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[GDC 2014]「パズル&ドラゴンズ」大ヒットの要因は“勘”? パズドラ開発の裏側が明かされたガンホー 森下一喜社長のセッションをレポート
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印刷2014/03/22 12:58

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[GDC 2014]「パズル&ドラゴンズ」大ヒットの要因は“勘”? パズドラ開発の裏側が明かされたガンホー 森下一喜社長のセッションをレポート

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 Game Developers Conference 2014の4日目にあたる北米時間の2014年3月20日,ガンホー・オンライン・エンターテイメント(以下,ガンホー)の森下一喜社長が「Puzzle and Dragons Postmortem」(パズル&ドラゴンズの分析)と題したセッションを行った。
 昨年の「100% Fun」と銘打ったセッションでは,開発者はひたすら面白さを追求すべきと訴えた森下氏。そして今年は,実際に「パズル&ドラゴンズ」(以下,パズドラ)がどのように開発されたかを明かす,という内容だった。気になる人はじっくりと読んでほしい。

[GDC 2013]面白いゲームを作るキーワードは「マネタイズ」や「KPI」ではなく「100% Fun」。森下一喜氏が語るガンホー流タイトル開発


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森下一喜氏
 登壇した森下氏は,パズドラの話に入る前に,パズドラ以降にリリースされたガンホーのスマートフォン向けタイトルのデータを紹介した。それによると,6タイトルすべてが黒字で,うち4タイトルは月100万ドル以上の売り上げだという。森下氏は明言こそしなかったが,パズドラの成功により,スマートフォン向けタイトルの開発におけるノウハウを完全につかんだ,といった印象だ。

 森下氏は,昨年のセッションで,パズドラがヒットした要因を「LUCK(運)」だと語っていたが,今年は「Instinct(直感,勘)」と宣言。本作の企画が,どのようにして生まれたのかを話し始めた。

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 パズドラの企画が立ち上がったのは,2011年の7月。当時はフィーチャーフォン向けのソーシャルゲームが,ゲーム業界を席巻している時期だった。
 森下氏は,それほどゲーム性のないタイトルが人気だったことを,内心快く思っていなかったそうだ。そこで,コンシューマゲームで育ってきた自分達の年代がプレイしたくなるスマートフォン向けタイトルを作ろう,と思ったのがそもそものきっかけだったという。

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ターゲットは自分達
 ゲームのコンセプトは「スマートフォンのタッチ操作を生かした,直感的でアクション性のあるRPG」。同時に「革新的」「直感的」「魅力的」「継続的」「演出的」という5原則も決まった。

 そして,森下氏と入社したばかりだった山本大介プロデューサーがアイデアを出し合った結果,山本氏が1週間で作成した「RPG+タワーディフェンス」と「RPG+パズル」という,2つの企画書から後者が選ばれた。
 これが,のちのパズドラになるのだが,この時点では横画面で,パズルも3マッチではなかったという。現在のものとは,大きくかけ離れた仕様だった。

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 森下氏は,横画面を採用するスマートフォン向けタイトルは,ゲームプレイに両手を使うことになり,通勤や通学の車内では遊びづらいだろうと感じたため,縦画面への変更を決めたと語る。そして,その瞬間,画面の下にパズル,上にモンスターが表示される,画面の基本デザインがはっきり見えたとのことだ。

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 タイトル名も森下氏と山本氏が案を出し合って,「ダンジョン&パズル」などが有力候補になっていたものの,そこに森下氏が「どうしても“ドラゴン”を入れたい」と要望した結果,「パズル&ドラゴンズ」に落ち着いたという。森下氏がドラゴンにこだわった理由は,「」だったそうだ。

 そうして企画段階が終わると,ほかのスタッフも参加しての開発作業へと移った。
 ここで問題となったのがパズルの部分で,かなりの試行錯誤が繰り返されたとのこと。当初は,ドロップを縦横4方向のいずれかに1マスしか動かせないという仕様だったそうだが,これではアクション性に乏しく,ミスしたときに気持ち悪いとの理由で森下氏が変更を指示。その後,斜め方向への移動を加えた8方向に1マス動かせるものになったが,これもアクション性の面ではイマイチだったという。

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 そこで,山本氏が「いっそ自由に動かせるようにしたらどうですか」と提案。これに対して森下氏は「アクション性や爽快感はあるが,簡単になりすぎるのでは?」と不安だったそうだ。しかし,その後,ドロップの操作に制限時間を設けることで,懸念は解決された。

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 この制限時間については,どれくらいの長さが最適か,コンマ1秒単位でテストが行われた結果,最終的に「4秒」に落ち着いている。なお,この決め手も森下氏によれば「勘」だったそうだ。

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本作のテストには,森下氏のお子さんや山本氏の奥さんも参加したとのこと。幅広い層をターゲットとしたタイトルだからこその人選だろう。森下氏は「開発者は家族を大切に」と呼びかけていた

 そうして半年ほどの開発期間を経てリリースされたパズドラは,大規模なプロモーションなどを打たなかったにも関わらず,口コミでたちまち人気に火が点いた。2012年,2013年と2年連続でApp Storeの総合売り上げランキングのトップとなり,日本国内ではスマートフォン向けゲームの代名詞的存在になっている。

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 この人気の理由について,森下氏は「ゲームだけでなく,運営にもあった」と分析。「ラグナロクオンライン」をはじめとする同社のオンラインゲームの運営で得たノウハウや,月間アクティブユーザー数を最重要視する方針などが語られたが,やはり特徴的なのは,本来有料アイテムである「魔法石」の無料配布だろう。
 
 これは,パズドラの人気が急上昇していたころ,ユーザーの増加に耐え切れずにサーバーが落ちてしまったことに対するお詫びとして,プレイヤーに配布されたのが最初だった。
 「売り上げの減少につながるだろう」と思っていたそうだが,蓋を開けてみれば,この対応に好感を持った人がプレイヤーとして参加し,売り上げにマイナスの影響は出なかったという。

 そして現在では,魔法石の配布がARPU(プレイヤー1人あたりの課金額)を減らす目的でも使われている。運営側が意図的にARPUを下げる,というと変に聞こえるかもしれないが,ARPUが高くなりすぎるとプレイヤーが離れる可能性が高くなるためだという。森下氏は,これをかがり火に例えて,適切な量の薪をくべて,長く燃やすことが大事だと,運営のコツを語った。

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 ゲーム内イベントの豊富さも,パズドラの特徴だ。もともとはプレイヤーからの「コインが足りない」という声に応えるために,より多くのコインが入手できる「週末限定ダンジョン」を用意したのがきっかけ。次は合成用の素材が多く入手できるダンジョン,次は……と対応しているうちに,毎日異なるダンジョンが登場する「曜日ダンジョン」につながったという。

 曜日ダンジョンには,パズドラのプレイを習慣化させるというだけでなく,短時間に高額の課金で一気にゲームを進めるという遊び方を抑える効果があるそうだ。前述したように,高ARPUはプレイヤーがゲームから離れる可能性が高まるので,これも理想的な運営手法と言えるだろう。

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現在,パズドラは13か国でサービスが展開されており,運営はそれぞれが独自に行っているとのこと。森下氏は,効率は良くないかもしれないが,それぞれの国に合った運営をするのがガンホーのスタイルだと説明した
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パズドラの新たな取り組みとして,2月に発表された「パズドラW」や,アーケードゲームの「パズドラ バトルトーナメント」,コミックやキャラクターグッズの展開なども紹介された(関連記事

 セッションの最後で森下氏が強調したのは,チームの重要性だ。「ゲームは1人で作るのではなく,信頼するチームと作るもの」と語った森下氏は,あえて「あいまいな組織」を作り,誰もがさまざまなプロジェクトに参加できるようにしているという。そうして,お互いのピンチなどを助け合っているうちに,チームの結びつきが強くなっていくとのことだ。
 
 さらに,森下氏は「パズドラの成功は“勘”と“チーム”が起こしたサクセスストーリー」とまとめると,これからも勝ち負けではなく,面白さにこだわって挑戦を続けていきたい,と抱負を述べてセッションを終えた。

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「パズル&ドラゴンズ」公式サイト

「パズドラ バトルトーナメント ―ラズール王国とマドロミドラゴン―」公式サイト

4Gamer「GDC 2014」特設ページ

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