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「ゲーマーのためのブックガイド」は,ゲーマーが興味を持ちそうな内容の本や,ゲームのモチーフとなっているものの理解につながるような書籍を,ジャンルを問わず幅広く紹介する隔週連載。気軽に本を手に取ってもらえるような紹介記事から,とことん深く濃厚に掘り下げるものまで,テーマや執筆担当者によって異なるさまざまなスタイルでお届けする予定だ。
創元推理文庫というレーベルがある。名前のとおり,翻訳ミステリーでは早川書房と並ぶ老舗であり,そこから発展してSFやファンタジーの翻訳にも定評がある。そして21世紀となった今は,国産本格ファンタジーの牙城でもあるのだ。
乾石智子氏のデビュー作「夜の写本師」から始まる「オーリエラントの魔道師」シリーズを筆頭に,国産ファンタジーを次々と刊行している同レーベルだが,今回紹介するのはそれではない。2026年6月に最新第6巻が発売された,庵野ゆき氏の「竜の医師団」シリーズである。月島さと氏によるコミカライズもスタートしたばかりの,今もっとも面白いファンタジーの一つなのだ。
「竜の医師団 1」
著者:庵野ゆき
版元:東京創元社
発行:2024年2月29日
定価:1056円(税込)
ISBN:978-4-488-52410-4
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本作の舞台は,竜が作った世界。竜が生み出した大陸には今や人も住まうが,巨大なドラゴンが生息しているため,その活動自体が人類にとって国家の存亡に関わる脅威である。彼らが飛べば気流が生まれ,彼らが泳げば海流が生じる。そして彼らの巣の周囲には,豊穣がもたらされる。
この世界のドラゴンの肉体は巨大で,最高齢の竜王ディドウスは体長1460馬身。1馬身2.5mとして3650mである。翼を広げれば幅3333馬身(約8.3km)と推測される。卵から生まれたばかりの幼い竜でも体長50馬身(125m)だ。
これだけの巨大生物であるから,生きているだけで周囲に大きな影響が出る。
巣の周辺の土地が豊かになるのはいいが,いざ病気にでもなれば,それは天災である。くしゃみをすれば火の息で辺りは焼け野原となり,虫歯の痛みにのたうち回れば,ちょっとした街など踏み潰されてしまう。寄生虫が増えすぎれば,蝗害につながる。
その禍を防ぐために組織されたのが,竜の医師団だ。国家から独立した存在である彼らはドラゴンの巣の近くに集まり,竜の健康を維持するため,日夜研究と治療の毎日を送っているのである。
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さて,物語はそんな竜が住まう大陸の北の果ての国,カランバスから始まる。もとより寒冷な土地ではあるが,ここには老いたる〈竜王〉ディドウスしかいないので,豊かな地域は限られている。
主人公はこのカランバスで差別され,下層民として扱われているヤポネ人の少年,リョウ・リュウ・ジ。彼は生きる場所を求め,竜の医師団へと駆け込む。被差別民として言葉を奪われ,学ぶことを禁じられたリョウだったが,善意ある人から文字を学び,好奇心を育てていった。しかし,それは法律違反であり,彼が生きるためには国家から独立し,民族による差別を受けない竜の医師団に加わるしかなかったのだ。
偶然一緒に行動することになった真珠の民の青年レオニートと共に,なんとか医師団に拾われたリョウは,破天荒な竜血管内科科長のカイナニーナ,医師団生まれの天才技術者の少女リリらと出会い,竜の医師としての道を歩み始める。
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巨竜を治療する壮大なプロジェクト
「竜の医師団」は剣と魔法の冒険譚ではなく,どちらかといえば巨大生物SF――いわゆる怪獣ものの一形態といえる。なにせ全長3.6kmにも及ぶドラゴンの生態を研究し,その病気を治療するという壮大なプロジェクトなのだ。
世界の技術レベルは,おおよそ蒸気機関から飛行船の時代といったところで,その知識でもって竜の病気を診断し,治療するために悪戦苦闘する人間たちのドラマが描かれていく。
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しかして世界最大級かつ最高齢のドラゴンの鱗は,1枚とて10mではすまない。薬を注射するにしても,巨大なクレーンのような車両を引っ張り出さなくてはならない。いや,これはワクワクするではないか。
当初はそんな老竜王の治療からスタートする本作だが,3巻からは生まれたばかりの幼い竜〈チューダ〉をめぐる子育ても始まる。幼いというが,チューダとて体長は125m。飛行船や列車と同じようなサイズである。
当然もう大騒ぎなのだが,このチューダが実に可愛いのだ。
可愛いのだ。
可愛いのだ。
大事なことなので3回言いました。そのうえで,彼女の先天的な障害の治療のために,医師団は東奔西走するハメになる。4巻では竜医療先進国である島国イヅルへ,5〜6巻ではチューダの飛行訓練のために,海のある南の大国ガナラージャへと向かう旅が始まる。それはリョウにとっても重要な出会いと,成長の道でもあった。ここがまた感動的なので,続きはぜひその目で確かめてもらいたい。
もちろん,これで読書は終わらない。
まずは「竜の医師団」のコミカライズが文春オンラインで読めるので,原作が気に入ったなら,そちらも見逃す手はない。
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また「ダンジョンズ&ドラゴンズ」のプレイヤーならば,「ドラゴンランス」はやはり外せないだろう。邪悪なドラゴン・タキシス(≒ティアマト)に率いられたドラゴン軍が圧政を敷く世界を舞台に,悪のドラゴンと戦うど真ん中の冒険譚である。
それとアン・マキャフリーの「パーンの竜騎士」シリーズも,個人的に欠かせないシリーズの一つだ。こちらはよりSF色が強いが,古典の名作として読んでおいて損はないはずだ。
いやはや,まだまだ読書は終わらないのだ。
朱鷺田祐介(ライター)
TRPGデザイン/翻訳を主戦場とするフリーライター。代表作に「深淵」「シャドウラン」「ザ・ループTRPG」など。最近のブームはスウェーデン産TRPGで,「MÖRK BORG」に触発された戦国ドゥーム・メタル・ファンタジー「信長の黒い城」を展開中。蜂蜜酒(ミード)について掘り下げた同人誌「MEAD-ZINE」は,BOOTHにて電子版が購入できる。

























