インタビュー
「三國志13 with パワーアップキット」では,拡張版の枠を越え,プレイスタイルまで変えたい。利川哲章プロデューサーへのインタビュー
「三國志13」本編とセットになった「三國志13 with パワーアップキット」(PC / PS4 / PS3)も同時発売予定だ。
武将の称号である「威名」(いめい)を名乗ることによって,さまざまな行動が可能になるなど,数多くの新要素が用意されるパワーアップキットだが,これによって三國志13はどう変わるのだろうか。
プロデューサーの利川哲章氏に聞いた。
「威名」の導入で,武将個人としての行動が際立つ
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。まずは「三國志13」本編への反響について聞かせてください。プレイヤーさんからの反応のうち,主なもの,あるいは興味深かったものは何でしょうか。
700人以上の中から好きな武将を選び,さまざまな勢力や地位で中華統一を目指すプレイができるところや,武将同士の結びつきを描く「絆システム」など,「三國志13」の大きな特徴となっている部分は,概ね評価頂けていると思います。
一方,ご要望として一番多かったのは,どの勢力にも属しない,在野でのプレイを強化してほしいという部分ですね。
4Gamer:
パワーアップキットでは,そのあたりの強化が大きな目標の1つとなるんですね。
利川氏:
はい。在野プレイを重点的に強化することを一つのテーマとして開発を進めています。ただし,在野の強化といっても,例えば私兵を率いて戦うといったところだけを拡充したのでは不十分だな,と感じています。
4Gamer:
と,いいますと?
利川氏:
パワーアップキットとして作るのであれば,在野だけでなく,武将プレイ全体のプレイ感を高めていくような方策を考えたい,と思っています。どういう立場でプレイするのであれ,より深く三国志の世界で生きられる――それが大きな目標となっています。
4Gamer:
武将プレイ全体に手が入るということですね。「威名」システムがそれに大きく関係してくると思うのですが,これについて詳しく聞かせてください。
利川氏:
威名システムは,武将システムの進化を考える中で,プレイヤー自身が三国志の世界で何を成し得たのかによって,活躍の場が広がるようなシステムはできないかと考えた結果,生まれたものです。
4Gamer:
RPGのスキルツリーのような雰囲気のスクリーンショットがありましたが……。
利川氏:
威名のつながりをビジュアルで表現した,威名系統の画面です。「侠客」や「将軍」など,複数のルートがありまして,そこを進んで威名を深めていくと,できる行動が増えていきます。これは,自分がどのように歩んできたかの記録でもありますし,同時に,これからどこに向かうのかを考える手がかりでもあります。
4Gamer:
「侠客」だと,暗殺のようにわりと物騒というか,明らかに悪人っぽいことができるルートもあるようですね。
利川氏:
はい。1つの威名の中には善人ルートと悪人ルートを持つものがありまして,それぞれでできることが異なります。在野でプレイする場合だったら,私兵を率いて中国全土を駆け巡り,依頼を受けて武名を高めていくということもできますし,街を襲撃することもできる,という感じです。
4Gamer:
街を襲えるというのは面白いですね。
利川氏:
せっかく私兵を率いることができるのだから,襲撃できるようにもしたいと。あの時代に私兵を率いていたのは劉備みたいな義勇軍ばかりじゃなかったでしょうし。やっぱり悪どいこともしたいですよね?
4Gamer:
したいですね!
利川氏:
そういう感じで,三国志演義の世界観から少しプラスαした範囲まで実現できるといいな,と思っています。
4Gamer:
商人として,財力で特定の勢力に肩入れする,ということもできるようですね。
利川氏:
貿易とまではいきませんが,自分で商売して蓄えたお金をある勢力に投資すると,国力が強化される,といったことを考えています。そしてその勢力が拡大すれば,また儲けが増えるという仕組みですね。そういう形で,自分のいわば「ご贔屓勢力」の中華統一に貢献できると。
4Gamer:
自分で戦わなくてもいいわけですね。ところでこの場合,戦乱の世が長く続くように,複数の勢力が拮抗するように投資する……みたいなこともできるのでしょうか。それによって儲けを最大化できるぞ,的な。
利川氏:
はい,そういった“闇商人”プレイも可能です(笑)。
4Gamer:
楽しみです。ところで,「軍師」や「将軍」ルートであれば,中華を統一するなり,それに貢献するなりといったゴールが思い描けますが,例えば「侠客」を選び,暗殺者として生きていくということになると,「キャリアの終着点」のようなものが想像しづらいと感じます。このあたりはどうでしょうか。
利川氏:
「威名」システム本来の目的は,武将プレイの「なりきり感」を高めるため,プレイヤーが取れる手段を増やすことにあります。ただ,ご指摘のとおり,「なりきり感」だけではなく,ゲーム的な目標も必要になりますので,侠客ルートを選び,在野でゲームを進める場合に「武名」というパラメータを用意しました。
4Gamer:
それはどのようなものでしょうか。
利川氏:
武名は都市ごとに設定されるもので,その都市で受けた依頼をこなすことなどで高くなり,その都市を支配している勢力にも一目置かれるようになります。やがては中国全土で武名を高めることを目指す,というのが最終的な目標となるわけです。
4Gamer:
勢力を統一することではなく,中華全土に名を轟かせるのが目標になると。
利川氏:
また,威名の各ルートにおける終着点に到達するというのも,目標の1つになるでしょう。到達した威名がエンディングの内容に影響するようにしたいと思っています。さまざまな目標を定めながらプレイできるようにしたいですね。
4Gamer:
威名のルートを途中で変更することは可能ですか。
利川氏:
はい。勢力に仕官したままで中華を暴れまわるわけにはいきませんので,在野専用,仕官後専用といった区分はありますが,ルートの乗り替えは可能です。また,武将によって縛りを用意するつもりはありません。ですので,軍師としてのイメージが強い荀彧で将軍ルートを進むことも可能です。
ただ,威名によって使える能力は,そのとき自分が名乗っている威名のものだけです。例えば軍師ルートを進んだ荀彧が,途中から将軍ルートに移動することはできますが,軍師ルートの威名の技を使いつつ将軍として戦う,というようなことはできません。
4Gamer:
RPGの転職とは違う,ということですね(笑)。
「威名」システムで,特に在野での武将プレイが充実することは分かりましたが,どこかの勢力に所属してのプレイでは,「地位」との兼ね合いがどうなるのか気になります。「地位」システムはそのまま残るのでしょうか。
利川氏:
はい。従来ですと地位によって「何ができるか」が決まっていましたが,「威名」システムが加わって,同じ地位でも「外交が得意」「軍勢の扱いが得意」「人心掌握が得意」と,差が生まれます。
4Gamer:
勢力としての行動は地位,個人の行動は威名で決まる,というイメージでいいでしょうか。
利川氏:
そうです。威名による行動は任務状が必要とされないようにできないか,と考えています。より自由な活躍ができるように試行錯誤中です。
4Gamer:
「三國志13」をプレイして感じたのですが,さまざまな地位でのプレイを楽しみたいと思っていても,どうしても合理的な行動を選んでしまって,毎回最も高い君主の地位についているんですよね。クリアして,別の武将でもう1回となっても,やっぱり君主になって,「なんだか前回と同じ展開になってきたぞ」となってしまうのですが,威名システムによってその問題は解消されそうだと感じました。
利川氏:
そうですね。やはりプレイヤーには個々の「こだわり」があって,地位にかかわらず自分が望む場所で頑張りたい,という人も少なからずいらっしゃいます。
例え地位が低くても,威名が高ければできることは確保されますから,こだわりのプレイができます。例えば軍師系のルートを進めていれば,地位が低くても人心掌握や戦術などで活躍できたりするわけです。
4Gamer:
ニッチですが,そういうプレイこそしたい,という人はいますよね。
利川氏:
活躍しているのに地位が上がらないというのもおかしいですから,そこは変えられないと思っています。ゲームシステム的にも,地位が上がらないとできることが増えず,中華統一への貢献もある程度限定されますし。
4Gamer:
そこを補完するのが威名ということですね。もう1つ「三國志13」で感じたことなのですが,配下でプレイしているとき,自分の地位が上がれば上がるほど,君主があまり自発的に動かなくなっていく印象がありました。このあたりのAIにはどのような狙いがあったのでしょうか。
利川氏:
実を言うと,開発当初は,自分の地位が上がっても,君主はアクティブに動くようにしていました。なにせ君主なので,プレイヤーが準備した兵力を遠慮なく使って戦争する,という感じになってたんです。
4Gamer:
面白そうじゃないですか!
利川氏:
いや,これが賛否両論で……。
4Gamer:
あ,あれ?。
利川氏:
やはりプレイヤーには「次はここを攻めるぞ」といった,自分のプランがあるんですね。それに従って兵力を蓄えていくんですが,そうやって蓄えた兵力を勝手に持って行かれてしまうと,不満が溜まるようです。結果,君主からの出陣要請という形でプレイヤーに選択権を残す今のバランスに落ち着きました。
4Gamer:
うーん。その不満も分かりますが……。
利川氏:
現状のバランスにした理由には,キャラクターの地位が高くなる頃には,プレイヤーもゲームに習熟して,君主による支援その他を必要としなくなっている,ということもあります。これらを踏まえて,ゲーム全体のバランスを見ながら,現状のAIになっている,というところです。
ですが,「環境設定」の「防衛出陣」を「自動」に設定すれば,勢力のピンチに君主権限を最大限に駆使するAIも見られますよ。
4Gamer:
個人的には「わがままの極みを尽くす暗君を必死で支える」とかもしてみたいので,ちょっと設定をいじってみます(笑)。
戦闘では,移動の重要性が増す
4Gamer:
戦闘でもさまざまな変化があるようですね。マップの広さが4倍になって,マップでの行軍中に軍勢の士気が下がるようになるなど,パワーアップキットでは戦略面でも戦術面でも「移動」が重視されているような印象がありますが,いかがでしょうか。
はい,そこは意識しています。
もともと「三國志13」にも士気の要素はありまして,例えば挟撃されると大きく下がるといった形で局地戦に影響を与えるものでした。
今作では,その士気の概念を戦略場面での軍勢の行軍にも取り入れました。行軍で軍勢士気が下がるようになり,マップ上の「要衝」で待機すれば回復する,という仕組みです。機を逃さず,行軍からそのまま戦闘に飛び込むのか,それともじっくり構えて万全の状況で挑むのか,といった駆け引きができるようになりました。
4Gamer:
出陣のタイミングも重要になりそうですね。
利川氏:
加えて,戦闘には「戦術地点」という要素を追加しています。
戦闘前に崖や森といった特定地点に対して,落石や伏兵といった地形に合う戦術を「仕掛け」て,戦闘開始後にそこを制圧すると,仕掛けた戦術が発動できるというものです。
もちろん敵も戦術を仕掛けてきていますから,先に戦術地点を押さえてしまう動きが重要になります。
4Gamer:
特定地点ということですが,これはマップごとに固定なのでしょうか?
利川氏:
はい。戦術を仕掛けた地点に,いかに敵を誘い込むかも重要ですし,軍議の段階で,敵が持ち込んでいる戦術の予測も可能になっていますので,「どこに仕掛けてくるか」という駆け引きも生まれます。
4Gamer:
戦術地点には必ず戦術が仕掛けてある,というわけではないんですね。ただ,戦術地点が固定だとすると,例え相手に押さえられても,近づきさえしなければいいのでは,と思ってしまうのですが……。
利川氏:
戦術には敵を攻撃するだけでなく,自軍の傷兵を徐々に回復するといった効果のものもありますので,放置してしまってはやはり不利になります。
4Gamer:
なるほど。大変に面白そうなのですが,ちょっと気になっているのがユーザーインタフェース(UI)です。「三國志13」はPS4版をプレイしたのですが,特に戦闘での操作が思うようにいかないことがありました。
パワーアップキットでは,このあたりの改善を期待できるでしょうか。
利川氏:
UIについては最後まで改善を重ねることになります。
PCからコンシューマゲーム機へ移植するときには,PCのUIをいかにゲームパッドに落としこむかの試行錯誤がどうしても発生するんです。
4Gamer:
UI設計は,PC版からスタートしているんですか。
利川氏:
開発はPC版とコンシューマゲーム機版を並行して進めているんですが,PC版のほうが先行するのが常で,「パッドへの落し込み」という工程が発生する,という感じです。UIについては,プレイヤーさんがいままで遊んできたゲームやプレイスタイルといったものの影響が非常に大きくて,「こうしたほうがいい」「これでは駄目だ」と,人によって意見が大きく異なるんです。
4Gamer:
慣れ親しんでいるものが一番いい,ということなんでしょうね。
利川氏:
私が「三國志」シリーズの開発に参加したのは,「三國志12」のコンシューマ版移植からでして,そのときに「三國志12 対戦版」を立ち上げました。対人戦の要素がありましたので,戦闘での操作感が勝敗に影響してしまうことはなんとしても避けたいと思い,操作タイプをいくつか用意して,それをプレイヤーさんに選んでもらうという形に落ち着いたんです。
こういう試行錯誤は,今後もずっと続いていくのかなと思いますね。UIについてはチーム内でも毎回すごく議論します。
4Gamer:
「三國志12」の話で思い出したのですが,PS3版はUSB接続のマウスに対応していましたよね。マウスとゲームパッドの両方を使ってプレイできたのを覚えています。
利川氏:
マウスを導入したのは,「三國志12 対戦版」を立ち上げるときに,PCで「三國志12」を遊んでいた皆さんにも入ってきてもらいたいと思ったからでした。慣れ親しんだマウスでないとストレスを感じられるでしょうから,どうしても外せないと思って導入したんです。「左手でゲームパッド,右手でマウスが一番いい」っていう意見が出て面白かったですね。
4Gamer:
「三國志12 対戦版」のリリースに合わせて開催されたメディア対抗戦に参加したんですが,ほかのメディアがゲームパッド+マウスのところ,ゲームパッドだけで挑んでみたんです。で,手前味噌ですが準優勝でしたので,ゲームパッドだけでも十分というか,かなり優れたUIだなと感じました。
そういう経験があったものですから,「三國志13」は余計に……。
利川氏:
「三國志12」のUIをそのまま持ってこられなかった最大の理由は,「三國志12」に比べて「三國志13」ではできることが格段に増えている点にありますね。「三國志12」の戦闘中は「戦法」や「秘策」しか撃てないような感じでしたが,そこまで落とし込んで,やっとああいうUIにできたわけです。
4Gamer:
確かに,「三國志13」では戦闘中にできることが圧倒的に増えています。
利川氏:
そのあたりの,仕様との相性といったところも含めて,UIは今後もずっと難問であり続けるかなと思います。新しい要素が追加されたら設計し直しになりますしね。「これで完成だ」という状態に持っていくのは,非常に難しいというのが正直なところです。
4Gamer:
出来がよかったものを改良して使い回すことができないというのは,言われてみれば確かにそうです。
利川氏:
ただ,完成が難しいからといって「仕方がない」とはしたくありません。プレイヤーさんの好みや経験によって感じ方が大きく異なるのは仕方ないとしても,プレイヤーさんからの率直なご意見は伺いたいと思っています。個人個人に完璧にフィットするUIでなかったとしても,より多くの人が快適に思うUIに近づけたいと思っていますから。
4Gamer:
具体的な意見を,できるだけたくさん聞きたい,ということですね。
利川氏:
是非お願いします。すべてのご要望に答えられるわけではありませんので,「こういうUIのほうがいいと言ったのに!」となることもあると思いますが,そういうときも,ご意見を無視したのではなく,何らかの理由があってそうなったのだというところをご理解いただけると助かります。
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