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コンシューマゲームセレクション:第25回「NO MORE HEROES」
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印刷2008/01/15 20:56

連載

コンシューマゲームセレクション:第25回「NO MORE HEROES」


» 4Gamerのスタッフが,コンシューマゲームのタイトルへの思いを書きつづっちゃっている連載,「極私的コンシューマゲームセレクション」。今回は編集部のTeTが,「NO MORE HEROES」が“前田愛”(「ガメラ3」に出た人とか声優じゃなくて)なゲームだと熱く語っている。共感できるかどうかはともかく,気になった人は読んでみてほしい。



画像集#002のサムネイル/コンシューマゲームセレクション:第25回「NO MORE HEROES」
 クリエイターが作品を世に送り出したとき,受け手はそれを,さまざまな思いで受け入れるものであり,必ずしもクリエイターの意図どおりに受け止められるとは限らない。プロフェッショナルのクリエイターにとっても,それは当然のことだろう。だからそんな彼らにとって一番悲しいのは,誤解や勘違いをされることより,一切言及されないことのはず!
 そんな偏った思いこみから始まる本稿では,2007年12月6日にマーベラスエンターテイメントがWii向けにリリースした「NO MORE HEROES」について,筆者個人の思い込みをたっぷりとぶちまけてみよう。テーマは,「『NO MORE HEROES』は,前田日明へのラブレターなのだ!」とする。あ,もちろんゲームの紹介もしますよ。

アニメとプロレスが大好きなトラヴィスが
全米No.1暗殺者を目指す


主人公トラヴィスを操るのは,プレイヤーではなくシルヴィアだと言っても過言ではない……かもしれない
画像集#003のサムネイル/コンシューマゲームセレクション:第25回「NO MORE HEROES」
 本作の主人公(プレイヤーキャラクター)は,トラヴィス・タッチダウン。殺し屋だ。日本のアニメ(とくに「純白の恋人 ビザールジェリー」)オタクで,プロレスファンという,実在するアメリカ人にたとえるなら格闘家のジョシュ・バーネット的な人物。
 そんなトラヴィスが,“デスマッチ・バー”で知り合った(エマニュエル的な?)美女,シルヴィア・クリステルの依頼を受けて,ヘルター・スケルターを殺したところ,そいつが米国暗殺者協会(UAA)が認定するランキングの11位だったもんだからさあ大変。
 ランカーを殺したトラヴィスは,ヘルター・スケルターに代わり同協会ランキングの11位に認定されることになり,今度はランク入りを狙う暗殺者達から狙われる立場に。しかもこれ,UAAのエージェントであるシルヴィアに,まんまとはめられた格好だ。
 自分の身を守るためには,ランカー達を殺しまくり,ランキングの頂点に立つしかない(シルヴィアへの下心も大きな動機の一つ)。果たしてトラヴィスは,無事UAAの1位に駆け上がり,ついでにシルヴィアとねんごろな間柄になるべく,ネットオークションで入手した「ビーム・カタナ」とプロレス技で,ランカー達(あとザコ)に挑むのだ。

「A」ボタンを連打して,「ビーム・カタナ」を振りまくれ! フィニッシュは,画面の指示に従って,Wiiリモコンを振ろう。ただしビーム・カタナは充電式。バッテリーが切れたら,Wiiリモコンを振って充電だ
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 こんなストーリーが,個性的にもほどがある登場人物達&B級映画ばりに味のあるセリフ回し(下ネタもふんだんに含む)でスピーディに展開していく。とくにランカー達のアクの強さはかなりのもので,戦闘開始前に語られる彼らの事情や異常性に触れるにつれて,プレイヤー自身の頭の中までB級テイストになること間違いナシだ。

スタイリッシュな画面構成と下品なセリフ,セーブポイントはお手洗い。これが本作のすべて……というのはさすがに言い過ぎか
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 本作のジャンルは,“殺し屋アクションアドベンチャー”。アドベンチャーとは? ということを考え出すと少々ややこしくなるので割愛するが,ゲーム自体のキモとなるのは,ビーム・カタナとプロレス技を駆使しての“殺し屋アクション”,すなわち戦闘である。
 操作方法は,ひたすら「A」ボタンを連打し,とどめを刺す瞬間にWiiリモコンを画面の表示に従って振るか,「B」ボタンによって繰り出せる打撃技で敵をピヨらせたあと,もう一度「B」ボタンで掴み,Wiiリモコンとヌンチャクを画面の指示どおりに振ってプロレス技をかけるか……といった形である。
 ランカー達との戦い(ランキングバトル)は,基本的に1対1のシングルマッチだが,ランカーを“ボスキャラ”という言葉に置き換えるならば,ボスキャラにたどり着くまでの各ステージには,ザコがわんさか現れる。これらをバッサバッサと斬りながらステージを攻略していく過程は,非常に“無双”的といえる。いや,とどめにWiiリモコンを振るアクションに爽快感を感じられれば,それ以上の楽しさを味わえるはずだ。

 トラヴィスが使うプロレス技に関しては(長々と語りたいので)後述するが,位置づけとしては“必ず使わなければならないもの”ではない。ランキングバトルでランカーに大きなダメージを与える効果は確かにあるが,ビーム・カタナで斬りつけるだけでも勝つことはできる。どちらかというと,“見せ技”であり,ともすれば単調になりがちなAボタン連打での戦闘に,操作感と視覚の両面でプレイヤー自らが変化を付けられるようにするためのものに感じられた。プロレス技は,“カッコ良く戦うため”の手段なのである。

相手をぐらつかせたら,「B」ボタンでグリップし,画面の指示どおりにWiiリモコンとヌンチャクを振ればプロレス技でぶん投げられる
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ストーリー展開のテンポは抜群だが,移動がそれを妨げる


ランキングバトルに挑むために,所定の金額を振り込む必要がある。で,まずはこれを稼ぐためにバイトに勤しまねばならないのだ
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 いざプレイを開始すると,オープニングムービーに続き,ランキング10位のデスメタル戦(に向けたステージ)へ突入する。当然,これを倒すと,次はランキング9位へ挑戦……となるのだが,ただただステージクリア(ボスキャラ撃破)を繰り返せばいいというわけではない。なんと,ランキング戦に挑むためには,UAAにけっこうな額の“諸経費”を振り込まなければならないのである。
 そして諸経費を稼ぐためにプレイヤーは“職業不安定所”を通じ,サソリ駆除やネコ捕獲,バイクジャンプ(これバイト?)といったバイトミッションを受けたり,広告代理店“K-ENTERTAINMENT”を通じて特定のターゲットを暗殺するといった“殺しのミッション”を受けたり,さらには街中に点在する“フリーファイトミッション”をこなす必要がある。

ヤシの木にパンチやキックの雨を降らせて落ちてきたヤシを拾ったり,草刈り機で伸び放題の雑草を刈ったり……と,普通のバイトは普通に地味。だがこれをクリアすれば,新たに“殺しのミッション”を受けられる。殺しのミッションなら,報酬も抜群だ
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 なお,本作の舞台として登場するのは,サンタデストロイという街。全体が3Dで描かれた箱庭になっており,ここを「シュペルタイガー」という名のバイクや自分の足で走り回って移動する必要がある。つまり,まずは職業不安定所でバイトミッションを選んだら,依頼人の待つ場所まで移動。バイトを終えたら,依頼人が“裏のバイト”を紹介してくれるので,K-ENTERTAINMENTに足を運び,正式に殺しのミッションを受託。ターゲットがいる場所まで移動し……というのを繰り返すことになるわけだ。
 バイトミッションや殺しのミッションは,それぞれミニゲーム的な楽しさを持っているのだが,個人的にはそれらを繋ぐ“移動”が退屈に感じられた。もちろん,シュペルタイガーをジャンプさせて爽快感を味わったり,自分の足で走り回りながらゴミ箱をあさってTシャツを探したり……といった“遊び”も用意されている。が,テンポ良く進むストーリーが,移動中は完全に停滞してしまうのだ。逆に言えば,ストーリーのテンポが良いぶん,必要以上に移動を退屈に感じてしまうのかもしれない。
 ちなみにサンタデストロイには,トラヴィスが身に着けられる衣類を販売する「エリア51」,プロレス技を習得できるビデオを売る「ビーフヘッド」,トラヴィスの能力を高めるトレーニングが可能な「サンダー龍興業事務所」,新型ビーム・カタナを購入できる「ナオミ研究所」といったスポットもある。

 が,街の広さに比べ,入れるお店や各種施設などはやや少ない印象。ただ,街全域を作り込みまくり,何でもかんでもできてしまうような自由度の高い作品だと,筆者のように主体性に欠けた人間は途方に暮れてしまう。そういう意味で,数的にはちょうど良いバランスなのかもしれない(それでも広さとのバランスは少し悪いかも)。

「エリア51」で服を買い,「ビーフヘッド」でビデオを買い,「サンダー龍興業事務所」でトレーニングをして,「ナオミ研究所」で新型ビーム・カタナを買う。こんな具合にサンタデストロイでの生活(?)も体験できる
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須田剛一氏の前田日明への愛が炸裂!
「前田前田前田前田前田前田ー!」


蹴り足を片腕でキャッチしたら,もう片方の腕で相手の頭を抱え,ブリッジを効かせて後方に反り投げ,相手を頭から地面に叩きつける。それが前田日明の入場テーマ曲のタイトルにもなった,キャプチュードだ
画像集#020のサムネイル/コンシューマゲームセレクション:第25回「NO MORE HEROES」
 ではここから,冒頭に掲げたテーマについて言及していくことにしよう。
 本作のディレクションとシナリオを担当しているのは,グラスホッパー・マニファクチュアの須田剛一氏。須田氏はかつて,ヒューマンに在籍し,ファイヤープロレスリングシリーズを手がけてきた人物だ。とくに「スーパーファイヤープロレスリングSPECIAL」では,ストーリーモード「チャンピオンロード」において,主人公が新弟子からプロレスと総合格闘技の頂点を極め,最後には拳銃自殺するという先鋭的でペシミスティックな物語を描き,大きな話題(と,少しの議論)を呼んだ。

※須田氏の代表作には,ほかにも「シルバー事件」や「花と太陽と雨と」「killer7」など数多くある

 ちなみに須田氏は,2007年4月に筆者が思いつきで行った「4Gamer.net presents『ゲームとプロレス』」というトークイベントにゲスト出演してくれたとき(その節はお世話になりました),ファイヤープロレスリングシリーズに登場する“冴刃 明”が強い理由を「前田日明が好きだから」と語り(冴刃 明と前田の関係は言わずもがな),“沖田勝志”が弱い理由を「大仁田が嫌いだったから」(同前)と語っていた。そう,須田氏は前田が好きなのである。
 そして本作には,須田氏の前田への愛がぎっしり詰まっているのだと,筆者は思わずにはいられない(これを書きたいがためにずいぶん遠回りをした気がする)。

 その根拠となるのは,トラヴィスがゲーム中に習得する(設定上は“思い出す”)プロレス技の数々。トラヴィスはゲームスタート時から,「ドラゴンスープレックス」「垂直落下式ブレーンバスター」「DDT」「ツームストンパイルドライバー」を使用できる。が,ランキングバトル直前のセーブポイント近くに落ちているメモを拾うことで,新たなプロレス技を習得する。そうやって一つずつ習得するのが,「フロントネックチャンスリー」「リバースアームサルト」「キャプチュード」「ジャーマンスープレックス」「スロイダー」「かんぬきスープレックス」「ダブルリストアームサルト」の七つなのだ。

七色のスープレックスのほか,いわゆる“プロレス技”や,ルチャ・リブレ殺法も繰り出せる。このあたりの節操のなさは,プロレスという曖昧なジャンルを内包しようという意気込みの表れかもしれない
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 これらはどれも,前田が“黒髪のロベスピエール”……もとい,“七色のスープレックス”との異名を持っていた当時(「IWGP決勝リーグ戦」にヨーロッパ代表として出場した1983年),得意技としていたものなのだ。
 また,メモに書かれているメッセージも,例えば


トラヴィス、分かっているよな
師匠の十八番のスープレックスだ
受身の人間不信キャプチュードを…

###

トラヴィス
カルガリーの常識だ
キング・オブ・スープレックスだ
悪魔の観覧車
スロイダーを…

###

トラヴィス 最後に試合を決めるのはガッツだ
ガッツのある奴が強いんだよ
七色のスープレックスの完成だ
沈黙の処刑
ダブルリストアームサルトを…


といった具合で,前田が好きな人ならば,これを見るだけでもニヤリとできるキーワードが満載だ。

 ちなみに“師匠”としてゲーム内に登場するのは,サンダー龍というキャラクター。龍は,ファイヤープロレスリングシリーズに登場する,天龍源一郎的なキャラクターと同名だが,前田の得意技を教える師匠とは考えにくい。ビデオショップ「ビーフヘッド」で「生きる伝説 サンダー龍」というビデオを購入し,自宅で再生するとブレーンバスタースラムが,「プロレス名勝負ビデオ サンダー龍七番勝負」を購入するとパワーボムを使えるようになることを考えても,やはりメモに出てくる“師匠”とは違う人物だろう。
 余談だが,ビデオ繋がりでいうと,「マスク・ド・パンサー虎の咆哮」を見るとケブラドーラ・コンヒーロが,「マスク・ド・パンサー四次元の極み」を見るとウラカン・ラナが使えるようになる。マスク・ド・パンサーには,冴刃 明と揉めた過去がありそうだが,そのどちらの技も使えるようになるトラヴィスは幸せ者かもしれない。

ジャパニーズマフィアなサンダー龍。彼の現役プロレスラー時代のビデオを見ることで,トラヴィスはパワーボムなどを習得する。「サンダーストーム」が聞こえてきそうだ(いや,相手の足を4の字に固めてジャイアントスイングのように回す技のことではなくて)
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「NO MORE HEROES」は“NO MORE HERO'S”なのだ(と思う)


本作に溢れる前田日明への愛。それを象徴しているのは,この人物ランドル・ロビィコフかもしれない。理由は本文参照で
画像集#028のサムネイル/コンシューマゲームセレクション:第25回「NO MORE HEROES」
 さらに話は逸れるが,酔いどれのロシア人ランドル・ロビィコフというキャラクターも本作には登場する。これもまた,ファイヤープロレスリングシリーズに登場する,アンドレイ・コピィロフ風味のキャラクターだ。
 コピィロフは,前田が設立した「リングス」(現在は活動停止中)の常連で,「リングス・ロシア」に所属していた選手(ロビィコフが酔いどれキャラという時点で,リングスファンはコピィロフ酔拳を思い出しながら涙目になるはず!)。ゲーム内のロビィコフに,街中に落ちているロビィコフボールを集めて渡すと,画面内のミニマップに敵の位置が表示されるようになるほか,“飛び込み斬り”や“ジャンプダウン攻撃”などを習得できる。これらはどれも,ゲームを攻略するうえで,習得しておくべき技の数々だ。
 このように,ゲーム内におけるロビィコフの重要度からも,“ロビィコフ→コピィロフ→リングス・ロシア→リングス→前田”という間接的な形で,前田愛(「ガメラ3」に出た人とか声優じゃなくて)を感じてしまうのは,筆者だけではないはず。

このセリフ,関西弁に訳すと「ごちゃごちゃ言わんと誰が一番強いか決めたらええんや」になるはず。「ごちゃごちゃ言わんと」なんて言ってないって? ごちゃごちゃ言わんと(略)
画像集#029のサムネイル/コンシューマゲームセレクション:第25回「NO MORE HEROES」
 これ以外にも,前田愛は随所でうかがえる。例えばデスメタル戦開始前のムービーにおけるトラヴィスのセリフ「いちばん強い奴を決めりゃいいんだよ!」は,「ごちゃごちゃ言わんと誰が一番強いか決めたらええんや」という前田の名言(1987年)へのオマージュだろう。
 シュペルタイガーを猛スピードで駆って対向車線の自動車にぶつかって転倒したときの空気感のようなものは,アメリカ映画「バニシング・ポイント」に影響を受けていた10代の前田が,バイクで羽目を外し過ぎて事故を起こしたエピソードが元ネタになっているのかもしれない。

 それどころか,「NO MORE HEROES」というタイトルにも,前田への愛は込められているような気がしてくる。というのも,前田は現在,FEGが運営する総合格闘技イベント“HERO'S”のスーパーバイザーを務めているのだが,前田ファンの多くは,「HERO'Sもいいけれど,リングスの復興を!」と思っている。
 これを考えれば,もう答えは見えているだろう。本作のタイトルには,「NO MORE HERO'S」……つまり,「RINGS ONCE MORE」という願いが込められているのである。

 ……いい加減,キリがなくなってきたので,筆者の推測というか妄想の垂れ流しは,このへんで終わりにする。が,前田ファンならば,本作で遊べば遊ぶほどに,「おっ,ここにも前田が!」と気付かされるポイントが多数隠されていることだけは確かだ(これは誤解や妄想じゃないと思う。きっと)。だからこそ,声を大にして言いたいし,声に出して読みたい。「前田が好きでゲームも好きなら,ぜひ遊んでみよう!」と。

シュペルタイガーで爆走。そして転倒。この瞬間の乾いた空気感は,あの映画に影響を受けていた10代の前田日明を表現しようとしているのだろうか……
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前田ファンじゃなくても十分楽しめるはず。このノリさえ合えば


いちいち例は出さないが,シルヴィアのセリフには秀逸なものが多い。シルヴィアの言葉の数々に翻弄されたいならば,ぜひ最初から最後までプレイしてもらいたい。本当の最後まで
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 じゃあ前田に興味がない人には向かないか? というと,決してそうではない。遠い昔に前述したように,世界観やキャラクター,セリフ,演出に一貫したB級映画テイストはバカバカしくも格好良いし,アクションも爽快だ。任天堂のファミリー向けハードという印象が強いWiiでリリースされているのに,下ネタだってたっぷりある。下ネタの数々が,乾いた感じで,なおかつ頭の悪さが全面に出ているという,アメリカンB級バカ映画っぽい味付け(ほめ言葉)になっているのも,本作の大きな見どころだ。

トラヴィスは自室でビデオを見たり(元気ロケッツの「Heavenly Star」のプロモーションビデオをフルサイズで再生できる),冷蔵庫の中を漁ったり,愛猫ジーンと戯れたり,着替えたりできる
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 それらをひっくるめたうえで,疾走するストーリーも見物である。ネタバレを避けるために詳述はしないが,中盤以降,ランキング5位のレッツ・シェイク戦からランキング1位のDARK STAR戦,そしてその後に明かされるトラヴィス出生の秘密,謎の男の正体は? そしてシルヴィアがなんと……! と,闇雲に突っ走っていったあげく,メタフィクション的な構造になっていく過程が,いちいち荒唐無稽でありながら,良い意味でこちらの予想を裏切り続けてくれる。
 決して,ストーリーに感情移入して,思わず涙してしまうようなことはない。にもかかわらず,エンディングを迎えたあとに,乾いた爽やかな風が胸の中を吹き抜けるような感慨すらある。

 良くも悪くも見た目や設定の“濃さ”で,敬遠してしまう人もいるかもしれない。実際に遊んでみても, このノリについて行けるかどうかは,好みの別れるところだとは思う。しかしそのぶん,好きになれる人はとことん好きになれる……そんな作品だ。筆者は2007年内に一度本作をクリアし,2008年になってから本稿を書くためにもう一度プレイし直したのだが,そのとき「もう1回じっくり遊びたい」と思わされた。この記事を読んでちょっとでも興味を持った人には,ぜひ遊んでみてほしい。筆者が言わんとすることが,きっと分かってもらえるはずだ。

ランキングバトル直前のランカー達とのやりとりも見物。ときに格好良く,ときにバカバカしいが,その向こう側に哀しみのようなものが透けて見えることすらある
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■■TeT(4Gamer編集部)■■
コンシューマゲームの話をすると,たいていは「それもう買った(予約した)」という返事が返ってくるほどのコンシューマゲーム機大好きっ子。でもその大半は,ゲームをクリアするまで気力が続かない現代っ子。そして,マルチプレイが楽しいという評判を聞いて購入したゲームでも,ソロプレイしかやったことがないという一人遊びっ子でもある。


NO MORE HEROES
対応機種:Wii
メーカー:マーベラスエンターテイメント
発売日:2007年12月6日
価格:7140円(税込)
CEROレーティング:D(17歳以上対象)
公式サイト:http://www.mmv.co.jp/special/game/wii/nomoreheroes/
  • 関連タイトル:

    NO MORE HEROES

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