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「機動戦士ガンダム」放映40周年を記念して,バンダイナムコオンラインのキーマンたちにガンダムのオンラインゲームについて聞いてみた
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印刷2019/10/04 13:00

インタビュー

「機動戦士ガンダム」放映40周年を記念して,バンダイナムコオンラインのキーマンたちにガンダムのオンラインゲームについて聞いてみた

画像集 No.021のサムネイル画像 / 「機動戦士ガンダム」放映40周年を記念して,バンダイナムコオンラインのキーマンたちにガンダムのオンラインゲームについて聞いてみた
 2019年4月に放映40周年を迎えたテレビアニメ「機動戦士ガンダム」。日本のサブカルチャーにおいて,これほど大きな影響を及ぼした作品はそうそうないだろう。

 鬼才・富野喜幸(現・由悠季)氏を原作・監督として1979年4月からスタートしたテレビアニメ「機動戦士ガンダム」は,「リアルな兵器としてのロボット『モビルスーツ』の戦い」「英雄個人の活躍ではなく,兵站や頭数が重要となる現実的な戦争描写」「同じ人間が2つの陣営に分かれ,互いに正義を掲げる戦争の不毛さ」「硬直してゆく官僚組織と,現場で抗う生え抜きたち」といった,メカと人のドラマが描かれた作品だった。

 作品世界は「機動戦士Zガンダム」(1985年),「機動戦士ガンダムZZ」(1986年),「機動戦士ガンダム 逆襲のシャア」(1988年),「機動戦士ガンダムF91」(1991年)と拡張を続け,作中で描かれる「宇宙世紀」は,今や深みと広さを持つ一大架空史となっている。
 同時に年少者に向けた取り組みも進められ,デフォルメされたモビルスーツやキャラクターが活躍する「SDガンダム」(1985年)シリーズが展開されたことにより,こちらがガンダム原体験という世代も少なくないだろう。

 時代が進み,ハードウェアと通信環境の発達から,作品世界をPCオンラインゲームとして表現する取り組みがスタート。多数のプレイヤーが地球連邦軍とジオン公国軍に分かれて一年戦争を戦う「ガンダムネットワークオペレーション」(2002年。当時の発売元はバンダイ)を皮切りに,地球圏と月をリアルスケールで表現する壮大な構想で展開した「UniversalCentury.net GUNDAM ONLINE」(2005年。当時の発売元はバンダイ),最大50対50の集団戦を楽しめる「機動戦士ガンダムオンライン」(2012年),歴代作からキャラクターとモビルスーツを集めて戦うブラウザRPG「SDガンダムオペレーションズ」(2012年),自軍の基地を築いてRTS戦闘を楽しむ「ガンダムジオラマフロント」(2015年)などがリリースされている。

 今回はガンダム40周年を記念し,そんなガンダムPCオンラインゲームの最前線に立つバンダイナムコオンラインのキーマンたちに,“「ガンダム」原体験”のアレコレや作品へかける思いを聞いた。

(左から)佐藤一哉氏,丸山和也氏,清水康友氏,小池 淳氏
画像集 No.002のサムネイル画像 / 「機動戦士ガンダム」放映40周年を記念して,バンダイナムコオンラインのキーマンたちにガンダムのオンラインゲームについて聞いてみた

  • 丸山和也氏
  • 「ガンダムネットワークオペレーション2」
    「ガンダムネットワークオペレーション3」
    「機動戦士ガンダムオンライン」
    「ガンダムジオラマフロント」
    「ガンダムネットワーク大戦」

  • 清水康友氏
  • 「ガンダムヒーローズ」
    「SDガンダム オペレーションズ」

  • 佐藤一哉氏
  • 「機動戦士ガンダムオンライン」
    「機動戦士ガンダムオンライン(中国版)」

  • 小池 淳氏
  • 「ガンダムジオラマフロント」


“ガンダム”を経験して育った制作者


4Gamer:
 本日はよろしくお願いします。今回は,「機動戦士ガンダム」のテレビアニメ放映から40周年の一環として,みなさんにPCでリリースされた,ガンダムオンラインゲームの歴史……というか思い出を語っていただければと思います。まずは,ご自身の紹介からお願いします。

丸山和也氏(以下,丸山氏):
 「ガンダムネットワーク大戦」のプロデューサーを担当している丸山です。現在はバンダイナムコオンラインでガンダムPCオンラインゲーム全体を見る立場のゼネラルマネージャーでもあります。ガンダムタイトルに初めて携わったのは,バンダイ時代に「ガンダムネットワークオペレーション」(以下,GNO)の2作目となる「GNO2」です。

清水康友氏(以下,清水氏):
 「SDガンダム オペレーションズ」のサービス3年目から3代目プロデューサーとして担当しています。おかげさまで7周年も迎えることができました。この会社に入ったのもガンダム好きであることが理由です。

佐藤一哉氏(以下,佐藤氏):
 「機動戦士ガンダムオンライン」プロデューサーの佐藤です。入社した日にサービスが始まり,スタッフとして仕事をしていたのですが,今は3代目プロデューサーを務めています。

小池 淳氏(以下,小池氏):
 「ガンダムジオラマフロント」2代目プロデューサーの小池です。私はもともと「プロ野球 ファミスタオンライン」など,オンラインゲームの制作に携わりまして,「ガンダムジオラマフロント」では開発の初期から関わっています。

4Gamer:
 こうしてPCガンダムオンラインゲームに関わってきた皆さんですが,“「ガンダム」原体験”は覚えていますか?

画像集 No.003のサムネイル画像 / 「機動戦士ガンダム」放映40周年を記念して,バンダイナムコオンラインのキーマンたちにガンダムのオンラインゲームについて聞いてみた
丸山氏:
 テレビアニメ「機動戦士ガンダム」は幼いながらリアルタイムで観ていました。オープニングの「コロニーが落ちるシーン」で,大きな衝撃を受けた記憶があります。

4Gamer:
 それはまた,とんでもないシーンからですね。

丸山氏:
 ええ。たぶん当時は細かいところまで話を理解できていなかったと思いますけど,見続けさせる迫力がありました。たしか,その後小学2年生でガンプラブームがやってきました。

4Gamer:
 ガンプラブームも思い出深いのではないでしょうか。

丸山氏:
 そうですね。「デパートのおもちゃ売り場で,お店が終わった後に翌日用のガンプラが入荷する」というデマを聞き,友達と閉店間際の店内に隠れて一夜を過ごそうとしたことがありました。

一同:(笑)

4Gamer:
 当時のガンプラブームはすごかったですから……。どこのお店に行っても売り切れは当たり前で,怪しげなデマを頼りに,プラモデル屋を何軒もハシゴしたことを覚えています。ちなみに,潜入計画はうまくいったんですか?

丸山氏:
 閉店時間になって電気が消え始めたり,エスカレーターが止まったりするのを見て怖くなり……結局,逃げ出しましたよ(笑)。

4Gamer:
 未遂に終わったんですね。いろいろな意味で良かったと思います(笑)。では,清水さん,小池さん,佐藤さんはいかがでしょうか。

画像集 No.004のサムネイル画像 / 「機動戦士ガンダム」放映40周年を記念して,バンダイナムコオンラインのキーマンたちにガンダムのオンラインゲームについて聞いてみた
清水氏:
 ガンダムシリーズは昔から好きで,BB戦士()に触れて育ってきた世代です。プラモデルさえ与えておけば大人しくしている子供で,BB戦士を200番まですべて組み立てましたね。

※「SDガンダム BB戦士」。ガンダムシリーズのモビルスーツをデフォルメしたプラモデル。1987年からシリーズが続いている。

4Gamer:
 それはすごい。

清水氏:
 初めてのガンプラはBB戦士10番のジェガンで,初めてのガンダムは劇場版の「機動戦士ガンダムF91」でした。前売り券に付いてくるF-91と,通常のF-91ではヴェスバー(V.S.B.R。ビームライフルの略称)の付き方が違うんですよ(笑)。その後もゲームやガンプラを触り続けてきました。

小池氏:
 僕は,駄菓子屋で10円の束を握りしめてカードダス()を買ったり,ファミコンやスーパーファミコンでガンダムゲームを遊んでいました。設定を深堀するのが好きで,公式設定の書籍を読み漁っていましたし,高校からの帰り道に,その頃リリースされた「機動戦士ガンダム/第08MS小隊」について友達と一緒に「一年戦争の機体としてはオーバーテクノロジーじゃないか?」なんて語り合ったりもしました。

※1988年から展開しているトレーディングカード。

佐藤氏:
 僕は「機動戦士ガンダム」や「機動戦士Zガンダム」をリアルタイムでは見ていなかったんです。どちらかというと,それ以降のアニメやゲーム,ガンプラでこれらの作品に触れたという感じですね。


ガンダムオンラインゲームの始祖「GNO」シリーズ。Zガンダム時代における「6:3:1の法則」とは?


4Gamer:
 丸山さんが仕事としてガンダムタイトルに携わったときのことをお聞きします。「GNO2」は地球連邦軍とジオン公国軍に分かれて,90日をワンシーズンとした一年戦争を戦うというゲームで,チャットでの連帯感が心地よいタイトルでした。


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丸山氏:
 そうですね。あの時期は,まだバンダイナムコオンラインという組織はなく,バンダイのサービスでした。初代「GNO」から「GNO3」(※2014年1月にサービス終了)まで継続してプレイし続けてくれた人が非常に多く,すごい継続率を誇っていたんです。
 国内でも有数の長期間運営のPCオンラインゲームでした。まずPCショップで8800円のパッケージをお買い上げいただき,さらに1か月あたり1000円前後の利用料を継続してお支払いいただく月額サービスでしたので,今とは違うスタイルでしたね。

4Gamer:
 「GNO2」と「GNO3」を並行してサービスするというあたりも,ユーザーフレンドリーでした。

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丸山氏:
 当時は野心的な試みもいろいろとやりました。「GNO」ではクレジットカードでご契約いただいた方を対象にPocket PC版を作ったり,「GNO2」ではiモードと連携したり,CD-ROMではなく,サイコガンダム型のUSBメモリにクライアントソフトを入れたり……。時代が分かりますね(笑)。

佐藤氏:
 僕も「GNO」をやりたくてPCを買ったので覚えています(笑)。

丸山氏:
 このゲームでチャットを初めて体験したという方もかなりいらっしゃいます。

4Gamer:
 PCについて知識を持っている人ばかりではなかったと。

丸山氏:
 そうです。サポートチームの重要な仕事が,インストールの仕方を解説することでした。

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4Gamer:
 パッケージがガンプラの箱っぽいのも印象的でした。とくに「GNO2」だと,ガンプラ少年の記憶に残る「HOW TO BUILD GUNDAM2」()の表紙を模したものでしたから。

※1982年にホビージャパンから発売された,ガンプラ作例本。メンテナンスハッチを全て開いたガンダムの表紙が大きな衝撃を与えた。

丸山氏:
 当時はプラモデルと間違って購入された方も多かったようです。サポートに「箱の中身がCDだけで,プラモが入ってないぞ!不良品だ!」という電話もありましたから。まぎらわしくて済みません……と謝るしかなかったです(苦笑)。

4Gamer:
 そんなことが!

丸山氏:
 「GNO3」での3勢力制の導入も印象深いですね。「機動戦士Zガンダム」の時代では,プレイヤーさんは「エゥーゴ」「ティターンズ」「アクシズ」の3勢力に分かれて戦うんですが,当然,人数が均等に分かれるはずもなく,ゲームバランスの調整に苦労しました。

4Gamer:
 人数が均等にならないのは,3勢力抗争ものとしては避けて通れない問題ですね。どうしても人気に寄ってしまいますし,運営側からの誘導にも限界があります。

丸山氏:
 試行錯誤しながら,最終的に落ち着いたのが「6:3:1の法則」でした。どういう状態でもエゥーゴが6,アクシズが3,ティターンズが1に収まってきいくので,この人数比をベースに調整をかけていったんです。

4Gamer:
 エゥーゴは主人公側なので6になるのは分かりますが,アクシズが3,ティターンズが1というのはちょっと意外です。

丸山氏:
 アクシズの旗頭がハマーンであることも大きかったんでしょうね。ティターンズはジャミトフやバスク・オムのイメージが強いからでしょうか。

4Gamer:
 なるほど。確かに,自分が働くにしても,権威主義はちょっと……と思ってしまいます。それよりは寒々とした宇宙の辺境でも,美しいハマーン様に仕える方がまだ夢はありますね!

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ガンダムファンだからこその運営方針


4Gamer:
 それぞれのタイトルにおいて,ご自身のガンダムファンとしての感性や知識がゲーム運営において活かされた部分はありますか。

佐藤氏:
 私は「機動戦士ガンダムオンライン」の運営に入るにあたって,丸山からアドバイスをもらったのを覚えています。

4Gamer:
 それは,どんなアドバイスだったのでしょう。

佐藤氏:
 「ジャブロー戦をガウから降下するドムのパイロット視点で体験できるゲームにしたいんだよ」と言ってくれたんです。おかげで,ゲームのイメージができて,運営として守っていくべきところが固まりました。

4Gamer:
 原作を知っているなら,ジャブロー戦と聞けば“戦場のあちこちで敵味方が入り乱れ,倒したり倒されたりしつつ戦局が推移していく”というイメージが浮かびます。

画像集 No.006のサムネイル画像 / 「機動戦士ガンダム」放映40周年を記念して,バンダイナムコオンラインのキーマンたちにガンダムのオンラインゲームについて聞いてみた
佐藤氏:
 そうなんです。「機動戦士ガンダム」の戦争観が表現されているシーンですし,これまでのガンダムゲームでも一兵士の視点はあまり表現できなかった部分です。加えて,PCオンラインの多人数対戦アクションゲームとして遊びたいという若いユーザーの方々もいらっしゃいましたので,ガンダムファンとオンラインゲーマーがともに納得できるところを探していこうと心が決まりました。

清水氏:
 原作ファンとしての知識を仕事に活かしながら,できることなら少しでも原作の世界観を広げるお手伝いをするというのは,ゲーム開発者冥利に尽きます。
 例えば,「ガンプラ」では当時,「MSV()」などでもそれをやっていたんだと思います。アニメだけを観ているのであれば分からないことがある。それが子供の頃に読んだMSVの冊子ひとつで,急に世界観がリアリティを増して,ストーリーも深く理解できましたよね。

※モビルスーツバリエーションの略。作中に登場したモビルスーツに対し,派生型や開発初期型といったバリエーションを提案する。作品ごとに細分化されており,模型誌やコミックで新たな設定・機種が加わっていく。

4Gamer:
 オンラインゲームの運営に携わってからの勉強よりも,子供の頃に好きで蓄えた知識のほうが強いと。

清水氏:
 むしろガンダムの知識が十分にあったおかげで,ゲームの運営について学ぶ時間を多く取れたんです。そういえば,「機動戦士ガンダムオンライン」にルナタンク()を実装しようとしていた時のことですが,社内で3Dモデルを作っている人の後ろを通った際に「入るの!?」と思わず叫んだら,相手も「ルナタンク,分かってるのね」と認めてくれました(笑)。

※2009年からスタートした「MSV-R」でデザインされた機体。モビルアーマー「アッザム」の原型とされる。定期的にMSVを追っていないと分からない機体の筆頭格。

佐藤氏:
 え,ルナタンクは普通に知ってるよね。

小池氏:
 うん。

4Gamer:
 いやぁ,どうでしょう(笑)。

清水氏:
 これは一例ですから(笑)。もちろん,マニアックな機体を知っていれば良いというものでもありません。実際には,どのタイミングで何を実装していくかの判断も重要ですね。

画像集 No.009のサムネイル画像 / 「機動戦士ガンダム」放映40周年を記念して,バンダイナムコオンラインのキーマンたちにガンダムのオンラインゲームについて聞いてみた
小池氏:
 僕はカードダスで展開していたSDガンダムからガンダムに触れた世代で,その当時,抱いていたイメージをどうにかゲームにできないかと考えていました。ちょうど昨年は「SDガンダム30周年」をお祝いする形で,(「ガンダムジオラマフロント」に)コマンドガンダムやスペリオルドラゴンを実装しました。初めてリアル頭身で動き回るキャラクターもいて,懐かしくも新しい形で公開できたかなと。
 そして,サタンガンダムとの戦いでは,ファミコン版のゲームをベースにさまざまな魔法やギミックを3Dグラフィックスで表現したところ,プレイヤーさんがしっかりと意図を理解してくれたんです。昔の記憶を呼び起こして楽しんでいただけるというのは,いちゲーム制作者としてもやりがいを感じますね。

4Gamer:
 サタンガンダム! 懐かしい……。

小池氏:
 “騎士ガンダムが,ガンタンクを僧侶ガンタンクと勘違いする”など,当時のファンならニヤリとできる掛け合いも作りましたし,やはりガンダムファンであることを活かせていると思います。

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清水氏:
 30周年の時は,同じSDガンダムファンとして負けられなくて,お互いライバル心を燃やしながら施策を作っていましたね(笑)。そっちがこうくるなら,こっちはこれを実装してやる!……といった感じでした。そうして「SDガンダム オペレーションズ」でガンキラー()を初めて動かすことができ,評判も良かったので嬉しかったです。

※「コミックボンボン」誌の「超戦士 ガンダム野郎」に登場した敵。圧倒的な強さで主人公を苦しめた。


新作タイトルとの素早い連動。その陰にはジレンマも


4Gamer:
 「ガンダム」はアニメやコミック,OVAなどでさまざまな展開を見せています。そうした展開とゲームの連動について,スピード感を追及されているのでしょうか。ファンとしては,いつ「あの要素」がゲームに登場するんだろうという具合に気になりますよね。

丸山氏:
 定期的に新しい作品が出て盛り上がる,という現象まで含めてのガンダムシリーズだと認識されている方は多いですから,できるだけ早く新作とゲームを連動していこうとは考えています。
 とはいえ,複数タイトルをまたいでプレイされる方はそう多くないので,できるだけニーズに合ったジャンルや,原作再現ができるタイトルを用意する……というところは意識しています。

4Gamer:
 ガンダムファンとはいえ,40年の歴史があるわけで……。タイトルによってユーザーの世代が違ったりするでしょうし,ニーズに合った連動というのは大事でしょうね。逆に,ゲームで知らないキャラクターに出会い,元ネタが気になって調べるということもありそうです。

丸山氏:
 そのとおりで,最終的にはゲームをキッカケに映像作品も楽しんでいただくというプラスの循環を作っていきたいんです。
 例えば「機動戦士ガンダムオンライン」の場合,「ガンダムを知らないけれど多人数対戦ゲームを遊びたい」という方も入ってこられます。そのゲームプレイの過程で,登場するモビルスーツやキャラクターを詳しく知りたいと思って,映像作品を見ていただければうれしいなと思っています。

4Gamer:
 なるほど。そういえば,昨年末に公開された映画「機動戦士ガンダムNT(ナラティブ)」は,どのガンダムオンラインゲームでも,かなり早い段階で連動していたように思ったのですが。

画像集 No.016のサムネイル画像 / 「機動戦士ガンダム」放映40周年を記念して,バンダイナムコオンラインのキーマンたちにガンダムのオンラインゲームについて聞いてみた

丸山氏:
 「機動戦士ガンダムNT(ナラティブ)」は本編の制作と並行してゲームの開発を進められたので,映像とゲームをほぼ同時に展開できました。本編とゲームのアフレコもほぼ同時進行だったくらいです。なので,ゲームに実装するためのスケジュールもギリギリで,3Dモデルを作ってゲームに実装する作業の限界にチャレンジした感がありましたね(笑)。

小池氏:
 ゲーム用に収録している横に脚本の福井(晴敏)さんがいて,「ゾルタン・アッカネンはこんなキャラクターになるんだ!」って驚かれておられましたね(笑)。

4Gamer:
 そうなると,公開された映画と微妙にキャラが違っていた,みたいなことって起こらないんですか?

丸山氏:
 いえ,さすがにあまり早く台詞を収録しすぎると本編と隔たりが出てしまう可能性があるので,そうならないようにサンライズさんや福井さんが監修に立ち会ってくれていました。

画像集 No.008のサムネイル画像 / 「機動戦士ガンダム」放映40周年を記念して,バンダイナムコオンラインのキーマンたちにガンダムのオンラインゲームについて聞いてみた
小池氏:
 ただ,このケースはあくまでもイレギュラーだと思います。本編をアフレコしていく途中で生まれた要素は,ゲームには活かせませんし,やはり映画から生まれるものがベースです。「機動戦士ガンダムNT(ナラティブ)」のとあるキャラクターで非常にいいシーンがあり,「本当はこのシーンのセリフをゲームでも使いたかったな」といった悔しい思いをした箇所もありました。

4Gamer:
 やっぱりそういうこともあるんですね。プレイヤーとしては連動が早いと嬉しいんですけど,キャラクターとして成熟した後のほうがより深掘りしてもらえるでしょうし……ジレンマですね。

丸山氏:
 あとは台詞やシステムに原作の要素を盛り込むとしても,やり過ぎるとネタバレになってしまうので出せないものも……。

4Gamer:
 あー,確かに。

清水氏:
 「SDガンダム オペレーションズ」特有の事情としては,リアル頭身のタイトルと違い,SDキャラクターを作らなければならないというところがあります。単に頭身を縮めるだけではなく,職人の技術によって情報量を調整した「SD化」が必要なので,どうしても時間がかかってしまうんです。

4Gamer:
 もう1体,新キャラクターを作っているようなものですよね。

清水氏:
 ええ。キャラクターモデルの流用もできませんし。Zガンダムなどはウェイブライダー形態に完全変形するなど,こだわって作っているので,リテイクが出るとえらいことになるんですよ。開発も「動かしてナンボ」と,動きを優先していますから。

4Gamer:
 「SDガンダムオペレーションズ」の動きは原作をしっかり再現していてすごいものがあります。リアル頭身でも大変そうなのに,SD化の手間もかかる。それでいて連動は早くしなければならないとなると,なかなか過酷ですよね。


ガンダムオンラインゲームに携わる,喜びと苦しみ。そして未来への抱負


4Gamer:
 連動にしてもSD化にしても,開発や運営はいろいろ大変だと思うのですが,これまでにガンダムオンラインゲームに携わってきて辛かったと思ったことはありますか。

画像集 No.010のサムネイル画像 / 「機動戦士ガンダム」放映40周年を記念して,バンダイナムコオンラインのキーマンたちにガンダムのオンラインゲームについて聞いてみた
丸山氏:
 サービス終了を決めなければならない時が辛いですね。何度かサービス終了を経験しましたが,慣れることはないです。オンラインゲームなのでいつかその日は来るのですが……。

小池氏:
 僕も前に担当していたタイトルの終了に立ち会っているので,その感覚はすごく分かります。我々としては長くサービスを続けたいですし,自分がプレイヤーの立場だったとしても,生活の中にあったオンラインゲームがなくなってしまうのはやはり辛いですね。

4Gamer:
 サービスが終了すると,昔遊んでいたってタイトルであっても寂しくなります……。

佐藤氏:
 僕はガンダムの世界観をゲームに再現する際,プレイヤーさんが望まれていることを実現できないときが辛いんですよね。
 「機動戦士ガンダムオンライン」は対戦ゲームなのでゲームバランスが大事です。映像作品の主役機は強くてヒロイックなイメージがありますが,これを対戦ゲームでそのまま表現するとゲームバランスが崩壊してしまいます。一方で,弱くし過ぎると原作の再現としては失格ですから。

4Gamer:
 シングルプレイならともかく,オンラインゲームで原作を完全に再現しようとすると,強弱のバランスは取りようがないですね。

佐藤氏:
 はい。その落としどころを作るのは難しいですし,作ったとしても全員に納得していただけることはない。そうしたときに「自分が思ったイメージと違う」と言われてしまうのが苦しいです。

4Gamer:
 逆にサービスしていて嬉しかったことはどうでしょうか。

画像集 No.015のサムネイル画像 / 「機動戦士ガンダム」放映40周年を記念して,バンダイナムコオンラインのキーマンたちにガンダムのオンラインゲームについて聞いてみた
清水氏:
 「SDガンダム オペレーションズ」の開発は北海道の会社さんにお願いしているのですが,2018年の北海道胆振東部地震の際に,予定していたアップデートが実装できなかったことがありました。しかし,プレイヤーさんは怒るどころか,励ましのお言葉をかけていただけて本当に感動しました。

4Gamer:
 嬉しいというか,状況が状況だけに,グッとくるものがありますね。

清水氏:
 そうなんですよ。また,先ほどお話ししたガンキラーを実装した時には,「一本取られたよ!」「びっくりした!」とお褒めの言葉をいただけたのも嬉しかったですね。

佐藤氏:
 「機動戦士ガンダムオンライン」ですと,オフラインイベントに出展した際に,親子で遊ばれている姿を見るのが嬉しかったですね。

4Gamer:
 オンラインゲーム自体がもう20年以上の歴史を持っていて,親子で遊ぶというのも不思議ではなくなりましたよね。ガンダムともなると,ヘタをすると3世代でガンダム好きということもありえそうです(笑)。

小池氏:
 僕の場合は,お客様のコミュニティが育ってくれているのと,ゲームをキッカケにして「とあるキャラクターが生きていたらこうなったんじゃないか」というIFを語ってくださっていたのが喜ばしくて。

丸山氏:
 いろいろと先に言われてしまいましたが(笑)。やはりガンダムというキャラクターを預かっている者としては,ゲームからガンダムをより好きになってくれたり,思い出していただいたりして,映像作品を観るきっかけになった。そんな声を聞けた時は嬉しいです。

4Gamer:
 では,最後にそれぞれのタイトルにおける抱負と,せっかくなので正式サービスが始まる「ガンダムネットワーク大戦」における推しの指導者を教えてください。

画像集 No.019のサムネイル画像 / 「機動戦士ガンダム」放映40周年を記念して,バンダイナムコオンラインのキーマンたちにガンダムのオンラインゲームについて聞いてみた

小池氏:
 「ガンダムジオラマフロント」ではフルボイスでメジャーな機体から知る人ぞ知るマニアックな機体まで,幅広く実装しています。最近,実施した大型アップデートにより多人数対戦を導入していますので,同盟や連合を組んで楽しんでいただければと思います。新しいリプレイド作戦などの多人数コンテンツや,ジオラマのさらなるアップデートも順次追加しておりますので,これからも楽しみにお待ちいただければと思います。
 推しの指導者は,やはり「デギン公王」ですね。資源にまつわる,なかなか強い指導者スキルを持っていますし。同盟内みんなで強くなれたらハッピーかなと。

清水氏:
 「SDガンダムオペレーションズ」はHTML5化対応のため,現在,検証と準備を進めています。開発運営一同,これからも長く遊んでいただけるように全力で取り組んでまいりますので,正式な発表までもう少しお時間をいただければと思います。
 個人的な推しの指導者は「ドズル・ザビ」です。偶然だとは思いますが,ほかのガンダムオンラインゲームをプレイしていると,ドズルさんとの接点が多いので(笑)。

佐藤氏:
 現在の「機動戦士ガンダムオンライン」は2012年からアップデートを重ねてきて,すでに400弱の機体を使えるようになっています。しかも,引き続き新機体を実装していきますので,これからも「この機体が動かせるのか!」という驚きとともに,長く遊んでいただければと思います。
 推しの指導者は劇場版の優しい感じになった「ワッケイン司令」ですね。「寒い時代だな……」と言ってみたいです(笑)。

丸山氏:
 そうですね。まずは,始まったばかりの「ガンダムネットワーク大戦」を1人でも多くの人にプレイしていただきたいです(笑)。 ガンダム40周年ですので,コラボや連動したさまざまな施策をやっていきたいですね。
 推しの指導者は……悩みますが「ランバ・ラル」ですかね。初代「機動戦士ガンダム」世代としては,理想の上司であり,自分に足りないモノをたくさん持っていますので(笑)。

4Gamer:
 本日はありがとうございました。

「ガンダムネットワーク大戦」公式サイト


「機動戦士ガンダム40周年プロジェクト」公式サイト

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