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「Rez Infinite」の「The Game Awards 2016 Best VR Game」受賞を記念し,水口哲也氏とSIE 吉田修平氏が対談。二人が語るVRの可能性とは
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印刷2016/12/22 13:45

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「Rez Infinite」の「The Game Awards 2016 Best VR Game」受賞を記念し,水口哲也氏とSIE 吉田修平氏が対談。二人が語るVRの可能性とは

 世界最大規模のゲームアワード「The Game Awards 2016」にて,「Best VR Game」に選出されたエンハンス・ゲームズのPlayStation 4向けソフト「Rez Infinite」。この受賞を記念し,2016年12月21日,ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE) ワールドワイド・スタジオ プレジデント 吉田修平氏と,エンハンス・ゲームズ CEO 水口哲也氏の対談が東京都内で行われた。会場では,「Rez Infinite」のコンセプトや開発中のエピソードが紹介されたほか,両氏が考えるVRコンテンツの今後の展望などが披露された。

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 ゲームクリエイターとして20年以上のキャリアを持ち,自ら手がけた「LUMINES」や「Child of Eden」では世界的に高い評価を受けてきた水口氏だが,実はこの5年くらいは,自身にとってツラい時期だったとのこと。
 そもそも水口氏は,最初のキャリアとなるセガ時代にすでにVRコンテンツを作りたかったのだが,技術的な壁などからずっと先送りにしていたという。その当時,すでにヘッドマウントディスプレイとARを組み合わせた実験などもやっており,それに関連する特許も取っていたのだが,最近になるまで忘れていたとのエピソードが披露された。
 そんな水口氏は,2010年代初頭に3D立体視に大きな可能性を感じ,積極的に取り組むことなる。しかしその一方では,一般的な家庭で使われるサイズのテレビでは思ったほどの表現にできないといった課題にも直面していたという。

 水口氏は,最初に頭の中に描いたイメージがいかに壮大だったとしても,最終的にはそれをモニターの四角い枠の中に押し込めることになってしまうと説明。これはゲームに限らず,1880年代にエジソンやリュミエール兄弟が世界初と言われる映像作品を手がけて以来,映像に関わるすべてのクリエイターが体験してきたことである。
 逆に言えば,その制約があったからこそさまざまな技術や手法が生まれ,発展していったわけだが,水口氏自身は「Child of Eden」を作ったあとに,そうした発展に限界を感じ「もはや心が震えるような体験を提供するのは難しいのではないか」とも考えていたという。

 そして2016年,VRコンテンツとして「Rez Infinite」が完成したわけだが,実際に作ってみて水口氏が気づいたのは,自分自身が「クリエイターとして,(上記で挙げたような)さまざまな課題の解決をずっと我慢してきたんだな」ということだったそうだ。

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 続いて会場では,吉田氏が「Rez Infinite」にて新たに登場したステージ「Area X」をプレイすることに。また水口氏は,自身が標榜する共感覚性を再現するべく,ゲーム内に無数のパーティクルを表示させることが当初からの目標だったとし,そのために実験を繰り返したことを紹介。その過程では,VR酔いや処理落ちを発生させないように,気持ちよくプレイを続けられるようパーティクル数を調整したり,プレイヤー自身とパーティクルの気持いい距離感を研究したりといった試行錯誤を繰り返したとのことである。

 さらにArea Xは,従来の「Rez」シリーズのように向こうから押し寄せてくるオブジェクトを撃つというスタイルではなく,プレイヤーが自由に空間を動き回ることを目指して開発したという。開発チームのスタッフからは「それだとVR酔いを回避できないのでは」という声が挙がり,またゲームデザインもまったく異なるといった不安要素は確かにあったが,試しに実験してみたところ,水口氏は「今まで以上に気持ちいい体験を提供できる」との直感を得られたそうだ。

 吉田氏によると,PS VRやOculus Rift,HTC ViveなどVRプラットフォームの開発スタッフ達は,最初に“気持ちいい体験”を提供することに強くこだわっていたという。最初にVR酔いなどの気持ち悪い体験として広まってしまうとその先の発展はないとの共通認識のもと,会社の垣根を越えた情報交換もなされていたそうだ。
 またPS VR向けのコンテンツを開発するにあたっては,PS VRチームからかなりの情報提供およびコンサルティングがなされていることも明かされた。当初,水口氏は「そこまで言わなくても……」と思ったこともあったそうだが,実際に提供された情報やアドバイスに従うと,「確かに気持ちがよくなる」となった瞬間が少なからずあったとのこと。

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 そうしたPS VRチームのモチベーションは,PS VRの生い立ちにあると吉田氏は説明。もともとPS VRのプロジェクトは,3D立体視が話題となった頃に,3D立体視コンテンツやモーションコントローラを開発していたスタッフ達が,「これならVRも実現できるのでは」と遊びで始めた実験に端を発している。そのため,目標や意識はわざわざ口に出さなくとも共有できているとのことで,吉田氏は「チームの空気は,初代PlayStationの頃に抱いた,家庭用の数万円の機材でアーケードゲームの3Dグラフィックスを再現できるという興奮に近い」と表現していた。

 吉田氏のプレイがArea Xの終盤に差し掛かると,水口氏が「Area Xには2種類のエンディングがある」ということを明かした。何でもプレイの過程に応じて,終盤に登場する女性の髪型,流れるボーカル曲,さらにはゲームデザインにも変化があるとのこと。
 水口氏によると,「Rez」シリーズに込められたテーマと関係しているという。初代「Rez」にはストーリーとは別に「受胎」というテーマがあったとのことで,さらにArea Xでは受胎から「誕生」までのプロセスを描いているというのである。ちなみにこうした表現には,2045年頃に人工知能が人間の能力を超える(シンギュラリティ)という「2045年問題説」も重ねられているという。

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 水口氏は「Area Xではウィルスを駆逐して浄化していく行為から,だんだん女性を誕生させることに荷担しているような感覚になっていくかもしれませんが,それは意図的にやっています」と語った。
 またこうした表現を可能にしたのは,「音楽」の存在も欠かせない。Area Xの終盤では,プレイヤーがまるで音楽を演奏しているかのような感覚でプレイすることとなるのだが,水口氏は「祝祭のような雰囲気を醸しだし,自分が女性の誕生に関わっていることを意識させるため」と説明していた。

 水口氏は,プロトタイプのArea Xを初めてプレイしたときに,「粒子の世界と音がシンクロする世界を本当に表現できる」と感動して涙を流したというエピソードを披露。そこには「自分の夢みてきたイメージが本当にそこにあり,その中に自分がいる」という感動と,「制約があるからこそのクリエイティブだということを,ずっと自分に言い聞かせてきたんだな」という思いの二つがあったという。
 さらに吉田氏が,「いつかそういう日が来ると漠然と予想していたけれども,それがまだ自分がクリエイターとして最前線に立っているときに来たという思いもあったのでは?」と問うと,水口氏は「もっと先のことだろうと思っていた」と述べ,またPS VRというプラットフォームにより,多くの人と感動を共有できることに感謝の意を示していた。

 さらに吉田氏が「一つVRコンテンツを作ってみた今,『次はこうしよう』という欲が出てきたのでは?」と問うと,水口氏は「開発中から次のアイデアが芽生えていましたし,『次はこれにチャレンジしよう』というリストがどんどん増えていく」と返答し,「これまでの中で,今が一番元気かもしれません」と付け加えた。
 それを受けて吉田氏も,「PlayStationのビジネスの規模がどんどん大きくなっていく中,私もストレスが大きくなっていたのですが,VR事業だけは楽しくて仕方がない」「3人くらいの少人数チームが,2週間くらいのペースで次々にVRコンテンツのプロトタイプを作ってくる。繰り返しだけれども,初代PlayStationのときのような感じで,本当に楽しいですね」と話していた。

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 吉田氏は,「これまでの20年間,PlayStationのゲームはどんどん進化して今や『アンチャーテッド 海賊王と最後の秘宝』のような素晴らしいタイトルも出ている。それを踏まえて,今から20年先にはすごいVRコンテンツが出てくると考えると楽しみで,いても立ってもいられない」「人間は経験によって成長するもの。VRには,その経験のプロセスを加速させる可能性がある。そうなると,人間そのものの可能性も高まっていくのではないか」と展望を述べた。

 また水口氏は,VRに人工知能などのほかの技術が複合的に組み合わさることで,社会のさまざまな部分が変化するだろうと予想。吉田氏も,たとえばスティーブ・ジョブズ氏のような故人のスピーチを時を越えて誰でも手軽に目の前で体験し感銘できるようになったり,あるいは弱い立場の人達が日頃どれだけ酷い目に合っているか共感できるようになったりすることで,よりボジティブな社会になっていくのではないかと語っていた。

 そうした感銘や共感に関して,水口氏は従来のコンテンツよりもVRコンテンツのほうが格段に深く,強くなっていると感じるという。たとえば「Rez」シリーズでは,Area Xに関する反響が今までにないほど強くなっているそうだ。
 吉田氏はその傾向を「VRへの思いが強いほど,感動も強まるのではないか」と分析し,Oculusのパルマー・ラッキー氏が「Rez Infinite」を初めてプレイしたときに感動して涙を流したというエピソードを紹介。「こうなるはずだと思っていたことが実現したので,そのぶん感動も強くなったのだろう」と話していた。

 関連して水口氏は,自身が「人はなぜ感動するのか」というメカニズムを研究してきたことを紹介。たとえばゲームデザインであれば「達成感」を軸にとし,そこに楽しさや学びを組み込んでいくわけだが,そのロジックはVRコンテンツの開発にて今まで以上に使えるという手応えを感じているそうだ。

 またそうした研究を通じ,水口氏は,感動とは複数の感情が同時に流れ込んできたときに発生するものだとも推測しているという。たとえば一人ぼっちで不安を覚えているときに,誰かから手を差し伸べられると優しさを感じて安心するといった次第だが,それをうまくゲームに当てはめてストーリーテリングしていくことにより,未曾有の体験を作り出すことも可能だろうと話す。実際,「Rez Infinite」,ひいてはArea Xでは結構うまく表現できたのではないかと自分自身感じているそうだ。

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対談の話題は,「Rez Infinite」の「シナスタジアスーツ」にも及んだ。水口氏によると,スーツに装着された26個のバイブレータは,振動で音のテクスチャを表現できる──たとえば下半身にベースの振動を伝え,肩にハイハットの振動を伝えるといったことが可能となっている。もともと「Rez」シリーズは,プレイヤーの操作と音楽がシンクロすることにより気持ちよさを得られる仕様となっているが,シナスタジアスーツはそれをより強く感じさせるというわけだ。なお2017年1月に米国にて開催されるサンダンス映画祭にて,シナスタジアスーツ2.0が展示される予定
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 一方,VRコンテンツはプレイヤーによって見ている場所も行動も異なるので,映画などのリニアな表現で使われてきたストーリーテリングの手法が使えないという意見もある。水口氏は,それらの意見に対して「基本的に映画は三人称や客観視点のもの,ゲームはプレイヤー自身の体験という意味において一人称や主観視点のもの。そうした一人称あるいは三人称の考え方だけでは,VRコンテンツは作れない。これまで一人称でやってきた人はそれを維持しつつ,三人称の考え方を取り入れる必要があり,逆もまた然り。そうやって,まったく新しい体験を生み出していく必要がある」と返答していた。

 さらに水口氏は,映像を見るのではなく,自分がVRの世界に入り込むという意味において,VRは1880年代に映像作品が生まれて以来,130年振りの革命であると表現。映像作品が130年間でどんどん発展していったように,アフターVR世代によって今後VRコンテンツも今とはまったく違う形に進化するかもしれないと展望を語り,対談を締めくくった。

水口氏が持っているのは,「PlayStation Awards 2016」における「PlayStation VR特別賞」のトロフィー
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