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[GDC 2016]パブリックβが公開されたUnity 5.4はVR性能が大幅に向上。UnityのVRに関する取り組みと業界動向を見る
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印刷2016/03/19 21:15

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[GDC 2016]パブリックβが公開されたUnity 5.4はVR性能が大幅に向上。UnityのVRに関する取り組みと業界動向を見る

Amir Ebrahimi氏(Principal Software Engineer, Unity Technologies)
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 北米時間2016年3月15日,Game Developers Conference 2016(以下,GDC 2016)の2日めに行われた講演「VR: Eyes Wide Open」で,Unity Technologies(以下,Unity)が語ったVR(Virtual Reality,仮想現実)への取り組みと業界動向を紹介してみたい。

 ちなみに,タイトルにある「Eyes Wide Open」とは何かという話だが,講演で登壇したAmir Ebrahimi(アミル・エブラヒミ)氏の話しぶりからすると,「雑多な情報をまとめたリンク集」的な意味のようだ。「VRを取り巻くさまざまな情報をみんなで共有しようぜ」ということらしい。用語自体が慣用句にでもなっているのかと思ったが,そのまんま「目を見開け」といった意味でいいようだ(Weblioェ)。

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 さて,講演でEbrahimi氏は,「UnityのCEOであるJohn Riccitiello(ジョン・リカテロ)氏は,2020年くらいになると『Unityで作られるもの』でVR関係のものがそうでないものより多くなるだろうと見ている」という話や,「ゲームデベロッパのOwlchemy Labsが全面的にVRへ移行する」といった話に続き,今日(こんにち)におけるVR対応ヘッドマウントディスプレイ(以下,HMD)の状況や予測などを紹介した。

 現在誕生しようとしているVR HMDは山のようにあるので,氏の示したスライドに挙がっているこれはその一部ではあるのだが,情報がまとまっていると役に立つこともあるのだろう。製品版Riftの出荷台数予測で見ると,1万5000台から300万台の間とかなり大雑把な感じではある。

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講演で披露されたVR HMDの発売時期と価格,出荷台数予測。「PlayStation VR」が「噂では4月登場」とされているなど,ちょっと情報が古い
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こちらはVR HMDの仕様をまとめたスライド

 UnityはほぼあらゆるVR HMDに対応した開発環境となっているわけだが,VR HMD製品ごとにスペックも異なるので,VRアプリケーション開発者は常に情報が不足気味といえるかもしれない。映像出力について言えば,細かいスペックはともかく,本質的な部分で大きな差はないのだが,どんな入力インタフェースを持っているのかは非常に重要だ。そのあたりの情報も氏はまとめていた。

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Ebrahimi氏がまとめた「VR HMDにおける入力インタフェース」
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Pete Moss氏(VRDude, Creative Content Studio, Unity Technologies)
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 続いて,UnityのPete Moss(ピート・モス)氏が,VRへの取り組みと,VRアプリケーション作成上の注意点などを語った。
 氏が最初に強調したのは,Unity 5ではチェックボックス1つでゲームがVR対応になり,対応プラットフォームも簡単に選択できるようになっていることだ。

Unity 5は「Virtual Reality Supported」にチェックを入れるだけでVR対応になる
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 開発上の注意点は,何をおいてもフレームレートを維持することだ。VR開発の要点はいまだにこの部分になっている。「前もってベイクしろ」「見えないところは描くな」「マテリアルを共用しろ」とチェックすべき項目をMoss氏はいくつか挙げていた。

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 というわけで本稿のタイトルにも入っているUnity 5.4だが,GDC 2016に合わせて公開となったUnity 5.4のパブリックβで,VR関係の処理がかなり高速化されたようだ。
 Unity 5.4では「Double Wide Rendering」を有効にすることでCPUとGPUの負荷をともに大きく下げることができるとMoss氏はアピールしていた。さらに,現在開発中の「Render Loop Job」を導入すると,CPU負荷をさらに大きく下げることが可能だという。氏が示したグラフからすると,Unity 5.3では40fps程度しか出なかったシーンを110fps程度でレンダリングすることができる(可能性がある)のだから驚きだ。

Unity 5.4における性能改善度合いを示したグラフ
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 ただ,ここで挙がっている,

  • Double Wide Rendering
  • Render Loop Job

が,どんな処理なのかはよく分からない。具体的にどんな処理なのか,展示会場が開いてからはUnityのブースでも尋ねたのだが,あいにく把握している人が見つからなかった。よって推測になるのだが,軽く調べた限りでは,Double Wide RenderingというのはUnreal Engineでいうところの「Instanced Stereo Rendering」と同じような処理ではないかと思われる。

Timothy Wilson「High performance stereo rendering for VR」より
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 Instanced Stereo Renderingは,ジオメトリシェーダのハードウェアインスタンシングを使い,左右の目用にレンダリングする処理を1回のDraw Callでまとめてやってしまおうという考え方である。これまで半分ずつレンダリングしていた右目用と左目用映像を(倍の幅で)一度にレンダリングするわけだ。機能的に見るとインスタンス処理だが,レンダリング時は倍の幅で描いているので,これをもってUnityはDouble Wideと言っているのかもしれない。

 この処理ではレンダリングにあたって左右のオブジェクト情報をずらして配置するのだが,右目用と左目用が混ざらないように,それぞれにハードウェアクリッピングを施す必要がある。その処理がOpenGL ESでサポートされていないとのことなので,だとすると,当面の間,Double Wide RenderingはPC専用の機能になる可能性はある。

 一方のRender Loop Jobはまったく分からなかった。今回のGDCにおけるMaxPlayによるセッションでは,VRレンダリング時のCPUスレッドにはかなり改善の余地があるような話題が上がっていたので,関連スレッド処理を独自に効率化するものだろうと思われるが。

これはMaxPlayが示したスライド。同社のnCore技術をアピールするための資料なので鵜呑みにはできないが,もともとVRレンダリング時のCPU利用効率はあまりよくないらしい
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 そのほかの注意点としては,「UIはオブジェクトと同じ空間に作れ」「カメラは2〜3m離せ」「3Dサウンドも忘れるな」といったところだ。HRTF(頭部伝達関数)をベースにした3Dサウンド技術には多くの選択肢があるのだが,Moss氏自身はRealSpace3Dがお気に入りとのことだった。

 そのほか,インタフェースデザインからマーケティングまでさまざまな注意点をまとめていたので,スライドで紹介しておこう。

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 一時はVR開発というとUnity“一択”だったのだが,2016年春を迎え,そこまでの圧倒性はなくなってきている。むしろ,ある程度の規模の有力コンテンツはUnreal Engineベースになることも増えているようにも思われるだけに,Unity 5.4におけるVR性能の大幅な向上は朗報といえるだろう。

Unity 5.4に関する公式ポスト(英語)

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