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[GDC 2010]よい子はマネしてはいけません。「Borderlands」グラフィックス変更の背後にあった,アートチームのクーデター
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印刷2010/03/13 23:07

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[GDC 2010]よい子はマネしてはいけません。「Borderlands」グラフィックス変更の背後にあった,アートチームのクーデター

Gearboxの共同設立者であるBrian Martel氏。Pitchford氏が都合で欠席し,彼と二人のデザイナーがレクチャーを行った
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 「よい子はマネしないように!」という注意書きがついたレクチャーが,3月12日に行われたGearbox Software「Borderlands and the 11th Hour Art Style Change. Or: Kids, Don't Try this at Home!」だ。開発中のタイトルのビジュアルをすべて作り直すという,あまり聞いたことない変化を見せた「Borderlands」PC / PlayStation 3 / Xbox 360)だが,そのとき社内で何が起きていたのかというストーリーである。
 このレクチャー,もともとは,Gearboxの設立者でCEOでもあるRandy Pitchford氏と,共同設立者のBrian Martel氏の二人が行う予定になっていたが,都合によりPitchford氏が欠席し,代わりに二人の若いデザイナーとMartel氏の三人で行われた。
 ちなみに,このグラフィックスにまつわる出来事を“経営者側の視点”で語ったPitchford氏のインタビューを,2009年7月30日に掲載している。インタビューで彼は「アーティストの反乱」と述べているが,今回はその反乱を起こした側の話というわけだ。もちろん,反乱には常に失敗の可能性がある。よい子はマネしてはいけないのだ。

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 Borderlandsの開発は,2005年4月にスタートした。「Brothers in Arms: Earned in Blood」との並行作業で,11人ほどのメンバーでコンセプトの設定を行ったという。それから翌年10月まで,人数を倍にしてプロトタイプを作成。その結果,企画にゴーサインが出たので,2007年8月にドイツで開催されるGames Conventionでデモを行うための開発を開始した。その後,翌2008年の10月まで,E3およびGames Conventionで展示するプレαバージョンを作成したのだが,そこでアートチームは考え込んだという。
 Bordarlandsのコンセプトは,知っている人も多いと思うが「Halo meets Diablo」で,Gearboxが得意なFPSに,RPG要素をたっぷり盛り込んだジャンル縦断的な内容になるはずだった。
 テーマは「ハードSF」とのことだが,公開された初期の資料を見る限り,ごつい戦闘服に身を包んだマッチョな兵士や,未来的な戦闘機械,さらには「攻殻機動隊」などのジャパニメーション要素も詰め込んだ,ごった煮的な印象が強い。

旧バージョンのグラフィックス
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 アートチームには「このままでいいのか?」という問題意識が大きくなってきたという。なるほど,面白いゲームにはなりそうだし,アートチーム以外は満足しているようだが,果たしてこれはGearboxのゲームといえるのだろうか?
 映し出されたスライドを見ると,その頃のグラフィックスはごく普通のリアル系で,悪くはないが,デザインは確かにどこかで見たことがあるような印象を受ける。もともとこのグラフィックスは,従来作とは違い,会議で「多数決」で決まったものだったという。そういうやりかたは,あまりうまくいかないのではないか,とアートチームは考えていたようだ。

変更後のグラフィックス
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 Martel氏はさらに続ける。もしかすると,我々は“貧乏な人向けの「Rage」”を作っているのではないか。独立系デベロッパである我々は,もっと自由にゲームの方向性を変えてもいいのではないだろうか。いや,それをやるほどのお金はないかも……。
 ゲーム会社の経営者として,「品質」と「時間」と「予算」は常に三位一体で考えなくてはならない。時間をかければ,必然的に予算がかかるが,かけた時間と予算に見合うだけの品質向上があるとは限らないからだ。

 ちなみにRageとは,現在Zenimax Mediaの傘下に入っているid Softwareが,2007年の発表以来ずーっと作り続けているゲームのことで,背景や設定こそ異なるものの,盗賊が徘徊する荒野が舞台になっているところや,さびれた雰囲気などが変更前のBorderlandsによく似ている。同じテキサスに本社を置き,同じくFPSを専業にしてきたGearboxだけに,id Softwareのことは常に意識しているのだろう。

 さて,結果はすでに分かっているので,これ以上引っぱってもしょうがないですね。陰謀者達は,すでにスケジュールの3分の2をこなしているBordarlandsを再検討し,ゲーム性や戦闘シーンは,とりあえず狙ったとおりのものになっていると判断した。あとはブラッシュアップすればいい。問題は,月並みなグラフィックスだ。これをすっかり変えてしまえば大丈夫,新しい惑星パンドラへようこそ。

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 もちろん,モデリングやテクスチャだけを変えたのではなく,例えばオブジェクトのエッジを検知して,太いラインを描いたり,シャドウマップやライトマップを改造したり,使用した「Unreal Engine 3」の照明効果を見直したりと,基本的な部分にもかなり手を入れている。その結果,メインキャラクターの一人「Mordecai」のウエストはわずか6インチに絞られ,岩肌はより不思議な雰囲気をたたえ,爆発や特殊スキルのエフェクトも個性的になったという。
 最後に,これを見た2K Gamesが新しいグラフィックスやゲームの雰囲気を非常に気に入り,「これでいこう!」と判断。クーデターは,成功のうちに終わったのである。

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「Mordecai」
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 「マネジメントとしては,あまり勧められたものではありません」とMartel氏は笑う。失敗していれば,予算と時間が完全に無駄になり,最悪の場合はゲームのリリースも危うかっただろう。2009年のE3で新しいBorderlandsを見て,「あら,変わっちゃったね。予定の行動?」としか思わなかった筆者としては,その背後にこのような物語があったのかと興味深い。ライバルのid Softwareを含め,多くのデベロッパが大手企業の傘下に収まる中,Gearboxが独立系デベロッパとして活力を保ち続けている理由の一端が感じられたレクチャーだった。

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