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Wargaming.netが取り組むAR/VRとは。車長となって戦車バトルが楽しめる「World of Tanks VR」の試遊も
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印刷2019/01/29 18:55

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Wargaming.netが取り組むAR/VRとは。車長となって戦車バトルが楽しめる「World of Tanks VR」の試遊も

 2019年1月24日,東京のVREX 渋谷宮益坂店にて第9回VRビジネスフォーラムが開催された。VR/AR/MRといった技術やそのビジネスに関する発表がなされるこのイベントで,本格的にVR・ARコンテンツの開発展示を始めているWargaming.netの発表と,展示の内容をお届けしたい。


車長の視点で戦車を操縦せよ!


 まずは「World of Tanks VR」の試遊レポートから。
 「World of Tanks VR」はタイトル通り,VRで「World of Tanks」がプレイできるという作品だ。使用するVRHMDはHTC Viveで,いわゆるルームスケールのコンテンツとなってはいるが,戦車を操縦している間はプレイヤーはほとんどその場から動かない(し,動く必要もない)。
 ゲームとしてはほぼ「World of Tanks」として完成しており,2対2のローカル対戦モードでサービスされている。つまりVRコンテンツとしてはロケーションベースでのサービスというわけだ。

画像集 No.001のサムネイル画像 / Wargaming.netが取り組むAR/VRとは。車長となって戦車バトルが楽しめる「World of Tanks VR」の試遊も

 使用する戦車はT-44-100。リスポーンありのルールで,敵戦車を撃破することによってスコアが入る。1ラウンドは4分間で,2ラウンド行い,合計スコアが高いチームが勝利する。

 UIはViveのコントローラ2本を利用したものとなる。右手コントローラのトリガーで前進,左手コントローラのトリガーで後退。左右への旋回は自分が向いている方向を実際に変える(ヘッドトラッキング)ことによって行い,照準は視線での照準となる。
 照準にあたってはズームも可能だが,こちらは左手コントローラのボタンで行うため,ある程度までViveコントローラに慣れていないと「ズームのボタンはどこだ?」ということもあり得る。ただ本家World of Tanksに比べると敵戦車に砲弾を貫通させることは容易い(後ほど聞いてみたところ,ダメージモデルや物理モデルは本家とは異なるものを使っているとのこと)ので,「ズームして操縦席のハッチを狙い撃つ」といった必要はない。
 ただし,「ダメージモデルや物理モデルが異なる」と言っても,例えば主砲の俯角制限といったものはちゃんと再現されている。このため状況によっては「敵車両が見えているけれど照準できない」ということもあり得る。このあたりはWorld of Tanksプレイヤーであれば直感的に把握できるだろう。

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 プレイヤーの視点としては,「キューポラを開けて上半身を車外に出した車長の視点」と説明するのが最もしっくり来るだろう。ある意味で戦車ファン憧れの視点であり,この視点で戦車を操縦できるというだけでも本作には満足感がある。一方で本家と異なり三人称視点への変更はできないので,正確な機動を行うためには相応の練習が必要になりそうだ。
 なお,VR空間における左手上にはミニマップが表示されており,本家同様にそれを見ながら戦闘できる……が,これも「可能」という話であって,本家のように活用するには一定以上の練習が必要になるだろう。「FPSあるある」だが,本作においてもプレイヤーが認識できる視界はどうしても限定的になりやすい。

 実際にプレイしてみた感想を言えば,「World of Tanksをプレイしはじめた頃はこんな感覚で遊んでいたな」ということになるだろうか。
 本作のプレイフィールは間違いなく「World of Tanks」なのだが,移動時も一人称視点でコントロールしなくてはならないということもあり,戦車の挙動はどうしてもぎこちないものとなりがちだ。
 またそうやって移動がぎこちないものだから,実際に会敵して砲撃戦が始まると,互いにピクリとも動かないままひたすら射撃を続けるという展開になりやすい。ある程度,World of Tanksをプレイしたプレイヤーであれば「撃ったら隠れる」は常識なのだが,「World of Tanks VR」においてその動作が正確にできるようになるまでには,なかなかな修練が必要となるだろう。

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 けれど,この「そういえばゲームを始めたばかりの頃はこうだったなあ」という感慨は,「World of Tanks VR」の楽しさの一部とも感じた。「このゲームに熟達していけば,またあの『自由に戦車を動かせるようになっていく』ことを実感できる,楽しい時間を過ごせそうだ」という感覚は,なかなか他には代えがたい。
 もちろん本作は,「World of Tanks」初心者にとっても楽しめる作品となっているように思う。戦車の動きは機敏だし,射撃は必ず貫通するようなので(履帯損傷その他の「パーツに吸われる」こともないようだ),逆に「どうしたらダメージを与えられるんだ?」という思いをすることもない。リスポーンすることも含めて,ゲームバランスとしてはいわば「アーケード仕様」とも言えるカジュアルなセッティングとなっており,ロケーションベースのサービスにふさわしい仕上がりと言えるだろう。

 もうひとつの展示は,「World of Tanks AR Spectate」だった。こちらは2018年のgamescomで展示されていたもので,ARアプリ「World of Tanks AR Experience」(関連記事)とは異なる。
 この作品については,実際に動画を見てもらうのが早いだろう。筆者としてはこのプロモ動画を見たとき「どうせ盛ってるんだろう?」と思ったのだが,実際に体験してみると「動画そのままだった」としか評価できない。


 現状ではまだ「既に完成している3D動画を,iPad Proを通して見る」という構造になっている。iPad Proは視点データの提供と画像再生装置として機能しており,表示する画像そのものはパワーのあるPCで生成されているようだ。
 とはいえ,このシステムがそのまま順当に進歩していけば,ほぼリアルタイムで3D映像を生成することも可能となるだろうし,この視聴方法は試合の観戦方法としてはかなり優れている。自分の見たい状況を,自分の見たい角度と拡大率で見れるというのは,コアな視聴者への訴求力が高いのではないだろうか。
 また,このシステムは究極のジオラマ作成装置でもある。もし実際のゲームプレイをARで鑑賞できるようになれば,双方ともにチームを組んで「演技」を前もって決めておき,最終的にはドラマチックな戦闘を描いた映像作品として再編集することも可能だろう。

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 いずれにしても「ゲームは必ずしもプレイするだけが楽しみ方ではない」というのは,このゲーム実況華やかな時代において,あえて繰り返すことでもあるまい。「World of Tanks AR」は,その可能性を大いに広げてくれるシステムであるように感じた。

 なお「World of Tanks VR」は現在ベラルーシやロシアでサービスされているが,日本でもVREXでのサービスが「極めて前向きに検討されている」とのこと。近い将来,日本で「World of Tanks VR」がプレイできるようになりそうだ。
 また,その際にはユーザーからのレスポンスにも期待しているという。実際,「World of Tanks VR」をロケーションベースのサービスとして開始したのは,「ロケーションベースのほうがユーザーの意見を聞きやすい」という側面もあるそうだ(もちろん,ロケーションベースかつアーケードゲーム・テイストなサービスとして,本家「World of Tanks」に興味を持ってもらうためのPRという部分も強いが)。
 現状でも「ユーザーの指摘をもとにゲームは改造中」であり,「日本からの意見も求めています」とのこと(実際,どうやらgamescom版(関連記事)と比べてUIに多少の変化がある)。「World of Tanks」のプレイヤーはもちろん,「車長の視点から戦車を操縦して戦ってみたい」という戦車ファンも,サービスが開始されたらぜひプレイして,意見や感想を送ってほしい。

 余談だが,World of Tanks VRに対してものすごく個人的な要望を書き添えておくと,
・左右のトリガは左右の履帯の回転に直結しているUIでもよかったのでは(バックをどうするかは別問題)
・4人1チームくらいで協力して戦車を動かしてみたい(車長は声で指示するだけ,操縦手は運転するだけ,砲手は照準して撃つだけ,装填手は装填するだけ)
・戦車の戦闘室内部を体験できるVRコンテンツがあったら嬉しい(博物館でも内部を見られることは稀)

 ……といったところがあったりする。ただこれは不満というより,「マニアとしてはこういうものも嬉しい」という話であって,現状の「World of Tanks VR」はそんな欲求が湧き上がるほどに,ゲームとしては一定の水準を超えた状態にあると言える。


Wargaming.netとしてのAR/VRへの取り組み


 その後,Wargaming.netとしてのAR/VRへの取り組みが発表された。こちらは簡単にまとめて紹介しよう。

 Wargaming.netではゲームだけでなく,産業や教育におけるAR/VRの利用にも取り組んでいる。
 特に産業分野における危険な施設や装備は,実地で訓練するとなると危険度が高すぎる。そこでARやVRを利用して訓練を行うというシステムを,ベラルーシの産業安全研究と連携して研究しているという。
 このプロジェクトについては,日本の企業や研究所との共同研究にも広く門戸を開いているので,興味がある方はぜひ連絡してほしいとのこと。

Business Analyst / Directorateのディミトリー・セルゲンコ氏
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 同様にコミュニケーションや産業デザインにAR/VR技術を利用する研究も進んでいる。これについて,登壇したBusiness Analyst / Directorateのディミトリー・セルゲンコ氏は「人間は見たものの30%,聞いたものの10%しか記憶できないが,経験したことの90%は記憶できるという研究がある。ここにおいてVRによる疑似体験はとても有益だ」と指摘している。

 またWargaming.netは医療やヘルスケアの分野においてもAR/VR技術の利用を研究しているという。現在,脳に障害を受けた患者の,脳組織の再生をうながすリハビリテーション・ゲームを開発しており,フェイズとしては「実証実験中」とのこと。
 開発にあたってはベラルーシの医療スタートアップ企業と連携しており,従来であれば高価な機材の利用が長期間必要となる(結果的に患者の金銭的負担も高い)リハビリテーションにおいて,より効果的で安価なサービス提供を目指しているそうだ。

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 ARやVRの将来性について,セルゲンコ氏は「AR/VRは将来そのものだ」と語る。「PCをモバイルが淘汰したように,モバイルの次にAR/VRが来る可能性がある」「これを踏まえて,北米・ベラルーシ・日本の専門家と話をした結果,サービスとしては『利用者がそのサービスの中で何かを作るもの』の需要が高いと判断した」と語った。Facebook・YouTube・Instagramなどが示すように,ユーザーがこれらのサービスのコンテンツを自ら作るサービスのほうが,世界的に需要は高いというわけだ。
 そのうえで「AR/VR技術が発展していくことによって,AR/VRにおいてもユーザーがコンテンツを作るようなサービスがポピュラーになっていくとすると,そこで大きなカギとなるのは,ユーザーがどれくらい簡単にコンテンツを作れるかだ」という氏の指摘は,なかなか興味深いビジョンと言える。

 最後にセルゲンコ氏は「Wargaming.netはもちろんゲーム会社なので,ゲーム制作もやっていく」としつつ,「Wargaming.netのユーザーには広い視点で世界を見る人達がいて,彼らと新たなものを作るための協力をスタートしている。今後とも人のためになる,あるいは生活の役に立つプロジェクトを推進したい」と語って講演を終えた。

「World of Tanks」公式サイト

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