。「大人ってむちゃくちゃ変なんだよね」という視線から,大人と怪物を合成してメタファーとして出せば,とんでもない化け物になるなと。
それを「怪物大人」とか呼ばず,カタカナで「オトナ」と書いて,「オトナが襲ってくる」と言ったほうが面白い。実際,大人同士でさえ,近所の大人やSNSの大人が怖いはずなんです。
4Gamer:
オトナの怖さについてのバリエーションが豊富でした。
木村氏:
あんなにバリエーションを出せるって自分でも意外でした。1日で50体の設定を考えたりしてたので,みんな笑ってましたよ(笑)。
4Gamer:
日々の観察が生きているんでしょうか。
木村氏:
観察なのかな。普段から見てはいるほうですけど,書いてるときは思い出しているというより,自由に書いていました。正直,AIより僕の方が絶対いいスパイス効かせられますよ。ChatGPTよりも僕のほうが早く怪物のアイデアを出せるんで(笑)。
4Gamer:
個人的には「みんないつしかこういうオトナの姿になっていないか」というメッセージを勝手に受け取っていました。特に各領域のボスオトナは,私自身ちょっと思い当たるフシがあります。
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木村氏:
あれを「自分のことかな」って思ったら相当悪い人ですよ(笑)。
4Gamer:
そのもの,とは思いませんが。チラッとよぎるといいますか。
木村氏:
……なんというか,そこはみんなというよりも,僕自身の変化なんですよね。50歳を過ぎたら,相当変わってきたぞという。
それは悪い意味じゃなくて。子供ができたり,友達が死んだり,いろんな変化が起こるんで。いろんな人と付き合ってる間に,すごく丸くなる人もいれば閉じこもる人もいて。しゃべってみるとすごく優しい人もいれば,すごくカリカリする人もいる。
世の中にはいろいろな人がいて,別に突然悪くなろうと思って悪くなったわけじゃなく,いろんな事情とか人生があっての出来事ですし。そこはちゃんと描けば面白いはずだと思って作りました。
4Gamer:
もともと「Onion Gamesは,RPGを作るために始めた会社だ」ということは各所で語っておられますが,「ストレイチルドレン」が始動したきっかけとなったのは,やはり「moon」の移植なのでしょうか。
木村氏:
直接的なきっかけというわけではないです。ただ,「moon」の移植ではデバッグを僕もやって,英語版でも翻訳の監修に入っていました。別の言語から「moon」を俯瞰すると理解が深まって,よりやる気が高まりました。あの移植作業そのものが,僕のモチベーションを上げたというのはあるのではないかと思います。
4Gamer:
「ストレイチルドレン」の形が浮かんできたのはその後になるのでしょうか。
木村氏:
着想自体はもっと昔ですね。「チュウリップ」を作っていたあたりから,周囲に「moonの続きはやらないの?」とすごく言われていたんです。そのときくらいから,心の中に「もし別のアナザーな物語があるとしたら」という考えが浮かんでいました。
4Gamer:
長年温めていたものだったと。
木村氏:
「moon」のエンディングの最後に,「moonは発売中止になりました」というテキストがあるじゃないですか。発売中止ということは,完成したROMはあるのに誰もプレイしないまま,マスターROMがどこかに放置されているのかもしれない。その中に,似たような密度で生活してるキャラクターたちがいて……と想像した時に,とても可哀想な感じがしたんですよ。
放っておくと世界が朽ちていって,「プレイヤーは来ないし,寝てしまおうか」とキャラクターたちがみんなグータラになって,ROMのメモリーも崩壊して,最後は廃墟になって……ということを想像していたのが30歳ぐらいのときです。そのアイデアと,昨今の「大人が怪物としてRPGに出てくる」というやつが合わさって,「これだ!」となったんです。
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