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印刷2016/03/18 21:29

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[GDC 2016]押しつけがましさのない広報活動が成功につながった。「Goat Simulator」のPRマネージャーが我流マーケティング術を紹介

Coffee Stain StudiosのArmin Ibrisagic氏。筆者が2年前のGDC2014でお会いしたときも,「ゲーム業界でヤギが注目されてうれしい」などと素っ頓狂な受け答えをしていた
画像集 No.001のサムネイル画像 / [GDC 2016]押しつけがましさのない広報活動が成功につながった。「Goat Simulator」のPRマネージャーが我流マーケティング術を紹介
 GDC 2016で行われた,「広報とマーケティング: Goat Simulatorに学んだレッスン(原題:PR & Marketing: Lessons Learned from Goat Simulator)」と題されたセッションを紹介しよう。タイトルにGoat Simulatorとあるとおり,登壇したのはスウェーデンのデベロッパ,Coffee Stain Studiosのゲームデザイナー兼PRマネージャーであるArmin Ibrisagic(アルミン・イブリサジック)氏だ。

 2014年にリリースされた“ヤギシム”こと「Goat Simulator」PC / PS4 / PS3 / Xbox One)は,元々はアイドリング状態だったCoffee Stain Studiosのメンバーの一部が,物理効果などの新たな技術に慣れるためのデモとして制作した,社内向けのジョークプロジェクトだったのは,4Gamerでも何度かお伝えしているとおりだ(関連記事)。

 4か月ほどの短期間で開発したため,バグも多かったのだが,Coffee Stain Studiosはそれを隠そうともしなかった。今でもSteamのストアページには「多くのバグあり! 故障するようなバグのみを除いており、その他の全ては愉快なものなので残してあります。 」(日本語版の原文ママ)と記載されている。実はこれを書いたのも,Ibrisagic氏自身なのだという。

Goat Simulatorと言いつつも,キリンやダチョウ,さらにはクジラまでも登場する「Goat Simulator」。ちなみに本作におけるキリンの正式名称は“背高ヤギ(tall goat)”である
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 Ibrisagic氏は,当時はゲームデザイナーの補助として6か月限定で採用されたインターンでしかなかったが,同社が広報担当を探していると知り,定職ほしさに経験があるとウソをついて広報になったという。
 その最初の仕事が,件の「Goat Simulator」の社内デモ用トレイラーを作ることだったそうで,それを期待もせずにYouTubeに掲載したところ,あっという間に100万再生を超えてしまった。このとき,驚いたIbrisagic氏の脳裏によぎったのは,「ここで自分が対応を誤れば,チームに迷惑がかかってしまう」ということだったとのこと。

 当初の「Goat Simulator」は,商業作品としてリリースするかは未定とされていたが,Coffee Stain Studiosはこの時点で創業以来のヒット作の誕生を予感していたそうで,メインプロジェクトの開発を凍結し,20人ほどだった開発チームのすべてを「Goat Simulator」に投入。とにかく,話題が続くうちにリリースすることに注力したので,長期的な計画もないままコンテンツが(そしてバグも)増えていった。

元々は商品化を目指していなかっただけに,「Goat Simulator」の企画書はぺら1枚にも満たない内容しかなく,当然ながらデザインのガイドラインもないまま肥大し,バグが増えることになった
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 Ibrisagic氏は,ここで割り切ることにした。元々社内デモでしかなかったものを”欲しい“と言って(YouTubeのコメント欄に書いて)くれる人がいるのだから,彼らに向けてリリースし,サポートしていけばいい。ゲームメディアのレビューには期待できないが,Goat Simulatorというキャッチ―なタイトルだけで興味を持ってくれる人だっているだろう。というわけで,バイラルなマーケティングを継続しつつ,購入者が損をした気分にならないような広報戦略を氏は採用した。具体的には以下のとおりである。

  • 高いレビュースコアを得ることを期待せず,コミュニティにフォーカスする。
  • ゲームを売り込んだりしない。売り込むようなゲームではない。
  • 低いレビュースコアや悪評のほうが,高いスコアより注目されやすい。
  • ゲームメディアやファンが引用しやすいキャッチーなフレーズを多用するが,過剰に良く見せようとはしない

 多くのインディーズゲーム開発チームがそうであるように,Coffee Stain Studiosの広報やマーケティングの主戦場も,海外では「ニューメディア」と呼ばれる,無料で商用利用が可能なソーシャルネットワークサービスだった。同社の前作である「Sanctum 2」では,いくら頑張ってもFacebookにつけらた「いいね!」は2000ほどだったが,本作の場合YouTubeの再生数が落ち着いてくるころには,すでに80万の「いいね!」がついていた。
 FacebookのコミュニティマネージャーもIbrisagic氏が務めているそうだが,本作のFacebookをのぞいてみると,ファンのコメントや質問に対して,とにかく小まめに返答を行っているのが分かる。しかも,いかにもカスタマーサポート然とした丁寧だが無機質な回答ではなく,皮肉や笑いが入り交じった友達関係のようなやり取りで成り立っているのだ。

「おい,こんなクソげーは無料にしちまえ」というような煽り系の書き込みにもしっかり受け答えするIbrisagic氏。「それは素晴らしいアイデアです。あなたのような人材は,ぜひウチで働いてほしい。無料でゲームを出すのでお給料は出せませんけどね」などとウィットの利いたカジュアルなコメントが,ほかのファンたちの食い付きの良さにつながる
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 この部分について,氏は「Facebookにいるのは,我々とファンだけではない。その先にいるファンの友達まで常に意識しておくことが重要だ」と語っていた。Facebookにいるゲーマー達にとっては,「Goat Simulator」をチェックしているのは,アンテナが高いコアゲーマーである証なのかもしれないが,その家族や友人からしてみれば,ゲームのアップデートや新タイトルの告知が頻繁に近況に出てくるのは好ましくないかもしれない。とくに,必要以上に自分を着飾ることの多いソーシャルメディアでは尚更である。
 つまり,広報やコミュニティのマネジメントにおいてFacebookのようなニューメディアを使うことは欠かせないが,通常のマーケティングのセオリーを振りかざし,あまりしつこく売り込みを行うのは避けた方がいい。これが,Ibrisagic氏が我流で生み出した戦略であったという。「Facebookは,皆で面白いネタや書き込みをシェアするもの。エンターテイナーになるべきであり,セールスマンになってはならない」というわけだ。

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「Civilization: Beyond Earth」のFacebookページで,ゲームとは直接関係のない宇宙や科学のリンクに多くのファンが興味を示していたのをヒントに,ゲームとは関係のないヤギ系の写真やアートを公開したところ,やはり喰いつきが良かったとか
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半面,ゲーム単体よりもはるかに高い公式Tシャツのようなマーチャンダイズを紹介しても,ほとんどの人は反応しない。「セールスマンではなくエンターテイナーに徹するべき」というのは,こうした経験によって生まれていった

 もちろん,こうしたカジュアルさは「Goat Simulator」というキワモノだからこそ受け入れられたのかもしれず,一歩対応を間違えればアンチやクレーマーの餌食になりかねない危険性はある。しかし,ソーシャルネットワークをどう活用すべきかは,まだ答えが定かでないのだし,そもそも広報という概念自体,生まれてから100年ほどしか経っていないのだ。Ibrisagic氏のような肩肘張らないアプローチは,ファンとデベロッパの垣根を取り払ううえで,効果的な方法の一つといえるのではないだろうか。

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